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WHO推奨:研究プロトコルに書き込む21項目

ある学生は研究プロトコルについて頭を悩ませているようです。

研究主宰者(Principal Investigator : PI):研究プロトコル(研究計画書)は書きましたか?

学生:まだです。分らないことだらけで…そもそも、研究プロトコルを作成することがなぜ重要なのでしょうか?研究プロポーザル(研究提案書)と同じようなことを書けばいいのか、何を書かなければならないのか、どのような構成にしたら良いのか…所定の書式に従って書けばよいものですか?

経験の浅い研究者は、研究プロトコルを作成する目的や重要性だけでなく、どうやって書けばよいのかも理解できていないようです。この記事を通して、研究プロトコルの書き方について理解を深めていきましょう。

研究プロトコルとは

研究プロトコルとは、臨床試験の背景、理論的根拠、目的、デザイン、方法、統計的考察および実施機関(団体)について説明する文書です。臨床研究の計画の概要を示すだけでなく、研究課題に対して満足できる答えを示すように作成する必要があります。研究プロトコルは、研究を実施するための試料と手順を示す文書なのです。

なぜ研究プロトコルが重要なのか

治験や臨床試験において、研究プロトコルは最も重要なものであり、臨床研究の基盤となるものです。臨床試験の被験者の安全と収集するデータの完全性を保証するための文書でもあります。拘束力を持つ文書である研究プロトコルには、臨床試験の一環として許可されていること、あるいは許可されていないことを記載します。さらに、自分が所属する研究機関の研究倫理審査委員会(IRB)に申請を提出する際、最も重要な文書と見なされるものです。

研究プロトコルは、医療専門家、統計の専門家、薬物動態の専門家、臨床研究コーディネーター、研究プロジェクトマネージャーなどからの情報を基に作成します。研究のあらゆる側面が最終的な文書に網羅されていることを確認しましょう。

研究プロトコルと研究プロポーザルの違い

混同されることが多々ありますが、研究プロトコルと研究プロポーザルは、異なる文書です。下表に二つの相違点を並べてみます。

研究プロポーザル(Research Proposal) 研究プロトコル(Research Protocol)
研究プロポーザルは、助成金委員会、所属大学(学部)、指導教員などに研究の内容を説明するために書かれる文書です。 研究プロトコルは、臨床試験に参加する被験者向けの特定の倫理基準を満たすため、臨床研究の計画を詳述するために書く文書です。
助成金を獲得するため、もしくは研究を実施するための計画を示すもの。 臨床試験の被験者の安全を守るために定められている機関のガイドラインを満たすために提案された研究概要を明確に提供することを目的として書かれる文書です。
助成金団体に対して提出します。 大学および研究機関の研究倫理審査委員会(IRB)に提出します。

 

研究プロトコルに含めるべき要素/項目

世界保健機関(WHO)が定める臨床試験の実施基準(Good Clinical Practice : GCP)ガイドラインによると、研究プロトコルには以下の21項目を書き記す必要があります。

 

1.General Information: 一般情報

  • タイトル、研究プロトコル識別番号(ID、あれば)、日付
  • 資金提供者の名前
  • 試験責任医師・責任研究者の名前および連絡先、研究サイト(場所)
  • 各医師・研究者の責任
  • 該当研究に関わった臨床検査室、その他の医療および技術部門、研究機関の名前と住所

2.Rationale & Background Information: 論理的根拠および研究の背景

  • 論理的根拠と研究の背景では、研究題材についての適切な知識に照らし、その研究を実施する具体的な理由を示す
  • プロジェクトの基盤となる課題、研究における問題の原因、考えられる解決策を含めた意見を述べる
  • 研究テーマについて公開/出版されている最も関連性の高い文献の概要を付けることで補足する

3.Study Objectives: 研究目標

  • 研究プロポーザルに記載されている研究者が達成したい研究目標に基づいて研究を計画する
  • 研究を提案する目標は、明確に分りやすく、かつ具体的で、研究の実施に先立って示しておく必要がある
  • 研究課題とその解決策との関係性に基づき、研究目標は一次目標および二次目標に分けることができる

4.Study Design: 研究デザイン

  • 研究デザインは、研究の科学的公正性と信頼性を正当化するものである
  • 研究の種類(タイプ)、対象数またはサンプルフレーム(抽出枠)、適格基準(組入、除外、取下)、および予測できる研究期間に関する情報を記載する

5.Methodology: 方法

  • 方法は、研究プロトコルの中でも最も重要な項目である
  • 観察・介入、行った手順、測定方法、観察方法、行われる実験などに関する詳細情報を書き記す必要がある
  • 複数施設(試験機関など)が特定の研究プロトコルに関与している場合には、方法を標準化するとともに、明確に定義しておく必要がある

6.Safety Considerations: 安全性考察

  • 臨床試験の参加者の安全確保は、臨床研究を実施する際の最優先課題である
  • 研究の安全性を精査し、研究プロトコルに記載する必要がある

7.Follow-up: 経過観察

  • 臨床試験に参加する被験者に対する経過観察について明確に示す
  • 経過観察の期間についても示す

8.Data Management and Statistical Analysis: データ管理および統計的分析

  • データの取り扱い方法、コンピューター分析、モニタリング、検証のためのコーディングなどを含めた、データ管理方法に関する情報を記載する
  • データ分析に使用するための統計的手法を明確に概説する
  • 定性的なアプローチを行うには、どのようにデータを分析するか具体的に指定する

9.Quality Assurance: 品質保証

  • 品質管理および品質保証システムについて明確に記述する
  • ここには、臨床試験の実施基準(GCP)、臨床モニターによる経過観察、データ安全性監視委員会 (DSMB) 、データ管理などについても記載する

10.Expected Outcomes of the Study: 期待される研究成果

  • 該当研究が現在の知見の発展にいかに貢献するか、試験の結果が公開された後にどのように利用されるかを示す
  • その研究がヘルスケア(医療)、医療システム、または医療政策にどのような影響を及ぼすかについても言及する

11.Dissemination of Results and Publication Policy: 研究成果の普及・公開方針

  • 研究結果が科学メディアでどのように取り上げられて広められるかだけでなく、コミュニティ(科学界)あるいは治験参加者、政策決定者などに対してどう普及させるかも指定する
  • 誰の名前を研究に貢献したとして記載するか、誰に謝辞を述べるかなどを含めた公開方針を明確に協議しておく

12.Duration of the Project: 研究プロジェクトの実施期間

  • 研究プロジェクトのそれぞれのフェーズが完了するのに要すると推定される時間を明確に記載しておく
  • 実施項目ごとの詳細なタイムラインも提示する

13.Anticipated Problems: 予想される問題

  • 試験責任医師または研究者は、臨床研究の実施中に数々の困難に直面することがあるので、この項目には、プロジェクトを成功させるために予想されるあらゆる問題を書き出しておく
  • そうした問題に対処するための考えられる解決策を示しておく

14.Project Management: プロジェクト管理

  • 研究チームの試験責任医師や研究者それぞれの役割と責任について詳細に記しておく
  • 研究プロジェクトに関わったすべての人について、研究を完了させるにあたって担った特定の責務とともに記載する

15.Ethics: 研究倫理

  • 研究に関連する倫理規定を記載する
  • 倫理的承認を条件とすることを示すだけでなく、倫理的な懸念を起こす可能性のある問題にも言及する
  • 倫理項目の中には、試験責任医師(研究者)が研究の参加者からインフォームド・コンセントを取得する方法に関する説明も書きこむ

16.Budget: 予算

  • 必要とする資金の内訳(必需品別と業務別)を記す
  • リストした各項目の用途の正当性についても書き記す

17.Supplementary Support for the Project: 研究プロジェクトへの追加支援

  • 特定の研究プロジェクトに対して提供された資金およびその他の予想される資金提供に関する情報を記す

18.Collaboration With Other Researchers or Institutions: 他の研究者または研究機関との協力

  • 研究プロジェクトに参画したすべての研究者または研究機関について、詳細を記載する

19.Curriculum Vitae of All Investigators: すべての研究者の職務経歴書(CV)

  • 試験責任医師または主任研究者(PI)とすべての共同研究者の職務経歴書(CV)を添付する
  • すべての職歴を掲載したCVの提出を要求されない限り、各人のCVは1ページに収めるのが理想的である

20.Other Research Activities of Investigators: 試験責任医師・研究者の他の研究活動

  • すべての研究者が現在実施している研究プロジェクトを全部リスト化して掲載する

21.References: 参考文献

  • 盗用・剽窃を避けるために、関連するすべての参考文献に言及し、的確に引用する

研究プロトコルの書き方(研究プロトコルの書式サンプル)   

Main Investigator 主任研究者または研究責任者情報

Name 氏名

Address 住所

Phone/Fax 電話/Fax

E-mail メールアドレス

Number of Involved Centers (for multi-centric studies)
研究に関与した機関の数(複数の研究機関や団体が研究に関わっている場合)

Indicate the reference center リファレンスセンター(問い合わせ先)

Title of the Study 研究/試験タイトル

Protocol ID (acronym) プロトコルID(あれば)

Keywords (up to 7 specific keywords) キーワード(特定のキーワードを7つぐらい)

Rationale 論理的根拠

Study Design 研究デザイン

Mono-centric/multi-centric 単心性/多中心性

Perspective/retrospective 大局的/遡及的

Controlled/uncontrolled 制御型/無制御型

Open-label/single-blinded or double-blinded
盲検化レベル(非盲検/単盲検・二重盲検)

Randomized/non-randomized ランダム化の有無(ランダム化/非ランダム化)

n parallel branches/n overlapped branches パラレル試験 /クロスオーバー試験

Experimental/observational 実験的/観察的

Objectives 目標

Endpoints (main primary and secondary endpoints to be listed)
エンドポイント(主なプライマリーエンドポイントとセカンダリーエンドポイントを記載する)

Expected Results 予測される結果                                                

Analyzed Criteria 分析基準

Main variables/endpoints of the primary analysis 主要変数/一次評価項目

Main variables/endpoints of the secondary analysis 主要変数/二次評価項目

Safety variables 安全変数

Health Economy (if applicable) ヘルス・エコノミー(保健経済学)(該当があれば)

Visits and Examinations 訪問と検査

Therapeutic plan and goals 治療計画と目標

Visits/controls schedule (also with graphics) 訪問/管理スケジュール(図を含む)

Comparison to treatment products (if applicable) 治療用医薬品との比較(該当があれば)

Dose and dosage for the study duration (if applicable) 研究期間中の用量と投与量(該当があれば)

Formulation and power of the studied drugs (if applicable)  研究対象の薬物の処方と有効性(該当があれば)

Method of administration of the studied drugs (if applicable) 研究薬物の投与方法(該当があれば)

Informed Consent インフォームド・コンセント

Study Population 調査対象の母集団(調査対象人数)

Short description of the main inclusion, exclusion, and withdrawal criteria 主な含有、除外、および取下基準の簡単な説明

Sample Size サンプルサイズ

Estimated Duration of the Study 研究の継続期間

Safety Advisory 安全勧告

Classification Needed 必要分類

Requested Funds 必要な資金

Additional Features (based on study objectives) 追加事項(研究目的に基づく)

References 参考文献

研究プロトコルのサンプル書式のダウンロードはこちらから

臨床研究を実施するには、詳細な研究プロトコルを作成して準備してください。ここに書いたように、難しいことはありません。この記事が、研究プロトコルの作成に役立つことを祈っています。

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