研究不正の件数はもっと多い? 英BBCが調査

研究不正(research misconduct)の件数は、公式に認定されているよりもずっと多いかもしれません。イギリス放送協会(BBC : British Broadcasting Corporation)が独自調査の結果を3月27日に報じました
イギリス議会には上下両院に科学技術委員会(Science and Technology Committee)が設置されていますが、下院科学技術委員会は今年1月、同国の立法支援機関である議会科学技術室で研究不正が問題視された(POST note、2017年1月 No.544)ことを受け、研究不正に関する調査を開始しました。同委員会のスティーブン・メトカルフ委員長はBBCに「研究に不正があることがわかった場合、人々に大きな影響を与え、それが不信につながるのです」と、この問題の重要性を語っています。
研究不正についての公式なデータはあまりないのが実状です。
たとえば、領域別に区分された7つの科学者団体から構成される英国研究評議会(Research Councils UK)は、2012年から2015年までの間に33件の研究不正の「申し立て」があったと報告しています。これらのうち5件が正式に不正だと判断され、20件が却下され、8件が調査進行中だといいます。
また、大学の学長らで構成される「英国大学協会(Universities UK)」は、2013年から2014年までの間に19校が発表した研究不正についての声明を検討しました。29件の「申し立て」が報告されていたのですが、調査後、そのうち7件が不正と判断されたといいます。
「これらの件数が、重複するケースを含むのか、まったく異なるケースなのかは明らかではありません」とBBCは述べています。
2012年、イギリスでは国内の大学が「研究公正」を支援するための協定を締結しました。「研究公正(research integrity)」とは、研究者が守るべき倫理や規範のことで、「研究における公正性、誠実さ、高潔さ」と説明する研究者(研究者による「研究公正」の説明はこちら)もいます。「研究不正(研究における不正行為)」とは、研究公正に対する違反のことです。この協定は大学に対して、研究不正の申し立てを扱うための「透明性があり、断固として、公正なプロセス」を採用するよう奨励しています。しかしながら、研究公正に対する違反の件数を公表することは義務づけられていません。
BBCは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドに点在する研究中心の教育を行う公立大学から構成される「ラッセル・グループ(Russell Group)」に所属する全24校に、2011年から2016年までの間にあった研究不正の申し立てについて尋ねました。1校を除くすべての大学から全面的または部分的な回答が得られました。その結果、教職員(staff)や研究学生(research student)から合計319件の申し立てがあったことが明らかになりました。
「実際の数は、一部の大学が完全な数字を提供していないため、この件数より多くなる可能性があります」とBBCは補足しています。そのうち103件が不正と判断され、173件が却下され、43件が調査進行中でした。
そのなかには、データの「改ざん」や「盗用」のほか、他人の研究成果を自分の研究成果と称していたケースなどもありました。
また、この調査は、少なくとも32件の研究論文と少なくとも3件の博士論文の撤回につながる結果となりました。BBCが英国大学協会にこの調査結果についてコメントを求めたところ、断られたとのことです。
日本では2014年、文部科学省が「捏造」「改ざん」「盗用」を「特定不正行為」と定義し、報告された事例をウェブサイトで公開しており(「文部科学省の予算の配分又は措置により行われる研究活動において特定不正行為が認定された事案一覧」)、現在では2015年以降の事例として15件がリストアップされています。しかし、研究不正が疑われて報道されたケースはもっとたくさんありますし、BBCの調査も踏まえれば、これらは氷山の一角と考えたほうがいいでしょう。



ライター紹介:粥川準二(かゆかわじゅんじ)
1969年生まれ、愛知県出身。ライター・編集者・翻訳者。明治学院大学、日本大学、国士舘大学非常勤講師。著書『バイオ化する社会』(青土社)など、共訳書『逆襲するテクノロジー』(エドワード・テナー著、早川書房)など、監修書『曝された生』(アドリアナ・ペトリーナ著、森川麻衣子ほか訳、人文書院)。博士(社会学)。

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