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学術雑誌の「質」の評価基準とは

研究者なら誰でも、研究成果を評価が高い学術雑誌(ジャーナル)に発表したいと考えるのは当然でしょう。著名な学術雑誌に発表することは、研究者の評判の向上や研究資金の獲得のチャンス拡大につながります。研究論文を投稿する学術雑誌を選ぶ際、もちろん一番大切なのは、論文のテーマと学術雑誌の方針が一致しているかですが、その上で、質の高い学術雑誌を選ぶ必要があります。学術雑誌の総合的な評価を比較する際、研究者はジャーナルのインパクト・ファクター(JIF)を参照するのが一般的です。しかし、JIFには良い点だけでなく、欠点もあるのです。では、学術雑誌は、どのような基準で評価されているのでしょうか? それを紹介しましょう。

学術雑誌の「質」の評価基準

論文を発表する学術雑誌を選ぶ際に、最初に頭に浮かぶのは、多分その分野の最良の研究を掲載し、ターゲットとする読者に届きやすい雑誌でしょう。質の高い雑誌は、最も広く読まれ、また話題になることも一番多いと推測されます。これらを踏まえると、学術雑誌の質は主に次の3つの基準で評価することができます。

  1. 引用統計
    上でJIFに欠点があるといいましたが、それでもこの指標は重要です。
    JIFは、一定の期間に対象の学術雑誌が引用された平均回数を示します。
  2. 査読の有無
    投稿論文の分野の専門家が査読をしているかは、重要です。
  3. 発行部数と読者層へのアクセス
    ターゲットとする読者層に使われるインデックスサービス(論文検索サービス)に、該当の雑誌が収録されているかを考慮すべきでしょう。インデックスサービスの例としては、エルゼビアの提供するScopusや、医学分野ではアメリカ国立医学図書館のPubMedなどがあります。

この3つの評価基準の1つだけを取り出して雑誌の質を評価することはできません。それぞれに長所と短所があります。オーストラリアのWollongong大学の研究からその要点を挙げてみます。

引用統計:
引用の多さは、定量的で、定期的に計測され、計測が中立的に行われており、雑誌の普及度を測る指標として意味があります。一方、質の評価の面では疑問があります。その理由は、引用数が高いからといって良い研究とは言えない、関わりのある執筆者同士が頻繁に相互引用しあう傾向がある、引用分析データベースは英語を使う国で運用されているため英語使用国に有利に働く、レビュー論文(総説論文)がオリジナル論文より引用回数が多くなる傾向がある、などです。

査読の有無:
査読は、専門分野の研究者が他の研究者の投稿論文が出版に値するかを評価する仕組みであり、出版する論文の質を保つためには重要なプロセスです。しかし、査読の有無だけでなく、査読者の力量を確認するために選定基準にも注意を払う必要があります。査読者はその分野の専門家と考えられていますが、分野は細分化されている上、研究者の知識と経験はさまざまです。そのため、査読対象の論文の評価をめぐって意見が異なることも少なくありません。

発行部数と読者層へのアクセス:
世界の読者が迅速に論文にアクセスできること、そして、その論文の電子データを入手できることが優先されます。適時性をもってできるだけ早急に論文を公開するとともに、狙いとする読者に届くことが、研究者にとって重要です。

学術雑誌の選択は慎重に

上の3つの基本的な 評価基準 を踏まえた上で、JIF以外のGoogle Scholarのような引用件数および該当雑誌の評判に基づく統計情報から算出される学術雑誌のランキングを参考にすることも有用です。ランキングは、その雑誌に対する研究者の評価の目安となります。また、専門分野の研究者間の意見や評価も参考になるので、SNSなどを通じての究者コミュニティー内での情報交換を有効活用するとよいでしょう。

ある程度まで投稿先が絞り込めてくると、その学術雑誌の採択/却下率が気になるかもしれません。採択/却下率をウェブサイトで公表している雑誌もあるので検索してみましょう。却下率が高いことは、その雑誌が掲載する論文の質に特に厳しいことを示唆するものですが、ほとんどの場合は却下の理由が明らかにされることはありません。しかし、投稿する学術雑誌を慎重に選ぶことで、却下される可能性を減少させることは可能です。自分の研究テーマと該当学術雑誌の方針が一致しているかを十分に確認し、投稿規程に準じたフォーマットで投稿するようにしましょう。

このように、論文を投稿する学術雑誌を選ぶ際には総合的な判断が必要です。ここで紹介した要素を考慮しつつ、慎重に検討してみてください。ただし、引用動向は分野によって異なるため、分野をまたいだ比較をすることはできないことをお忘れなく。分野ごとに評価基準や、指標の値のレベルも異なっているのが実情です。さらに、オープンアクセスの拡大により、学術雑誌へのアクセスは様変わりしました。該当雑誌が読者に対して効率的なアクセスを提供しているかも重要な要素です。最近では、オルトメトリクス(Altmetrics)のようなオンライン上での評価も踏まえた評価指標や、研究業績あるいは研究者個人の評価を意識したアイゲンファクター(EagenFactor)のような新しい評価指標が登場しており、さまざまな指標で比較検討することが可能となっています。こうした指標は、雑誌のウェブサイトなどで公開されているので、目的に合わせてうまく活用するとよいでしょう。

 


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