句読点(Punctuation)の重要性―例文で使い方を説明
もしも句読点(Punctuation)がなくなったら…と想像したことはありますか?
Netflix、Instagram、Wi-Fiや、スマートフォンがなかったらと想像するのは難しいかもしれませんが、突然、英語の文章からカンマ(,)、アポストロフィ(’)、ピリオド(.)などの句読点や、括弧、疑問符、ダッシュなどが消えてしまったら?
はじめに – 句読点は重要か?
作家のジーテ・タイル(Jeet Thayil)のデビュー小説『ナルコポリス(Narcopolis)』は、2012年にイギリスの文学賞であるマン・ブッカー賞(Man Booker Prize for Fiction)にノミネートされていますが、この小説は、ピリオドなしの7ページ(2,309ワード)に及ぶ文章で始まっています。
ミレニアル世代とZ世代は、テキストメッセージにピリオドを入れるのは信じられないほどかっこ悪いので、何が何でも使わないようにしており、それが原因で句読点ぬきの英文が増えているとも言われています。日本語でも「マルハラ」などという言葉が出てきましたね。句読点がハラスメントにつながるなんて、なんとも驚くべきことです。
アメリカには「National Punctuation Day(仮訳:全国句読点の日。毎年9月24日)」という、句読点の正しい使い方を促進するための祝日があります。
2004年にジェフ・ルービン(Jeff Rubin)によってこの句読点の日が設立された当時、携帯電話にパラダイムシフトを起こしたスマートフォンはまだ登場していませんでした(初代iPhoneが発表されたのは2007年1月)が、その後のスマートフォンの普及とともに世界は目覚ましい勢いで進化してきました。スマートフォンを中心としたテクノロジーの普及によって顕著な影響を受けたもののひとつが、言語です。シャーロック・ホームズの生みの親であるアーサー・コナン・ドイル卿の平易に見える散文でさえ、今では典雅な文体のように感じられます。
今や、ほとんどの人がスペルチェックを自動修正ツールに頼っており、句読点に関して言えば、世界中の人々が自分の力では正しく使いこなせなくなっています。大多数の人は句読点に無頓着なのです。
2001年に設立されたApostrophe Protection Society(仮訳:アポストロフィ保護協会)は、残念なことに2019年11月に活動休止となりました。この時、97歳だった創設者のJohn Richards(ジョン・リチャーズ)は、「無知と怠惰の勝利だ」と述べました(同協会はその後2021年に、Bob McCalden(ボブ・マッカーデン)により再設立されています)。
句読点の重要性を疑う余地はありません。より良い文章を書くためは、句読点のルールを理解しておくことが大切です。句読点の誤りを修正し、文章全体の質を高めるためにAI搭載の文法チェックツールなども使用できますが、下に句読点の基本的なルールをご紹介します。
句読点の使い方
1.同じ種類の句読点を配する
主節をカンマ(,)やダッシュ(-)でつなぐ場合、最初と最後に同じものを挿入します。さらに、リストの中の1つの項目だけを区別するためにセミコロン(;)を使うことはできません。
誤:The teenagers, students from Mrs. Mathew’s history class-went to the museum.(カンマとダッシュの混在)
正:The teenagers, students from Mrs. Mathew’s history class, went to the museum.(カンマの利用)
正:The teenagers-students from Mrs. Mathew’s history class-went on a field trip to the museum. (ダッシュの利用)
誤:Jessica has lived in Dallas, Texas, Seattle, Washington; and Stamford, Connecticut.(都市名と州名がすべてカンマでつながっている)
正:Jessica has lived in Dallas, Texas; Seattle, Washington; and Stamford, Connecticut. (セミコロンの挿入)
2.コロン(:)は文節の末尾に付ける
コロンは、主節の最後に使用し、文がすでに完結している場合に、リストや(詳細)説明、再述を加えるために使用することができます。コロンでつなげる前後の文章の内容は同等(イコール)になります。
リスト:I have three sisters: Grace, Meredith, and Amelia.
説明:I have decided not to move to Los Angeles: I have been offered a better job in Michigan.
再述:Thinking back, Derek wasn’t sure who started yesterday’s fight: he couldn’t decide whether it was his or his friend Mark’s fault.
3.セミコロン(;)は接続詞のように前後の文章をつなぐ
セミコロンは、接続詞の代わりに複文の中で関連する2つの独立節をつなぐのに使われます。前後の文をつなぐという役割はコロンに似ていますが、コロンが同等の内容的をつなぐのに対し、セミコロンは時間的あるいは内容的な流れをつなぎます。
例文
従属接続詞でつなぐ:Nathan answered the question abruptly because he was busy.
セミコロンでつなぐ:Nathan answered the question abruptly; he was busy.
句読点の重要性は、「Correct punctuation saves lives(仮訳:句読点を正しく使いこなすことで救われる)」との言葉にも表れていると言えるでしょう。
ファンタジー小説を原作としたテレビドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ(原題:Game of Thrones、略称GOT)』の登場人物であるスタニス・バラシオンや、『25年目のキス(原題:Never Been Kissed)』でドリュー・バリモアが扮した文法に取り憑かれた主人公ジョジー・ゲラーのセリフ、または英文学教授でもあり『指輪物語(原題: The Lord of the Rings)』の中でいくつかの人工言語を作成したトールキンの文章などを見聞きしたり読んだりすることで、句読点を学び、文章における句読点の重要性を理解することもできます。
とはいえ、「言うは易く行うは難し」で、句読点と対峙する決意ができたとしても、学習は時間を要するものです。そして、覚悟と時間の両方があったとしても、句読点の使い方を習得することは簡単なことではありません。
幸いなことに、今ではさまざまなライティング・アシスタントツールがあるので、それらのオンライン・ツールを活用することをお勧めします。
スマートフォンでのメールやSNSでのテキストメッセージによる連絡がコミュニケーションの主体となっている若者世代は、今後もいっそう型破りな言葉の使い方をして、普段の言語コミュニケーションにおける句読点の使い方は一層乱雑になるかもしれません。しかし、正式な文章や学術論文を書く場合は、句読点の正しい使い方を習得しておくことが不可欠です。特に、一流の出版物や学術雑誌への掲載を目指すのであれば、内容もさることながら卓越した文章で書くことが必要になります。ジーテ・タイルは、ピリオドを付けずに7ページのプロローグを書いたことで、マン・ブッカー賞にノミネートされ賞賛されましたが、学術文書では歓迎されないと思いますので(!)、ぜひ句読点の使い方をマスターしてください。
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エナゴ学術英語アカデミーには「句読点のルール」に関する記事を掲載していますので、そちらも参考にしてみてください。