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参照文献としてふさわしい出版物は?

出版物の多くは、ジャーナルを含む専門書と、一般読者向けに書かれた一般書に二分されます。たとえ有名な研究者が著者になっているものでも、論文で一般書を参照するのは避けたいものです。とくに、一般読者向けの雑誌に研究結果が掲載されているような場合は、十中八九、原著論文がジャーナルで発表されているはずですので、そちらを参照してください。原書が見つからない場合は、著者に問い合わせるのもよいでしょう。グーグルなどのサーチエンジンや所属機関のウェブサイトを通して調べると、案外と簡単にメールアドレスが見つかるはずです。
さて、それでは専門書ならば何でもよいのでしょうか?
解説書やレビュー論文は、原著をより深く理解するうえでとても便利な資料です。その出版には、出版社も細心の注意を払って著名な研究者を抜擢することが多いので、その内容も客観的で信頼性の高いものが期待できます。また同様に、巻頭言や編集後記を任せられる人たちも、その分野の識者だと考えてよいでしょう。しかし、解説書やレビュー論文を書いている人の解釈がすべて正しいわけではなく、支持する学説や理論によっては読み方も変わります。レビュー論文が自分と同じ考えを提示している場合は、その文を引用するのもよいでしょう。ただし、研究の方法や結果について引用する場合は、原著を確認し、原著を参照しましょう。
「技術注記(Technical NotesまたはTechnical Reports)」と書かれた出版物は、現行の研究の最新報告を意味しますが、出版にかかる時間を考えると、数カ月経ったものと思っていいでしょう。内容に興味を持った場合には、著者に直接問い合わせることをお勧めします。新たな発見について教えてもらい、自分の論文で参照してもよいとの許可をもらったら、 「personal conversation(私信)」という形で引用することが可能です。
技術注記に比べて「症例報告(Case Reports)」や「症例研究(Case Studies)」と呼ばれる報告は、より完結した臨床所見を意味し、研究の事実を報告したものとみなされます。そのデータを自分のデータや論点を支持する資料として取り入れることはできます。しかし、症例報告を書いた研究者による研究結果の分析や見解は、後日、論文の形式で出版されることが多く、同じデータを見てもあなたと同じ見解に結びつくとは限りません。したがって、思い込みで「私と同じ考えだ」などと書かないように気をつけましょう。

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