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研究インテグリティの維持における査読の重要性

研究者A:「有名な〇〇学術ジャーナルに論文を投稿したのを覚えてる?あれ、投稿して1年経つんですけど。」
研究者B:「え、ジャーナルから連絡ないの?編集者か編集アシスタントから何の連絡もなし?」
研究者A:「まだ何も。サイト上ではまだ査読者が割り当てられていないと表示されてるだけ。査読者を見つけるの、どんだけ難しいんだろうね?査読者の割り当てに1年もかかるなんて!」

学術論文を書かないなら研究者として失格とも言われる「出版か死か(Publish or Perish)」のプレッシャーにさらされている今日の科学研究の状況下で、研究発表システムに対する失望や落胆、怒りを感じることは最近になって始まったことではありません。実際にはあまり知られてはいませんが、出版システムに対する研究者の不満の矢面に立たされて、最も批判されているのは査読者です。確かに、研究者が自分達の研究プロジェクトに最大限責任を負うわけですが、学術研究は査読者の見識によって大きく改善されることも事実です。

査読は知識創出システムの中の中核として組み込まれており、質の高い学術研究を確立するためのひとつの手段として見なされています。査読の決定的な重要性にもかかわらず、このことはほとんど理解されていない上、研究バイアスと非難されることすらあります。

この記事では、査読プロセスを理解する上でのギャップに焦点を当て、査読の機能と質を強調することで、査読の社会的影響における深い意味を見直してみます。

研究インテグリティ(研究公正)を維持する査読の存在

査読とは、出版された学術的記録(学術論文)の公正さを維持することを約束するものであり、学術研究の質を保証、評価するためには馴染みのある手段です。研究開発において、重要な役割を果たしており、研究出版システムの意味を明確にする上でも中心的な役割を担っていると認識されています。さらに、査読付学術雑誌(ジャーナル)に論文を出版することは、研究者のキャリアにとって不可欠であり、研究者らの学術的な評判を高め、研究の正当性を与えるものでもあります。

そうした特性にもかかわらず、査読プロセスは日常的に批判にさらされ、さまざまな媒体やSNSでは、査読の発展が不十分であるとか、規模や範囲によって矛盾や重複が見られたり、決定的な結論が出ない結果を生み出すことが多々あると糾弾されています。その上、査読は、学術文献に関連するものと同じようなバイアス(偏見)の問題も抱えています。査読プロセスにおいて本当に危険なことは、査読の価値体系と実務に対する理解の不足にあるのです。

不十分な情報に基づく一般化と、さまざまな見解の間の緊張により、査読プロセスは改革の余地がほとんどない絶対的基準と見なされていますが、一方で、査読は非常に多様で多面的なプロセスでもあります。

査読プロセスにおける査読者の役割

査読者は、その分野の専門家ですが、著者とは直接的な関係がありません。こうした専門家が投稿論文を読んで評価し、フィードバックを作成し、それを編集者が著者に提供します。
査読者は以下のような作業を行います。

  • 査読プロセスの一部を担うことで、該当の研究が科学的なプロセスの基準を満たしているかの確認を行う
  • 無効な研究を特定することにより、学術ジャーナルの品質を維持する
  • 学術コミュニティに対する義務を果たし、研究において自らの専門知識を活かす
  • 盗用・剽窃、研究不正を特定することによって、非論理的な行為を防ぐ

査読プロセスは、論文の編集および査読者のコメントに対する返答を何度も処理しなければならない研究者にとって困難なだけでなく、査読者にとっても負担となるものです。ほとんどの場合、査読者が投稿論文の査読に費やした時間に対する報酬は支払われず、通常の業務の合間をぬって査読を行うことが求められるのです。

さらに研究者は、利他的に投稿原稿を審査(レビュー)することが期待されます。これに対しては、学術ジャーナルへの無料アクセス付与や、ジャーナルに対する貢献が認められたり、自身が論文をジャーナルに出版する必要がある際にサポートが得られたりするなど、金銭以外の報奨が与えられることもあります。

査読プロセスが抱える数々の問題

投稿論文の多さ
日々、多数の論文が投稿されるので、学術ジャーナルは新たな査読者を求めて奮闘しています。こうした事態は、既存の査読者にプレッシャーを与え、査読プロセスを抗しがたい行程と捉えるようになってしまいます。特に、査読者の判断に一貫性が持てなくなる可能性は問題です。

査読者の役割の不明確さ
査読者の役割は、審判なのか、審査員なのか、もしくは独立した評価者なのか、定められていないことが多々あります。投稿論文の評価には包括的な視点が必要であり、文体のスタイル的側面や斬新さの評定などを含め、さまざまな要因に注意を払う必要があるため、査読には非常に難しい技能と深慮が必要とされます。

査読に対する報奨/インセンティブの不足
査読者が研究に対する厳密な試験あるいは追試(replication)の実施を後押しするような報酬/インセンティブが不足しています。その上、査読者は、推奨事項の提供、研究における倫理的懸念への対応、投稿論文の内容の評価、投稿論文についての総評コメントの作成といった、多種多様なタスクを実行することが期待されています。

オープン査読(公開査読)の問題
著者と査読者がお互いに誰なのか分かっている状態での査読、「オープン査読」または「公開査読」に関する重要な問題のひとつに、盲検法(ブラインディング)を優先すべきかどうかという議論がありますが。査読者を明らかにすることは、若手研究者にとって悪影響を及ぼす可能性や、経験のある研究者の感情を損なう可能性があることはよく知られています。

研究インテグリティ(研究公正)の維持
査読とは双方向のプロセスであり、著者、編集者、査読者の全員がその経験から学び、また新しいアイデアを開発するために何かを得ることができる立場にいます。したがって、研究評価の主な形式としての査読を深く理解しておくことが重要です。査読の行程は、査読プロセスにおける信頼を育み、プロセスの透明性を確保することによって、前述の査読の問題に対処することから始めることができるのです。

学術出版に関する話題を配信している「The Scholarly Kitchen」での議論によれば、研究インテグリティには、透明性を有する、厳格かつ倫理的な方法で研究を実施し、査読を行い、拡散することが含まれるとしています。査読に特化した「Peer Review Week(ピアレビュー・ウィーク)2022」は、学術研究コミュニティからの注目を切実に必要とする問題を提起するべく、「研究インテグリティ:研究における信頼性の構築と支援」をテーマに開催されました。

研究インテグリティを維持するためには、査読者と著者、編集アシスタント、編集者、そして研究助成金提供者、出版社、組織・団体との間に共生関係を築くことが必要です。すべての査読が倫理的かつバイアスの影響を受けることなく実施されたものであると保証するだけでなく、査読者の作業が認知されれば、査読プロセスにおける信頼を育み、査読者が研究に最善を尽くすことにつながるでしょう。

論文の投稿後に待っている時間はとても長く感じるものですが、実際には査読が必要な論文が多すぎて、査読者の作業が追いついていない状況なのです。

参考情報

エナゴでは、Peer Review Week 2022のテーマに合わせて、研究インテグリティ(研究公正)を推進する査読に関するebook「Peer Review Fostering Research Integrity – Exploring the AI Routes to Reliable Review」やブログ、インフォグラフィックを紹介するページを解説しています。詳細はこちらをご覧ください。

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