Nature Index Japan 2018から見る日本の現状

2018年3月21日、Nature Index Japan 2018が発表されました。Nature Index は、シュプリンガー・ネイチャー社が、一年間に研究成果を質の高い科学論文に発表した著者の所属機関/国別にまとめて一覧として提供しているもので、研究成果や共同研究、他国との連携を検索・比較することができるツールです。その中でもNature Index Japanは、日本の研究機関(大学、国立研究所や企業研究所)の研究者が自然科学系学術ジャーナルに掲載した論文数をもとにランキングしています。2017年の同発表では、日本の科学研究発表の水準が低下していると指摘され、波紋を呼びました。2018年の実績は、どのような状況になったのでしょう。
■ Nature Index: 世界の研究機関による研究成果を示す指標
改めてNature Indexとは、どのような指標かをまとめておきます。これは、直近12カ月間に、研究者によって厳選された自然科学系学術ジャーナル68誌に世界8500以上の大学や研究機関によって掲載された原著論文を収録し、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で無料公開しているインデックスです。シュプリンガー・ネイチャー社によれば、この68誌だけで、自然科学系学術ジャーナルの引用総件数の30%近くになると推定されています。これらのジャーナルにおける国や研究機関ごとの出版状況(出版数)、論文に対する研究機関の貢献度、共同研究の共著率などを分野ごとに相対比較しているので、論文の社会的インパクトや世界的な研究の傾向までみることができます。Nature Indexには、著者の名前が挙げられている数をカウントするArticle count(AC)、論文に対する各共著者の相対的貢献度を考慮したFractional Count(FC)、天文学および宇宙物理学の比重を調整するためFCに対する重み付けを行うWeighted Fractional Count(WFC)の3種類のカウントが表示されています。昨年10月に公開されたNature Index(2017)の報告で日本は5位でしたが、ここ10年間は他の科学先進国に後れを取っているとnatureは警告を発しています。
■ 低迷する日本の科学研究
昨年のNature Index の結果は、日本の科学界の危機感をつのらせるものでした。高品質な自然科学系ジャーナルに掲載された日本の科学成果発表は、2012年から2016年の5年間で19.6%減少。Nature Indexに収録されている高品質な科学論文に占める日本からの論文の割合は、2012年から2016年にかけて6%下落していました。背景には中国の急成長があり、米国・英国などの科学先進国が占める相対的な割合も低下していたとはいえ、日本の論文発表数は明らかに減少しており、全体的に見ても日本の研究が低下傾向にあることがはっきりと現れていたのです。
そして、今回発表されたNature Index Japan 2018では、日本の成果発表が引き続き減少傾向にあることが判明しました。高品質な論文総数に対する日本の寄与の低下に歯止めがかかっていない状況です。日本の科学成果発表は、2016年から2017年の1年間に、前出の19.6%からさらに3.7%減少。Nature Indexに収録されている高品質な科学論文に占める日本からの論文の割合は、2012年の9.2%から2017年の8.6%に減少していました。
■ 日本が抱える課題
日本の研究力が低下傾向にあることには、複数の理由が存在しています。その一つに、日本の科学研究開発費の支出額が伸びていないことが挙げられます。日本の研究開発費総額は、2007年度の19兆円をピークに増減はあるものの、近年は緩やかな減少となっています。世界的には高いレベルにあるとはいえ、米国の研究開発費には到底およばず、大幅な支出拡大を図る中国との差も広がる一方です。また、政府が大学職員の給与に充てる補助金を削減したことにより、多くの大学では長期雇用の職位数を減らし、研究者を短期契約で雇用するようになってきたことで、長期的な研究に取り組める環境の確保が難しくなっていました。とはいえ、前向きな動きも出始めています。4月5日、理化学研究所が任期なしの無期雇用研究者を2024年までに現在の1割から4割程度まで増やすと発表しました。若⼿研究者に⻑期間安定して研究に取り組める環境を与え、長期的な基礎研究を支援し、結果として日本の科学研究の底上げにつなげたい考えです。この動きが、他の研究機関や大学につながることを期待します。
Nature Index とNature Index Japanから見える状況は楽観できるものではありません。近年、日本人研究者のノーベル賞受賞が話題となりましたが、このまま日本の科学研究の失速が続くと、将来のノーベル賞受賞者候補に日本人研究者の名前が入ってくるのは難しいかもしれません。世界トップレベルの研究国としての地位を守るためには、研究開発費、研究者雇用と人材育成をどのように改善すべきか――重い課題です。

返信を残す

あなたのメールアドレスは公開されません。