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限定修飾語句と非限定修飾語句

一般に、修飾語句には「限定」と「非限定」という二種類があり、両者間の違いを理解することは英語の基礎知識として不可欠です。
その違いとは、限定修飾語句が修飾される語句の意味に影響を与えるのに対し、非限定修飾語句はその意味に影響を与えないということです。
例えば修飾される語句が名詞であれば、非限定修飾語句はその名詞が指す対象について情報を加えることはありますが、修飾によってその対象自体を変えることはありません。
文法的には、限定修飾語句と非限定修飾語句はコンマの使用によって区別されます。つまり、非限定修飾語句の場合には、修飾語句と修飾される語句との間にコンマが入りますが、限定修飾語句の場合はコンマが入りません。
例文を見てみましょう。
(1) My dog, Cleo, is sleeping.
(1′) My dog Cleo is sleeping.
これらの文における「Cleo」というのは書き手が飼っている犬の名前であり、文法的には名詞「dog」を修飾する同格語となっています。そこで、コンマの使い方によって(1)と(1′)では「Cleo」はそれぞれ非限定修飾語そして限定修飾語として用いられています。


この文法上の違いによって、書き手が飼っている犬についてそれぞれ一匹しかいないことと二匹以上いることが表されます。
この点を理解するために「Cleo」の修飾語としての機能を見てみましょう。
(1)では、「Cleo」はコンマに挟まれていることによって「my dog」の意味を限定せず、それが指す対象について情報を追加する役割のみを果たしています。この状況は「my dog」に可能な解釈が一つしかない場合にのみ合理的なのです。
一方、(1′)では、「Cleo」が「my dog」の意味を限定することができるという含意によって、「my dog」の言及対象としては少なくとも二匹の犬が存在するということが示されます。
以下の例文も(1)、(1′)と同様の状況にあります。
(2) The method described above, employing dual probes, yields measurements with
(2) significantly greater precision than the conventional method.
(2′) The method described above employing dual probes yields measurements with
(2′) significantly greater precision than the conventional method.
(2)は、上述される「method」が一つしかない場合に適切です。その場合は、「employing dual probes」という修飾句は「method described above」の意味を限定せずに、それが指す唯一の測定法について追加の情報を与えます。
一方、(2′)では、以前に記述された測定法が二つ以上あり、「employing dual probes」が「method described above」の意味を限定することによって唯一の測定法を特定する、という状況になっています。

詳しくはグレン・パケット:『科学論文の英語用法百科〈第2編〉冠詞用法』(京都大学学術出版会,2016)の第14章をご参照下さい。

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