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大型研究計画「マスタープラン2020」

先日、科学技術基本法の改正案の議論についてお伝えしましたが、2020年3月10日に閣議決定されました(追記:6月1日には衆院で可決、参議院での審議に進んでいる )。今国会での成立を目指し、この改正により、これまで自然科学に絞られていた研究支援の対象に、法学などの人文・社会科学も含まれることとなります。1995年に成立した同基本法の改正は今回が初めてで、名称は「科学技術・イノベーション基本法」と改められました。人工知能(AI)やゲノム編集などの新たな技術が急速に発展する中、倫理的議論や法整備の必要性が高まっていることに対応したものです。そして、この基本法とは別に、もうひとつ研究者にとって重要な「第24期学術の大型研究計画に関するマスタープラン(マスタープラン2020)」が1月末に発表されているので、今回はこちらのプランを紹介します。

マスタープラン2020

2020年1月30日付けで公表された「マスタープラン2020 」は、日本学術会議が日本として重点を置くべき大型研究プロジェクトをまとめたものです。日本学術会議は2010年に大型研究計画マスタープラン2010を策定、2011年の小改訂以降、概ね3年ごとに策定しています。日本学術会議が、学術全般を展望・体系化し、各学術分野が必要とする大型研究計画を網羅して実施すべき計画を選択したマスタープランを策定し、このマスタープランをもとに文部科学省がロードマップを策定。優先度の高い研究計画を選定し、概算要求を作成します。学術大型研究計画とは、予算総額が数十億円規模(超えるものもあり)、実施期間は5~10年、あるいはそれ以上の長期、学術分野のビジョン・体系に立脚した大型施設計画もしくは大規模研究計画に該当するものです。規模が大きいだけに、このような計画に関わる研究機関や研究者にとってマスタープランに策定されるか否かの影響は大きいことでしょう。

選定結果

例えば、過去のマスタープランで選定された計画 には、大型電波望遠鏡「アルマ」による国際共同利用研究の推進(国立天文台)やスーパーカミオカンデによるニュートリノ研究の推進(東京大学宇宙線研究所)のように大型施設の建設を伴うものや、大学・研究機関が活用する新しいステージに向けた学術情報ネットサーク(SINET)整備(国立情報学研究所)などがあります。学術大型研究計画は、新規提案及びマスタープラン2017に掲載され、今回改訂された提案である区分Ⅰと、過去のマスタープラン(マスタープラン2017及びそれ以前)に掲載され現在実施中・進行中の計画である区分Ⅱの2つのグループに分けられます。マスタープラン2020では、区分Ⅰの146件と区分Ⅱの15件、合わせて161件の学術大型研究計画が選定されています。さらに区分Ⅰの中から16件の新規計画と15件の継続計画の計31件が、優先度が高く早急な予算化が必要とされる重点大型研究計画として選ばれました。とはいえ、31件のうちの15件の継続計画とは「マスタープラン2017」から継続して採用されているものです。半数近くをマスタープラン2017に掲載され今回改訂された提案が占めていることから、新しい研究計画が採用される余地が減っているのではとの懸念もあります。

マスタープラン2020策定に関わる利益相反排除の方針

マスタープランは、各学術部分野が必要とする大型研究計画を網羅し、日本における大型研究計画のあり方に指針を与えることを目的としたもので、予算獲得のために作られたものではありません。しかし、科学研究費が抑制され、長期にわたる研究資金の確保が厳しくなっている状況下、文部科学省がマスタープランを参考に計画の優先度を整理し、大規模学術フロンティア促進事業等を選定していることを鑑みれば、マスタープランが日本の科学研究に及ぼす影響は大きいと言えます。大型の学術研究は、長期にわたって多額の経費が必要なため、社会・国民からの理解と支持を得つつ、長期的な展望のもとで戦略的に推進される必要があります。そのためにも、透明性の高い研究評価および、日本における戦略的、計画的な大型研究計画の推進においてマスタープランが活用されることが重要なのです。

このような重要性を持つマスタープランですので、選定の際に公平性を保つことは大切です。日本学術会議の委員がプランの策定に関与する審査支援者と研究者という相反する立場に立たされることを回避すべく、マスタープラン2020策定にあたっては、日本学術会議声明「科学者の行動規範について―改訂版―」 (平成 25年1月25日)の利益相反の条項を踏まえた利益相反排除のための方針が発表されました。この新たな方針に準じ、公平で公正な策定・評価が行われることが求められています。

マスタープラン2020で選定された161件の学術大型研究計画の分野は、生物学、医学、物理学、農学、食料科学、薬学、地球惑星科学、情報学、など多岐にわたります。選定された大型研究、特に重点大型研究計画は優先度が高く、可及的速やかに予算化され、推進されるべきものと位置づけられたものです。マスタープラン2020が、多様な学術の発展、日本の科学力の向上に貢献されることが期待されます。

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