学術誌の購読費高騰は他人事?

より多くの先行文献により簡単にアクセスできるということは、研究者としての知識を深め、学術界に貢献し、そして社会にとって有意義な研究を行なうためには不可欠です。しかし、多くの研究者が大学や企業などの研究機関に所属している昨今では、 学術誌 の購読費高騰は、付属図書館や庶務課の問題だとタカをくくってはいませんでしょうか?
現在、多くの英文科学雑誌の出版は、Elsevierなどの大手出版社やJSTORといった機関(有料の電子図書館)によって独占されています。そのため雑誌の定期購読の費用は高騰し続けており、あのハーバード大学ですら「今までどおりに学会誌を定期購読し続けることはできない」と音を上げたほどです。
『Library Journal』誌の調査によれば、分野別に価格を見てみると、とくに化学が高く、続いて物理学、エンジニアリング、生物学、天文学が高くなっています。また値上げ率を見てみると、ほとんどすべての分野で、2013年から2014年にかけて6〜7%の値上げが起きています。
このままでは「欲しい先行研究論文が手に入らない」というのは、発展途上国や小さな研究機関だけの問題ではなくなっていくでしょう。
日本でも2014年4月、名古屋大学が約2200誌を読むことができる大手出版社の「パッケージ契約」を解約し、必要とする研究者が必要とするジャーナルだけを購入するように方向転換したことが報じられました。「購入予算は2007年に3億円を超え、年平均で約6%ずつ上昇。昨年(2013年)、今後の費用を試算したところ、5年間で2.5億円も上昇する可能性があることが分かった」と伝えられています。
情報の流通と研究の質はいつも密接に関係しています。最新かつ正確な情報を世界へ発信する学術誌として、論文の信憑性や正確性をチェックし、これまでの出版物を保管管理するために費用がかかることはやむをえないことかもしれません。しかし新しい知識を発信する門番たる出版社が、利益中心の企業と化してしまった今、これはお金の問題だけではなく、学問そのものの存在をかけた戦いだといっても過言ではないでしょう。
では、一研究者として現状を打破するために、いったい何をできるのでしょうか?
ハーバード大学など大きな研究機関では、独自のオープンアクセス出版機能を設置し、その利用を斡旋しています。またarXivなど、オープンアクセスリポジトリを専業とした機関も評価を得てきています。日本国内では、京都大学北海道大学、千葉大学、早稲田大学などが独自のリポジトリ(電子書庫)を構築して、論文や報告書などの学術資料の共有化を試みています。
また日本でも学術雑誌のオープンアクセス化が進んでおり、たとえば国立情報学研究所のウェブサイトは、国内の「オープンアクセス刊行物リスト」を紹介しています。
このような動きの中、今までは二流に見られがちだったオープンアクセス誌も、数学者Tim Gowers (ケンブリッジ大学)や言語学者Tom Givón (カリフォルニア大学サンタバーバラ校)など各分野の第一人者が賛同を示したことによって関心が高まり、Impact Factorも上昇し始めています。
したがって今後は投稿先のジャーナルを選ぶ際には、オープンアクセス雑誌への投稿も考えていいでしょう。
将来的には、研究機関と図書館が共同し、出版社を介さず、正確な情報をより早くより安価に発信する方法も考慮されるべきでしょう。しかしそれまでの間、研究者の1人ひとりが過去のImpact Factorに振り回されることなく、本当の意味で多くの研究者に貢献できる発表方法をつねに考慮する必要があります。激しく変化するオープンアクセスリポジトリの動きに逐一注目をして、この動きに乗り遅れないよう気をつけてください。

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