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ジャーナル編集者が査読コメントを改変している?!

研究者にとって自分の論文を発表することは、どのような論文であっても一大事です。原稿を準備するにも多くの時間と労力がかかりますし、投稿した後も査読に通るかどうか、結果を待つ間は気が休まらないことでしょう。そして査読者からコメントが来れば、注意深くすべてのコメントを読み込み、それらに応えるべく最善を尽くすことが求められます。

査読コメントは概ね原稿を良くするために有用かつ建設的な指摘であるはずです。中にはあまり役立たないコメントがあるかもしれませんが、前向きなものでしょう。とは言え、著者に対して失礼な、不適切な査読コメントがないとは言い切れず、研究者の自信とモチベーションを削ぎ、キャリアにとって大きなダメージを与えるようなコメントを見かけたこともあります。

不適切な査読コメントとは?

不適切な査読コメントとはどのようなもので、どのぐらいの頻度で見られるものなのでしょうか。生物・ 医学分野の査読付きオープンアクセス誌のPeerJに、非専門的な査読が研究者を過小評価し、本来与えられるべきものとは異なる評価をすることで、否定的な影響を及ぼす可能性があるとの論文が掲載されました。これは、46カ国、1,106名の14のSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の科学者から得られた匿名回答を分析した調査結果です。

この調査では、科学者の半数以上が、少なくとも1回以上、多くは複数回、「非専門的な」査読コメントを受け取ったことがあると示されています。2万5千名が登録しているフェイスブックのグループでも同様の問題が指摘されています。

非専門的な査読コメントとしては、建設的ではない、個人攻撃を含む、あるいは厳しすぎるコメントなどが挙げられます。一例ですが、スペインの研究者は、査読者から「読む気すら起きない」というコメントを受け取ったそうです。英語が良くなかったとしても、かなり辛辣なコメントです。

学術雑誌(ジャーナル)の編集者が査読コメントを改変

オーストラリアのメルボルン大学で研究者の意思決定に関するメタリサーチ(MetaResearch)を研究しているFiona Fidler教授は、査読コメントが著者に送り返される前に、彼女の評価が書き換えられていたこと、しかも大きく変えられていたことすらあったことを発見して、怒りを覚えたそうです。例えば、「(著者の見解に)大きく賛同します(very sympathetic)」が「大抵の部分には賛同します(generally sympathetic)」に、「良い例です」が「この部分は不十分です」というような変更です。もっと悪い例としては、ジャーナル Educational and Psychological Measurementへの彼女の査読報告の結果部分、それは該当の投稿論文を若干の修正後に採用(アクセプト)するようにとの提言でしたが、編集者の判断によって却下(リジェクト)となったと著者に伝えられていたのです。

彼女はジャーナルの編集委員に説明を求めた後、却下された該当論文の著者であるオランダ、フローニンゲン大学の心理学者Rink Hoekstra助教と連絡を取り、このような事態がどれほど起こっているのかを突き止めようとしました。

編集者対象の調査結果

彼らは、生態学、経済学、医学、物理学、および心理学において影響力の大きなジャーナルの322名の編集者を対象に、どのような状況下であれば査読報告書の改変が正当だと考えるかに焦点を当てた調査を行い、調査結果をオープンサイエンスフレームワーク(OSF)に公開し、続いてオープンアクセス(OA)ジャーナルeLifeに投稿しています(2020年10月28日掲載のScience記事では査読中となっている)。この結果によると、回答者の91%が、査読報告を改変する状況を少なくともひとつ特定していました。さらに80%以上が、不快な言葉が使われていたり、著者個人に対する不適切なコメントが書かれていたりするときには改変を行うと回答しており、Fidler教授だけでなく研究コミュニティ全体に衝撃を与えるものでした。

ジャーナル編集者は査読者のコメントを改変すべきか

編集者がどのような査読報告書であれば許容するか、あるいはしないかについて明確な指標を提供しているジャーナルは少ないのが現状です。ジャーナルがガイドを作成すべきと考える人もいれば、査読者が自分達のコメントが編集されることをとの意見もあります。編集者が善意から改変を行うとしても、編集にあたって明確な方針が定められていれば透明性を確保し、査読プロセスにおけるバイアスを防ぐ助けとなることでしょう。多くのジャーナルは、あらゆる査読と編集上の決定事項を査読者と共有することで、査読者が自分達のコメントがどのように著者に伝えられるかを確認できるようにするといった予防対策を講じています。しかし、この調査では約20%の編集者が、ジャーナルが査読報告書あるいは決定通知を査読者に提出していないと報告していました。

査読報告書のコメントに大きな差がある場合、編集者は1名あるいは2名の査読者に査読結果が多数の意見を反映したものになっているかの確認を依頼することもあるようです。また、編集者がより経験豊かな査読者や、出版経験の多い査読者、あるいはより長期的な関係のある査読者の意見に重きをおいた判断とすることもあるでしょう。

もちろん編集者も該当分野の専門家なので、編集者自身の経験を生かして賛否両論に応じた判断をするかもしれません。ここで覚えておくべきことは、投稿論文をアクセプトするかリジェクトするかの最終判断を下すのは、査読者ではなく編集者であるということです。ただし、編集者の行いが監視されることはなく、ほとんどのジャーナルでは編集者に説明責任を付与していません。採択の判断はさまざまな要素を踏まえて決定されるものですので、厳格かつ確固たる判断基準が必要との考えが出ていることにも留意しておくべきでしょう。

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