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論文の被引用率を上げるための工夫とは

公開される学術論文の数は増加する一方で、論文を発表したからと言って安心してはいられません。研究者としての評価は、公開論文の質はもちろん本数、さらに該当論文がどれだけ引用されたかにも左右されるのです。

引用されることによって、その研究成果を発見し、最初に公開した研究者として認知されます。その上で、膨大な数の公開論文の中からどのぐらいの数の研究者があなたの論文を見つけ出し、引用しているかが、学術的貢献度の目安となるのです。論文が引用されることで、後続の研究者に発見したことを伝え、その成果の上に新たな研究を重ねることができるようにし、結果としてあなたの分野における研究を促進するのに役立てるということでもあります。クラリベイト(Clarivate plc)が発表している「高被引用論文著者(Highly Cited Researchers)」リストのような報告は、学術的な競争の励みとなる一方で、学術研究者間の競争をあおるといった側面も持ち合わせていますが、被引用率を高くしたいというのは多くの研究者の希望でしょう。

高被引用論文著者リスト

クラリベイトが毎年公表している「高被引用論文著者リスト」は、同社が提供する世界最大級のオンライン学術データベースWeb of Scienceを使用して分析したものです。Web of Scienceは、科学情報の検索が可能な有力な検索エンジンに掲載されたさまざまな情報を網羅しており、高被引用論文著者リストは、Web of Scienceにおける特定の出版年、特定の分野で発表された全論文のうち、引用された回数が上位1%に入る論文を発表している研究者を選出したものです。このリストに名前が掲載されるということは、大きな影響を与える研究を成し遂げた、研究者として成功を収めたことの証となり、大変名誉なことなのです。

研究者は引用を操作できるのか

しかし、研究者の競争的状況が厳しくなる中で被引用率の重要度が増すにつれ、人為的な操作を行って引用数を増やしていることが示されました。そもそも研究は厳しい競争にさらされています。研究者は、研究助成金を獲得できるチャンスを高めるためにも、研究成果を一流の学術雑誌(ジャーナル)に発表しようと競っています。論文の引用ランクが研究の実績や研究における貢献度の指標のひとつとなっていることは否めません。論文発表数が多く、被引用数が多くなるほど、研究者としてのキャリアを高めることにつながります。かといって操作して引用数を増やすことは認められません。では、どのような研究が「高被引用論文」と認識されるのか、どうすれば操作することなく引用数を引き上げられるのかを見てみましょう。

Google Scholar(グーグル・スカラー)の被引用数

最初に、Google Scholar(グーグル・スカラー)の被引用数を見てみます。研究者または大学によってはWeb of Scienceの利用頻度の方が高いかもしれませんが、Google Scholarも論文検索手段のひとつです。こちらはGoogleが提供する検索サービスで、論文を簡単に検索できる上、掲載されている論文の中には無料で閲覧することができるものもあります。ただし、Google ScholarとWeb of Scienceの検索結果に違いが出ることがある点は覚えておくべきでしょう。例えば、Web of Scienceではほとんど引用されていないとなった論文であっても、Google Scholarでそれなりの引用数が示されることもあるようです。その理由には、Google Scholarには大学院生(修士・博士)の論文、会議議事録(プロシーディング)、研究成果報告書などへの引用も含められているということが挙げられます。これらの文書のほとんどは最終的にWeb of Scienceにも反映されますが、Google Scholarは引用状況をより的確に反映させているとの見方もあります。また、Web of Scienceには収録されない書籍や、書籍の中の一部(章)執筆、より幅広いジャーナルがGoogle Scholarには網羅されており、この傾向は、社会科学と人文科学の分野でより顕著に表れています。

とはいえ、社会科学と人文科学の分野は、出版プロセスが長引くことがよくあるため、Google Scholarといえども引用件数が伸びないこともあります。また、原稿の改訂が何度も行われたり、受領された原稿が出版されるまでに長い時間を要したりすることも、引用数に影響します。

論文の公開・引用状況を俯瞰的に判断する

公開論文の引用数がGoogle Scholarでもあまり増えていないけど…という場合には、次のステップとして同じ年に同じジャーナルに発表された他の論文の引用状況を比較してみましょう。特定の年に発表された論文が、その年の年末までにGoogle Scholarで引用された回数が数回しかない、あるいはそのジャーナルで発表されたほとんどの論文が引用されていないのであれば、自分の論文の被引用数が少ないからと言って悲観する必要はありません。他の研究者の論文発表・引用などと比較しつつ的確に状況を捉えるようにしましょう。

データベースで自分の分野における発表論文数・被引用数を見てみる

Institute for Scientific Information (ISI) が、1960年に学術雑誌に関する最初のサイテーションインデックス Science Citation Index を開始以降、今では先に紹介したWeb of Science、Google Scholar、さらに出版社Elsevierが提供するScopusとさまざまなデータベースの利用が可能になっています。また、研究活動の評価や科学研究の動向を知るための情報源として「Essential Science Indicators(ESI) 」を活用することもお勧めです。ESIには、22の科学分野における高被引用論文(過去10年間に引用された回数の多い論文)やホットペーパー(過去2年間に発表された論文の中から最近2か月に引用された回数の多い論文)といった検索が可能です。

引用数が少なくても高被引用論文となる可能性があることにも注意

クラリベイトは、データベースを分析して高被引用文献(Highly Cited Papers)を選出しています。分野によって引用動向が異なる上、論文発表からの時間が経つほど引用数が多くなる傾向はありますが、引用数が少なくても高被引用論文に選出される可能性はあります。極端な例ですが、ISIがリストしたジャーナルに論文を発表し、2回だけ引用された場合であっても、該当論文が特定の年において最も引用された論文の上位20%に入る可能性はあるということです。3回引用されたら上位10%に入るかもしれません。単純な数では見えないこともあると念頭に置いておくべきでしょう。

専門分野ごとの違い

分野によって研究が進むスピードや論文の発表数も異なります。例えば、コンピュータサイエンスやエンジニアリング、数学の分野では、ISIに掲載されているジャーナルに10年前に発表され、4-5回引用された論文であっても、該当分野で頻繁に引用されている論文の上位50%に、約20回引用されたら上位10%に入っている可能性があります。社会科学の分野だと、さらに引用数が少ないかもしれません。一方で、分子生物学・遺伝学の分野では、10年前に発表されて26回引用された分子生物学・遺伝学の論文が上位50%には入ってはいても、上位10%に入るには116回の引用が必要というように、それぞれの分野で上位に入る引用数はさまざまです。このような分野ごとの違いは、Web of Scienceがどの程度該当分野を包括的に網羅しているかにもよりますが、分野によって引用のされ方に違いがあることも否めません。

どうすれば引用数を増やすことができるか

被引用数を増やすためにできることのひとつは、Web of ScienceまたはGoogle Scholarで引用されている状況を追跡し、誰が何に(どのジャーナルに)発表した際に引用されたのかを確認することです。自分の研究分野のトップジャーナルに発表された論文に引用されているのであれば、より強い印象を残すことができるのでありがたいことです。より多くの研究者や、該当分野で有名な研究者の目に留まることも期待できるでしょう。掲載ジャーナルの質が高く、引用してくれた研究者が有名であれば、結果としてあなたの論文や研究成果に対する評価に影響を与える可能性は高いのです。

ここまでに挙げた点を見直してみて、自分の論文の引用数が少ない理由に思い当たるものがない、納得がいかないという場合には、論文を投稿したジャーナルの質を振り返ってみるべきでしょう。著名なトップジャーナルに掲載したのにまったく引用されないということは一般的にはあり得ません。トップジャーナルに掲載されている論文は、品質で劣る、あるいは認知度がそれほど高くないジャーナルに掲載された論文よりも多く引用されるのが普通です。これが、トップジャーナルほどインパクトファクター(IF)が高くなる理由です。つまり、高インパクトなジャーナルに論文を掲載しているのであれば、それだけで論文が引用される可能性を高めることができるのです。引用数を高めるためには投稿先ジャーナルの選び方も重要です。悩んだときは、自分にあった投稿先を探してくれるサービスや、良質なジャーナルを紹介してくれるツールなども活用してみましょう。


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