クラリベイト・アナリティクス高被引用論文著者2018

研究者にとって、論文を発表することが最も肝心ですが、どれだけ多く引用されるかも気になるところです。発表論文の被引用件数が多いことは、研究者としてその分野における貢献度が高いことを示していると評価できるからです。被引用件数を調べる方法は幾つかありますが、その中のひとつが、クラリベイト・アナリティクスが発表するランキングです。

世界的な情報サービス企業であるクラリベイト・アナリティクス は、2018年11月27日に『Highly Cited Researchers 2018』 を発表しました。これは、クラリベイト・アナリティクスが運営する論文検索サービスであるWeb of Scienceに収録された33,000以上の学術誌(ジャーナル)に基づき、2006年から2016年に発表された論文について、発表から1年間の被引用件数を分析したものです。自然科学および社会科学の21分野における論文の被引用件数が世界の上位1%に該当するものを高被引用論文と定義し、それらの論文著者をリストアップしています。今回からの新しい試みとして、一人の研究者が複数分野で論文を発表している場合の合計被引用件数を示す「クロスフィールドカテゴリー」が導入されました。

国別結果-高被引用論文著者が多いのはどこの国か

約6000名の研究者がHighly Cited Researchers in 2018リストに掲載され、そのうち約4000名が分野別の高被引用論文著者、約2000名がクロスフィールドの高被引用論文著者となっています。リストアップされたのは、まさに影響力の大きな研究者および研究機関と言えるでしょう。

2018年版の高被引用論文著者が所属する大学・研究機関を国別に見ると、60カ国・地域に分散しているものの、上位10カ国に82.7%、さらに上位5カ国に70.2%が固まっており、影響力ある研究者が一部の国に集中していることが見てとれます。上位5カ国の著者選出数とリスト合計人数に対する割合を見ると、米国2639名(43.4%)、英国546名(9.0%)、中国482名(7.9%)、ドイツ356名(5.9%)、オーストラリア245名(4.0%)となっています。2014年と2018年の分析を比べて、リストアップされた人数に大きな変動があった国を上から見ると次のとおりです(2014年と合わせるために分野別の人数だけを対象として比較したもの)。シンガポールが17名から40名へ(135.3%増)、中国が122名から276名へ(126.2%増)、オーストラリアが80名から170名(112.5%)と倍増以上の伸びを示していました。日本は、これらの国と対照的に98名から64名へ34.7%の大幅な減少でした。本レポートから原因を探ることはできませんが、大いに憂慮される事態であることは事実でしょう。

また、新設されたクロスフィールドカテゴリーの選出著者数は予想を上回っていました。リストアップされたその国の高被引用論文著者の総数に対する割合が極端に高かった国は、スウェーデン(53.2%)、オーストリア(52.5%)、シンガポール(47.4%)、デンマーク(47.2%)、中国(42.7%)、韓国(42.1%)の6カ国。どのような研究分野に重点を置くかは国や地域によって異なりますが、クロスフィールドカテゴリーの割合が高いこれらの国には、研究に関する策略やスタイルに何らかの要因があるのかもしれません。

上位の大学・研究機関

次に、高被引用論文著者が所属する大学・研究機関を見てみます。上位10機関は次のとおりで、米国の6機関を筆頭に英国2機関、中国、ドイツ各1機関となっています。

1. ハーバード大学(米国) 186名
2. アメリカ国立衛生研究所(米国) 148名
3. スタンフォード大学(米国) 100名
4. 中国科学院(中国) 99名
5. マックス・プランク学術振興協会(ドイツ) 64名
6. カリフォルニア大学バークレー校(米国) 59名
7. オックスフォード大学(英国) 59名
8. ケンブリッジ大学(英国) 53名
9. ワシントン大学セントルイス校(米国) 51名
10. カリフォルニア大学ロサンゼルス校(米国) 47名

11位以下も米国が多いのですが、米国以外を拾うとキング・アブドラアジズ大学(サウジアラビア、43名)、ロンドン大学(英国、41名)、南洋理工大学(シンガポール、40名)、エジンバラ大学(英国、36名)、エラスムス・ロッテルダム大学(オランダ、34名)、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ、33名)、メルボルン大学(オーストラリア、33名)などとなっています。上位50までの大学・機関名がリストアップされていますが、ここでも残念ながら日本は登場しません。

Global Highly Cited Researchers 2018から見えること

本レポートから見えてきたのは、学術界において増大する中国の存在感です。分野別のリストアップ者が2014年から2018年に2.3倍となっている上、クロスフィールドカテゴリーの割合の多さも目だっていました。大学・機関リストにも4位の中国科学院をはじめ複数の大学・研究機関が入っており、研究機関のみに絞ると、トップのアメリカ国立衛生研究所(NIH)に中国科学院が続く結果となっていました。中国以外の国の大学や研究機関に所属する中国籍研究者が多数いることも考慮に入れると、中国は大きな存在です。中国同様、国別の高被引用論文著者数と割合の増加で注目されたのは、オーストラリアとシンガポールでした。総じて、欧米以外の国々における研究の活発化が進んでいると考えられるでしょう。

世界の中の日本の位置付けには残念なものがありますが、世界の研究者に論文を引用され、高被引用数を獲得するための前提である「英語で論文を書く力量」にも原因の一端があるのかもしれません。日本の研究機関については、クラリベイト・アナリティクスが別途「インパクトの高い論文数分析による日本の研究機関ランキング2018年版」を2018年4月19日に発表しており、分野別の順位も見られるので日本の現状を知る参考になるでしょう。このランキングでの国内研究機関総合の1位は東京大学、2位が京都大学、3位が理化学研究所となっているので、この3つをHighly Cited Researchers 2018 で見てみると、東京大学10名、京都大学7名、理化学研究所12名となっていました。世界ランキング上位の大学・研究機関との差は明らかです。

2019年、日本が撒き返しを図れるかは不透明ですが、中国の躍進は続きそうです。

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