科学における仮説を立てるときの注意

科学における仮説とは、研究における「問い(命題)」を設定し、予想される「結論」を記述するものです。仮説の設定は、科学実験の基盤をなす研究手法に組込まれているものなので、注意深く厳密に行う必要があります。仮説に、たとえ小さくとも不備な点や欠陥があると、実験に悪い影響が生じかねません。よって、堅固で検証可能な仮説を立てることが重要です。検証可能な仮説とは、実験によってその仮説が正しいか間違っているかを証明することができることを意味します。

検証可能な仮説の重要性

科学的な方法に基づいて、実験を計画して実行するには、検証可能な仮説が必要です。科学的な仮説が検証可能であると判断するためには、次のような基準を満たしていることが不可欠です。

1. 仮説が正しいことが証明される可能性があること(検証可能であること)。
2. 仮説が誤りであることが証明される可能性があること(反証可能であること)。
3. 仮説の結論に再現性があること。

こうした基準を満たしていなければ、仮説とその結論は曖昧なものとなってしまい、実験の結果としても、なんら有意義なことを立証も反証もできないことになってしまいます。

有効な仮説をどのように設定するか

検証可能な仮説を立てることは、簡単ではありません。科学的な実験の目的と、予測される結果について、明確に示すものであることが求められます。的確で説得力がある仮説を組み立てるために、考慮すべき重要なことがいくつかあります。

1. 答えを導こうとしている問題を定義する

  • 仮説によって、実験の命題と注目点が明確に定義されている必要があります。

2. できるだけ“if-then”論法で記述する

  • 仮説は「もし~であれば」という“if-then”論法、つまり、もし(if)特定の行為を行ったら、その結果(then)特定の結論が導き出せる――という条件と結論の関係を示せるように記述します 。“if-then”論法で記述できないのであれば、立証も反証もできない命題となってしまうからです。

3. 変数を特定する

  • 科学実験における仮説とは、独立変数(推定される要因)と従属変数(検証の対象として観察される結果)を特定し、両者の因果関係を検証するものです。従属変数の変化は、独立変数の変化の結果に依存する、あるいはそれにより決定されるのです。例として、次の仮説をみてみましょう。

ある地域に多数の石炭工場(独立変数)があれば、その地域の水質汚染(従属変数)は悪化する。独立変数が変化(さらに石炭工場を建設)した場合、従属変数(水質汚染の程度)は変化する。

上に述べた仮説の組み立てにおける重要な項目を軽視してはいけません。実験とその結果の有効性は、仮説が堅固で検証可能であることに依拠しているのです。強固で検証可能な仮説を立てることには、いくつかの利点があります。研究の結果について、注意深く、明確に考える力が身に付くだけでなく、問題が含んでいる意味や、関与している他の変数を理解することも可能になります。また、先行研究の情報を収集し、それに基づいて的確な予測を立てる力も得られます。このように、仮説を立てることは、研究にとって大きな価値があるのです。

検証可能な仮説の例

では、検証可能な仮説とはどのようなものか。例をあげてみます。

  • 授業に出席する学生は、授業をサボる学生より成績が良い。
    授業に出席する学生グループと出席しない学生グループの成績を比較することができるので、検証が可能。
  • 紫外線を多く浴びる人は、一般的な量の紫外線を浴びる人に比べてガンの発生率が高い。
    紫外線を高レベルに浴びた人を見つけて、そのグループのガン発生率を平均的な人と比較することができるので、検証可能。
  • 暗室に閉じ込められた人は、赤外線がいつ照射されたか分からない。
    実際に人を暗室に入れて、赤外線を照射し、その部屋の中の被験者に赤外線が照射されているか否か質問することができるので、検証可能。一方、具体的な主張がないもの、表現が曖昧な物事、あるいは定義のないことについて述べられた意見のようなものについては、検証ができません。さらに、仮説が「正しい」としてもなぜ「正しい」のか説明するには、具体的な調査や研究が必要なこともあります。

科学における仮説とは、検証することが可能であると共に、その仮説が間違いだったときには反証することが可能な、根拠のある推測のことであると覚えておいてください。

検証可能な仮説かのチェック

仮説は科学的な実験の土台となるものです。実験の手順に取り掛かる前に、自分の立てた仮説が明確な根拠に基づく検証可能なものであるかを確認しましょう。チェックリストを使って、確認してみてください。

1. 仮説の記述は明確であり焦点が絞られているか?
2. 研究命題を取り入れた仮説となっているか?
3. 仮説に独立変数と従属変数が入っているか? 両変数は容易に特定できるか?
4. 仮説は、実験で検証できるものか?
5. 仮説は、実験で起こると推定される事象を説明しているか?

このチェック項目を見直すことで仮説の弱い部分や不備な点を発見し、必要な修正を加えるのに役立てください。

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