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博士論文・修士論文を出版するには

博士論文・修士論文の執筆は大変な作業です。現在大学院で苦労している方や最近卒業された方は、修士や博士課程を無事終了するのにどれだけの時間と労力を要するか、よくご存知のことでしょう。大学院では、失敗や成功を積み重ねつつ何年も研究に費やしているはずです。多くの場合、大学院での研究は新たな洞察につながるので、こうした研究成果を学位論文(修士論文や博士論文)としてまとめるのです。

博士論文・修士論文を執筆する際、何年にもおよぶ研究の成果を反映させるために、さまざまなことを考える必要があります。学位取得の要件として論文を査読付き学術雑誌(ジャーナル)で発表することを義務付けている大学もあれば、論文の公表を求めない大学もあります。学位取得の要件に関わらず、博士号や修士号の取得者が学術的キャリアを形成する上で、査読付きジャーナルに論文を掲載することは避けて通れません。

博士論文・修士論文を出版する場合のチェック点

学位論文とひとことで言っても、在籍する大学院の過程によって求められる論文は異なりますし、地域によって言葉の使い方も異なっています。ヨーロッパでは、博士論文をThesisあるいはDoctoral Thesisと記し、独自の研究の成果をまとめることが求められる一方、アメリカではThesisは修士課程における研究の成果を示す比較的短い論文のこととすることが多いようです。

それを示す単語が何であれ、広範な研究は最終的に論文にまとめる必要があり、学位論文として書いた文章を学術ジャーナルに投稿して掲載させることも可能です。ただし、学術ジャーナル掲載を目指すのであれば、自分の研究についてあらかじめ以下のような点をチェックしておく必要があります。

厳密性:理路整然とした学術的な論文になっているか?
重要性:なぜ自分の研究内容が読み手にとっても重要か?
独自性:新規で独自性のある内容か?
需要性:利用価値、あるいは商業的な価値のある研究か?

学位論文の公開方法

以前は、大学による学位論文の公開方法といえば、卒業論文の要約を製本して公開するハードコピーによる公開のみでした。現在では、一部の修士論文や博士論文は、多くの場合クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを付けてオンライン公開されています。そのため、未発表(未公開)のオリジナルデータのみとする学術ジャーナルの発行要件には反することとなってしまいますが、一般的には、未発表の研究を記した学位論文を所属大学が公開することが学術ジャーナル採択の妨げになることはありません。むしろジャーナルは、大学が公開した学位論文は十分に新規性のあるデータであるとみなしています。ただし、大学のリポジトリで公開された論文であっても、学術ジャーナルでの掲載にあたっては査読が行われます。査読を通過して掲載されるためには、まず学内の学位論文審査のフィードバックに耳を傾けることが重要です。学内の審査委員会の批評は、多くの場合、ジャーナルの査読者の指摘と重なるので、論文に必要な修正を投稿前に行っておくことができるでしょう。

学位論文を出版する際の注意点

ここでは、大学院生が学位論文を出版する際に注意しておくべきことを挙げておきます。
まず一般論ですが、適切な引用、参考文献や謝辞の正しい記述、研究倫理の遵守は不可欠です。また、学位論文が公開される可能性を踏まえ、データの出所についての透明性を確保しておくことも重要です。学位論文を投稿する際には、該当論文または論文の一部が、印刷版のみ、あるいはオンラインリポジトリのいずれかで公開されているのかを必ず投稿先の学術ジャーナルに知らせることも必要です。

学位論文は、モノグラフ(特定分野の論文)あるいは一連の論文のひとつとして出版することができますが、論文によって発表方法は異なります。

  1. 通常の学位論文として発表する:個人が従来の章立て形式で執筆した原著論文として出版する
  2. 公開済の論文として発表する:既に学術ジャーナルに掲載された論文として出版する

COPE(Committee On Publication Ethics、出版倫理委員会)による出版倫理に関するガイドラインでは、学位論文に未発表の内容が含まれる場合、発表済みとはみなされないとしています。したがって、大学のリポジトリで自由に閲覧でき、クリエイティブ・コモン・ライセンスが採用の有無にかかわらず、学術ジャーナルに論文あるいはモノグラムとして掲載することは可能です。 ただし、すでに出版された論文で構成されている場合には、事前に出版されたものとみなされるので、原著論文として出版することはできません。原著論文とは、独自研究の成果を示すもの、新しい知見などをまとめたもので、未発表(二重投稿ではない)論文であるべきものだからです。オンライン公表、さらに学術ジャーナルでの公表など、論文の公開に関する判断については、最初に指導教員や所属の研究室に指示を仰ぎ、大学の方針を確認することが重要です。逆に、学術ジャーナルに掲載した論文を学位論文とする場合は、出版社や学協会によって可否判断が異なるので、著作権譲渡契約や投稿規定を確認しておき、不明な点は事前に問い合わせをしておく必要があります。

また、学術研究は急速に変化しているため、参考文献や研究手法が古くなってしまうリスクがあることを念頭におき、論文の公開までにあまり時間をかけすぎないようにすることも覚えておいてください。


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