FDAが大麻由来の治療薬を初めて承認

技術の進歩は医学研究における新たな発見も加速させます。新たな成分や効能の発見は新薬の開発につながりますが、既知の成分の薬効が正式に承認されることで新薬が誕生することもあります。イギリスの製薬会社GWファーマシューティカルズによる大麻由来のてんかん薬「エピディオレックス(Epidiolex)」がアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Association : FDA)によって承認され、現代医療における画期的なニュースとして注目されています。

■ 画期的な新薬の効果

エピディオレックスは2018年6月25日に、アメリカ初の大麻由来の治療薬としてFDAによって承認されました。同薬は、2歳以上であれば服用が可能で、難治性の2種類のてんかん症候群(レノックス・ガストー症候群(Lennox-Gastaut syndrome : LGS)とドラベ症候群(Dravet syndrome : DS))に対する治療薬として開発されたものです。幼年期でのてんかんの発症は重症化し、死に至ることもある上に、既存の治療薬では複数の種類の投薬が必要で、それをもってしても治療が非常に困難であるとされてきました。

臨床試験によって、麻に含まれている、カンナビジオール(cannabidiol : CBD)がてんかんを患う子供の発作の頻度を抑えることが検証されました。既存の治療薬が効かない患者の中には、尻もちをつくように転倒する失立発作による脳の怪我を防ぐため、普段からヘルメットをかぶる人がいます。発作を軽減させるために未承認のCBD含有薬を購入して服用していることさえあります。CBDを主成分とするエピディオレックスが治療薬として承認されれば、てんかん症状に苦しむ患者にとっては大きな希望となります。

エピディオレックスは、副作用や薬物乱用の危険性は最低限に抑えられており、医薬品としての安全性の基準をクリアしているため、患者は長期間にわたる治療薬として安定的な効果を期待することができます。なお、副作用は全くないというわけではなく、添付文書には、てんかん治療薬に共通する肝臓の損傷や自殺願望といった副作用について記載されることになると考えられます。

■ 懸念の声もあるが…

同薬には、CBDと共に多幸感を覚えるなどの作用がある向精神薬であるテトラヒドロカンナビノール(tetrahydrocannabinol : THC)が、0.1%以下ですが含まれています。THCが含まれていると言っても、服薬した人の気分が高揚するといったことはありません。また、品質を担保するため、GWファーマシューティカルズは大麻草をイギリス国内の温室で自社栽培し、CBDをラボで抽出したものをアメリカに輸出しています。

しかしながら、この新薬に対する懸念があるのも事実です。CBDを含む製品を他社が無許可で販売し始めるのではないか、2種類のてんかん患者以外にも誤って服用されるのではないか、といった声が一部からあがっているのです。FDAは、申し立てに対し、今後はこういった声を厳しく取り締まっていくことを明言しています。

一方で、麻薬取締局(Drug Enforcement Administration : DEA)は現状、乱用の可能性に応じて薬物を分類しており、大麻とマリファナは同じカテゴリーに入っています。つまり、エピディオレックスの主成分CBDは規制薬物に分類されているため、現状では原則的に治験以外での利用が認められていないのです。GWファーマシューティカルズがこの大麻由来の治療薬を発売するには、DEAが薬物指定を解除するなどの対処が必要とされ、製品価格が決定されるまでの間に規制が見直されることが期待されます。この新薬の承認は、アメリカにおける大麻の研究や成分利用の合法化の議論にも大きな出来事となるでしょう。

乗り越えるべき問題がまだあるのは事実です。しかし、既存のてんかん治療薬では発作が止まらなかった患者にも効果が期待される新薬が承認されたことは、画期的なことです。エピディオレックスが、これまで治療が難しいとされてきた症状の緩和に光明を見出したことは間違いありません。今後、実際の医療現場で大きな効果を発揮することが期待されます。

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