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交流の場では親しくなることが先決

私が代表理事を務める一般社団法人学術英語学会(J-SER)では、毎年、セミナーを開催しておりますが、出し物の中でユニークな企画となっているのが「ソーシャライジングとネットワーキングのための英語」です。一般的に、日本人研究者がニガテとしているのが「ソーシャライジング」または「ネットワーキング」、いわゆる 研究者交流 です。懇親会(welcome reception等)で人の輪に入っていけず、日本人同士でかたまってボソボソ日本語で話している風景、国際学会ではよく見られますよね。国際色豊かな研究者たちと、どのように堂々と交流し、自分の研究活動にプラスにつなげていくか。今回はシリーズ第2回目です。

交流の場では親しくなることが先決

まずは人に話しかけることです。しかし、初対面の人に英語で話しかける時、“How do you do? Let me introduce myself.” のように型にはまった英話表現に頼ってしまう人がいます。「この場面ではこの表現」といったパタ―ン化に沿って会話を進めるあまり言葉も雰囲気も固くなってしまいます。研究者交流の場面で話しかける時は、初対面の人であってもとりあえず “Hello.”でよいのです。また、後で述べるように上記の定番表現を使わなくても、「はじめまして」に相当する様々な表現を使うことができます。

「発声」としての“Hello”

“Hello”は「言葉」というよりは「音」に近い「発声」なのです。呼びかけた人との間で会話を始めるサインを送るのがその機能ですから、相手と親しくなりたいという気持ちが口調や表情に表れているかぎりは、“How do you do?”のようにあらたまった挨拶は無くても大丈夫です。


親しくなることが目的ならば儀礼的な言葉は無用

実は私も若い頃はその点がよくわかっていませんでした。会話表現集などで型通りの挨拶の言葉を覚えた世代だからです。しかし、ある著名な研究者との初対面の会話を私は今でもはっきりと覚えています。イギリスから招かれて講演をおこなったその先生は、休み時間にロビーで何人かの日本人と話していました。ひょっとしたらその会話が面白くなかったのかもしれません。近くにいた私の方を向いて手を振り、“Hello.”と言って話しかけてきたのです。びっくりしました。少し話をしましたが、面識がなかったにもかかわらず「初めまして。私の名前は…」などという堅苦しいやり取りは最後までありませんでした。

初対面の人に話しかける時は、「言葉」よりも打ち解けた「発声」が大切

もう一つ面白い光景を見ました。ある学会の会長が、研究大会の懇親会で手をヒラヒラさせて「ハロ、ハロ、ハローゥ」と言いながら、海外から来た研究者の輪の中に入って行くのを見ました。くだけた調子ではあったものの馴れ馴れしい態度でもなく、話しかけられた方も楽しい雰囲気で応答していました。「ああ、英語というものは、こんな風に使っていいんだ」と納得した機会でした。

※ 本シリーズの1回目はこちらからどうぞ。


崎村 耕二  (さきむら こうじ) 

日本医科大学 武蔵境校舎 外国語教室 教授。1957年生まれ。オックスフォード大学ウルフソン・コレッジ客員研究員、高知大学教授,京都工芸繊維大学教授を経て2013年より現職。一般社団法人学術英語学会代表理事なども務める。専門は、テクスト分析,言語表現論。現在、医学部で、医学英語の語源と語形成などを講義。英語コーパス学会会員、医学英語教育学会会員、Oxford Union Society (弁論部)終身会員等。著書に、『最新 英語論文によく使う表現 基本編』(25年以上のロングセラー改訂版)、『英語で明確に表現する』 、『英語で論理的に表現する』(以上、創元社)、『論理的な英語が書ける本』(大修館書店)などがある。

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