研究者交流のための英語とは?

これから、標記のテーマのもとに、続き物の記事を書かせていただきます。私が代表理事を務める一般社団法人学術英語学会(J-SER)では、毎年、セミナーを開催しておりますが、出し物の中でユニークな企画となっているのが「ソーシャライジングとネットワーキングのための英語」です。はっきりとしたイメージがわかない、という方のために、記念すべきシリーズ第1回目では、簡単にその趣旨を説明します。

英語論文執筆では困らないしかし国際学会の発表後、質疑応答で立ち往生する日本人研究者

日常的に自然科学系の研究者は、研究成果を英語論文にまとめ、海外のジャーナルへ投稿しています。また、国際学会の口頭発表では、スライドをめくりながら手元のスクリプトを読み上げるにあたって特に英語に大きな困難を感じることは無いようです。ところが、問題は質疑応答の場面です。フロアから投げかけられた質問が聞き取れない、あるいは質問内容が込み入っていてよくわからない、聞き取れても、とっさに頭の中で答えを組み立ててそれを適切な英語で発話することができない—この困難は実際にそのような経験をしなければ想像し難いでしょう。私が以前、京都大学で行ったアンケート調査で、衝撃的な証言が得られました。口頭発表は無事行っても、質疑応答で質問にどう答えて良いかわからず「立ち往生」している日本の研究者を何人も見かけた、というものでした。

国際的な場面で人の輪の中に入って行けない

また、懇親会(welcome reception等)で人の輪に入っていけず日本人同士でかたまってボソボソ日本語で話している風景もよく見られます。国際色豊かな研究者たちの会話に入っていけないのは、英語の発話力や聞き取り能力の問題もあるでしょう。しかし、人の輪にはイタリア人やブラジル人、中国人の研究者などが入っており、必ずしも英語のネイティブスピーカーではない場合もあります。皆、英語が流暢だとは限りませんので、自分の英語力に引け目を感じることはないのです。そのような場面に出て行く人はまだましで、そもそもそのような social gathering には参加せず宿泊ホテルに帰ってしまう人も多く、これでは何も始まりません。

このような方面に着目したのが標記の「研究者交流のための英語」です。第2回目の記事以降、国際的な交流の場面を切り抜けるための会話術を解説していきます。主に解説するのは懇親会での会話の始め方、会話の続け方、会話の締めくくり方をはじめとして、相手の発言にどう反応するか、質問にどのように答えるか、逆に質問をどのように投げかけるか、等々、さらには、研究者同士を引き合わせたりコネクションを作るための技法です。その他、フォーマルな食事会(dinner, luncheon, banquet)の場面や、研究者の自宅に招かれたり逆に招いたりという場面も視野にいれます。研究者の交流とはいえ、国際的な場面では、個人間だけでなく異文化間の諸問題も絡んできますので、言語だけでなく文化的な内容にも触れたいと思います。

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質問に対してひと言も声を発することができず、“Hello? Are you here?”などと言われて絶句する日本人研究者・・・

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懇親会で座談の場に入っていけない・・・

English language

 


崎村 耕二  (さきむら こうじ) 

日本医科大学 武蔵境校舎 外国語教室 教授。1957年生まれ。オックスフォード大学ウルフソン・コレッジ客員研究員、高知大学教授,京都工芸繊維大学教授を経て2013年より現職。一般社団法人学術英語学会代表理事なども務める。専門は、テクスト分析,言語表現論。現在、医学部で、医学英語の語源と語形成などを講義。英語コーパス学会会員、医学英語教育学会会員、Oxford Union Society (弁論部)終身会員等。著書に、『最新 英語論文によく使う表現 基本編』(25年以上のロングセラー改訂版)、『英語で明確に表現する』 、『英語で論理的に表現する』(以上、創元社)、『論理的な英語が書ける本』(大修館書店)などがある。

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