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アンケート調査を行うときの要点

ほとんどの調査研究では、データの分析が必要です。アンケート調査は、必要な情報を収集するために有効な方法です。例えば、薬物治療の効果を調べるための臨床研究や、人々がアレルギーにどのように対処しているかを知るための統計分析などに利用されます。こうしたアンケート調査によって新しい事象が見つかり、新規の研究に繋がり、ひいては新たな解決策が開発されることになるかもしれません。

アンケート調査を行うときに留意すべきこと

適切な科学的調査のためのアンケートを作成するには、次の点に留意することが必要です。

1. 調査のテーマと収集すべきデータの項目を明確にすること
2. 明瞭で、一貫性を備えた調査様式を準備すること
3. 回答者に対する説明、依頼は明瞭かつ簡潔に行うこと
4. 質問は簡明な文書で記すこと
5. 質問および説明文に書き込む用語の定義は明確に示すこと

こうした点を心がけることで、調査を円滑かつ回答におけるミスを少なく進めることができるでしょう。

アンケート調査の強みと弱み

アンケートの質問表の作成には、多くの下調べや準備時間が必要となります。しかし、貴重な情報が収集できれば、その結果を分析し、さらなる研究のアイデアが引き出せる可能性を秘めています。ただし、アンケート調査には強みがある反面、課題もあることを認識しておく必要があります。以下に、強みと弱みを挙げてみます。

強み

  1. コスト・パフォーマンス:
    よく練られた質問票を作成することで、調査に要する時間と費用を節約することができます。特にオンラインでのアンケート調査は、用紙の印刷や発送の負担が削減できます。
  2. 扱いやすさ:
    どのような研究においても、収集するデータ量が増えれば、分析や予測がより容易になる傾向があります。オンライン調査の実施やツールを活用することで、よりデータの収集がしやすくなっています。例えばSurvey Anyplaceのように、インターネット上で対話型のアンケートを行えるソフトウェアもあり、大勢の人から回答を集める調査が容易になっています。また、アンケートは、研究者が自分の目的に応じて内容や実施方法を決められるという柔軟性があります。
  3. 調査対象者の数の多少にかかわらず使える:
    アンケート調査は、調査対象者の数にかかわらず少人数でも実施することができます。例えば地域に特化した事象に関する調査を少人数に対して実施する、または、広範囲におよぶ事象に関する調査を大人数に行うなど、収集したいデータに応じた調査規模に適用できます。

弱み

  1. 回答の問題:
    ● 不誠実な回答:回答者が本当に正直に回答しているか、実施者側には分かりません。意図的な回答をする場合もありえるでしょう。回答者が自分の社会的役割を意識したり、自分のプライバシーを守ろうとしたりした場合など、こうした回答になりえます。
    ● 感情に引きずられた回答:回答者の感情によって、質問の意図が正しく伝わらず、結果として回答がゆがめられることがあります。
    ● バイアスを含んだ回答:回答者にとって質問内容や、質問の背景にある考え方が好ましいものでない場合、自分の先入観に沿うように回答を意図的に変えることがあります。
  2. 解釈の問題:
    作成者が意図した質問の内容が回答者に異なった解釈をされることは課題のひとつです。解釈が異なれば回答が的外れとなり、調査結果がテーマからずれてしまったり、主観的過ぎるものになったりしてしまいます。
  3. 個別対応への限界:
    アンケートの質問項目を完全に個別対応することはできません。よって質問によっては、回答者が自分には関係ないと感じるものもあるでしょう。回答者が回答しなかったり/できなかったり、データとしては使えないものにならない回答となることもあります。

アンケート調査における駄目な質問

アンケート調査の成功の可否は適切で有効なアンケート調査票の作成にかかっています。悪い質問には悪いデータしか得られません。では、良い質問を作成するにはどうすればよいのでしょうか?アンケート調査票の作成に役立つ具体的な書き方を説明しているウェブサイトやセミナーがあるので、参考にするとよいでしょう。そして、下の3つの駄目な質問に注意して質問票を作成しましょう。

  1. 多すぎる質問:
    質問項目が多すぎると、回答者は関心を維持できず、すべての質問に対する回答が得られないことになりかねません。
  2. 不明瞭な質問:
    質問文は簡潔に。また、誘導尋問や自由回答式の質問にならないようにします。
  3. バイアスを生じさせる質問:
    調査は客観的であるべきです。質問は全て曖昧さがなく、中立的で、回答者が客観的に回答できるようにすべきです。

ヘルスケア領域におけるアンケート調査:症例報告書

最後にヘルスケア領域におけるアンケート調査の活用と関連する動きを紹介します。

科学研究の中でもよくアンケート調査が活用されるものに、医薬品・医療機器の開発のための治療について情報を収集する目的で行われるものがあります。治験に参加した被験者を対象にアンケート調査を行い、収集した結果を基に症例報告書(Case Report Form: CRF)が作成されます。CRFの作成には所定の雛形や指示書OpenClinica Reference Guideなどの情報が参考になります。最近は電子化も進んでいますが、紙媒体または電子媒体のいずれの症例報告書も保存されます。臨床試験のデータを蓄積するにあたり、世界中で共通のデータ標準が用いられるようにとの取り組みが進んでいます。これに乗り出したのがCDISCS(Clinical Data Interchange Standards Consortium)と呼ばれる組織です。世界的な標準開発機関と連携し、ヘルスケア領域におけるデータ項目の国際的標準化を進めています。CDISCSのデータ標準に関連する文書や指針はウェブサイトで無料公開されていますし、日本国内で行われるCDISCS関連のイベント情報なども入手可能です。こうした標準に準じて調査を行えば、収集する情報の質と有効性を確保することに役立つでしょう。

アンケート調査は、さまざまな分野の研究者にとって、大変有用なデータ収集の方法です。いろいろな場面で使用されており、多くの研究者が慣れ親しんでいることでしょう。しかし、意外と気づきにくい落とし穴もあるのです。適切で効果的なアンケート調査を実施するための要点を改めて確認し、レベルアップすることで調査実施者と回答者の時間と労力をできるだけ削減し、効率的に調査研究が進むように心がけてください。

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