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DOAJオープンアクセスに関する2018年調査結果

オープンアクセスが実現可能なモデルとして注目されながらも、エルゼビア社と欧州の研究機関の抗争がこう着状態に陥るなど、学術出版の問題はまだまだ解決しそうにありません。このような状況の中、2019年1月9日にオープンアクセスジャーナルのディレクトリであるDOAJ(Directory of Open Access Journals)が2018年に行ったオープンアクセス(OA)に関するアンケート調査の結果を発表しました。

DOAJのアンケート調査

まず、DOAJとは何かに触れておきます。DOAJは2003年にOpen Society InstituteとSPARC(Scholarly Publishing and Academic Resources Coalition)の支援の下、スウェーデンのルンド大学図書館がOAジャーナルの包括的なデータベースの構築と利用拡大を図ることを目指して設立したOAのディレクトリです。登録されているOAジャーナルは多分野にわたり、12000誌に達しています。登録に厳格な基準を設けることで信頼性を確保するとともに、キーワードやタグ検索を可能にするなど研究者にとって利便性の高いデータベースを提供しています。

1月に結果が発表されたアンケート調査は、DOAJが2018年夏、登録している6000を超える出版団体/組織を対象に行ったものです。出版団体/組織のタイプ、地理的分布、DOI(デジタルオブジェクト識別子)の利用、論文のメタデータなどについての質問に対し、回答が寄せられました。複数の学術雑誌(ジャーナル)を所有していても1団体/組織につき1回答として得られた1065の結果から、世界のOA出版の傾向が見えてきました。

回答から見えてきたOA出版の傾向

回答者の出版団体/組織のタイプの質問への回答の上位5つを占めたのは、大学の出版部、非営利な出版組織、図書館出版、研究所および出版者協会でした。ただし、DOAJに登録されている出版団体の純粋な出版数で見た場合には、360万本の論文の3分の1以上を占める上位10のうち8つは商業出版社が占めていることは留意しておくべきでしょう。

地理的分布については、2013年の調査と比較しても全体的にはあまり大きな変化は見られませんでした。それでも、地域によっては大幅な増減をしている国もあります。インドネシアからの回答数は2013年の9から2018年の155に激増しました。インドからの回答数が2013年の101から2018年の11に減少しているのとは対照的です。2018年調査で回答数の多かった国のトップ5は、上から順に、インドネシア、ブラジル、スペイン、ルーマニア、アメリカとなっています。2013年のトップ5、ブラジル、スペイン、インド、ルーマニア、イタリアと見比べるとインドネシアの躍進が顕著であることがわかります。

DOIの利用については、DOIを利用するという回答が、前回調査の2013年の35%から73%に上昇していました。ただ、ここにも注釈がついており、73%のDOI利用出版団体/組織のすべてが、DOI技術を使いこなしているとは言えないと書かれています。

メタデータについては、DOAJにメタデータを提供しているとの回答が、2013年の55%から84%に上昇していました。提出形式としては、46%がCrossRef、8%がJATS(Journal Article Tag Suite)を選択していましたが、全回答者の42%がメタデータの書式について十分に理解できていなかったことも浮き彫りになり、DOAJには課題が残りました。

DOAJに登録されるメリットについて挙げられたことのトップ3は、ジャーナルの品質保証になること、読者の増加につながること、科学的インパクトを高められることでした。74%がDOAJに登録されたことで確実に、あるいは、おそらく登録の影響でジャーナルへの投稿が増えたと回答しており、70%がウェブサイトの閲覧が増えたとしています。また、2013年との比較はできませんが、62%の回答者がDOAJに登録されていることで、ハゲタカ出版社またはハゲタカジャーナルとの競合を気にしないでよいこともベネフィットとして挙げています。さらに、86%が自国では論文の内容よりも掲載誌が重視されていると述べているので、ジャーナルの評価が高まることは研究者の評価としても大変重要なのです。

OA出版の影響

この調査結果からは、OA出版が読者を増やすだけでなく、投稿自体も促進し、結果として科学的インパクトの向上に影響を及ぼしていることが明らかになっています。多くの商業出版社がOA出版に参入することで、研究者が閲覧できる論文の数が増えるという好結果が生み出されているのです。そして、今回の結果から、発展途上国におけるOA出版が増加していることも判明しました。DOIの利用については改善が必要とは言うものの、課題が見えたことは朗報です。結局のところ、あらゆるジャーナルおよび論文のメタデータを含有するプラットフォームとは、出版団体/組織によって提供される情報に基づいて構築されているわけなので、DOAJが今回のアンケート結果を参考にしつつ、今後もユーザー、特に出版団体/組織の需要に応じてプラットフォームを改善していくことが期待されます。

※結果詳細
ここで示した調査結果の詳細は、DOAJのウェブページ「LARGE SCALE PUBLISHER SURVEY REVEALS GLOBAL TRENDS IN OPEN ACCESS PUBLISHING(DOAJ,2019/1/9)」をご参照ください。

 

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