14

第2回 色覚の多様性―あなたは何型?

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすいスライドを作るために覚えておきたい「カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズです。


「色」とは、物体に反射または透過した光が眼に入り、網膜、視神経を経て脳で感知されるものです。進化の過程で色覚に関与する遺伝子に多型が生じたため、色の見え方には個人差があり、血液型のように分類することができます。

    1. 色覚の仕組み

図2-1 視細胞の種類(CUDOおよびハート出版より許可を得て転載)

 

光源から物体に当たって反射した光は、ヒトの眼に入ると角膜、瞳孔、水晶体を通り、網膜の一番奥の層にある視細胞に到達します。視細胞には明暗を感じる約1億個の杆体と、色を感じる約700万個の錐体があります。錐体には、ヒトの可視光の波長約400〜700 nmのうち、より短波長側の青を強く感じるS(short)錐体、中波長の緑を強く感じるM(middle)錐体、少し長波長側の赤を強く感じるL(long)錐体の3種類があります(図2-1)。

 

    1. 色覚の多様性―C型、P型、D型、T型、A型

・C型(Common:一般型)はL、M、Sの3種類の錐体を持つ色覚グループで、緑〜赤の色相差に敏感です。日本人男性の95%、女性の99%以上がこれに含まれます。このグループは多数派であることから、一般型あるいはC型色覚者と呼ぶことが提唱されています(表2-1, 図2-2)。一方、C型以外の色覚タイプを持つ人は、色の配慮が不十分な社会における弱者という意味で「色弱者」と呼ばれることがあり、それらの少数派の色覚特性を以下に紹介します(表2-1, 図2-2)。
・P型(Protanope:1型)はL錐体がない(P型強度)、またはL錐体の分光感度がずれてM錐体に近くなった(P型弱度)色覚グループで、赤を暗く感じ、赤〜緑の区別がつきにくい特性があります。男性の1.5%を占めます。
・D型(Deuteranope:2型)はM錐体がない(D型強度)、またはM錐体の分光感度がずれてL錐体に近くなった(D型弱度)色覚グループで、P型と同様に赤〜緑の区別がつきにくい特性があります。男性の3.5%を占めます。
・T型(Tritanope:3型)はS錐体がない色覚グループです。先天性のT型の人はほとんど存在しません。
・A型(Acromatic:無色型)は錐体が1種類しかない、または全くなく杆体しか持たず、色を明暗でしか感じることができない色覚グループで、T型と同様に頻度は非常に低いです。

表2-1 色覚のタイプと呼称(CUDOより許可を得て転載)

 

    1. 日本人男性の20人に1人がP型またはD型

図2-2 分光感度特性と色覚の種類(CUDOおよびハート出版より許可を得て転載)

 

色弱者はほとんどがP型またはD型で、これらが日本人男性の約5%(20人に1人)、女性の0.2%(500人に1人)を占めます。欧米では日本より多く男性の8〜10%(10〜12人に1人)を占め、アフリカでは日本より少なく2%程度です。男性に多い理由は、これらの色覚タイプに関与する遺伝子がX染色体上に存在するためです。男性はX染色体数が1本ですので、P型、D型の遺伝子を持てばそれらの色覚タイプとなります。女性はX染色体数が2本ですので、どちらかにこれらの遺伝子を持っていても保因者となり、実際の色覚型はC型となります。保因者は女性の約10%に存在します。
血液型におけるAB型の頻度(日本人の10%、米国人の3%)と比べると、P型・D型色弱者の頻度がいかに多いかがわかります。人数で言えば日本に320万人以上、世界に2億人以上の色弱者が存在することになります。


参考資料:
カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
伊藤啓(2012)カラーユニバーサルデザイン 色覚バリアフリーを目指して. 情報管理 55(5)307-317
カラーユニバーサルデザイン機構ウェブサイト(2015)色覚について・しくみ.
岡部正隆、伊藤啓(2002)色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション 第1回 色覚の原理と色盲のメカニズム. 細胞工学21(7)733-745

1
Leave a Reply

avatar
10000
1 Comment threads
0 Thread replies
0 Followers
 
Most reacted comment
Hottest comment thread
0 Comment authors
第3回 色による情報が伝わらない?! - 学術英語アカデミー Recent comment authors
  Subscribe  
Notify of
trackback
第3回 色による情報が伝わらない?! - 学術英語アカデミー

[…] 第2回で紹介した色覚タイプのなかから、代表的なC型、P型、D型の色の見え方の違いを図3-1に示します。このように、P型、D型の人にとって赤は決して目立つ色ではなく、赤と緑、淡い水色とピンクと灰色、黄色と黄緑、紫と青などが区別しにくいことがわかります(シミュレーションソフトで作成しているため実際の色覚を再現したものではありません)。 […]