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助成金申請用のデータマネジメントプランの書き方

助成金提供者は申請にさまざまな条件を付けていますが、最近ではそれらに加えて、データマネジメントプラン(Data Management Plan, DMP)の提出も強く求めるようになっています。研究資金調達のための申請書は、包括的なデータマネジメントプランの予備的な計画の概要を記すものと言っても過言ではありません。

欧州全域で実施される研究およびイノベーションを促進するフレームワークである『ホライズン2020(Horizon 2020)』は、研究者間のデータ共有や研究者によるデータの研究倫理面での報告義務を促進するため、プロジェクトデータはオープンにされるべきであるとしています。

データマネジメントプラン(DMP)とは

データマネジメントプラン(または、データ管理計画)とは、研究プロジェクトにおいて特定のフォーマット、アプローチ、基準、および方法論を選択した理由を詳しく説明する補足文書です。詳述すると言っても、2ページ以内にまとめるようにします。データマネジメントプランを作成する主な目的は、生成したデータの種類、管理方法、さらに他の研究者がデータを利用できるようになっているか、アクセスが可能になっているかを説明することにあります。研究助成金の申請時または採択時にデータマネジメントプラン(DMP)の提出が常套化してきているので対応が必要です。

理想的なデータマネジメントプランには以下の質問への回答を含めます。

1. どのようなデータを作成したか
2. データの収集または作成方法
3. データの所有権責任者の情報
4. データおよびメタデータに使用した規格やフォーマット
5. データにアクセスして共有するための方針や制限
6. 予定しているデータ、サンプル、および他の研究成果の保管(アーカイブ)・保存方法

データマネジメントプランの作成が重要な理由

データマネジメントプラン(DMP)の作成はとても重要なので、助成金提供機関によってはデータマネジメントプランのない申請書を受け付けてくれません。データが作成されなかったとしても、申請書にはDMPを入れておく必要があります。

また、データマネジメントプランは、以下の理由からも重要です。

  • 作成したデータを引用することにより、研究の影響力と研究が人の目につく可能性を高める(見つけられやすくする)
  • 既に発表されている研究結果と関連させ、該当研究に裏付けを与える
  • 著作権や研究倫理のコンプライアンスを保証する
  • データの長期的な保管(アーカイブ)・保存に役立つ
  • 最も重要な点として、データを他の研究者と共有し、学際的研究に役立てることができる

データマネジメントプランの構成要素

プロジェクトが終了した後もデータの再利用をサポートするためのDMPを作成しておくことが不可欠です。DMP作成にあたって公式のテンプレートはないものの、助成金申請の際には、次にあげる鍵となる要素に言及しておく必要があります。

1. データの概要

集めた情報に関する簡単な説明を記載します。作成されるデータの量、その性質、そしてプロジェクトの過程で生成・収集されることが予想されるデータの種類について書き込みます。ここに記載するデータの種類には、テキスト、カリキュラム資料、スプレッドシート、画像、3Dモデル、ソフトウェア、音声(オーディオ)ファイル、動画(ビデオ)ファイル、観察報告書、アンケート、評価記録などが含まれます。最後に最も重要なのは、他の人が既に公開しているデータを結合する際に、引用としてしかるべきクレジットを付与しておくことです。

2. メタデータおよびフォーマット

メタデータおよびデータのフォーマットと、データの作成、照合、保持、および提供の方法に関する説明を記載します。フォーマットに関するあらゆる手順および保管の妥当性の根拠も含めます。このセクションの目的は、他の研究者に対して理解できる結果を提供することです。また、プロジェクトの実験手順に準拠するため、実行手順も書き込んでおく必要があります。

3. 保管および保存

保管および保存に関しては、データを維持、キュレート(情報の収集・整理・要約・公開までを含む)する、さらに保管する際の長期的な方針について言及しておきます。保管方法、バックアップ手順、および研究データを検索するためのリソースに言及しておく必要があります。データがどこに保管されるか(アーカイブ、リポジトリ、またはデータベース)を記載しておかなければなりません。使用を予定している長期保管サイトで保持・保管するための手順についても記しておきます。さらに、プロジェクトが終了後もデータにアクセスできる保持期間についても記載しておくことが大切です。

4. セキュリティ、アクセス、共有

秘密情報を含む情報の技術的・手順的な保護措置や、許可や制限などがどのように行われるのか説明します。ここには、データにどのようにアクセスするか、いつアクセス可能になるかについても記載します。

ここで言及すべきは以下の項目です。

1. データを利用可能にする際に必要なリソース
2. データへアクセスするための手順
3. データの閲覧費用(有料か無料か)
4. 一般公開する前に、研究責任者(PI)がデータを利用する権利を有する期間
5. 商業的、特許上、または政治的理由から生じる制限・障害に関する詳細説明
6. データの共有および管理に関する国(政府)および資金提供者による要件

5. 研究倫理およびプライバシー

DMPの研究倫理およびプライバシーに関しては、インフォームドコンセントの取り扱いに関する計画や、そのようなデータのプライバシー保護の方法について言及しておきます。参加者の守秘義務やその他に生じる可能性のある倫理的問題などに関する全ての取り決めが含まれていなければなりません。

6. 知的財産権

データの知的財産権を有する個人または団体に関する情報を記載しておく必要があります。同じように、これらの知的財産権と著作権の制限事項を保護するための対策についても、明確に記載されていなければなりません。

7. 役割および責任

DMPでは、データ管理の責任者を明確化しておくことが大切です。責任者は非常に重要な役割を担い、バージョン管理や命名規則に関する情報など、プロジェクトにおけるデータ管理について責任を持つことになります。

8. 予算

これはDMPに関する予算の話なので、助成金申請書の予算に関するセクションと混同しないよう注意します。ここには、データの作成や保管のために必要なコストを記載します。
データ管理計画書の書き方:考慮すべきポイント

  • 共有や保管がしやすいように、標準または一般的なフォーマットを使用する。
  • 学部・学科、または大学・研究機関にデータをアーカイブする際に好ましいとされるフォーマットを確認する。
  • 予想されるデータのアウトプットを忘れずに記載する。
  • 最終的なデータセットの量、種類、内容、質、およびフォーマットに言及する。
  • データが理解しやすくなるように、メタデータと文書の概要を示す。
  • データの照合と管理に用いた基準および方法論を記載する。
  • データとの関連性を指摘しつつ、永続的なデータにはクレジットを付与する。
  • 全ての共同提案書またはサブアワードは統一されたプロジェクトとして扱われるので、単一のDMPにまとめる。

DMPは補足文書ですが、助成金申請の合否に大きく影響するものです。オンラインジャーナルの普及を含め、学術情報を共有するための媒体・ツールは大きく様変わりしました。既に幾つかの助成金の申請において、DMPの作成は必須要素となっていることを踏まえ、研究者はデータマネジメントを包括的な研究サイクルの一部としえ捉える必要にせまられています。本稿を参考にDMPについて見直してみてください。


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