第1回 日本が世界に先駆ける「カラーユニバーサルデザイン」とは

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすいスライドを作るために覚えておきたい「カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズです。


すべての人が快適で安全に暮らせるように配慮する「ユニバーサルデザイン」の考え方は広く定着しています。その一環として新たに注目されているのが「色」のユニバーサルデザインである「カラーユニバーサルデザイン」です。

    1. 色覚バリアフリーを目指して

一定年齢以上の日本人なら、小学校で色覚検査(文部科学省により2002年をもって廃止)を受けた経験があり、色の見え方に個人差があることをなんとなく認識しているでしょう。色覚には多様性があり、それは血液型に多様性があることや右利き・左利きの人がいることと何ら変わりがありません。しかし、左利きの人が道具を使う際に困ることがあるように、少数派の色覚を持つ人々は色の情報に関して困ることがあるため、「色弱者」と呼はれることがあります。
そのような色弱者を含め、できるだけ多くの人に正しく情報が伝わるように色の使い方や文字の形などに配慮することを「カラーユニバーサルデザイン(color universal design:CUD)」と言います。CUDは比較的新しい概念を表す用語で聞き慣れないかもしれませんが、色覚バリアフリーを目指す手法と言い換えることができます。

    1. 2人の日本人科学者から始まった活動

現在、わが国ではNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)が中心となってCUDを推進しています。この活動のルーツは、自ら色弱者である2人の日本人科学者、伊藤啓氏(東京大学分子生物学研究所)と岡部正隆氏(東京慈恵会医科大学解剖学講座)が、科学者向けに色覚バリアフリーへのデザイン的な配慮を啓発する活動を行っていたことにあります(http://www.nig.ac.jp/color/bio/)。

伊藤氏、岡部氏は2002年にすでに英語による情報発信も行っており(http://jfly.iam.u-tokyo.ac.jp/color/index.html)、国内はもとより世界の科学者から注目を集めていました。この動きが日本国内で学術界の外へと広がり、色彩学者やデザイナーなどが合流して2004年のCUDO設立に至りました。本シリーズ記事作成にあたっては、自ら色弱者で一級カラーコーディネーターであるCUDO副理事長の伊賀公一氏および同じく色弱者で同副理事長の田中陽介氏に貴重なお話を伺いました。

    1. 世界に類を見ない社会的取り組み

海外の国々―とくに西洋諸国において色覚は個人の問題と捉えられており、特定の職業選択の場面以外ではフォーカスされることがほとんどないと言われます。したがって、色覚の多様性に対応したデザインへの配慮を社会的に広く推進しているのは日本発の取り組みで、世界をリードしていると言えます。

田中氏によれば、EIZO、パナソニック、オリンパスなど実際にカラーユニバーサルデザインに配慮したCUD認証マーク(図1:左)付きの輸出品が日本発として世界に広まり、その後アメリカンホーム、ファイザー、バイエルなど外資系企業もCUD認証マークを取得しています。世界的に使われているアドビシステムズ社のPhotoshop、Illustrator CS4以降には色弱者向けのCUDソフトプルーフ(疑似変換)機能が搭載されました。CUD認証マークとは、CUDに関する一定の要件を満たした印刷物・製品や施設に表示することができるマークで、これについては第15回で紹介します。

グローバル化が加速する学術界においても、日本発のカラーユニバーサルデザインを取り入れて、ユニバーサル化にも配慮した先進的な学術発表を行おうではありませんか。


図1 CUD認証マーク(CUDOより許可を得て転載)
参考資料:
カラーユニバーサルデザイン機構ウェブサイト(http://www.cudo.jp
カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版

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[…] そのような学術界で早くから声を挙げ続けているのが、第1回でも触れた2人の日本人科学者、伊藤啓氏(東京大学分子生物学研究所)と岡部正隆氏(東京慈恵会医科大学解剖学講座)です。 近年、各種のアカデミックジャーナルも一気にカラー化が進みました。しかし、世界のトップジャーナルにおいても色覚の多様性への特別な配慮は見受けられません。そのような中、『Nature』誌においては、2007年に同誌ウェブサイトのブログ記事において編集者が、色弱者に配慮した図版の色使いについて取り上げ、素晴らしいウェブサイトとして伊藤氏、岡部氏が2002年に英語で発信した情報ページを紹介しています。 […]