第8回 スライド作成で気をつけたい配色のポイント

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。


前回(第7回)紹介したように、国際学会でのプレゼンにおいて、「赤いレーザーポインターを使わず」、「赤色はオレンジ色寄り」にして、「色の名前を言うときに注意」することは、CUD(カラーユニバーサルデザイン)への大きな一歩です。今回は、さらに配慮したい2つのポイントを紹介します。

    1. 使う色の数を少なくする

プレゼンテーションソフトウェアの発達により、多くの人が気軽に色をつけてカラフルなスライドを作るようになりました。一般型色覚のC型の人にとって色は便利な情報伝達手段ですが、使いすぎれば見づらい場合もあります。P型、D型などの人にとってはなおさら、重要な部分で見分けにくい色の組み合わせが増えてしまいます。また、意外なことに、重要ではない演出的な色使いにも問題があります。例えばデータの一部に、特に必要ではない背景色がついていたとすると、P型、D型などの人は「何か色がついているようだが意味があるのだろうか」と不安を抱いてしまいます。
したがって、なるべく多くの色覚型の人にわかりやすいスライドを作るためには、本当に必要でない色は使わないのが賢明です。そのようにシンプルを極めつつ、デザイン性の面でも満足のゆくスライド作りをめざしましょう。画面を動かすアニメーション効果も当初は多用されましたが、かえってわずらわしいという考え方が広まって、以前ほど多用されなくなりました。色についても多用しない効果的な使い方が広まっていくと考えられます。

    1. 色の組み合わせに気を配る―色相、明度、彩度とは?

赤色の選び方に代表されるように、色はそれ自体の問題もありますが、P型、D型の人にとっては、識別しにくい色の「組み合わせ」が問題となるケースが多くあります。第3回で紹介したように、「赤と緑」、「淡い水色とピンクと灰色」、「黄色と黄緑」、「紫と青」は特に判別が困難なため、重要な色分けの組み合わせにはなるべく用いないようにしましょう。
色には、色合い(色相)のほかに、明るさ(明度)、鮮やかさ(彩度)といった要素があります。P型、D型の人は色合い(色相)の識別が困難な場合が多いですが、色の明るさ(明度)や鮮やかさ(彩度)はよくわかります。そこで、色相のみならず、明度、彩度に変化をつけると、色弱者の人にも区別しやすい色の組み合わせが増えます。少し踏み込んだテクニックになりますが、これを意識してスライド作りに反映させれば、多彩な色使いも維持しつつ、ユニバーサル 化に配慮したプレゼンテーションを行うことができます(図8)。

図8 色相のみならず明度・彩度の差をつけた色の組み合わせの例[上:調整前、下:調整後](CUDOおよびハート出版より許可を得て転載)


参考資料:
カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
岡部正隆、伊藤啓(2005)医学生物学者向き 色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
伊藤啓(2012)カラーユニバーサルデザイン 色覚バリアフリーを目指して. 情報管理 55(5)307-317

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