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引用と参考文献におけるDOIの書き方

DOI(Digital Object Identifier)とは、電子化された学術雑誌(ジャーナル)または出版物に付与されるデジタルオブジェクト識別子です。この国際的な識別子は、2000年に国際DOI財団(IDF)によって制定・導入され、出版社によって割り当てられています。登録機関固有の「10.」に続く英数字と4つ以上のプレフィックス(接頭辞)と、コンテンツを特定するサフィックス(接尾辞)をスラッシュ「/」でつなげます。このときのプレフィックスは出版社ごとに付与されている識別子で、サフィックスは出版社が個別のコンテンツに与える識別子となっています。コンテンツごとに番号が異なるDOIを付与することで、一貫した管理を可能にするのです。

 

DOIが付与されたコンテンツは、DOIの前に「https://doi.org/」を付けることで固有のURLを持つことができるようになります。つまり、「https://doi.org/DOI番号」がURLとして機能することで、コンテンツにリダイレクトされる仕組みになっているのです。例えば、「https://doi.org/10.1086/679716」と入力すれば、2015年5月にModern Philologyから出版された、Robert Mayerによる論文「Scott’s Editing: History, Polyphony, Authority」にアクセスすることができます。DOIをコンテンツへの電子リンクとして使用することで、コンテンツ(論文)を識別するのに役立つのです。電子化されたコンテンツがリンク切れなどすることなく持続的にアクセスできるようにしておくため、印刷物やデジタルコンテンツ、その他のどのような出版物にもDOIを付けておく必要があります。掲載先ジャーナルのサイトが変わってリンクが切れたとしても、DOIを管理するデータベースには情報が保管されているので、DOIが分かれば目的のコンテンツにたどり着けるのです。ジャーナル掲載論文の場合、DOIは最初のページに記入されるのが一般的です。

DOIは、DOI財団が認定しているDOI登録機関(RA: Registration Agency)によって登録が行われます。こうした登録機関は複数存在しており、日本の機関としては、科学技術振興機構 (JST)らが運営するジャパンリンクセンター(JaLC)が認定されています。認定機関によっては規約の改定、機能の追加・改修を適宜行っているので、こうした情報も確認しておくことが必要です。

引用と参照

では実際の引用と参考文献にDOIを記載する方法を見ていきましょう。まず、引用と参照の区別を認識しておく必要があります。引用とは他者の言葉や文章を自分の文章の中に括弧ではさんで挿入することで、参照とは参考にした資料を見つけるために必要なあらゆる情報を記すものです。正しく引用することで、他者の文章や発言を自分のテキストに入れ込むことが可能です。

文中で引用であることを示す場合、括弧の中に情報を入れて(Johnson 2017)と書くか、該当文に括弧付の数字(脚注番号)か上付き文字を付けて示します。参照(参考)文献リストには、引用した全ての文献をアルファベット順もしくは番号順に記載します。記載方法は投稿先ジャーナルのものなど、それぞれ所定の著者向けガイドラインに従ってください。

スタイルガイドによっては、文献リストの見だしを「References」ではなく「Bibliography」としているものもあります。この二つは同じことを意味していますが、どちらを表記するかはガイドラインを確認するようにしてください。

以下に、いくつかのスタイルガイドとそれぞれの参考文献でどのようにDOIを記載するかの例を示します。

APAスタイル(米国心理学会の定めるフォーマット)

APAスタイルは、主に社会科学の分野の論文で使われているフォーマットです。このスタイルでは、文中の引用箇所に(Johnson, 2017)のように「著者名+出版年」で記します。名前の後、出版年の前にはコンマ(,)を入れます。

このスタイルにおいて引用した文献をリストする際は、すべての電子メディアのDOIを書き込みます。APAスタイルでの一般的な参考文献の書き方は以下です。

Author, A. A., & Author, B. B. (Year of publication). Title of article. Title of Journal, volume number, page range. doi:0000000/000000000000 or http://dx.doi.org/10.0000/0000.

実際に情報を入れると下のようになります。参考文献リストでは強調するためなどでフォントを太字にすることはしません。

Morey, C. C., Cong, Y., Zheng, Y., Price, M., & Morey, R. D. (2015). The color-sharing bonus: Roles of perceptual organization and attentive processes in visual working memory. Archives of Scientific Psychology, 3, 18–29. https://doi.org/10.1037/arc0000014.

DOIは情報の末尾に書き込みます。

AMA Manual of Style(米国医師会の定めるフォーマット)

米国医師会(American Medical Association)の定めるAMA Manual of Styleは、医学薬学分野の研究者および医学や科学分野の出版業界で使われているフォーマットです。AMAスタイルでもDOIは参考文献の末尾に書きこみますが、冒頭の「https://」の部分は必要としません。例を示します。

Coppinger T, Jeanes YM, Hardwick J, Reeves S. Body mass, frequency of eating and breakfast consumption in 9-13- year-olds. J Hum Nutr Diet. 2012; 25(1): 43-49. doi: 10.1111/j.1365-277X.2011.01184.x

MLAスタイル(米国近代語協会の定めるフォーマット)

米国近代語協会(Modern Language Association)の定めるMLAスタイルは、人文系の分野で最も一般的に使用されているものです。このスタイルは、APAスタイル、AMAスタイルと若干異なり、(Johnson 15)のように文中の引用で著者名の後には日付ではなくページ番号を書き込みます。著者名が文中に書かれている場合には、引用としてページ番号だけが表記されます。
MLAスタイルでは、参考文献にDOIまたはURLを記載する必要がありませんが、ジャーナルや教授が記載を望む場合には、書き込んでおくことをお勧めします。MLAスタイルでの参考文献の記載例を示します。

Alonso, Alvaro, and Julio A. Camargo. “Toxicity of Nitrite to Three Species of Freshwater Invertebrates.” Environmental Toxicology, vol. 21, no. 1, 3 Feb. 2006, pp. 90-94. Wiley Online Library, doi: 10.1002/tox.20155.

ここで著者名が、ラストネーム(名字)とイニシャルではなく、フルネームで記されていることに注意してください(Alvaro AlonsoとJulio A. Camargoの2名の名前ともにフルネームが記載されてます)。名前は、筆頭著者の名字と名、その後に続く著者の名字と名とします。論文のタイトルは引用符で囲みます。

DOIがない場合の対応

DOIシステムが2000年に確立する前の出版物にはDOIが付けられていませんし、2000年以降のものにもDOIが付与されていないものがあります。論文にDOIが付いているか不明な場合は、登録機関のサイトで文献情報やDOIを探すことが可能です。DOIが付与されていない場合には、インターネット上のジャーナルのホームページへのリンクと合わせて「retrieved from」と出典元の情報を書いておくことができます。このとき、特定の論文を掲載しているページではなく、ジャーナルのホームページのURLを記載します。DOIのない文献をAPAスタイルで参考文献に記載する書き方の例を示しておきます。

Author, A. A., & Author, B. B. (Date of publication). Title of article. Title of Journal, volume number. Retrieved from http://www.journalhomepage.com/full/url/.

引用と参照の記載方法については、必ず投稿先のジャーナルの著者向けガイドライン、所定の書式を確認するようにしてください。

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