論文を出版する

With Editorとは?表示される期間と査読全体の所要時間

投稿した論文がアクセプトされるまでの期間は落ち着かないことでしょう。 すぐに連絡がなければデスクリジェクトされずに査読に回ったと安心するかもしれませんが、その後、あまり連絡がないとどうなっているのか不安になります。 ここでは、査読プロセスに要する一般的な所要期間について見ていきます。 査読にはどのぐらいの時間を要するのか 論文を投稿してからジャーナル編集者(Editor)から連絡が来るまでにどれぐらいかかるのが一般的だと思いますか? 原稿を投稿してからの標準的な査読期間は6~12週間程度とされていますが、分野によっても学術ジャーナルによってもかなり違いがあり、一概に何週間/何か月とは言い切れません。 外部査読者にわたる前の編集部内部での初期審査(コンプライアンスチェックなど)にも一定の期間がかかる上、査読が開始されてからも分野によって査読期間は異なります。 査読プロセスと所要時間【With Editorの期間】 では、査読のプロセスごとにどの程度の期間を要するのかの一例を見てみます。 黄色くハイライトしている部分が、ステータスとしてWith Editorと表示される段階です。 プロセス 所要期間(目安) チェック内容…

学術ジャーナルのEditorial Officeについて

学術ジャーナルに論文を投稿すると、原稿の受付から査読の進行、採否の連絡まで、さまざまな場面でEditorial Officeとやり取りすることになります。 ここでは、Editorial Officeがどのような組織で、どのような役割を担っているのかを見ていきます。 学術ジャーナルにおけるEditorial Office=編集事務局とは 学術ジャーナルのEditorial Office(編集事務局/編集室)と一口に言ってもジャーナルの規模や体制によって人数や構成はまちまちです。 編集長(Editor-in-Chief)や編集者(Associate Editor)など、編集業務を行う人物を含めず、事務的な業務を行うスタッフのいる物理的な空間・組織を事務局と呼称する場合もあれば、編集者たちを含めて、論文の受付から、著者への連絡、プロセスの管理など論文掲載・ジャーナル出版にかかわる関係者全員を指す場合もあります。 ここでは、より広い意味合いの事務局についてみてみましょう。 Editorial Officeの担う役割 ジャーナルが購読型の紙媒体で刊行されていた時代から、電子化、オープンアクセス(OA)化を経て、さらに生成AIが登場するようになり、ジャーナルのEditorial Officeが担う役割は大きく変容しています。…

学術ジャーナルにおけるAssociate Editor(AE)の役割

学術ジャーナルにおけるAssociate Editor(AE)とは、投稿された論文ごとに選任され、その論文の審査プロセスに責任を負う編集担当者のことです。 日本語では「編集委員」や「副編集者」などと訳されます。具体的には、担当原稿の読み込み、適切な査読者の選定と依頼、査読結果に基づく採否判定(Decision)までの一連の業務を担う、査読プロセスの要となる存在です。 本記事では、Associate Editorが選任されるタイミングから、査読者の選定、Decision Letterの作成まで、ジャーナル編集の工程に沿ってその役割を解説します。 ジャーナルにおけるAssociate Editor(AE)の役割 このAssociate Editor(AE)が、ジャーナル編集の工程において実際、どのような作業を担うのかについて見ていきましょう。 単なる「Editor」でなく、連携する存在であることを示す「Associate」が付くことからも、編集長(Editor-in-Chief=EiC)のようにジャーナル全体の方向性を決定づける固定された役割ではなく、論文ごとに選任され、その論文の審査のプロセスに責任を負う立場にいるのがAssociate Editorです。 ジャーナルの分野や規模によっても異なりますが、Associate Editorの役割は、大まかに言うと、担当する原稿に目を通し、内容の専門性が合致し、利益相反に抵触しない適切な査読者を選び、査読者たちのフィードバックを元にその原稿の出版可否を判定するといった一連の業務です。 Associate…

論文投稿ステータスEditor decision startedの意味とは?

査読付きジャーナルに投稿した原稿のステータスが「Editor Decision Started」となっている場合、原稿はいまどのような状況に置かれているのでしょうか。 査読付きジャーナルにおける投稿ステータスEditor decision startedとは Editor Decision Startedとは、編集長・編集部が出版可否(Accept/Reject)や、どの程度の改訂(Major Revision/Minor Revision)が必要か、あるいは別のジャーナルへの論文トランスファーを提案すべきかなどの判断を行っている段階を指します。 Editor Decision StartedとDecision in…

論文投稿ステータスEditor Assignedの意味とは?

投稿した論文原稿のジャーナルでのステータスが「Editor Assigned」となっている場合、原稿はどのような状況に置かれ、それは、論文出版プロセスのなかでどのように位置付けられるのでしょうか。 ここでは、「Editor Assigned」というステータスの意味、このステータスがどの程度の時間続くのか、そして他のステータスとの関連性などについてみていきます。 論文投稿ステータスEditor Assignedの意味とは? Editor Assignedは通常、その論文原稿の担当編集者が決まった段階で、まだ査読や、査読者へ打診も行われていない状況のことを指します。 Editor AssignedとEditor Invitedの違い 一方、ジャーナル編集部が初期のスクリーニング後、複数の編集者(Associate Editor)の中からその論文原稿の担当編集者を選び打診している状況がEditor Invitedです。 編集者がその打診を受諾した段階でステータスがEditor…

Letter to the Editor(LTE)とは?役割・内容・単語数制限を解説

学術ジャーナルにおけるLetter to the Editor(LTE=編集者への手紙)とは、主に、そのジャーナルに掲載された論文に対するコメントや疑問、懸念などを簡潔に記述するものです。 ジャーナルによっては特定の症例や発見についての短い報告や、読者層の興味の対象となるような短文を同じ枠内で受け付けています。 単にLetter、あるいはCorrespondenceという名称の枠で同様の投稿記事を掲載するジャーナルもあります。 Letter to the Editorの投稿規程:原著論文との違い Letter to the Editorの掲載枠のあるジャーナルであっても、受け付けられている原稿の内容や、単語数・参考文献数・図表などについての制限、対象論文掲載時からの投稿受付期間などに関するポリシーはそれぞれ異なります。 従って、この掲載枠への投稿を検討する場合は、他の掲載枠(原著論文、症例報告等)への投稿の際と同様、著者ガイドラインで規程を細かく確認することが必要です。…

ICMJE Recommendations:2024年更新ではAI使用における透明性の確保を強調

世界の主要な医学雑誌の編集者や出版社の集まりである医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors, ICMJE)の「Recommendations for the Conduct, Reporting, Editing and Publication of…

研究報告ガイドラインの発展と学術出版への影響、今後の展開

はじめに 根拠に基づく医療(Evidence-based medicine: EBM)運動は、1980年代初頭に登場し、そこからの10年間勢いを増していきました。この運動は、「EBMの父」とされるカナダの医師デイヴィッド・サケット(David Sackett)の発案に基づくもので、看護や助産などのさまざまな分野の臨床実践全般にわたって広がっています。 EBMは、臨床医が各分野の根拠(エビデンス)を検討し、取り入れることで、患者にとって最善の治療法を決定するためのメカニズムを提供することを目的としています。「個々の患者のケアに関わる意思を決定することにおいて、最新かつ最良のエビデンスを、良心的、明示的な態度で、思慮深く用いること」と定義されるEBMは、主に個人または臨床医のグループを対象としたものでした。しかし、この分野がより洗練されるにつれ、EBMは組織(団体)や政府の保健関連省庁が医療政策を決定し、経済的制約の中で最良の治療と考えられるものに資金を直接振り分けるためのツールとなってきました。 研究報告ガイドラインの発展 研究の透明性を向上させるための構造化されたチェックリストを提供する研究報告ガイドラインは、研究報告における矛盾(不整合)への対応として登場しました。ランダム化比較試験 (またはランダム化対照試験、Randomized Controlled Trial: RCT)に大きく依存する高度な分析方法やデータ提示方法が開発され、エビデンスに基づくレビューがRCT自体よりも信頼できる根拠になると、こうしたレビューがヘルスケア分野のジャーナルの主な特徴となりました。この状況は今も変わっていません。こうしたレビューのひとつの側面とされているのが、レビューにおける研究の品質評価です。品質にはかなりのバラツキがあり、出版されたRCT報告の中に、無作為化の手法あるいは適切に記述された対照群に関する重要な情報が欠落していたものもあったことから、1990年代の初めに、現場でのよりよい施策、特によい報告方法を推奨する動きが登場することとなりました。 よりよい報告基準の策定に向けた動きを推進したのは、主にカナダを拠点とするアイルランド人疫学者、デイヴィッド・モハー(David Moher)でした。RCT報告に関心を持っていたモハーらは、1996年にCONSORT声明を発表し、RCT報告を学術ジャーナルに提出する著者が順守すべきチェックリスト(CONSORTチェックリスト)を提供しました。これは、報告における完全性を確保し、RCT報告全般において直接的あるいは間接的にRCTを実施する際の基準を向上させることにつながっています。このような報告ガイドラインがあれば、科学者は報告段階でRCTの重要な側面をすべて説明できるようにしておかなければならないことを承知の上で、それを念頭に置いて研究をデザインすることになるでしょう。 CONSORT声明は、最初に発表されて以降、漢方薬、鍼灸、有害事象報告などの分野においてRCTを広めながら、繰り返し改訂されてきました。CONSORT声明およびチェックリストは…

学術図書の企画書の書き方

学位論文と学術図書 研究者であれば、自分の研究が魅力的で、社会の進展に寄与するものであると信じたいものです。ただ、何年も自分の研究の中に閉じこもってしまっていれば、他人が自分の研究に対して興味を持つかどうか、客観的に判断することが難しくなるかもしれません。しかし例えば、多くの読者を惹きつける学術図書にできると出版社を説得できれば、それは客観的な指標となるでしょう。 著名な作家であっても書籍を出版するのは簡単ではありませんが、研究者が本を出すとなると全く異なる困難が伴います。 例えば、研究者が早い段階で執筆する長めの文章といえば、多くの場合、学位論文ですが、これは方法や結果、結論などのセクションで構成され、学位取得の可否を決定する研究者グループに向かって書かれるもので、書籍とは目的も体裁も別物です。 学位論文は「本」ではないのです。自分の専門分野に関する独自の研究についての情報を書くものですから、それをそのまま学術図書にはできません。 学術書籍のフォーマット、読者、目的 学位論文の場合、研究、執筆、データチェック、結果の分析といった長いプロセスを経て、著者は審査委員会に論文を提出します。審査委員会は、研究の領域や内容をある程度踏まえた上で審査に臨み、さらに学生からの口頭での説明を聞きます。 対照的に学術図書の場合、読み手はその本の中で書かれた情報のみで内容を判断します。 学術図書では多くの読者が気にするのは細かなデータや再現性ではなく、大きな文脈における内容やメッセージです。つまり論文とは違った書き方や文体が必要なのです。 そうしたメッセージ伝達手法を学ぶ上では、多くの本を読み、優れたストーリーテリングに触れることが有効でしょう。どのようにして読み手を引き込むか、著者の語りの戦略に着目し、自分のライティングにも取り入れられるようにしましょう。 また、修得した技法をこまめにアウトプットすることが、ライティング技術習得の近道です。さまざまな媒体でできるだけ頻繁に執筆することがよいでしょう。 ブログなどオンラインで、ある程度のボリュームのある文章を発信し続けることも一つの方法です。継続すれば、文体や表現の幅は広がっていくはずです。 書き始める前に 実際に学術図書としての書籍化を目指して執筆する前に、次のようなことがらを自問しておくとよいでしょう。 自分の熱意。…

【9/2までアンケート実施中】研究インテグリティと論文撤回:倫理的不正行為にまつわる影響と対応を理解する

2024年も半ばを迎えようとしている現在、学術研究と出版における大きな話題の一つが「研究インテグリティ(研究公正)」です。 論文の撤回件数・撤回率が増加し続けている*ことなどからも、研究インテグリティの確保は喫緊の課題と言えるでしょう。データや画像の改ざん・捏造、盗用・剽窃、研究方法の不備、AIツールの使用を開示しないこと、といった様々な理由による論文撤回は、論文として出版された研究全体への疑念を生み出します。 また、研究不正のニュースは、学術界の内輪だけの問題にとどまらず、科学や研究に対する社会の視線にも影響を及ぼします。 そこでエナゴでは、エナゴ学術英語アカデミーの研究リスク評価イニシアチブの一環として、第8回グローバルアンケート調査を実施いたします。「研究インテグリティと論文撤回:倫理的不正行為にまつわる影響と対応を理解するためのグローバルアンケート調査」と題するこの調査は、研究インテグリティに関する調査としては前回の第7回に続く第2弾となります。 本アンケート調査の主なねらい 今回は、論文撤回と倫理的不正行為に焦点を合わせて研究者の意見を募り、その影響について探ります。アンケート調査の主な目的は以下のとおりです。 1. 適正か不正かがあいまいなグレーゾーンを明らかにして倫理的な研究の未来像を描くため、倫理指針に対する研究者の皆様の認識と意見を評価する 2. 研究不正を調査するための現在の報告の仕組みを評価する 3. 論文撤回と研究不正の広範な影響を明らかにする 4. 研究インテグリティを確保する上での学術出版関係者の役割を明らかにする  …