学術界を知る

ノーベル賞受賞者へのインタビュー特集

毎年、アルフレッド・ノーベルの命日である12月10日に授賞式が行われるノーベル賞。2025年は、生理学・医学部門で大阪大学特別栄誉教授の坂口志文(さかぐち しもん)先生が、化学部門で京都大学理事・副学長の北川進(きたがわ すすむ)特別教授が受賞者となりました。 エナゴでは、北川進先生を含めてこれまで3人のノーベル賞受賞者へのインタビュー記事をサイトにて公開しています。 中村修二 (なかむらしゅうじ)博士へのインタビュー 2014年 ノーベル物理学賞受賞者 企業に籍を置きながら単独で青色発光ダイオード(LED)を開発し、その後カリフォルニア大学の教授職に就かれた中村修二先生は、LEDの研究開発の功績で2014年のノーベル物理学賞を受賞。核融合発電の実現に取り組むなど現在でも精力的に研究を続けられています。インタビューはノーベル賞受賞前の2007年にエナゴが実施。留学時代のエピソードや初めて自分が行った授業のことなど、英語とどのように向き合ってきたかを中心にお話を伺いました。 ♦トップ研究者インタビューby エナゴ 中村修二氏へのインタビュー 「英語での初講義。緊張して気絶しそうでした」 https://www.enago.jp/interviews/drnakamura   益川敏英(ますかわ としひで)博士へのインタビュー…

公共財の効率性と公共性について:図書館から考える

公共財としての図書館―場所/情報 2025年3月末、東京都清瀬市の公立図書館6館のうち4館が閉鎖され、それに伴い4月1日より図書館から市民への本の無料宅配が始まりました。 施設の閉鎖についての言及のない施策案「清瀬市図書館サービス基本方針(素案)」[1]に対するパブリックコメント(意見募集)が2024年1月4日から1月24日にかけて実施された後、2月20日および24日に説明会が開催され、図書館の統廃合を含む改正条例案が2024年3月の市議会に提出されたというのが前年の流れです。市民の意見が十分に吸い上げられず十分な説明が行われていないことを批判する議員もいた中、条例案は賛成多数で可決され、約1年後の図書館統廃合と書籍の宅配開始が決まり現在にいたります[2]。 条例改訂の理由を市の担当者は「市立図書館としての効率効果及び市民ニーズを考慮しつつ、新たな図書提供の在り方を模索する中で、現在の地域図書館を整理すること。あわせて全市立図書館に指定管理者制度を導入して、効率及び効果的な管理及び運営ができるよう、規定を整備する」としており、また「電子書籍の充実、スマートフォンやホームページを活用した予約サービスの充実、貸出し図書の宅配サービスなど、来館しなくとも本が借りられる環境整備が求められていると分析」していると述べています[3]。 一方、反対派議員のひとり(ふせ由女議員)は図書館を「知的成長のための大切な基盤」とし、「単に本を借りる場所ではなく、新たな偶然による意図しない本との楽しい出会いや、その場で実際に関連図書を手に取って参照したり、比較したりできる、実践的で効果的な学びの機会が凝縮された場所」として、宅配サービスが図書館の廃止を補うものではないと主張しています。 清瀬市の図書館のあり方に関しては、市民の間でも様々な意見もあるようですが、一連の議論は、住民以外にとっても、公共財の公共性や公共図書館などについて考えるヒントになるかもしれません。 「知る権利」を保証する図書館 日本図書館協会による「図書館の自由に関する宣言」[4] は、「図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする」としています。ここでは図書館は、「知る権利」を保証するものであると定義づけされています。 (身体的なハンディや居住地、勤務時間などの理由で)開館時間内に図書館を訪れることができないことによる情報へのアクセスの阻害を解消するという意味においては、本の宅配は市民の知る権利の保証にもつながるでしょう。しかし、取り寄せができる資料のほとんどは、図書館以外の場で情報を得ることのできたものに限られるでしょう。そしておそらく、リアルな空間/場所としての図書館を重んじる人々が公共図書館に託する役割はもっと大きなものです。 「民主的教育機関」としての図書館 1949年に初版が発表されたユネスコの「公共図書館宣言」[5] は、公共図書館を「民主的教育機関 (Democratitc Agency…

基礎研究をめぐる日本の状況

基礎研究とは 基礎研究とは、人類が理解していない現象を理解するために行う研究であり、文部科学省(以下、文科省)の2014年の資料によれば「特別な応用、用途を直接に考慮することなく、仮説や理論を形成するため、又は現象や観察可能な事実に関して新しい知識を得るために行われる理論的又は実験的研究をいう。」と定義されています。 基礎研究の成果は、着実に次の研究の下支えとなっています。例えば、新型コロナウイルスが猛威を振るったとき、ウイルス学や病理学の基盤があったからこそmRNAワクチンを短期間で開発することができました。また、ニューラルネットワークの研究の積み重ねがあったからこそ、近年の人工知能(AI)の急速な発展が実現したのです。つまり、基礎研究はその成果が発表された時点で直接的な経済効果につながらなかったとしても、巡り巡って人々の生活に役立ち、経済にもプラスの効果をもたらすものであるということです。 基礎研究の重要性 基礎研究の重要性 基礎研究の成果は、実用化につながらなかったり、具体的な利益につながるとしても時間を要したりするものです。5年、10年という短期ではなく、100年単位の長期で考えれば、基礎研究は確実に世の中の「役に立つ」ものなのですが、外から見ると何をやっているのかわからないことも少なくなく、「役に立たない」と思われてしまうこともあるでしょう。 2024年にニューラルネットワーク研究者のJohn J. Hopfield氏とGeoffrey Hinton氏がノーベル物理学賞を受賞した際、一般社団法人人工知能学会の会長栗原聡氏が、情報処理に関する研究が受賞したことに驚き、「毎年この時期になると皆が納得するものの,すぐに忘れてしまうのが,基礎研究の重要性である.」とのコメントを発表したのは印象的でした。 ノーベル賞が発表される10月には受賞者の功績に惜しみない讃辞を贈るのに、11月になるとみんな忘れてしまうと指摘しつつ、基礎研究については抜本的な対策が必要であると問題提起していました。多様な基礎研究は、いつかどこかで人類への貢献につながるのです。 基礎研究力の低下が国際競争力の低下につながる 栗原会長のコメントは「かつての日本はこの基礎研究にしっかり取り組んでいたし,なのでノーベル賞を受賞される研究者も誕生してきた.しかし,現在の日本は極端な言い回しをするなら直近しか見えなくなってしまっている.研究費を無駄にしないためにも必ず成功して事業化することが求められる傾向がどんどん強くなっている.」と続きます。実際、大隅良典氏や本庶佑氏をはじめとする歴代のノーベル賞受賞者の多くが日本で基礎研究が軽視される傾向にあることに対して危機感を示しており、基礎研究の価値を指摘しています。 基礎研究は、既存の問題や技術の限界を打破する可能性を有していますが、どの基礎研究がいつ、どのように画期的なイノベーションにつながるかは当の研究者ですら分かりません。だからこそ、多くの研究者がさまざまな研究を続けていくことが不可欠であるにも関わらず、2000年代初頭に科学技術政策に「選択と集中」の考え方が導入されてから、基礎研究は危機に瀕していると指摘されています。 基礎研究を極めた研究者が勝ち取ったノーベル賞…

日本政府がAI国力の強化を目指し、AI基本計画骨子案(たたき台)を策定

人口知能(AI)の開発と利用が世界で急速に進む中、AIの利活用が十分に進んでいるとは言えない日本の状況を打破するべく、日本政府は2025年9月12日に初の「人工知能基本計画骨子(たたき台)」を公開し、AIの開発と利活用を政府として後押ししていく考えを示しました。本記事では、AI基本計画(たたき台)のポイントについて概説し、AI促進による科学研究への影響について考えてみます。 人口知能(AI)基本計画とは 人工知能基本計画(以下、AI基本計画)とは、2025年6月4日に施行された「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)」に基づく国家戦略として位置づけられた、AIの研究開発や利活用を促進するための基本的な計画です。2025年9月12日に内閣総理大臣を本部長とする「人口知能戦略本部(AI戦略本部)」の初会合が開かれて議論がスタートし、AI基本計画骨子(たたき台)を公開しました。この会合の開催にあたり、当時の石破茂首相は「AIは、社会課題の解決や産業競争力の強化を実現する技術であり、安全保障上も極めて重要」と述べています。AI基本計画は、AIの技術開発や活用の推進に関する国の作戦のようなもので、今後、有識者や調査会などの意見も踏まえて計画案を作成し、パブリックコメント(意見公募手続き)を経て2025年内に閣議決定することを目指しています。 AI基本計画策定の背景 政府がAI基本計画の策定を急いでいる背景には、日本がAIの開発および利活用で国際競争に出遅れている現状があります。安全保障やさまざまな産業の競争力の強化にはAIが欠かせないとして、アメリカと中国を筆頭に各国で開発が進められていますが、AI戦略本部会合の資料には、日本のAI利活用率と投資額が米中に大きく遅れを取っていることが示されています。 特に、大規模言語モデル(LLM)の急速な発展に後押しされているChatGPTなどの対話型生成AIは、すっかり日常生活に浸透しているように見えますが、生成AI利用率でも個人・法人ともに米中に大きく水をあけられており、民間投資額(世界14位、約9億円)に至っては米国(世界1位、約1,091億円)の約1/121です。 しかも、国内で利用されている生成AIは米国で開発されたものが主流であるといった開発力の問題や、フェイク画像が簡単に生成できるといった利用に関する懸念など、憂慮すべき課題も多々あります。 出典:人口知能戦略本部(第1回)資料2-1 ⼈⼯知能基本計画の⾻⼦(たたき台)の概要について 日本政府は「AIを使わない」ことが最⼤のリスクであると明言し、「反転攻勢」をコンセプトに⽇本のAI投資・利活⽤を推進しようとしています。 日本のAI戦略の基本構想とAI基本計画 日本のAIに関する基本構想として「世界で最もAIを開発・活⽤しやすい国」を⽬指すとの国家戦略のもとで策定されているAI基本計画には、「イノベーション促進とリスク対応の両立」「PDCA(計画・実⾏・評価・改善)と柔軟・迅速(アジャイル)対応」「内外一体の政策展開と国際連携」の3原則と、「AIを使う」「AIを創る」「AIの信頼性を高める」「AIと協働する」の4方針が掲げられています。 平成31年に内閣府が発表した「人間中心のAI社会原則」が堅持されてはいますが、AI基本計画では人間とAIの「協働」を推進し、制度や社会の仕組みを継続的に変革していくことの重要性が強調されています。生成AIの登場から最近の急速な利用拡大により、これまでは人間が担ってきた業務をAIが支援または代行するようになったことで「人間とAIの協業」が注目されていることを踏まえたと見られます。 もはやAIの導入は単なる技術的な変化に留まらず、労働市場(雇用)、教育、産業の在り方といった人間の活動、さらには社会全体に影響を及ぼすものとなっており、産業構造や教育・雇用制度の見直しが必要であると認識されているのです。 AIの発展と科学研究 -…

AIによる研究不正とデータ操作のリスク

人工知能(AI)の登場は、科学研究を含む広範な分野に革命をもたらしました。 データ分析から予測モデリングまで、AIは様々な形で研究分野に貢献するようになっています。しかし、AIを過度に使用したり使い方を間違えたりすれば、問題を引き起こすとリスクがあるのは否めません。AIは新たな科学的発見の機会を増やすとともに、そのスピードを速め、膨大な量のデータを分析することが可能な反面、科学的な不正行為やデータ操作における懸念につながる恐れもあります。 学術的・科学的不正行為は、知的公正性に対する脅威であり、さらなる研究の進展を妨げるものです。 問題となったデューク大学におけるがん研究不正にしても、幹細胞研究不正にしても、関与した研究者がキャリアを絶たれ、研究活動からの撤退につながりました。このような事件は、学術研究コミュニティの信頼性に疑問を投げかけるだけでなく、科学的公正性(研究インテグリティ)に対する大きな脅威と言えるでしょう。 データ操作と科学的不正行為の影響 不正なデータ操作は、研究の質と科学的信頼性に重大な影響をもたらしかねません。データ操作および科学的不正行為がもたらす影響を以下に挙げます。 科学研究におけるAIの脅威 AIを使用する際には、いくつかの隠れたリスクが伴い、科学的公正性を損なう恐れがあることを認識しておく必要があります。科学研究におけるAIの脅威を、以下に示します。 1. 剽窃・盗用 AIアルゴリズムは、研究論文、学術論文、科学報告書などの文章を生成することができるので、論文の執筆を自動化することはできますが、AIが生成したコンテンツを誤ってそのまま使用してしまうとの懸念があります。しかも、AIアルゴリズムは人間の文体を忠実に模倣した文章を作成することができるため、AIが生成したコンテンツと人間による著作物を区別することが難しくなっています。 2. 誤情報 AIが生成したコンテンツの真偽を確認しないまま使用すると、不正確な情報や誤解を招く情報を広めることに成りかねません。AIが生成するコンテンツが洗練されていると、誤解を招く情報を特定することがより困難になります。また、AIが誤った情報を参照するリスクもあり、情報の出所を追跡し、その真偽を確認することは困難です。 3.…

研究加速プログラム「academist Prize 第5期 supported by infomart 基礎研究で、世界を変える。」キックオフイベント参加レポート

クラウドファンディングやサポーター制度などを通じ、開かれた学術業界の実現を目指すアカデミストが2021年より行っている若手研究者向け研究加速プログラム「academist Prize」。第5期の採択者発表&キックオフイベントが、2025年9月2日(火)に、東京大手町のInspired.Labで開催され、エナゴのマーケティング担当とライターも参加しました。 今期のプログラム「基礎研究で、世界を変える。」では、新たな研究資金分配のスキームが導入されています。9月2日(火)から10月30日(木)の約2か月間をクラウドファンディング支援期間とし、この期間にチャレンジャーが得たクラウドファンディングの支援金と支援者数に応じ、最大1,000万円の賞金総額(マッチングプール)のうち一定額がチャレンジャーたちに分配されます。 イベント前半では、今期のチャレンジャーに選ばれた10組が、研究で何を成し遂げようとしているのかをそれぞれ3分間で発表。幅広い目的や方法についての熱心な説明が行われました。学部生から助教と、幅広い研究キャリアにいる若手研究者たちのピッチに耳を傾けました。   1. 山田 大夢さん(奈良先端科学技術大学院大学、博士後期課程1年) 目標:環境にやさしいグリーン溶媒利用拡大 プロジェクトページへ:化学者 × AIで環境や人体に優しいグリーン溶媒の利用を拡大させたい!   2. 西本…

業界を超える「学際」で新たな価値をつくる – 京大・宮野公樹氏と探る、研究と社会のこれから イベント参加レポート

クラウドファンディングやサポーター制度などを通じ、開かれた学術業界の実現を目指すacademistが2021年より行っている若手研究者向け研究加速プログラム「academist Prize」。第4期のファイナルイベント『業界を超える「学際」で新たな価値をつくる - 京大・宮野公樹氏と探る、研究と社会のこれから』が2025年8月28日(木)に、東京大手町のInspired.Labで開催され、エナゴのヴァイス・プレジデントのラジブ・シルケとマーケティング担当、ライター、営業担当が会場で参加しました。 イベントはサイエンスコミュニケーターで「academist アンバサダー」の佐伯恵太さんの進行により、前半では「academist Prize」4期生7名がそれぞれの1年を総括して発表するピッチが、後半では、京都大学学際融合教育研究推進センターの宮野公樹さんと、株式会社バイオインパクトの杉原淳一さんによるトークセッションが行われました。 「academist Prize」4期生7名による発表 私にとっての「1,000 True Fans」とは? 前半のピッチで7名の登壇者に割り当てられた時間はそれぞれ5分。この中で1年間のプログラム期間中に、何ができて何ができなかったか、目標をどの程度達成できたのかなどをそれぞれが発表しました。 「美しさ」についての研究を行っている櫃割仁平さんは、「コミュニティーマーケティング」を行うために「あいまいと」というコミュニティを約1年前にローンチ。研究の種を出し合って、プロジェクトとして成立させていくというアプローチを続けてきた中で、職業研究者ではない共同研究者とポッドキャストに関する研究論文も発表しました。コメントをくれる人、人や機会をつないでくれる人など、様々な関わりのファンを作ることができ、ビジョンを共有できたとのことでした。 高齢者福祉の分野で研究を行う金子智紀さんも、academist 内外の取り組みで、自分のやりたい思いを、一緒に広げていく仲間も獲得されました。介護先進国である日本の介護施設の事情や介護体制についての情報に対する海外からのニーズも多く、金子さんは、それを財源に、介護事業や研究を進めるという循環を模索しているとのことです。…

大学発ベンチャーの事例

前編・大学発スタートアップベンチャーの今では、経済産業省の調査報告を基に、日本における大学ベンチャーの現状と政府支援についてお伝えしました。後編では、2025年時点でのいくつかの事例と大学発ベンチャーが抱える課題について取り上げます。 大学発スタートアップの状況 経済産業省の「令和6年度産業技術調査(大学発ベンチャー実態等調査)報告書」によると、大学発スタートアップ数のトップは東京大学(468社)で、京都大学、慶應義塾大学、大阪大学と続きます。2023年度からは2位の京都大学と3位の慶應義塾大学の順位が反転していますが、いずれも昨年に比べて企業数は大幅に増えています。複数の大学が関与しているケースでの重複カウント、実態把握におけるタイムラグ、さらに経済産業省の定義に基づく調査の結果であることも踏まえると、大学が公認している数とは多少の差が出ている可能性もありますが、国立大学系からの大学発ベンチャーが強い傾向は健在です。 出典:経済産業省 令和6年度 産業技術調査(大学発ベンチャー実態等調査)報告書 スライド17 興味深いのは、右表で示されているように一部の大学で顕著な伸びが見られていることです。企業数では24位(47社)の関西大学は前年比で500%を超える伸びで増加率1位となっています。本記事では、企業数順位に比べて変動の激しい増加率順位の中で高順位を保っている情報経営イノベーション専門職大学ほか、いくつかの大学発ベンチャーの取り組みを見てみます。 情報経営イノベーション専門職大学 2020年4月に開学した情報経営イノベーション専門職大学(iU)は、情報経営イノベーション関する専門知識・スキルの習得に特化した大学です。「ICT(注:Information and Communication Technology、情報通信技術)テクノロジーやビジネススキルを活用して社会課題を解決するエンジニア、コンサルタント、起業家として、世の中に新しいサービスやビジネスを生み出すイノベーターを育成」することを目的に、産業界で活躍してきた実務家を教員として迎え、起業に必要な知識とスキルを徹底的に学ぶためのカリキュラムを提供します。 在学中から産学連携プロジェクトに携わることができるだけでなく、学内外から企業についての助言や出資を得ることができる、卒業生が起業する際には大学キャンパスで法人登記ができるなど、起業にチャレンジできる制度が充実しています。卒業後の進路のひとつとして「起業」を念頭に入れたカリキュラムを提供していることが起業意向の強い学生を呼び込み、学生の「起業」を全面的にバックアップする―その結果が、先述した大学発ベンチャーの実態などに関する調査で国内大学における前年比増加率で好成績(令和4年度および5年度報告で1位、令和6年度年度報告では4位)を記録し続けている実績につながっていると言えそうです。 東京科学大学 2024年10月1日に東京医科歯科大学と東京工業大学が統合し、東京科学大学が設立されました。…

大学発ベンチャーの今

「大学発ベンチャー」または「大学発スタートアップ」と称される、大学に所属する研究者が投資家から資金を調達して事業を立ち上げる動きが社会にイノベーションをもたらしています。広い意味では「スタートアップ(startup)」は「ベンチャー(venture)」に含まれるとも言えますが、この2つには成長戦略および成長速度に違いがあるとされています。とはいえ、日本政府は「大学発ベンチャー」および「スタートアップ」を厳密に区別することなく支援しています。本記事では、日本における大学発ベンチャーの状況を前編、事例などを後編に分けて紹介します。 大学発ベンチャーとは 「大学発ベンチャー」とは、新しい市場の創出を目指して大学に潜在する研究成果を掘り起こし、新規性の高い事業に反映させるべく設立されたベンチャー企業のことです。経済的なイノベーションをもたらすことが期待されており、今ではさまざまな分野や業種に広がっています。 大学発ベンチャーへの期待 「大学発ベンチャー」は、新しい技術や従来にない斬新なアイデアを事業として新しい製品やサービスを提供する企業で、大学と深い関係を持っています。近年はIT系に限らずさまざまな分野に登場しており、イノベーションの担い手として大きな期待が寄せられており、特に近年は、ディープテックと呼ばれるAI(人工知能)や量子コンピュータ、再生医療などに関連する最先端の研究成果を事業化する大学発ベンチャーが注目されています。文部科学省が、今までの常識を壊すような過去に事例の無いビジネスを生み出す「破壊的イノベーション」だと記していることにも期待の高さが垣間見えます。 出典:文部科学省「いま、大学発スタートアップが熱い」より 日本政府による支援 何といっても大学発ベンチャーの強みは大学における最先端の研究成果を事業に反映させることができることです。日本政府は、大学等が新規事業を創出するのを支えるエコシステムの仕組みを形成すべく、「ディープテック・スタートアップ国際展開プログラム(D-Global)」と「スタートアップ育成5カ年計画」を策定し、支援体制を整えています。 D-Globalは、大学等発の技術シーズを核にして、社会・経済に大きなインパクトを生み、国際展開を含め大きく事業成長するポテンシャルを有するディープテック・スタートアップの創出を目的とするもので、スタートアップ育成5カ年計画は、大学等発スタートアップの継続的な創出を支える人材・知・資金が循環するエコシステムを全国に形成することを目的とするものです。D-Globalは2025年5月13日を締め切りに第3回公募が行われていました。 文部科学省におけるスタートアップ支援施策を中心とした支援により大学発ベンチャーの数は年々増加してきています。2025年6月6日に発表された経済産業省の「令和6年度産業技術調査(大学発ベンチャー実態等調査)報告書」によると大学発ベンチャーの数は、2014年度以降増加傾向にあり、2024年10月時点で5,074社と、2023年度(4,288社)からさらに786社増加し、企業数および増加数ともに過去最高を更新しました。政府は、2026年度の中間目標で累計4,000件、2027年度に5,000件の支援を行うことを目標としていましたが、この目標を前倒しで達成したことになります。 出典:令和6年度 産業技術調査(大学発ベンチャー実態等調査)報告書 *この調査の対象には、大学、高等専門学校の他、国内の特定非営利活動法人(NPO法人)、一般社団法人や個人事業主等も含まれている。 大学発ベンチャーとディープテック:期待の分野 大学発ベンチャーで特に注力分野とされているのが、世界的な経済社会課題を解決し、社会にインパクトを与える潜在力のあるディープテック、つまり人工知能(AI)、量子コンピュータ、宇宙、核融合、再生医療等の技術分野です。大学や研究機関で生まれた高度で先進的な研究結果がディープテック・スタートアップのシーズ(種)となることから、大学からの積極的な技術移転が期待されています。技術移転のひとつのやり方として大学発ベンチャーを立ち上げれば、その技術を社会実装するチャンスが広がるだけでなく、ライセンスを有する技術の移転が外部資金獲得につながる可能性も有しています。…

ICMJE Recommendations:2024年更新ではAI使用における透明性の確保を強調

世界の主要な医学雑誌の編集者や出版社の集まりである医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors, ICMJE)の「Recommendations for the Conduct, Reporting, Editing and Publication of…