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Brexitが招く共同研究の危機

Brexitといえば、Britain(イギリス)とexit(脱退)の合成語で、イギリスがEUから脱退することです。2016年6月23日に行われた離脱の是非を問う国民投票で、僅差でEU離脱が上回って以来、世界中がイギリスの動向を見守っています。このBrexitの影響は、国際政治だけでなく経済など多方面に広がっていますが、学術界も例外ではありません。欧州連合(EU)中の大学が不安に晒されています。

■  EUの学術支援とイギリスの関わり方

EUは、その発足以来、ヨーロッパ全域での研究者達の自由な共同研究を推進・支援しています。EUが主導する学術プログラムに「Horizon 2020」がありますが、イギリスはこのプログラムを牽引してきました。これは、2014年から2020年までの7年間にわたり全欧州規模で実施される研究およびイノベーションを促進するため、約800億ユーロの公的資金が、優れた研究や革新的開発に助成されるプログラムです。

Brexit以後イギリスはHorizon 2020を始めとしたEUの学術支援体制にどのように関わって行くのでしょうか。この議論は遅々として進まず、曖昧なままになっているのが現状です。

■ イギリスの大学が直面する将来への不安

英国大学協会の学長であるジャネット・ビア教授は、2019年の研究費の助成や学生向けの交流プログラムの申し込みが迫っているため、Brexit後もイギリスの大学がHorizon 2020に参加し続けることができるのか、早急に明確にする必要があると発言しています。このプログラムからイギリスの大学が外された場合、イギリスの研究者達は、重要な研究ネットワークを失うことになります。Brexit後のことが早々に解決されない限り、欧州での大規模な研究は失速しかねないと、教授は懸念しているのです。

また、教授は、Brexitが大学生達に与える影響についても指摘しています。EUは、2014年から2020年の7年間、教育・訓練向上を目的とするプログラムである「エラスムス・プラス(Erasmus +)」において、総額約147億ユーロを留学奨学金としてのべ200万人以上の学生に提供することにしています。イギリスからも毎年約3万人の学生がこのプログラムに参加しているので、このプログラムがイギリスに適用されなくなった場合、多くの学生達が貴重な学習機会を失うことになるのです。

■ 政府は科学者の不安を払拭できるのか

大学・科学・研究・イノベーションを担当する国務大臣であるジョー・ジョンソン氏によると、イギリスの科学とイノベーションのさらなる発展を保障すべく、イギリス政府は、EUとの間で自国の研究者達にとって好ましい協定を結ぶよう最大限努力するとしています。

イギリスの経済発展のためには共同研究が欠かせないことを大臣も認識しており、そのためにもEUとの協力関係を将来も継続するつもりであると発言しています。イギリスとEUの協力関係が保たれれば、イギリスの科学者達はEUの科学者達との共同研究を続けられることになりますが、一方でEUは、イギリスがEU本部との協定を締結できない場合はイギリスの研究者達はHorizon2020の助成金を受けられなくなると警告しています。

大臣は、EUの優秀な学生達にイギリスで学位をとるよう勧誘することにより、EUのトップ層の研究者を自国に集めることもできると述べています。Brexit後もEUの学生達は大歓迎であり、さらなる高等教育への奨学金の用意をする考えもあるようです。

■ 計画はどう転ぶ?

ジョンソン大臣は、イギリスが計画する新たな大学の評価方法についても言及しています。今のところイギリスの大学は、教育と研究の質の両方をもとに評価されていますが、新しい評価基準は、研究成果をいかに効果的に商業化できるかを考慮・奨励するものになるようです。

さらに、産学の知識交流を促すフレームワークの中では、大学が研究に派生する独立会社を設立しているか、知的財産ライセンスを所有して企業との連携事業を行っているか、などを評価対象とします。大臣は、スーパーカー製造業者のマクラーレンがシェフィールドに工場を設立するきっかけとなった、シェフィールド大学の最新の製造・研究センターを産学協力の一例としてあげています。政府はこうした実利を重視する対策を働かせることで、EU離脱後もイギリスを研究者にとって魅力的な環境に保ち、優秀な人材を維持・流入させたい考えです。

現在のところ、Brexitについての優先議題は通商や財政、アイルランドとの国境問題などであり、研究や高等教育については次の段階で話し合われることになりそうです。とはいえニュースでよく見られる通り、イギリスとEUが互いに有利な条件を譲らず、離脱交渉は遅々として進んでいないのが現状です。研究者や、研究者を志す学生をやきもきさせてならない現状が、どう転ぶのか。懸念は続きそうです。

参考記事
The government wants a Brexit deal on science and research, says Jo Johnson (英語, the gardian

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