間違いやすい用語や表現 - bigとlittle

形容詞「big」と「little」は、(例(3)、(4)、(5)で示す「little」の用法を除いて)口語的とされるため、原則として学術論文など、正式な書き言葉を必要とする文章では避けるべきです。

ここで、「big」と「little」に共通する一つの用法と「little」にしかない二つの用法を個別に考察します。

「big」と「little」に共通する用法は以下で例示されます。

[誤] (1) The value of this quantity in the present case is bigger/littler than in the case studied above.

ここでの「bigger/littler」の用法に関して注目すべき点が二つあります。その一つは、口語的な形容詞「bigger/littler」が文全体のスタイルと食い違っていることです。もう一つは、「bigger/littler」によって修飾される名詞「value」が可算名詞となっていることです。このような場合には「big」、「little」をそのまま(口語的でない)「large」、「small」に置き換えることができます。

次の文は「little」独特の用法を例示します。

[誤] (2) The value of this quantity in the present case is a little larger than in the case studied above.

ここでは、「little」は形容詞ではなく、「a」とセットで副詞として形容詞「larger」を修飾している、ということに注目してください。このような用法はかなり口語的です。学術論文では、一般に「a little」の意味を示すのに「slightly」が適切です。

下記の例文で示される用法も「little」独特のものです。

[正] (3) In this case, the perturbation has little effect on the result.
[正] (4) Such objections are of little concern here.
[正] (5) There is yet little information on the outcome of the election.

これらの例文では、「little」が具体的な意味で物事の大きさを意味しているのではなく、より抽象的な意味で用いられているということに注目してください。これは、いずれの場合においても「little」が修飾しているのは不可算名詞だということから明らかです*1 。 なぜなら、不可算名詞が表すものには「大きさ」という性質がないからです*2 。ここで例示されるように、形容詞「little」が抽象的な意味で用いられる場合(要は、可算名詞を修飾していない場合)には口語的ではないとされます。

最後に、「big」には(3)〜(5)で例示されるような用法がないということを考察します。そのために以下の口語的な用例を見てみましょう。

[誤] (6) There is big difference between our dogs.

ここでは、文全体が口語的なものですから、「big」自体の使用には問題がありません。ここでの問題は、「big」が必ず何らかの「大きさ」を表すため、それに修飾される名詞は可算名詞でなければならないということにあります。要するに、ここでの問題は文中の表現が食い違っているというスタイル的なものではなく、より深刻な文法的な誤りですので、会話としても間違っているのです。この文を修正するために「big」の前に「a」を置くべきです。

脚注:
*1 不可算名詞になっていることは冠詞が付いていないことから分かります。
*2 詳しくはグレン・パケット:『科学論文の英語用法百科〈第2編〉冠詞用法』(京都大学学術出版会,2016)をご参照下さい。

 


glenn

グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。

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