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第13回 色弱者にもやさしい信号機の色

より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい、色覚バリアフリーなスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン (CUD)」について迫る連載シリーズ。第13回の今回はプレゼンテーションから少し離れて、安全な社会構築に欠かせない「信号機」とCUDにまつわるエピソードをご紹介します。


色弱者と社会基盤の関係が話題になるとき、まず持ち上がるのが「信号機の色は見分けられるのか」という質問です。色と情報のシンボルともいえる信号機にまつわる歴史や、知らなかった工夫を紹介します。

    1. 「青信号」は見分けやすい「青みどり色」

信号機の色の見え方は個人差が大きいので一様には言えませんが、少数派であるP型、D型の当事者によれば、信号機の色は「見分けられます」。自動車運転免許の取得においても色覚型が欠格の理由になることもありません。
「青信号」はかつて「緑色」で、赤信号や黄信号と見分けがつきにくかったのですが、1970年代以降、 色弱者 に見分けやすい「青みどり色」に変更されました。電球式信号機においては、赤色を黄色より暗くして見分けやすくするなどの工夫もなされていました。また、横型の車両用信号機は通常、左から青・黄・赤の順に並んでいるので、位置関係からも判断できます。

 

    1. 進むLED化と新たな試み

平成25年の警察庁資料によれば、全国の車両用信号機の約40%、歩行者用信号機の35%がLED化されています。LED信号機には、コストパフォーマンスの良さや、太陽光の反射による疑似発光がないなどのメリットがあります。
すべての色覚型の人に見やすいように「青信号」は電球式と同様に「青みどり色」にしてあります。また、LED信号機が小さなLED電球の集まりであることを利用して、赤の信号灯にP型、D型色覚者に見やすい×印を組み込んだ信号機が提案され、社会実験として実際に使用された例もあります。
歩行者用の信号機は、従来から形状による表現が採用され、電球式の歩行者用信号機は色バックに人型の白抜きというデザインでした。LED化にあたり、学識者、色弱者、高齢者などにアンケート調査や視認試験を行った結果、黒バックに人型を光らせるタイプが高評価を得て採用されました。この変化に気づいていましたか?

 

    1. 工事現場の信号も刷新!

従来、工事による片側通行の箇所に設置される2色の仮設信号機は、色弱者にとって非常に見分けにくいものでした。しかし、主要なメーカーが改善に乗り出し、今日ではすべての色覚型に見やすいモデル(CUD認証取得)が広く普及しています。

    1. もともとは「赤と白」や「黒と白」だった

ほとんど知られていませんが、信号機の原型(鉄道用)の色はもともと「赤と白」や「黒と白」でした。しかし、白い電球を覆うカラーのガラスカバーが割れて落ちると「白と白」になってわからなくなってしまうので、一方がはずれてもわかるように「赤と緑」に変更されたということです。なお、青色にすると光が遠く見えるため緑色が選ばれました。今から約150年前、スウェーデンでの話です。
ところが、「赤と緑」に変えたとたん列車事故が起こりました。鉄道会社では色弱者の関与を疑い、色覚検査を行って約260人中13人を解雇しました。これが世界初の色覚検査と言われています。そして、「赤と緑」の信号はその後も姿を消すことなく世界中で今日まで続いています。


参考資料:
カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
栗田正樹(2008)『色弱の子を持つすべての人へ 20人にひとりの遺伝子』北海道新聞社
警察庁ウェブサイト内「LED式信号灯機に関するQ&A」
九州産業大学芸術学部落合太郎研究室ウェブサイト

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