approximately と substantially
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「物や現象を量的に比較したり、何か量や数値について述べたりする場合、「おおよそ」、「ほとんど」、「ほぼ」、「大体」、「約」などという意味を示すためには、一般にaboutよりapproximatelyを用いた方がふさわしい。」*1 のご解説について質問です。approximately の他に substantially という語が使用されるのをよく目にします(特許翻訳業界では、 substantially の方がよく使われている印象があります)が、approximately の代わりに
substantially を使用するのは何か問題がありますでしょうか?また、approximately と substantially のニュアンスの違いがありましたら教えていただければ幸いです。
*1: 『科学論文の英語用法百科・第1編』
形容詞「substantial」には幾つかの本質的に異なった意味があります。一般的な用法では、その主な意味として(使用頻度が多い順に)「of non-negligible amount, size, degree…」、「tangible or material」、「essential or fundamental」、「of real worth or effect」が挙げられます。
副詞「substantially」が「essentially or fundamentally」の意味で用いられる場合は、用法によって「approximately」という意味で捉えることもできます。例えば、「These methods are substantially the same」(「これらの方法は実質的に同じである」)における用法は典型的です。ただし、この用法に関して注意すべき点が二つあります。まず、「値が近い」といった意味で定量的な比較を行うためには「substantially」は不適切で、「approximately」を使うべきです。それから、法律用語としての「substantially」には特別な意味が含まれます。例えば、「same or substantially the same」は「patentably indistinct」 (「特許的に区別できない」)と定義されています。*2
*2: 例えば、 Cornell Law School Legal Information Institute を参照してください。
グレン・パケット
1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術 英語 指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。