Dr. Paquette

論文英語の組み立て-能動態と受動態 I

能動態と受動態I: 動詞の種類による3つのケース

I. 概略

学術論文において受動態の間違った使い方が原因となっている誤りを度々目にします。ここでは、受動態文の作り方を検討します。

日本語と違って、英語では、受動態は他動詞の場合にのみ可能です。なお、他動詞にも数種類あり[1] 、受動態文の構造に関しては他動詞の種類によって3つのケースがあります。つまり、1)動詞が直接目的語しかとらない単一他動詞、2)直接目的語と間接目的語をとる二重他動詞、3)直接目的語と意味的間接目的語をとる二重他動詞となっている場合において受動態文の作り方はそれぞれ異なるわけです。以下で各ケースにおける構造を明らかにします。

II. 例文

IIa. 受動態文が能動態文と同じ状況を表す場合

まず、以下の例を見てみましょう。

1)単一他動詞
能動態:
[正] (1a) The dog chased the cat.
受動態:
[正] (1b) The cat was chased by the dog.

2)間接目的語をとる二重他動詞
能動態:
[正] (2a) I gave my friend a present. (I gave a present to my friend.)
受動態:
[正] (2b) My friend was given a present by me.
[正] (2c) A present was given to my friend by me.

3)意味的間接目的語をとる二重他動詞
能動態:
[正] (3a) The boy put a blanket on the dog.
受動態:
[正] (3b) The dog had a blanket put on him by the boy. [2]
[正] (3c) A blanket was put on the dog by the boy.

上述の各組ではb(あるいはbとc)はaと同じ状況を表します。

IIb. 受動態文が能動態文と逆の状況を表す場合

次に能動態文と逆の意味を表す受動態文を比べてみましょう。

1)単一他動詞:
[正] (1a) The dog chased the cat.
[正] (1b’) The dog was chased by the cat.

2)間接目的語をとる二重他動詞:
[正] (2a) I gave my friend a present. (I gave a present to my friend.)
[正] (2b’) I was given a present by my friend.
[正] (2c’) A present was given to me by my friend.

3)意味的間接目的語をとる二重他動詞:
[正] (3a) The boy put a blanket on the dog.
[正] (3b’) A blanket was put on the boy by the dog.
[正] (3c’) The boy had a blanket put on him by the dog.

これらの例文ではIIaと違って、各組ではb’(あるいはb’とc’)はaと逆の状況を表します。

IIc. 例文のまとめ

上述は、能動態文と受動態文との関係に関する典型的な用例です。これらの文が示す関係を意味論的な観点から見るとより分かりやすくなります。ここでの考察ではまず、動詞が表す動作・状態における主体、直接客体、間接客体を同定します。これらは能動態文においてそれぞれ主語、直接目的語、間接目的語あるいは意味的間接目的語が表すものです。それから、受動態文を作るとき、次のルールに従えばよいのです。まず、主体を表す語は必ず「by」の目的語になります。それから、直接客体を表す語は主語か直接目的語になります。前者と後者の場合、間接客体が存在すればそれを表す語はそれぞれ意味的間接目的語と主語になります。

IId. 省略文

英語では、原則として主語と動詞を省略することはできません。しかし、目的語は自由に省略でき、実際の文章ではよく省かれています。ここでは前述の例文の省略を検討します。
英語で完全な文章を構成するには主語と定形動詞が必要ですが、この2つの成分さえあれば、文法的に正しく、意味を成す文章を作ることができます。上に挙げた各例文において、主語(とそれに付く冠詞)と動詞以外の語を全部省略したとしても文法的には誤っていません。しかし、中にはかなり不自然な文となり、原文とは大幅に異なる意味を示すものもあります。ここでは自然な文のみを考察し、以下にその省略文を示します。

1)単一他動詞
能動態:
[正] (1a) —
受動態:
[正] (1b) The cat was chased.

2)間接目的語をとる二重他動詞
能動態:
[正] (2a) I gave a present.
受動態:
[正] (2b) My friend was given a present.
[正] (2c) A present was given to my friend.

3)意味的間接目的語をとる二重他動詞
能動態:
[正] (3a) —
受動態:
[正] (3b) The dog had a blanket put on him.
[正] (3c) A blanket was put on the dog.

これらの文から分かるように、受動態文では主体を明らかにする必要がなければそれを表す「by」の目的語を省略することができます。また、多くの能動態文で、間接客体を表す目的語を省略することができます。


[ 脚注 ]
1. 「自動詞と他動詞」を参照してください。
2. 厳密な文法規則によれば、これは受動態文ではありませんが、示される意味はまさに受動的です。

glenn

グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。

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