日本人によくある英語の間違い

学術論文を書くときは句動詞に注意

動詞の後に副詞や前置詞などが付く 句動詞 を使いこなすのは難しいものです。英語などの会話では、2-3語から成る句動詞(phrasal verb)がよく使われますが、もとの動詞と違う意味になることも多い上、より広い意味で解釈されることもあるので、誤った意味に取られる可能性もあります。そのため、学術論文では句動詞より、単体動詞(single verb)を使うほうがよいとされているのです。 ■ 句動詞と単体動詞の違い 例えば、「carry」という単語は、「何かをある場所から別の場所に運ぶ」ことを意味します。そして、「out」という単語には、「ある場所から出て行く、どこかから一定の距離離れている、明らかになる、終わる」など、いくつかの意味があります。しかし、この2つがつながって「carry out」という句動詞になると、それは「実行する、成し遂げる」という、別の意味になります。また、句動詞になることで意味が広がったり強調されたりすることもあります。一方の単体動詞は限定的に意味で使われることから、誤解されるのを避けることができます。会話では、句動詞を上手に使いこなせたほうが、表現力がアップするとも言われますが、学術論文では、句動詞がインフォーマル(くだけた)な印象を与えるのに対し、単体動詞のほうがフォーマル(改まった)な印象を与えることも、論文で句動詞を避けて単体動詞で表現することが推奨される理由でしょう。多数の名言を残した第3代アメリカ合衆国大統領のトーマス・ジェファーソンが”The most valuable of all talents is that…

間違いやすい用語や表現 ー based

過去分詞「based」の誤用を度々見かけます。ここではその典型的なものを検討します。 過去分詞およびそれが導入する過去分詞句は、必ず形容詞の機能をもち、名詞とその相当語句のみを修飾しうる語句です。しかし、日本人学者による論文では過去分詞が副詞として用いられているという文法的な誤りをよく目にします。 以下を見てみましょう。 [誤] (1) We performed this experiment based on the method introduced in…

間違いやすい用語や表現 ー動詞「set」の誤用

「to be」との誤った併用 日本人学者が書いた論文において動詞「set」が誤用されていることを度々目にします。ここでは「set」の一つの典型的な誤用を考察します。 以下を見てみましょう。 [誤] (1) Here, x is set to be positive. [誤] (2)…

間違いやすい用語や表現 - 不要な「of」

「の」の誤訳が原因となっている「of」の誤用を度々見かけます。その中でも特によく見られるものとして、以下に例示する誤用があります。 [誤] (1) Here, the condition of v > 0 is important. [正] (1’) Here,…

間違いやすい用語や表現 -the one

代名詞「one」は日本人学者の論文で過度に使用されると思われます。熟語「the one」における誤用は特によく見受けられます。 「the one」が表現として誤っているとは言えませんが、学術論では一般に(「one」が代名詞となっている)「the one」よりは「that」の方が適切です。私が今まで読んできた学術論文では、ほぼ例外なく「the one」(「the ones」)はそのまま「that」(「those」)に置き換えるべきものでした。 以下は典型的です。 [誤] (1) This method is similar to…

間違いやすい用語や表現 -if any

熟語「if any」の誤用は、日本人学者による論文で度々目にします。この表現は「もしあれば」、「存在する場合には」などといった意味を表すのに使用できますが、その用法は、文法的に誤っている上に曖昧な文意をもたらすこともよくあるため、学術論文では避けるべきです。 例文を見てみましょう。 [誤] (1) A successful treatment must first satisfy all protocol conditions (if…

間違いやすい用語や表現 - Stay

動詞「stay」は、口語的とされるため、学術論文では避けるべきです。 「stay」が口語的である主な理由は、意味が非常に広いため、その使用によって学術論文には相応しくない曖昧さが生じてしまうからです。 私が読んできた日本人の学術論文において「stay」が使用されるほとんどの場合、意図した意味は次のいずれかの表現によって明瞭に表すことができます。 remain、「to be」動詞、exist、be positioned、come to rest、be fixed、be unchanged、be motionless、remain motionless、stop、converge、live、reside 以下は「stay」の典型的な誤用を示します。 [誤] (1)…

間違いやすい用語や表現 -hugeとtiny

形容詞「huge」と「tiny」は、口語的であるから、原則として学術論文には相応しくありません。 「huge」と「tiny」が口語的とされる理由は、これらの語には対象となっている物事の大きさについての判断が主観的であるということが含意されるからです。使用される状況によって程度が異なりますが、話し手・書き手の驚きも含意されてしまいます。 学術論文において「huge」と「tiny」の代わりに適切に使える表現は多数ありますが、特によく使用されるものとして以下を挙げます。 huge: very large, extremely large, inordinately large, excessively large, dominatingly large, divergent,…

間違いやすい用語や表現 -a lot

熟語「a lot」は副詞として、また前置詞「of」と合わさって形容詞として用いることができます。前者と後者の場合には「a lot (of)」は、それぞれ「a great deal」や「to a great degree/extent」そして「much」や「a great amount/degree of」の同義語になります。ただし、このような用法は極めて口語的なので、学術論文では避けるべきです。(*1) 以下は「a lot」の典型的な誤用を例示します。 I.…

間違いやすい用語や表現 - bigとlittle

形容詞「big」と「little」は、(例(3)、(4)、(5)で示す「little」の用法を除いて)口語的とされるため、原則として学術論文など、正式な書き言葉を必要とする文章では避けるべきです。 ここで、「big」と「little」に共通する一つの用法と「little」にしかない二つの用法を個別に考察します。 「big」と「little」に共通する用法は以下で例示されます。 [誤] (1) The value of this quantity in the present case is…

間違いやすい用語や表現 -複数形の誤用

英語には、通常単数形でしか用いられない名詞がたくさんあります。それらの名詞は、通常の用法で不可算物あるいは一つの可算物とみなされるものを意味するわけです。英語を母語としない人がこのような名詞を誤って複数形で用いているのをしばしば見かけます。 以下はこのような誤りの典型例です。 [誤] (1) These data analysis studies have added many knowledges to our understanding…

間違いやすい用語や表現 – against

前置詞「against」は日本人学者によって過度に使用され、最もよく誤用される語の一つです。誤用の原因として、「against」が「に対して」の誤訳になっていることが多いと思われます。実は、「に対して」が「against」に対応する場合もありますが、「against」が訳語として全く不適切とされる場合が多いです。 以下は「against」の典型的な誤用を示します。 [誤] (1) These are “slowly” varying effects, against the previously described “rapidly” [誤]…

名詞付加語の形

名詞付加語(noun adjunct)とは限定形容詞の働きをする名詞のことです。日本人学者が書いた論文では名詞付加語が誤用されていることをしばしば目にします。ここでその誤用の原因となる誤解を晴らします。 まず、以下を見てみましょう。 [正] I used to work in a shoe store. この用例中の「shoe」は名詞付加語となっています。ここで注目すべき点は、「shoe」が複数の靴を表しているにも関わらず単数形になっているということです。この文は名詞付加語の通常の用法を例示します。一般に、 名詞付加語 は、たとえそれが複数のものを表しているとしても、必ず単数形になるのです。…

限定修飾語句と非限定修飾語句

一般に、修飾語句には「限定」と「非限定」という二種類があり、両者間の違いを理解することは英語の基礎知識として不可欠です。 その違いとは、限定修飾語句が修飾される語句の意味に影響を与えるのに対し、非限定修飾語句はその意味に影響を与えないということです。 例えば修飾される語句が名詞であれば、非限定修飾語句はその名詞が指す対象について情報を加えることはありますが、修飾によってその対象自体を変えることはありません。 文法的には、限定修飾語句と非限定修飾語句はコンマの使用によって区別されます。つまり、非限定修飾語句の場合には、修飾語句と修飾される語句との間にコンマが入りますが、限定修飾語句の場合はコンマが入りません。 例文を見てみましょう。 (1) My dog, Cleo, is sleeping. (1') My dog Cleo…

integralとintegration

名詞「integral」と「integration」は日本人学者によってよく混同され、誤用されることが多いです。「integral」は「積分」に当たり、積分法の対象となる量を表し、一方、「integration」は「積分すること*」に相当し、積分を求める操作を意味します。 以下はしばしば見受けられる誤用を例示するものです。 (1) [誤] Here, we can evaluate the time integration of the propagator using…

間違いやすい用語や表現 – solve

動詞「solve」は、数学的な議論においてよく誤用されます。その多くの場合には、「solve」は「解明する」の誤訳になっていると思われます。「解明する」を「solve」と訳すことが適切な場合もありますが、「解明する」は比較的広い意味で用いられ、「solve」と訳すことができない場合もあります。 一般に、「solve」が意味する操作の対象となりうるものは、例えば、問題、謎、方程式、積分など、解くことを必要とされるもののみです。それらを解くことによって得られるものは「solve」の対象となりえないのです。つまり、そのようなものを表す名詞が「solve」の直接目的語となってはいけません。特に、数学的な議論においては、導出や解析などの結果となるものに対して「solve」を用いるのは誤りです。 以下の例文を見てみましょう。 (1) [誤] As proven above, this equation has two solutions. Below, we…