small talk:まずは天気の話から
一般社団法人 学術英語学会 では、毎年、セミナーを開催しており、その中でもユニークな企画として好評なのが「ソーシャライジングとネットワーキングのための英語」です。一般的に、日本人研究者がニガテとしているのが「ソーシャライジング」または「ネットワーキング」、いわゆる研究者交流です。親睦会などの場でどのように話しかけたらいいのか―今回はシリーズ第4回目です。
small talk: まずは天気の話から
会話を始動させる、あるいは沈黙を埋めるためによく引き合いにだされるのが small talk です。Cambridge Advanced Learner’s Dictionary によると、small talkの定義は“conversation about unimportant things, often between people who do not know each other well”とあります。要するに知らない人同士の当たり障りのない雑談です。とかくnervous になりがちな初対面同士になごみや親しみを醸し出すための言葉のやり取りに過ぎないわけですから、話題はどうでもよいのです。とはいえ、定番の話題、つまりこれならば安心、といった話題があります。それは weather, food,placeの三つです。具体的な英語の言い回しを紹介しながら解説します。
It’s cold, isn’t it?: 天気の話題は定番
天気は最も当たり障りのない話題だということは常識的にわかることですが、国際的な場面では極めて有効です。寒い、とか、暑い、といった身体の感覚は頭脳の働きに先行する、というだけでなく、研究者それぞれの国の気候・風土に照らして、今この場所(国際会議などの開催国)の天気は実に気になることだからです。私の経験では、例えばイギリス人は一般的に天気の話題が好きです。イングランドの天気の変わりやすさは知られていますが、雲の隙間に小さな青空が見える、といった些細な現象もよく日常の話題にします。まして地理的環境の異なる日本のような国を訪問して、何日もザアザア雨が降り続く梅雨時や、からっと晴れ上がった天気が何日も続く秋を体験して、話題にしないわけがありません。イギリスに限らず自分の国の気候や個人的な身体感覚との関連でいくらでも話題は発展するでしょう。
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崎村 耕二 (さきむら こうじ)
日本医科大学 武蔵境校舎 外国語教室 教授。1957年生まれ。オックスフォード大学ウルフソン・コレッジ客員研究員、高知大学教授,京都工芸繊維大学教授を経て2013年より現職。一般社団法人学術英語学会代表理事なども務める。専門は、テクスト分析,言語表現論。現在、医学部で、医学英語の語源と語形成などを講義。英語コーパス学会会員、医学英語教育学会会員、Oxford Union Society (弁論部)終身会員等。著書に、『最新 英語論文によく使う表現 基本編』(25年以上のロングセラー改訂版)、『英語で明確に表現する』 、『英語で論理的に表現する』(以上、創元社)、『論理的な英語が書ける本』(大修館書店)などがある。