英語&文法

学術論文における「e.g.」と「i.e.」の使い方

文章の中でよく見かける略語で、通常は括弧の中にあり、その前後の文脈からだいたいの意味は把握できるようなものがありますね。そのひとつが「e.g.」です。これは、ラテン語の「exempli gratia」の略で、「例えば(for example)」という意味です。もうひとつよく見かけるのは「i.e.」で、これはラテン語の「id est」の略です。英語にすると「that is to say」や「in other words」、日本語の「つまり」といった意味合いです。文中で、あるポイントを強調するための例を挙げる際に「e.g.」を使うことや、一文でくどくどと説明するのではなく、言い換えて要点を述べるために「i.e.」を使うことは少なくありません。 しかし中には両者を混同して、間違って使う人もいます。ここでは、間違えないためのヒントと用例をご紹介します。 「e.g.」と「i.e.」の違い 上記のように、「e.g.」は 「for example」の略です。間違えないための簡単な方法は、「e」で始まるから「example」だと覚えておくことです。では「e.g.」の実際の文中での用例を見てみましょう。 “There…

学術論文を書くときは句動詞に注意

動詞の後に副詞や前置詞などが付く 句動詞 を使いこなすのは難しいものです。英語などの会話では、2-3語から成る句動詞(phrasal verb)がよく使われますが、もとの動詞と違う意味になることも多い上、より広い意味で解釈されることもあるので、誤った意味に取られる可能性もあります。そのため、学術論文では句動詞より、単体動詞(single verb)を使うほうがよいとされているのです。 ■ 句動詞と単体動詞の違い 例えば、「carry」という単語は、「何かをある場所から別の場所に運ぶ」ことを意味します。そして、「out」という単語には、「ある場所から出て行く、どこかから一定の距離離れている、明らかになる、終わる」など、いくつかの意味があります。しかし、この2つがつながって「carry out」という句動詞になると、それは「実行する、成し遂げる」という、別の意味になります。また、句動詞になることで意味が広がったり強調されたりすることもあります。一方の単体動詞は限定的に意味で使われることから、誤解されるのを避けることができます。会話では、句動詞を上手に使いこなせたほうが、表現力がアップするとも言われますが、学術論文では、句動詞がインフォーマル(くだけた)な印象を与えるのに対し、単体動詞のほうがフォーマル(改まった)な印象を与えることも、論文で句動詞を避けて単体動詞で表現することが推奨される理由でしょう。多数の名言を残した第3代アメリカ合衆国大統領のトーマス・ジェファーソンが”The most valuable of all talents is that…

論文英語の組み立て – 学術論文における 口語 の使用について

「 口語 」とは、日常生活における会話で用いられる言葉遣いのことです。英語の学術論文では口語を避けるべきだと言われますが、ここでその主な理由を説明します。 英語にもさまざまな口語と文語との違いがありますが、日本人学者が書いた論文における口語的な言葉遣いによる問題は、主に単語(多くの場合は動詞)の誤った選択に起因するものです。私が読んできた論文からすると、口語的な用法で用いられがちなものとして最も注意すべき単語や表現は以下を含みます。 動詞: give、take、put、keep、stay、do、make、look、call、remember、say、tell、ask、care、come、go、check、feel、happen、hit、touch、used to...、supposed to... 名詞: lot、way 形容詞: like、big、little、just、hard、easy、good、bad、great 前置詞: around、before、after 副詞:…

間違いやすい用語や表現 ー based

過去分詞「based」の誤用を度々見かけます。ここではその典型的なものを検討します。 過去分詞およびそれが導入する過去分詞句は、必ず形容詞の機能をもち、名詞とその相当語句のみを修飾しうる語句です。しかし、日本人学者による論文では過去分詞が副詞として用いられているという文法的な誤りをよく目にします。 以下を見てみましょう。 [誤] (1) We performed this experiment based on the method introduced in…

間違いやすい用語や表現 ー動詞「set」の誤用

「to be」との誤った併用 日本人学者が書いた論文において動詞「set」が誤用されていることを度々目にします。ここでは「set」の一つの典型的な誤用を考察します。 以下を見てみましょう。 [誤] (1) Here, x is set to be positive. [誤] (2)…

論文英語の組み立て-能動態と受動態 I

能動態と受動態I: 動詞の種類による3つのケース I. 概略 学術論文において受動態の間違った使い方が原因となっている誤りを度々目にします。ここでは、受動態文の作り方を検討します。 日本語と違って、英語では、受動態は他動詞の場合にのみ可能です。なお、他動詞にも数種類あり[1] 、受動態文の構造に関しては他動詞の種類によって3つのケースがあります。つまり、1)動詞が直接目的語しかとらない単一他動詞、2)直接目的語と間接目的語をとる二重他動詞、3)直接目的語と意味的間接目的語をとる二重他動詞となっている場合において受動態文の作り方はそれぞれ異なるわけです。以下で各ケースにおける構造を明らかにします。 II. 例文 IIa. 受動態文が能動態文と同じ状況を表す場合 まず、以下の例を見てみましょう。 1)単一他動詞 能動態: [正] (1a)…

論文英語の組み立て-自動詞と他動詞

I. 概要 一般的な言語学現象として、 動詞 は、表す動作や状態において異なった立場にある複数の参加者が存在するかどうかによって二種類に分かれます[1] 。動作・状態の主体である参加者のみ存在する場合に使われる動詞は「自動詞」(intransitive verb)と言い、対象(客体)も存在する場合は「他動詞」(transitive verb)と言います[2] 。他動詞はさらに「単一他動詞」(monotransitive verb)と「二重他動詞」(ditransitive verb)という二種類に区別されます [3]。統語論的には、示される動作・状態における参加者を表す項が、前者では2つ(主語と1つの目的語)、後者では3つ(主語と2つの目的語)あります。英語では、単一他動詞は1つの直接目的語をとり、二重他動詞は直接目的語に加えて間接目的語、あるいは間接目的語と同様の役割を果たす前置詞の目的語をとります[4] 。(ここでは、間接目的語と同様に機能する前置詞句の目的語を「意味的間接目的語」と呼ぶことにします。) 例文を見てみましょう。 [正]…

間違いやすい用語や表現 - 不要な「of」

「の」の誤訳が原因となっている「of」の誤用を度々見かけます。その中でも特によく見られるものとして、以下に例示する誤用があります。 [誤] (1) Here, the condition of v > 0 is important. [正] (1’) Here,…

間違いやすい用語や表現 -the one

代名詞「one」は日本人学者の論文で過度に使用されると思われます。熟語「the one」における誤用は特によく見受けられます。 「the one」が表現として誤っているとは言えませんが、学術論では一般に(「one」が代名詞となっている)「the one」よりは「that」の方が適切です。私が今まで読んできた学術論文では、ほぼ例外なく「the one」(「the ones」)はそのまま「that」(「those」)に置き換えるべきものでした。 以下は典型的です。 [誤] (1) This method is similar to…

間違いやすい用語や表現 -if any

熟語「if any」の誤用は、日本人学者による論文で度々目にします。この表現は「もしあれば」、「存在する場合には」などといった意味を表すのに使用できますが、その用法は、文法的に誤っている上に曖昧な文意をもたらすこともよくあるため、学術論文では避けるべきです。 例文を見てみましょう。 [誤] (1) A successful treatment must first satisfy all protocol conditions (if…