研究を推進する

as well as

「as well as 」は日本人学者が英語論文を書く際に最もよく誤用される表現の1つです。その誤りの多くは「as well as」が「and」と同様に使用できるという誤解に起因するものです。実際のところ、2つの表現は類似した意味を持ってはいますが、それらの間には意味上、および文法上の重要な違いがあります。「as well as」は、「and」と似た意味を示す場合には、前置詞の働きをし、「and」よりむしろ「in addition to」に近い意味を持っていると言えます。それゆえ、「A as well as B」と表現する場合、「A and…

dosageとdose

医学の専門用語で「dosage」と「dose」があります。これらの語は似た意味を持ちますが、同義ではありません。以下にそれぞれの語の意味とその典型的な使用例を挙げます。 dose: 1回の投与量。 (1) Each packet contains one dose. dosage: 投与量、頻度、継続期間の決定や調整。 (2) The dosage was…

cooperateとcollaborate

「cooperate」と「collaborate」は意味が似ており、双方とも「共同する」、「協同する」、「協力する」のいずれにも訳されうる可能性があります。しかし重要な意味上の違いもあり、通常はそのまま置き換えることはできません。「cooperate」が持つ語意は「collaborate」の持つ語意に包含されていますが、「collaborate」の語意の一部を形成するにすぎません。「cooperate」が単に「力を合わせる」という意味を表すのに対し、「collaborate」はその「力を合わせる」こと自体のみならず、むしろ協力の目標に主眼を置き「協力によってある結果を生み出そうとする」という意味を表します。 以下に動詞「cooperate」と「collaborate」、およびその名詞形「cooperation」と「collaboration* 」の正しい使用例を挙げます。 (1) Thomas and Yamada have collaborated on several research projects. (2) We…

他人の論文を修正して自分の論文に引用するときには?

先行研究が多い分野では、すでに発表された論文の図やグラフを使えば、自分の主張をよりわかりやすく説明できる場合が多々あります。たとえば、論文Aに掲載された図を、自分の研究に関係ある部分だけ抜粋して見せたくなることがあります。また、自分の論点をはっきりさせるために元の論文のグラフのX軸とY軸を入れ替えるなど、その表示方法に手を加えたくなることもあります。 ここで大切なのは、元の図やグラフと、自分の論文で“引用”した部分との違いをはっきり説明することです。表などを元のまま引用する場合や、必要な部分だけを抜粋する場合には、表の最下部や脚注に「adapted from Jones 2009」などと書けばいいでしょう。また、原書の表をもとに、ほかの研究の結果を書き加えたり、自分の解釈を添え書きしたりする場合には、「based on Jones 2009 and Smith 2010」などと書けばいいでしょう。元の論文の記述をまとめて要点をリストアップするような場合には、「summarized from Jones 2009」といった表現がよく使われます。 このように表やリストの最下部や脚注に引用元と引用方法を明記するだけではなく、本文で簡単な説明をすることも忘れないようにしましょう。原書の表をどのように変えたのか、また変更した理由を数センテンスでまとめて書きましょう。…

英語で論文執筆すべきか、翻訳を依頼すべきか?

日本語で書くか、英語で書くか? 日本語で書いてから英語に翻訳するか、それとも最初から英語で書くか? 論文の質と所要時間を考えると、どちらが得策でしょうか? 論文を書くうえで最も大切なのは、その分野の論文の書き方をよく理解し、投稿するジャーナルの読者に適した情報をより簡潔に提示することです。もしこれらのことを理解したうえで翻訳してくれる人が身近にいるのであれば、日本語で書くのもいいでしょう。しかし、自立した研究者を目指すためには、少しずつでも英語で論文を書く方法を身につけていくことをお勧めします。 「英語を身につける」というと、単語を覚えたり難しい構文を修得したりすることと思われがちです。もちろんそれらも大切なことですが、論文の読みやすさは、実は論文全体の構成で決まる、ということも覚えておいてください。そうした論文構成能力を高めるために、今後、英語の論文を読むときには次の点に注意しましょう。 まずは基本的なことが重要です。各専門分野にはそれぞれ「典型的な論文の構成」というものがあります。英語の論文を読むときは、その流れを把握し、内容を書き出してみてください。たとえば、典型的な論文構成が「1. イントロ(はじめに)→2. 研究のデザインの説明→3. 分析→4. 解説→5. まとめ」という流れを取っているとします。では、イントロにはいつも何が書かれているでしょうか? 分野によっては、アブストラクト(要約)とほぼ同様の内容が書かれているかもしれません。別の分野では、研究対象となった事項に関する研究の流れを大まかに紹介しているかもしれません。そのように読み続けているうちに、ほとんどの論文が従う典型的な論文構成というものが見えてくるはずです。 論文の構成は、ジャーナルによっても大幅に変わることがあります。ある編集者は不採用の理由として「この論文の“まとめ”には、今後どんな研究が必要かという将来の展望が欠けている」といいます。反対に「これからどんな研究が必要かなんて、そんなことを書いたら、自分の研究が未完成だといっているようなものだ。私のジャーナルには、そんな論文は絶対に載せない」という編集者もいます。そのため、とりわけ学際的な研究をしている場合には、それぞれのジャーナルでの論文構成を比較しながら論文を読んでみてください。 その相違がわかるようになってくれば、自分が実際に論文を書くときにはおおいに役立つでしょう。ただし、投稿先のジャーナルの専門分野に合わせて、論文構成を大幅に書き変えるには勇気と時間が必要となりますが…。

日本人がよくする英語の間違いトップ20 (3)

日本人独特の英語の間違いを考えるシリーズの第3回は、動詞を中心に見ていきたいと思います。動詞は、論文の語調を決めるといわれ、アメリカ人でも論文の書き方を習うときに苦労するものです。ここでは日本人がよくする動詞の間違いについて、その対応策を考えていきます。 1. 時制の不正確さ 論文を書いている「今」という視点からみた過去と未来。そして、説明している「実験」から見た過去と未来。日本人が書く論文の時制には、これらの視点がフラフラと変わってしまうために起こる間違いがよく見られます。たとえば、Introduction(はじめに)で、すでに知られていることを書くときには現在形を、その問題に対して行われてきた研究について書くときには現在完了形を、自分がこの論文で行うことについて書くときには現在形を使うのが普通です。こうしたことは、英語を母国語とする人に英文校正してもらえばすぐに直ることですので、時間を惜しまず、必ず見てもらいましょう。 2. be動詞の誤用 「AはBである」の直訳なのでしょうか、下のようなbe動詞の誤用が多く見られます。日本語からの直訳にならないように気をつけ、最後に、be動詞を使っている文が、それを使わなくても文として成り立つかどうかを確認してください。 誤: Oxidation is rapid to occur. 正: Oxidation…

文献解題 (annotated bibliographies) という名の家宝

「文献解題」とは、基本的には、通常の参考文献一覧に、その文献のまとめと自分の評価を加えたもののことを意味します。とくに決まった書式があるというわけではありません。効果的に数々の研究を出版し続けていくためには、使い回しができる文献解題の作成が必須になってきます。 アメリカの大学院では、「文献解題」の作成方法を教えられます。そのためアメリカで勉強したことがある人のなかには、その後も、ほかの研究者の論文を読みながら文献解題をつくる習慣がある人もいます。こうしてどんどん増えていく文献解題は、新しい研究をするときの足がかりになったり、いろいろな論文で再利用されたりしながらその熟成度を高めてきました。研究者にとって、このような文献解題は「家宝」です。 出版年や出版元の書き方は、一般的に「APA」や「MLA」、「Chicago」、「Turabian」などのスタイルがよく使われますが、書き方は一貫性さえあれば、どのようなスタイルを使ってもあまり問題はありません。 ただしAPA式で書くと、著者のファーストネームをイニシャルだけ書くことになり(たとえば、「Jones, A」と)、投稿するジャーナルが参照文献の著者名をフルネームで書くように要求した場合、著者名を調べ直さなくてはいけなくなりますのでご注意ください。このような場合を考慮して、念のためにISBNなどの書籍番号を控えておくと、あとで確認したいことが出てきた場合、即座に対応できます。 文献の要約としては、論文の研究領域、論旨、研究方法、結果とまんべんなくカバーすると、将来ほかの論文を書くときにも役に立ちます。また、新しい専門用語が定義されていたら、そのページ番号と行番号を書き留めておくか、定義を書き写しておくとよいでしょう。引用したくなるような文がどこにあるかを書いておくのも便利です。 最後に、論文の見解に何か偏りがないか、どのような点が興味深いと思ったかなど、自分の意見を書き加えていきます。このさい、自分がどこを読んでいてそう思ったのかがわかるようにしておけば、将来、新しい研究をする際にも参照しやすいでしょう。

研究ノートについて(1):重要性

2014年に大問題になった「STAP細胞」の研究不正においては、当の研究者がきちんとした「研究ノート」をつけていなかったこと、共同研究者たちが実験結果だけを見て「研究ノート」に書かれているはずのデータを確認しなかったことなども問題になりました。本ブログでは、今回と次回、「研究ノート」のあり方について考えてみたいと思います。 研究を始めて間もない人たちのなかには、研究ノートのことを、論文や報告書を書くときに使うメモ帳だと勘違いしている人がいるのではないでしょうか? それは大きな勘違いであると同時に、研究の円滑な進行の妨げるミスの元にもなりかねます。研究ノートは、ある意味では論文より大切なものです。その用途と価値を正しく理解し、永久に保存する心積もりで作成しましょう。 実験結果を書きとめていく研究ノートが、論文や報告書を書く上でなくてはならない資料だということは周知の事実です。しかしノートを取るときは、次回詳しく書くように、その時点で計画されている研究事項やテーマに固執することなく、一見関連がなさそうに思える細かなこともくまなく記録するよう注意してください。そうしておけば、仮にまったく予期していなかった結果が出て、研究対象ではなかった要素を比較しなくてはいけなくなっても、無駄な時間と費用を費やして同じ実験をやり直すようなことを避けられるかもしれません。また、実験の成果が認められ、その後何年にも渡って関連する実験が行われるようになった場合、2年後、3年後に、それまでは考えてもいなかった要素に注目が集まるかもしれません。そのような場合でも、あらゆる詳細な情報が記録されていれば、過去のデータをもとに予測を立てたり比較をしたりするなど、さまざまな使い方ができるというものです。 また、どんなに当たりと思われる手順や手続きも、研究ノートにはきちんと明記しておきましょう。実際に実験が行われてから研究論文を執筆するまで、 どんなに急いでも時間がかかります。その間に、ラボの基本的なプロトコルが変わる可能性もあります。「毎日することだから」とか「全部のサンプルに共通して行われることだから」などと思って軽視しないよう気をつけてください。 当たり前と思われる点までも研究ノートに書く理由は、将来自分が忘れないようにするためだけではありません。とくに大きな共同研究プロジェクトに参加している場合には、実験の途中でその作業を他の人に引継がなければならない場合が多々あります。そのようなとき、どんなに気をつけても、短時間で作業の詳細をすべて引き継ぐのは不可能です。明解で詳細に書かれた研究ノートがあれば、あなたの仕事を引き継いだ人も、そのノートを辿ることで、今までどのような研究がいつ、どのように行われてきたのかをはっきり把握することができるでしょう。また、移転の可能性のない人でも、家族の都合で急に数日休みを取らなくてはいけなくなることなどは誰にでも起こりうることです。そのような場合でも、当たり前のことがきちんと書かれたノートさえあればこそ、誰かにサポートを依頼することも可能になるのです。 最後になりましたが、研究ノートは、自分がどのような作業をし、そのプロジェクトにどのようにかかわったかを証明する資料ともなりえます。とくに共同研究の場合は、論文を出版する時点になって、誰の名前を先に記載するかでもめるケースが少なくありません。そのようなとき、あわてて自分が何をしたのか書き出そうとしても、案外と思いつかないものです。しかし、より詳細に書き取られた研究ノートがあれば、自分の貢献度を明確かつ客観的に訴える証拠として提出することができるでしょう。 つまり、しっかりとつくられた研究ノートは、現時点で行われている実験に必要なだけでなく、将来の研究や人間関係にも欠かせない道具なのです。“研究のためのメモ帳”といった間違った概念を捨てて、よりよい研究ノートを取るよう日ごろから心がけてください。また英語論文を書くつもりであれば、初めから英語で研究ノートをとってみてもいいかもしれません。英語圏の共同研究者とのコラボレーションで役に立つ可能性などもあります。

日本人がよくする英語の間違いトップ20 (2)

日本人独特の英語の間違いを考えるシリーズの第2回は「些細なことなのにインパクトは最大」、そんな英語の間違いに注目したいと思います。論文を書き終わったあと、このリストを見ながらチェックしてみてください。 1. 冠詞(a, an, the, 無冠詞)の誤用 日本語にはない冠詞の使い方は、英語上級者でもなかなかマスターすることが難しいものの1つです。冠詞を誤用すると、意味がまったく変わってしまうこともあるので、校正を依頼するときには、論文の内容がある程度わかる人にお願いしたいものです。 2. 単数形と複数形の誤用 たとえば日本語の「研究」という言葉を英語にするとき、“research”と単数形にするのか、“researches”と複数形にするのかで、意味が変わります。同様に、「結果」を“results”と書いたにもかかわらず、論文に書かれている「結果」が1つしかなければ、読者が混乱し、論文の評価も下がるでしょう。論文を書き終わったら最後に、それぞれの名詞が適切に単数形または複数形になっているかどうかを、1つずつ確認してください。 3. 前置詞の誤用 前置詞は厄介なものです。前置詞には“in”や“by”など比較的使い分けがしやすいもののほかに、たとえばいずれも「〜の下に」を意味する“below”と“under”、“underneath”など、違いが微妙なものもあります。日本人は、日本語の影響で間違った前置詞を選ぶ癖があり、そのため思わぬ所で読者を混乱させる英文を書いてしまう傾向があります。自信がないときには必ず辞書で確認しましょう。また、辞書に例がなかった場合には、自分で書いた英文の一部を検索エンジンにかけてみるといいでしょう。どのような前置詞がよく使われているか、目安をチェックすることができます。 4. 数量を表す言葉の誤用…

アブストラクトは語数制限より短かければよい?

論文には語数制限(日本語のジャーナルだったら字数制限)がないジャーナルでも、アブストラクト(要約、抄録)には語数制限があるのが普通です。たとえば、オープンアクセス・ジャーナル大手の「BioMedCentral」では、「350単語」以内で書くことを推奨しています。論文の形式としてしばしば使われる「APA方式」では、150〜250語とされています。日本語のジャーナルでは、300字を目安にしているところが多いようです。英語ジャーナルでも日本語ジャーナルでも、それぞれの投稿規定に書かれていますので、必ず参照してください。 この語数制限を1語でも超えると、その場で却下されますので注意してください。では、アブストラクトの長さは語数制限より短ければよいのでしょうか? あまり筋が通っているとはいえませんが、一般的にアブストラクトが短いと、編集部では「主張する内容が少ない論文」だと判断します。つまり、研究論文のアブストラクトの品質は「制限された語数では書き表すことができないほどのすばらしい研究内容を、語数制限内ぎりぎりでまとめる」ところにあるというわけです。そのため英語ネイティブでさえ、論文の広告塔ともいえるアブストラクトを書くときには、四苦八苦して限りなく語数制限に近い文字数で仕上げようと努力します。 そこで今回は、ひと通り書き上げたアブストラクトの推敲の方法を考えると同時に、語数調整の方法を考えてみたいと思います。 1. まずは略語が含まれていないかを確認する ようやく語数制限内に収まったと思ったら、略語があった……というのは二度手間で時間の無駄です。語数を気にする前に、まず略語が使われていないか確認しましょう。同じ略語を何度も使う場合は、最初に正式名を記載し、以後は略語を使うことを断わりましょう。 2. ほかの文献の紹介になっていないか? どんなに密接な関係があったとしても、アブストラクト内でほかの論文の紹介を延々とするのは御法度です。語数を調整するためとしても、ほかの論文を参照するときには長々と書かずに、1文で要点をまとめるようにしましょう。 3. 研究方法の説明が詳しすぎないか? 次に避けなければならないのは、研究方法を必要以上に詳しく説明することです。論旨の信憑性を高めるために必要最低限な情報のみを書きましょう。どんなに文字数が足りなくても、研究方法の説明は簡潔に終わらせてください。 4. 全体の流れと論理性を確認…