文献解題 (annotated bibliographies) という名の家宝

「文献解題」とは、基本的には、通常の参考文献一覧に、その文献のまとめと自分の評価を加えたもののことを意味します。とくに決まった書式があるというわけではありません。効果的に数々の研究を出版し続けていくためには、使い回しができる文献解題の作成が必須になってきます。
アメリカの大学院では、「文献解題」の作成方法を教えられます。そのためアメリカで勉強したことがある人のなかには、その後も、ほかの研究者の論文を読みながら文献解題をつくる習慣がある人もいます。こうしてどんどん増えていく文献解題は、新しい研究をするときの足がかりになったり、いろいろな論文で再利用されたりしながらその熟成度を高めてきました。研究者にとって、このような文献解題は「家宝」です。

出版年や出版元の書き方は、一般的に「APA」や「MLA」、「Chicago」、「Turabian」などのスタイルがよく使われますが、書き方は一貫性さえあれば、どのようなスタイルを使ってもあまり問題はありません。
ただしAPA式で書くと、著者のファーストネームをイニシャルだけ書くことになり(たとえば、「Jones, A」と)、投稿するジャーナルが参照文献の著者名をフルネームで書くように要求した場合、著者名を調べ直さなくてはいけなくなりますのでご注意ください。このような場合を考慮して、念のためにISBNなどの書籍番号を控えておくと、あとで確認したいことが出てきた場合、即座に対応できます。
文献の要約としては、論文の研究領域、論旨、研究方法、結果とまんべんなくカバーすると、将来ほかの論文を書くときにも役に立ちます。また、新しい専門用語が定義されていたら、そのページ番号と行番号を書き留めておくか、定義を書き写しておくとよいでしょう。引用したくなるような文がどこにあるかを書いておくのも便利です。
最後に、論文の見解に何か偏りがないか、どのような点が興味深いと思ったかなど、自分の意見を書き加えていきます。このさい、自分がどこを読んでいてそう思ったのかがわかるようにしておけば、将来、新しい研究をする際にも参照しやすいでしょう。