研究を推進する

間違いやすい用語や表現 -the one

代名詞「one」は日本人学者の論文で過度に使用されると思われます。熟語「the one」における誤用は特によく見受けられます。 「the one」が表現として誤っているとは言えませんが、学術論では一般に(「one」が代名詞となっている)「the one」よりは「that」の方が適切です。私が今まで読んできた学術論文では、ほぼ例外なく「the one」(「the ones」)はそのまま「that」(「those」)に置き換えるべきものでした。 以下は典型的です。 [誤] (1) This method is similar to…

研究論文の影響を評価する:引用数指標 – Citation Metrics

毎年、多数の研究が査読付きジャーナルで発表されており、その数は年々増加する一方です。従って、発表された論文が他の研究者に 引用 されることは、論文の著者にとって自分の研究の影響力を上げるためにとても重要になります。 引用数指標(Citation Metrics)は、出版された研究論文の影響力、品質、重要性を定量的に測定するための評価基準です。このような評価基準のほとんどはジャーナルの引用数によって算出されており、著者あるいは論文の功績を評価するものではありません。出版された研究成果の質や被引用数に影響を与える要素は多数存在しています。あくまでも引用数指標は、論文ごとの平均被引用数に基づいて、定められたパラメータを使って算出されたものであると理解しておくべきでしょう。 しかし、こういった引用数指標は、学術界における特定のジャーナルの読者数と人気を暗示していると考えられています。このことから、引用数を測ることはジャーナル、学術団体、ひいては研究者個人にとっても重要な評価尺度となるのです。学術界で一般的に使われている引用数指標を、下の図で簡単に示します。   関連情報:いま話題の新しい論文評価指標「オルトメトリクス(Altmetrics)」 https://www.enago.jp/academy/altmetrics/

間違いやすい用語や表現 -if any

熟語「if any」の誤用は、日本人学者による論文で度々目にします。この表現は「もしあれば」、「存在する場合には」などといった意味を表すのに使用できますが、その用法は、文法的に誤っている上に曖昧な文意をもたらすこともよくあるため、学術論文では避けるべきです。 例文を見てみましょう。 [誤] (1) A successful treatment must first satisfy all protocol conditions (if…

間違いやすい用語や表現 - Stay

動詞「stay」は、口語的とされるため、学術論文では避けるべきです。 「stay」が口語的である主な理由は、意味が非常に広いため、その使用によって学術論文には相応しくない曖昧さが生じてしまうからです。 私が読んできた日本人の学術論文において「stay」が使用されるほとんどの場合、意図した意味は次のいずれかの表現によって明瞭に表すことができます。 remain、「to be」動詞、exist、be positioned、come to rest、be fixed、be unchanged、be motionless、remain motionless、stop、converge、live、reside 以下は「stay」の典型的な誤用を示します。 [誤] (1)…

間違いやすい用語や表現 -hugeとtiny

形容詞「huge」と「tiny」は、口語的であるから、原則として学術論文には相応しくありません。 「huge」と「tiny」が口語的とされる理由は、これらの語には対象となっている物事の大きさについての判断が主観的であるということが含意されるからです。使用される状況によって程度が異なりますが、話し手・書き手の驚きも含意されてしまいます。 学術論文において「huge」と「tiny」の代わりに適切に使える表現は多数ありますが、特によく使用されるものとして以下を挙げます。 huge: very large, extremely large, inordinately large, excessively large, dominatingly large, divergent,…

間違いやすい用語や表現 -a lot

熟語「a lot」は副詞として、また前置詞「of」と合わさって形容詞として用いることができます。前者と後者の場合には「a lot (of)」は、それぞれ「a great deal」や「to a great degree/extent」そして「much」や「a great amount/degree of」の同義語になります。ただし、このような用法は極めて口語的なので、学術論文では避けるべきです。(*1) 以下は「a lot」の典型的な誤用を例示します。 I.…

間違いやすい用語や表現 - bigとlittle

形容詞「big」と「little」は、(例(3)、(4)、(5)で示す「little」の用法を除いて)口語的とされるため、原則として学術論文など、正式な書き言葉を必要とする文章では避けるべきです。 ここで、「big」と「little」に共通する一つの用法と「little」にしかない二つの用法を個別に考察します。 「big」と「little」に共通する用法は以下で例示されます。 [誤] (1) The value of this quantity in the present case is…

間違いやすい用語や表現 -複数形の誤用

英語には、通常単数形でしか用いられない名詞がたくさんあります。それらの名詞は、通常の用法で不可算物あるいは一つの可算物とみなされるものを意味するわけです。英語を母語としない人がこのような名詞を誤って複数形で用いているのをしばしば見かけます。 以下はこのような誤りの典型例です。 [誤] (1) These data analysis studies have added many knowledges to our understanding…

冠詞用法I: 量を表す名詞はその値によって 一意に特定されない

私が読んできた論文からすると、日本人が書く英文における問題点は3〜5割が冠詞用法に関わるものです。誤った冠詞用法がよく見られる名詞の中でも量を表す名詞は特別です。量を表す名詞で見られる誤った冠詞用法は、誤りの多さおよび誤りが引き起こす意味上の問題の深刻さによって、特に顕著な誤用です。ここでは、その典型的な誤用の一つを考察します。 冠詞の誤用を引き起こす原因に、量を表す名詞独特の誤解が幾つか存在します。その一つは以下の誤用例で見られます。 [誤] (1) This circle has the radius 3 mm. この文の書き手は、名詞「radius」がその修飾語である「3 mm」によって一意に特定されると勘違いしたようです。この勘違いは、ある量の可能な実現とその可能な実現値とが一対一の関係にあるという誤解に起因するものだと思われます。実際は、(英語に内在するロジックでは)ある量が考察される個別のケースにおいて、たとえそれぞれのケースにおける量の実現値が全く同じだとしても、それぞれのケースにおける量の実現は個別の存在として解釈されます。3 mmの値を持つ半径というものが様々存在するわけです。従って、上述の例文中の名詞「radius」が表すものは唯一ではありません。よって、「the」は削除すべきとなります。 [誤]…

論文の構成要素 – コンクルージョン

論文のコンクルージョンは本文の最後に位置し、論文をまとめる部分です。コンクルージョンは「Conclusion」という見出しの一つのセクションとするのが一般的ですが、「Discussion」と「Conclusion」、または「Summary」と「Discussion」、あるいは「Summary」と「Discussion」と「Conclusion」などといった複数のセクションに分割されることもあります。 論文のコンクルージョンは少なくとも以下の役割を果たします。 (i) 論文を要約し、結果を繰り返して述べます。 (ii) 研究結果の重要性とそれが影響を及ぼす範囲を明らかにします。 (iii) 研究の長所と短所を指摘します。 (iv) 既存研究との関係を述べます。 (v) 今後の研究の可能性について議論を行います。 これらの項目の記載順は、一般に上の通りになりますが、(iii)と(iv)の順番が逆になることもあります。以下でそれぞれの役割についてより細かく説明します。 (i) <論文の要約、結果の記述>…