コラム

small talk:気候を表す英語を覚える

一般社団法人 学術英語学会 では、毎年、セミナーを開催しており、その中でもユニークな企画として好評なのが「ソーシャライジングとネットワーキングのための英語」です。一般的に、日本人研究者がニガテとしているのが「ソーシャライジング」または「ネットワーキング」、いわゆる研究者交流です。親睦会などの場でどのように話しかけたらいいのか―今回はシリーズ第5回目です。 small talk: 気候を表す英語を覚える 気候を表す表現と言えば、“It’s cold.”や“It’s warm.”などは誰でも知っています。しかし、程度や性質に応じて微妙な感覚を表現することができれば天気の話題にも色合いが出てきます。気候の状況を表す形容詞や副詞をたくさん覚えておくとよいでしょう。 It’s a little cold. / It’s a…

small talk:まずは天気の話から

一般社団法人 学術英語学会 では、毎年、セミナーを開催しており、その中でもユニークな企画として好評なのが「ソーシャライジングとネットワーキングのための英語」です。一般的に、日本人研究者がニガテとしているのが「ソーシャライジング」または「ネットワーキング」、いわゆる研究者交流です。親睦会などの場でどのように話しかけたらいいのか―今回はシリーズ第4回目です。 small talk: まずは天気の話から 会話を始動させる、あるいは沈黙を埋めるためによく引き合いにだされるのが small talk です。Cambridge Advanced Learner’s Dictionary によると、small talkの定義は“conversation about…

倫理的問題のある研究論文を公表すべきか?

本誌でもお伝えしている通り、2018年11月末、中国の研究者が、ヒトの受精卵に「ゲノム編集」を行って、遺伝子を改変させた赤ちゃんを誕生させたと発表し、世界を騒然とさせました。ゲノム編集とは、まるで文章をワードで書き換えるように、遺伝子が含まれているDNAを切り貼りする技術のことです。ひと昔前の「遺伝子組み換え技術」に比べると、正確さも成功率も格段に高いことが知られています。このゲノム編集を、人間の「体細胞」ではなく「受精卵」などに行えば、編集の結果は生まれてくる子どもだけでなくその子孫にも及びます。そのため、そのような生命への介入を行うことは認められるのか、認められるとすればその条件は何なのか、などが広く議論され始めています。しかし今回の中国人研究者の研究は論文として公開されていないため、専門家たちが精査することができないままなのです。 振り返ってみましょう。 2018年11月25日、ウェブメディア『MITテクノロジー・レビュー』が「スクープ」として、中国の深圳にある南方科技大学の賀建奎(が・けんけい、フー・ジェンクイ)副教授らが「CRISPRベビー」を誕生させようとしている、と報じました(CRISPRとは、代表的なゲノム編集技術「CRISPR/Cas9(クリスパー・キャス9)」のことです)。同日、賀自身がユーチューブで、ゲノムを編集した赤ちゃんをすでに誕生させたと語る動画を公開しました。11月26日には、AP通信が、賀副教授へのインタビューを踏まえて、同様のことを報じました。 ところが、南方科技大学など関係各機関はいっせいに、自分たちはこの研究に関与していない、と発表しました。 賀は11月28日、ゲノム編集の科学と倫理について専門家たちが議論する会議「第2回国際ヒトゲノム編集サミット」に登壇し、自分の研究について発表しました。 発表によると、賀らは、HIV(エイズウイルス)に感染している男性の精子と、パートナーの女性の卵子を体外受精させて受精卵をつくり、その「CCR5」という遺伝子を、ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9」で切断しました。CCR5は、HIVが細胞に侵入するときに必要になる「受容体」を暗号化している遺伝子です。これが働かなくなると、HIVはその細胞に感染することが難しくなります。賀は、HIVの患者コミュニティで希望者を募り、7組のカップルから受精卵31個を集めた、と説明しています。それらにゲノム編集を行ったところ、双子の女の子、「ルル」と「ナナ」が誕生したとのことでした。 サミットでは、多くの専門家から、治療法が存在するHIVに関連する遺伝子を編集対象とすることの医学的正当性や、こうした研究では必ず受けなければならない倫理審査などについて質問が相次ぎました。しかし賀ははっきりとは答えず、会議の参加者たちは満足しませんでした。 専門家たちがこの研究を知るために参照できるデータは、このサミットで使われたパワーポイントファイル(https://drive.google.com/drive/folders/1T1zLTtHS2z_cgl29fN_7qJg7fLA4qlrd)だけです。賀は、論文をジャーナル(学術雑誌)に投稿中である、とサミットで話しました。この研究が本当に行われていたとして、その結果はどのように公表すればよいのでしょうか? そもそも論文として公表すべきでしょうか? 学術情報サイト『リトラクションウォッチ』の主筆としても知られるジャーナリスト、アダム・マーカスが『STAT』で述べているところによれば、『サイエンス』の編集者は、賀の論文原稿を受け取ったかどうかは答えなかったものの、このように倫理的問題の多い研究を検討する可能性は低い、とのことです。また、『米国医師会ジャーナル(JAMA)』の編集者は、やはり賀の原稿については話さないものの、研究はメディアで語られていることだけで評価されるべきではない、と同誌にコメントしています。 多くのジャーナルは、倫理審査を経ていない研究の論文を掲載することを好まないという現実がある一方で、科学的な議論は査読を通過した論文に書かれていることのみを前提として行われるべき、という一般論もまた説得力を持ちます。 またマーカスは、ジャーナルは倫理的問題がある研究の論文をあえて掲載することもある、と指摘します。2000年、著名な医学誌『ニューイングランド医学雑誌』は、数百人ものウガンダ人を、HIVが感染しているにもかかわらず治療しないまま観察し続け、その結果をまとめた論文を掲載する一方で、同誌の編集長マーシャ・エンジェルが同じ号の社説でその研究の倫理的問題を指摘・批判する、ということがありました。マーカスは、ジャーナルというものは一般メディアからであろうと研究者からであろうと、注目されることを好むのだ、と指摘しています。 また、マーカス自身は、賀の論文を「プレプリント」として公表することを提案しています。プレプリントとは、ジャーナルに論文として掲載されることを目的に書かれた原稿で、完成はしているが査読はされていない段階のもののことをいいます。学術界では、このプレプリントを、「プレプリントサーバー」にアップして公開する習慣が広がっています。プレプリントサーバーは、物理学分野の「arXiv」が老舗ですが、2013年には生物医学分野専門の「bioRxiv」も設立されました。 プレプリントサーバーで原稿を公開すれば、特定のジャーナルが責任を持ってお墨付きを与える必要はありません。匿名の査読者の代わりに、全世界の研究者らが公開の場で、査読することになるでしょう。ただし賀自身は、論文がジャーナルに掲載される前にその内容を公開することはない、とサミットで語ったようです。 テクノロジーなどを取り上げるニュースメディア『ワイアード』によれば、bioRxivは、どんな原稿でも掲載するわけではないといいます。例えばヒトを対象にした臨床試験については、米国の「ClinicalTrials.gov」など、事前登録を義務付けられているデータベースのIDを記さなければならないことになっています。IDは、その研究が倫理審査を経たことを示すものでもあります。賀の研究は、中国の臨床試験データベースに登録されていましたが、それは当局による承認を必要とするものではないうえ、登録された日付はこの研究が始まってからずいぶん経っているはずの2018年11月8日でした。 bioRxivの共同設立者は、賀の原稿が届いているかどうかを明らかにしていません。その一方で、「我々の目的は、非倫理的な研究を推薦したり奨励したりするようなプラットフォームを提供することではありません」と、『ワイアード』で述べています。…

初対面の挨拶は「はじめまして」だけではない

私が代表理事を務める一般社団法人 学術英語学会 では、毎年、セミナーを開催しておりますが、出し物の中でユニークな企画となっているのが「ソーシャライジングとネットワーキングのための英語」です。一般的に、日本人研究者がニガテとしているのが「ソーシャライジング」または「ネットワーキング」、いわゆる研究者交流です。懇親会(welcome reception等)で人の輪に入っていけず、日本人同士でかたまってボソボソ日本語で話している風景、国際学会ではよく見られますよね。国際色豊かな研究者たちと、どのように堂々と交流し、自分の研究活動にプラスにつなげていくか。今回はシリーズ第3回目です。 初対面の挨拶は「はじめまして」だけではない いかにして会話に入るか、という課題のもとにこれから少し述べていきます。“How do you do?” / “It’s nice to meet you.”…

交流の場では親しくなることが先決

私が代表理事を務める一般社団法人学術英語学会(J-SER)では、毎年、セミナーを開催しておりますが、出し物の中でユニークな企画となっているのが「ソーシャライジングとネットワーキングのための英語」です。一般的に、日本人研究者がニガテとしているのが「ソーシャライジング」または「ネットワーキング」、いわゆる 研究者交流 です。懇親会(welcome reception等)で人の輪に入っていけず、日本人同士でかたまってボソボソ日本語で話している風景、国際学会ではよく見られますよね。国際色豊かな研究者たちと、どのように堂々と交流し、自分の研究活動にプラスにつなげていくか。今回はシリーズ第2回目です。 交流の場では親しくなることが先決 まずは人に話しかけることです。しかし、初対面の人に英語で話しかける時、“How do you do? Let me introduce myself.” のように型にはまった英話表現に頼ってしまう人がいます。「この場面ではこの表現」といったパタ―ン化に沿って会話を進めるあまり言葉も雰囲気も固くなってしまいます。研究者交流の場面で話しかける時は、初対面の人であってもとりあえず “Hello.”でよいのです。また、後で述べるように上記の定番表現を使わなくても、「はじめまして」に相当する様々な表現を使うことができます。…

研究者交流のための英語とは?

これから、標記のテーマのもとに、続き物の記事を書かせていただきます。私が代表理事を務める一般社団法人学術英語学会(J-SER)では、毎年、セミナーを開催しておりますが、出し物の中でユニークな企画となっているのが「ソーシャライジングとネットワーキングのための英語」です。はっきりとしたイメージがわかない、という方のために、記念すべきシリーズ第1回目では、簡単にその趣旨を説明します。 英語論文執筆では困らない---しかし国際学会の発表後、質疑応答で立ち往生する日本人研究者 日常的に自然科学系の研究者は、研究成果を英語論文にまとめ、海外のジャーナルへ投稿しています。また、国際学会の口頭発表では、スライドをめくりながら手元のスクリプトを読み上げるにあたって特に英語に大きな困難を感じることは無いようです。ところが、問題は質疑応答の場面です。フロアから投げかけられた質問が聞き取れない、あるいは質問内容が込み入っていてよくわからない、聞き取れても、とっさに頭の中で答えを組み立ててそれを適切な英語で発話することができない---この困難は実際にそのような経験をしなければ想像し難いでしょう。私が以前、京都大学で行ったアンケート調査で、衝撃的な証言が得られました。口頭発表は無事行っても、質疑応答で質問にどう答えて良いかわからず「立ち往生」している日本の研究者を何人も見かけた、というものでした。 国際的な場面で人の輪の中に入って行けない また、懇親会(welcome reception等)で人の輪に入っていけず日本人同士でかたまってボソボソ日本語で話している風景もよく見られます。国際色豊かな研究者たちの会話に入っていけないのは、英語の発話力や聞き取り能力の問題もあるでしょう。しかし、人の輪にはイタリア人やブラジル人、中国人の研究者などが入っており、必ずしも英語のネイティブスピーカーではない場合もあります。皆、英語が流暢だとは限りませんので、自分の英語力に引け目を感じることはないのです。そのような場面に出て行く人はまだましで、そもそもそのような social gathering には参加せず宿泊ホテルに帰ってしまう人も多く、これでは何も始まりません。 このような方面に着目したのが標記の「研究者交流のための英語」です。第2回目の記事以降、国際的な交流の場面を切り抜けるための会話術を解説していきます。主に解説するのは懇親会での会話の始め方、会話の続け方、会話の締めくくり方をはじめとして、相手の発言にどう反応するか、質問にどのように答えるか、逆に質問をどのように投げかけるか、等々、さらには、研究者同士を引き合わせたりコネクションを作るための技法です。その他、フォーマルな食事会(dinner, luncheon, banquet)の場面や、研究者の自宅に招かれたり逆に招いたりという場面も視野にいれます。研究者の交流とはいえ、国際的な場面では、個人間だけでなく異文化間の諸問題も絡んできますので、言語だけでなく文化的な内容にも触れたいと思います。 --------- 質問に対してひと言も声を発することができず、“Hello? Are…

欧州機関オープンアクセス義務化へ「プランS」発表

今年9月、ヨーロッパで研究費を助成している11の機関が共同で、自分たちが予算を提供している科学者たちは、2020年以降、論文を即座に無料で公表することを義務づけるという構想「 プランS (Plan S)」を発表しました。この計画は、欧州委員会が推進しており、ヨーロッパ各国の国立の研究費助成機関などが署名していますが、国によっては意見が分かれています。当然、出版社は反発しており、この先の動きには注目です。

「アンペイウォール」でオープンサイエンスが実現!?

本誌で何度も伝えているように、ジャーナル(学術雑誌)の購読費が値上がりしていることによって、論文を入手しにくくなっていることに多くの研究者らが不満を抱いています。そのため、誰でも論文を無料で簡単に入手できる“海賊版”論文サイト「サイハブ(Sci-Hub)」が歓迎されてきました。その一方、当然ながら激怒した学術出版社がサイハブを訴え、アメリカの裁判所がウェブサイトの閉鎖や賠償金の支払いなどを命令したものの、サイハブはアメリカの司法の力がおよばない国にサーバーを置くなどの対抗処置を講じており、依然として利用可能です。 日本人がサイハブを利用して論文を入手することは違法でも何でもありません。しかしながら、アメリカの司法で著作権侵害だとみなされたサービスを使うことに抵抗がある人もいるでしょう。そんな人のために登場したサービスの1つが「 アンペイウォール (Unpaywall)」です。 アンペイウォールとは、ウェブ上に合法的にアーカイブされた論文PDFを見つけるためのツールで、ウェブブラウザの拡張機能(アドオン)として普及しています。 インストールも使い方もとても簡単です。たとえばファイアフォックス(Firefox)であれば、右上のメニュー(横線3本)から「アドオン」、「アドオンをもっと見る」と進み、「アドオンを見つけよう」と書いてある検索窓に「Unpaywall」と入力すると、アンペイロールのページがすぐに見つかりますので、「Firefoxへ追加」をクリックすれば、インストール終了です。 あとは普通に論文を検索してみてください。右上に、緑色の鍵マークが出ていたら、そのページで全文を入手できなくても、ほかのページで入手できることを意味します。一方、灰色の鍵マークが出ていたら、残念ながら全文を無料で読めるページはないということです。 『ネイチャー・ニュース』は、このアンペイウォールの歴史は2011年に遡り、「オープンサイエンス」についてのワークショップに参加したコンピュータ科学者3人のアイディアによるものだったことを伝えています。 そのうち2人、ヘザー・ピウォワー(Heather Piwowar)、ジェイソン・プリム(Jason Priem)は非営利組織「インパクトストーリー(Impactstory)」を設立して、2017年3月10日にアンペイウォールをプレリリースし、4月4日、正式にスタートさせました。すでに1万人以上がインストールしたことを、『ネイチャー・ニュース』が伝えています。 世界中の研究機関がジャーナル購読費の高騰に直面し、大手学術出版社との契約を中止するケースも伝えられていますが、アンペイウォールの存在を多くの研究者が認識するようになれば、研究機関が購読すべきジャーナルを選ぶ判断に役立つことなども指摘されました。 実をいえば、グーグル・スカラー(Google Scholar)で論文を検索すれば、たとえジャーナルのウェブサイトでペイウォール(閲覧制限)がかかっていても、「PDF」という表示が現れるものであれば、それをクリックすることで全文を読めるPDFファイルを入手することができます。ただし、プリムらによれば、グーグル・スカラーは無料で入手可能な論文すべてを検知できるわけではない、とのこと。アンペイウォールは、各研究機関がその成果を公開する「機関リポジトリ」に入れられている論文だけでなく、まだ査読中のプレプリント(原稿)を公開する「プレプリントサーバー」にある論文原稿の存在も検知するので、その便利さや能力はグーグル・スカラー以上かもしれません。 また、ピウォワーやプリムらがアンペイウォールのデータを分析したところ、現在、人々がアクセスしようと試みた論文のうち、約半数は無料で合法的に読むことができる、ということもわかりました。その結果は2017年8月にプレプリントとして公開され、査読を経て今年2月にオープンアクセスジャーナル『ピアーJ(PeerJ)』に掲載されました。当然のことながら、この論文はどのデータベースからアクセスしても、認証されたサイトであり、安全に閲覧できることを示すアイコン(緑色の鍵マーク)が記されます。 そして最近、ウェブ・オブ・サイエンス(Web…

論文英語の組み立て – 学術論文における 口語 の使用について

「 口語 」とは、日常生活における会話で用いられる言葉遣いのことです。英語の学術論文では口語を避けるべきだと言われますが、ここでその主な理由を説明します。 英語にもさまざまな口語と文語との違いがありますが、日本人学者が書いた論文における口語的な言葉遣いによる問題は、主に単語(多くの場合は動詞)の誤った選択に起因するものです。私が読んできた論文からすると、口語的な用法で用いられがちなものとして最も注意すべき単語や表現は以下を含みます。 動詞: give、take、put、keep、stay、do、make、look、call、remember、say、tell、ask、care、come、go、check、feel、happen、hit、touch、used to...、supposed to... 名詞: lot、way 形容詞: like、big、little、just、hard、easy、good、bad、great 前置詞: around、before、after 副詞:…

「捕食ジャーナル」ブラックリストへの強い要望

本誌でも何度も伝えてきたように、掲載料さえ払えばきわめて甘い査読のみで、どんなひどい論文でも掲載してしまうオープンアクセスジャーナル「 捕食ジャーナル (predatory journal)」が問題になり続けています。これらは「ハゲタカジャーナル」と訳されることもあります。 そうしたジャーナル(学術雑誌)に掲載された論文は、たとえば生物医学分野であったら、同分野の論文データベース「パブメド(PubMed)」に収載されないこともあります。 コロラド大学デンバー校助教授で図書館司書のジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)は2010年、捕食ジャーナルと捕食出版社のリスト、通称「ビールズ・リスト」をつくり始めました。ところが2017年1月、このビールズ・リストが予告なしに閉鎖してしまったことも、本誌で伝えた通りです。その理由は、ビールズは雇用主からの圧力だと述べる一方で、上司や所属機関はそれを否定し、あくまでも個人的な理由であるとしています。 ビールズ・リストが閉鎖されると、すぐにそれをコピーしたウェブサイトが複数登場してきました。今年3月、『ネイチャー・ニュース』はそのうちの1つのサイトの管理人にメールで取材することに成功し、その人物が自然科学分野の研究者であると述べたものの、それ以上の詳細は「ハラスメントの恐れ」を理由に明かさなかったこと、彼または彼女はこのリストを更新・管理するために毎週数時間を費やしていることを明らかにしました。 「ビールズによる捕食ジャーナルと捕食出版社のリスト」と名づけられているこのウェブサイトは、その管理人が個人的に使うために制作したものだといいます。ところが、このウェブサイトを開設してすぐ、管理人は研究者たちから問い合わせのメールを受け取るようになりました。それらのほとんどは、自分が論文原稿を投稿しようと考えているジャーナルの信頼性について尋ねるものですが、中には、自分の研究が捕食出版社に盗まれたこと、自分の名前が捕食出版社に無断で使用されたことを訴えるものもある、といいます。 管理人は、問い合わせを受けたジャーナルが、まだリストに載っていないものである場合には、ジャーナルの価値を評価するための情報データベース「ジャーナル引用レポート(Journal Citation Reports)」をチェックするなどします。管理人が信頼できないものだと判断したジャーナルや出版社は、リストに書き加えられます。 このウェブサイトには、2018年3月までに、もともとビールがリストアップしていたジャーナルおよび出版社に加えて、スタンドアローンジャーナル(オープンアクセルジャーナル1誌だけを運営している出版社のジャーナル)85誌と、出版社27社が追加されています。 また、『ネイチャー・ニュース』によれば、他にも、研究者と思われる人々がビールズ・リストを復活させることも目的に開設したウェブサイト「ストップ捕食ジャーナル」が2017年1月から公開されていますが、残念ながら更新されていないようです。 一方、2017年6月には、「キャベルズインターナショナル」という学術サービス会社が、捕食ジャーナルだと思われ、信頼できないジャーナルのブラックリストを有料で発表しました。同社によれば、匿名の者たちによって管理され、無料で公開されているブラックリストは、それに載せられるものの基準が明確に説明されていないことが問題である、といいます。同社のブラックリストはその基準を明確に説明しており、現在、8000誌のジャーナルをリストアップしており、また、すでに約200の研究機関がこのリストを購読したといいます。…