?> 科学コミュニケーションと学術出版のエキスパート ― エナゴ学術英語アカデミー

句読点(Punctuation)の重要性―例文で使い方を説明

もしも句読点(Punctuation)がなくなったら…と想像したことはありますか? Netflix、Instagram、Wi-Fiや、スマートフォンがなかったらと想像するのは難しいかもしれませんが、突然、英語の文章からカンマ(,)、アポストロフィ(’)、ピリオド(.)などの句読点や、括弧、疑問符、ダッシュなどが消えてしまったら? はじめに - 句読点は重要か? 作家のジーテ・タイル(Jeet Thayil)のデビュー小説『ナルコポリス(Narcopolis)』は、2012年にイギリスの文学賞であるマン・ブッカー賞(Man Booker Prize for Fiction)にノミネートされていますが、この小説は、ピリオドなしの7ページ(2,309ワード)に及ぶ文章で始まっています。 ミレニアル世代とZ世代は、テキストメッセージにピリオドを入れるのは信じられないほどかっこ悪いので、何が何でも使わないようにしており、それが原因で句読点ぬきの英文が増えているとも言われています。日本語でも「マルハラ」などという言葉が出てきましたね。句読点がハラスメントにつながるなんて、なんとも驚くべきことです。 アメリカには「National Punctuation Day(仮訳:全国句読点の日。毎年9月24日)」という、句読点の正しい使い方を促進するための祝日があります。…

【9/2までアンケート実施中】研究インテグリティと論文撤回:倫理的不正行為にまつわる影響と対応を理解する

2024年も半ばを迎えようとしている現在、学術研究と出版における大きな話題の一つが「研究インテグリティ(研究公正)」です。 論文の撤回件数・撤回率が増加し続けている*ことなどからも、研究インテグリティの確保は喫緊の課題と言えるでしょう。データや画像の改ざん・捏造、盗用・剽窃、研究方法の不備、AIツールの使用を開示しないこと、といった様々な理由による論文撤回は、論文として出版された研究全体への疑念を生み出します。 また、研究不正のニュースは、学術界の内輪だけの問題にとどまらず、科学や研究に対する社会の視線にも影響を及ぼします。 そこでエナゴでは、エナゴ学術英語アカデミーの研究リスク評価イニシアチブの一環として、第8回グローバルアンケート調査を実施いたします。「研究インテグリティと論文撤回:倫理的不正行為にまつわる影響と対応を理解するためのグローバルアンケート調査」と題するこの調査は、研究インテグリティに関する調査としては前回の第7回に続く第2弾となります。 本アンケート調査の主なねらい 今回は、論文撤回と倫理的不正行為に焦点を合わせて研究者の意見を募り、その影響について探ります。アンケート調査の主な目的は以下のとおりです。 1. 適正か不正かがあいまいなグレーゾーンを明らかにして倫理的な研究の未来像を描くため、倫理指針に対する研究者の皆様の認識と意見を評価する 2. 研究不正を調査するための現在の報告の仕組みを評価する 3. 論文撤回と研究不正の広範な影響を明らかにする 4. 研究インテグリティを確保する上での学術出版関係者の役割を明らかにする  …

即時オープンアクセス義務化への準備はできているか?

即時オープンアクセス(OA)とは、学術雑誌(ジャーナル)に論文が受理・出版されると同時に、誰もが無料でアクセスできるインターネット上で論文を公開し読めるようにすることです。 2018年9月に、欧州の研究助成機関が助成した研究成果を完全かつ論文発表直後からオープンアクセスとするためのイニシアチブcOAlition Sが、すべての研究をオープンアクセスにすることを目指すプランSを発表して以降、研究論文のOA化が進んできました。 発足以降、cOAlition Sに参加する助成機関はヨーロッパ、米国、オーストラリア、南アフリカに広がり、2022年8月には米国バイデン政権が、遅くとも2025年末までに連邦政府から助成を受けた研究の成果は出版と同時に無料で読めるようにするとの方針を打ち出し、翌2023年5月のG7広島サミットおよびG7仙台科学技術大臣会合の共同声明には、公的資金による研究成果の即時オープンアクセスの支援を含むオープンサイエンスの推進が盛り込まれました。 日本でのOA化に関する基本方針 日本では、前述のG7会合を踏まえ、競争的研究費制度における2025年度新規公募分からの学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた国の方針「統合イノベーション戦略2023」が2023年5月に閣議決定されました。 これに基づき、日本学術振興会がOA化に関する実施方針を定め、科研費をはじめとする研究資金の助成を受けた研究論文は、原則としてオープンアクセスとすることとしました。その後、2023年10月には、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)有識者議員懇談会が議論のとりまとめとして「公的資金による学術論文等のオープンアクセスの実現に向けた基本的な考え方」を公表し、この理念を踏まえ、2024年2月には「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」が決定されています。 この基本方針には、「2025年度から新たに公募を行う即時オープンアクセスの対象となる競争的研究費を受給する者(法人を含む)に対し、該当する競争的研究費による学術論文及び根拠データの学術雑誌への掲載後、即時に機関リポジトリ等の情報基盤への掲載を義務づける」と記されていますが、2025年度という期限が近づくにつれ、OA化への準備が不十分であるとの調査結果が出てきています。 調査結果から見える準備の遅れと財政的支援の必要性 科学技術や学術振興に関する基礎的な事項を調査・研究する国立の試験研究機関である科学技術・学術政策研究所(National Institute of Science and…

広大な海が蝕まれている?世界中の海で進む海洋汚染―世界で今起きていること<気候変動編>後編

人間の生活が直接的な原因でもある海洋汚染、特に海洋プラスチック汚染について取り上げる世界で今起きていること<気候変動編>第3弾。前編では、海洋汚染の原因や海洋プラスチックが地球環境そして人間を含む生態系に与える影響をまとめました。後編では、汚染から海を守る世界の取り組みと、持続可能な開発目標「海の豊かさを守ろう(目標14)」をふまえ個人単位できること、そして海洋汚染に関する研究や海洋汚染について学べる動画をご紹介します。 海を守る世界の取り組み 海洋環境を守るためにさまざまな国際条約によって海洋汚染を防止する対策がとられています。国連海洋法条約は、海洋に関する包括的な規定ですが、その他にも、先述した「マンポール条約」、廃棄物その他の投棄による海洋汚染の防止に関する「ロンドン条約」、油汚染緊急計画の準備と対応への協力に関する国際条約である「OPRC条約」、プラスチックゴミを含む有害廃棄物の国境を超えた移動と処分を規制する「バーゼル条約」などに加入しています。日本としても、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」によって海洋への廃棄物の投機を原則的に禁止し、「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を制定するなどして海洋汚染を防ぐ処置を講じています。 こうした国際的な条約や法整備以外にも、世界でさまざまな対策が行われています。 日本の環境省は2019年に「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」を策定し、具体的な海洋プラスチックごみ対策を取りまとめました。 EU(欧州連合)では、2019年5月に使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する「DIRECTIVE (EU) 2019/904 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE…

広大な海が蝕まれている?世界中の海で進む海洋汚染―世界で今起きていること<気候変動編>前編

気候変動は地球のさまざまな場所でその兆候が観測されていますが、地球表面の約7割を占める海も例外ではありません。海水温の上昇は、海洋の生物に多大な影響をおよぼすだけでなく、大気と相互に影響し合い、世界各地の気候や降雨・降雪のパターンを変える原因となっています。海の温暖化は深刻ですが、同時に海の汚染も大きな問題となっています。言語面から学術研究をサポートしているエナゴアカデミーが、世界が直面している気候変動や環境問題をとりあげる本シリーズの3本目は、人間の生活が直接的な原因でもある海洋汚染、特に海洋プラスチック汚染について取り上げます。 前編では、すさまじい速度で進む海洋汚染について、汚染の原因や、汚染の一因である海洋プラスチックのゆくえ、そして海洋プラスチックが地球環境や生態系に与える影響についてまとめます。 はじめに 海洋の温暖化については、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change : IPCC)が2019年に『Special Report on the Ocean and…

研究リスク評価第5弾グローバルアンケート調査:オープンアクセス出版は障壁のない知識の共有につながるか?

学術コミュニケーションが進化し続ける中、研究者、研究機関、資金提供者はオープンアクセス(OA)出版の世界的な拡大に注目しています。 全般的にはOAモデルを指示することで意見が一致しているように見えますが、OA出版に関する認識や「Pay to Publishモデル(移行契約あるいは転換契約とも呼ばれるモデル)」の状況をより深いレベルで評価し、研究者、研究機関、および出版社の見解や具体的な洞察を明らかにしておくことが必要です。このことを念頭に、研究支援エナゴは、OAに対する認識、論文掲載料(APC)に対する考え方、さらに資金提供の機会に関する認識の現状を把握するため、第5弾グローバルアンケート調査を実施しました。 この調査で明らかになった注目すべき点のひとつは、オープンサイエンスに関する認識不足は根強く残っており、主として経済的な負担からその導入には消極的であるということです。学術界ではオープンサイエンスが学術コミュニケーションの未来であると広く認識されている一方で、学術界および出版界のさまざまな関係者は、オープンサイエンスについての情報を十分に持っていなかったり、導入に躊躇していたりします。 この報告書は、地理的な不平等や定期購読ベースの出版に移行する可能性、論文掲載料(APC)が低く品質の低いハゲタカジャーナルを著者が投稿先として選択することなども含め、増加し続けるAPCのコストに関連するマイナスの影響についての懸念も取り上げています。また、APCの支払いに利用可能な公的・民間助成金や、それらの助成金を申請するためのベストプラクティスに関する研究者の認識にも大きなギャップがあることも浮き彫りになりました。 本報告書は、今後もOA出版モデルが普及することを踏まえ、多様な関係者の意識と姿勢を調査することの重要性と、OA出版に向けた包括的な教育の必要性を強調しています。本調査は、地理的に多様性のある、学術研究キャリアのさまざまな段階にいる研究者を対象に行われたもので、世界の研究コミュニティが直面している課題と機会について包括的な概観を得ることができます。 >>オープンアクセスに関するグローバル調査報告書を読む(PDF)   日本に関する特記事項 日本人の回答者のほとんどは、研究資金の必要性に同意しており、39.26%がすべての研究には資金が提供されるべきだと回答しています。助成金申請書に出版費用の概算を記載することについては、37.42%の回答者が賛同しています。   オープンアクセスについては、強い支持が示されており、37.82%がすべての学術研究をオープンアクセスにすべきと回答していました。   オープンアクセス出版におけるAPCに対しての意見にはばらつきがありましたが、55.33%が特定の状況下でAPCが課せられることに対して理解を示していました。…

アカデミック・ライティングにおける言葉の選択と注意点

「言葉の選択」とは 文章を書く際、効果的で的確な言葉を選択することにより、読者に正確な情報を伝えることができます。効果的な「言葉の選択」、つまり、状況に応じていかに適切な言葉を選ぶかがとても重要なのです。同じことを伝えるにしても、選ぶ言葉によって読み手が受け取る印象は異なり、意図とは異なる意味が伝わってしまうことすらあります。アカデミック・ライティングの場合には、専門用語を多用しすぎると分かりにくくなってしまいます。専門用語や紋切り型の表現(定型表現)を使いすぎることなく、明示的な意味や含意を伝えられるようにすることが大切なのです。また、語彙が多ければ良いというものでもありません。 文章を書く上では避けて通れない「言葉の選択」 自分の研究内容をきちんと伝えるためには、論文で適切な言葉を選ぶことが極めて重要です。アカデミック・ライティングに限ったことではありませんが、文章の執筆とは、言葉の選択の連続です。自分のアイデアを明確に表現できる単語を注意深く選ぶだけでなく、それらの単語をどのようにフレーズ、センテンス、さらにはパラグラフとして配置するかを判断しなければなりません。説得力のある言葉の選択は、読者の内容理解につながります。それが、研究アイデアを明確にし、拡散するのす。 言葉を吟味する際には、読者に正しい情報を伝えることを妨げる要素のないように注意することも重要です。 言葉の選択における一般的な注意点につき、例文を示しつつ説明していきます。 誤った単語 あまり深く考えずにライティングを行う、あるいは単語の意味を間違って覚えているなど、さまざまな理由で間違った言葉を使ってしまうことがあります。特に、意味や品詞を混同しやすい英単語には注意が必要です。 例1:There were averse effects. 修正1:There were adverse…

AIノートアプリObsidianでアーティストになる方法

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン教授のコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。文章を作成するのに情報が整理されているほうが書きやすいとは分かっていても、なかなか整理できないという人は多いと思います。今回、ミューバーン教授はObsidianというノートアプリの活用法を作業例と共に紹介してくれています。文章作成の効率を向上させるために試してみてはどうでしょう。 私は今、キャサリン・ファース(Katherine Firth)とHow to fix your academic writing troubleの第2版を執筆しています。執筆プロセス、特に生成AIツールを使った思考法についての新しい章を加えようとしているところで、インスピレーションを得るために、アーティストのアトリエという場所がどのようにアーティストの仕事を支えているか考えているところです。 作品を創り出すアーティストのアトリエには、創作のためのツールや素材、作品制作に使う消耗品や完成品を保存するスペースまで、さまざまな物が詰め込まれています。ある程度のアーティストのアトリエであれば、中心に作業台があり、そこで作品が作り出されています。アーティストのアトリエとは自己表現の場で、アーティストの創造性を刺激するもので満たされているのです。ChattieG(訳者注:ミューバーン教授はChatGPTを愛着を込めてChattieG (チャッティーG)と呼んでいます)の生みの親であるOpenAI社が公開したAI駆動型画像生成ツール「DALL-E3」にアーティストのスタジオのイメージを出力させてみた結果が下の画像です。 いい感じですよね。 建築のバックグラウンドを持つ物書きである私は、物理的なアトリエを持っていませんが、今でも自分のことを一介のアーティストだと思っています。今に至る20年の間に、私のノートパソコンのハードディスクには驚くほどの量のテキストファイルが収まっています。学位論文、書籍、学術論文といったきちんと完成されたものだけでなく、中途半端なところで執筆が止まったままの草稿や忘れ去っているアイデアなどもあります。…

研究に役立つ「片付け」

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン教授のコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。多くの研究者が書斎や情報整理に苦労していると思います。ミューバーン教授が、ご自身の仕事に関連する書籍やコンピューター内のファイルの片付けについて話してくれました。 みなさんこんにちは。今回は研究者の生活に役立つ「片付け」について話したいと思いますが、その前にいくつかニュースをお伝えします。 2018年12月に出版した『How to Fix Your Academic Writing Trouble: A Practical Guide(仮訳:アカデミック・ライティングの問題を解決する方法)』は、5 年経った今でも好評ですが、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM:Large…

「最初の論文投稿から受理されるまでの時間」―ジャーナル新指標の提案

研究成果を論文として出版することは、学術研究にとって必要不可欠な要素です。長い間、研究者たちは研究成果を発表・共有することで、人類の知識を蓄積してきました。 論文出版のスピードを阻む障壁 しかし、学術出版プロセスは、ほとんどの研究者にとって、原稿を書き上げたからといって終わりではありません。研究論文をどの学術雑誌(ジャーナル)に投稿するかの選択は大変重要です。そして投稿された論文は、出版に値するかを判断するために査読にかけられるわけですが、この査読は学術出版プロセスにおいて最も重要な要素であるとともに、最も時間を要するものでもあります。 論文を投稿する研究者らは、ジャーナルの査読プロセスの長さを、迅速な出版を阻む大きな障壁として指摘しています。従来のジャーナルの評価指標でも、原稿が投稿されてから最初の判定が出るまでの平均時間や、受理(アクセプト)から出版までの平均時間などで出版効率が測定されてきましたが、それでも本当のタイムラインは捉えきれていません。 現在の出版システムは、何世紀もの間、かなりうまく機能してきましたが、投稿論文の量が指数関数的に増加するにつれて、著者が論文を投稿してから受理されるまでに要する時間が長期化するようになりました。 これは、査読者の都合(査読者手配の難しさや査読を引き受けられる能力の問題も含む)や、査読者からのフィードバックに基づく修正の必要度など、さまざまな要因によるものです。時には、査読需要の増加によるジャーナルの管理上の問題が査読プロセスの開始の遅れにつながることもあります。 この10年程度の間に、こうした状況および数々の問題への不満の要因が知られるようになり、重点的に研究が進められてきました。 「ジャーナルの3分の1が、査読に進まず編集者の判断で投稿後すぐにリジェクト(デスクリジェクト)するまでに2週間以上、6分の1が4週間以上を要している。このことは、査読者が査読に要する時間以外に、非効率的な編集プロセスも重大な原因となっていることを示唆している。所要時間が短く、論文がアクセプト(受理)された査読プロセスの方が、著者から高く評価されることは想像に難くない。」 Huisman & Smits (2017). Duration and quality…