学生向け研究tips

研究・論文執筆は民間企業でもキャリア構築につながるのか?

登壇者それぞれのこれまでの歩み 民間企業を選んだ理由 博士課程での研究と現在の活動とのつながり 論文執筆という作業と民間企業でのキャリア形成との関係

調査研究に適した統計的仮説検定を選ぶ際の7つの重要項目

実験などから得られたデータの統計処理を行う場合、どの統計手法を用いればよいのか、この方法でよいのか分からないということも多いと思います。統計的仮説検定の選択を誤ると、研究結果への信頼性に疑問を持たれたり、論文が不採用にされたりすることになりかねません。この記事では、母集団の分布の型(パラメトリック/ノンパラメトリック)の違いから、統計的仮説検定の手法を選択するために重要な項目について解説します。 統計的仮説検定とは 統計検定(hypothesis testing)、あるいは統計的仮説検定(statistical hypothesis testing)とは、ある仮説が正しいのか否かを統計学的に検証する方法です。2つのデータセットが互いに有意に異なるかどうかを数学的に検定するもので、母集団分布の母数に関する仮説を標本から得た情報(データ)に基づいて統計学的な方法で検証し、対象となる変数の母集団に関する条件になんらかの差があるといえるかどうかについて確率論的な分析を行うものです。統計的仮説検定では、平均、標準偏差、変動係数などいくつかの統計的尺度を用いて計算し、それらをあらかじめ決められた基準のセットと比較します。もしデータが基準を満たせば、2つのデータセット間に有意差があると結論づけることができます。 分析するデータの種類によって、使用できる統計的仮説検定は異なりますが、一般的な手法としては、t検定、カイ二乗検定、分散分析(ANOVA)などが挙げられます。 統計的仮説検定の種類 統計的仮説検定にはいくつかの手法があり、解析の種類 や母集団の分布などに適した手法を選択する必要があります。最初に母集団のデータ分布を事前に仮定している(パラメトリック検定)か、仮定していない(ノンパラメトリック検定)かを大別して、解析の種類を狭めていきます。 1.パラメトリック検定 パラメトリック検定とは、データの母集団が何らかの分布に従っていると仮定している場合に用いられる検定手法です。分布を決める際の重要な要素(パラメータ)を持っており、事前にデータの分布が仮定できるものに用いられます。特定の分布に従っていると想定できる観測値(データ)に対して実施することで、データの分布が想定したモデルと一致しているか否かを主張する際の定量的な根拠となります。一般的なパラメトリック検定としては、回帰分析、比較分析、相関分析が挙げられます。 1.1.回帰分析 回帰分析とは、データにおける関係性や影響力を調べる統計的な手法で、主に原因と結果の関係を推測する際に利用されます。回帰分析には、単回帰分析と、その応用ともいえる重回帰分析、さらにロジスティック回帰分析があります。 単回帰分析は、従属変数と独立変数の間の関係を直線で示すもので、2つの量的変数の関係、つまり目的の変数に対して説明の変数がどのように影響を与えているかを示す式(回帰式)を導き出されます。…

優秀な研究者になるための10の資質

科学研究は、何世紀もの間、技術革新の最前線にあり、私たちを取り巻く世界の理解を前進させ、生活を変える多くの先駆的発見への道を切り開いてきました。そんな科学の発展の一翼を担う研究者として成功するには何が必要なのでしょうか。単に知力と技術的なスキルがあれば良いのか、それともそれ以上の何かが必要なのでしょうか。 優秀な研究者と聞くと、研究室に閉じこもって顕微鏡をのぞきこみ、ひたすらデータに目を通したりする天才肌の人物がステレオタイプ的なイメージかもしれません。しかし実際に優秀な研究者になるためには、実際の研究に必要な知力と技術力だけでは十分とは言えません。専門知識や学歴は確かに重要ですが、他にも科学研究の分野で成功するために不可欠な資質が多数あります。これらの資質を養うには、生涯にわたる意識的な努力と献身を必要とします。この記事では、高い業績を上げる優れた研究者となるために不可欠な資質を10のポイントにしぼって掘り下げてみます。 批判的な考え方から創造性、情熱を注ぎ続ける根気といった幅広い資質を有する研究者こそが、それぞれの分野で秀でた業績を成し、世界に長期的な影響を与えることができるのです。科学的な研究における自分の潜在能力を最大限に引き出す極意を見つけてください。 優れた研究者の資質 研究分野のトップ研究者になりたいと願っているのであれば、内に秘めた類まれな能力と、他者と大きく差をつけるための10の本質的な資質を解き放ちましょう。以下に優秀な研究者に必要とされる10の資質をひとつずつ概説していきます。 1.情熱(研究への熱意) “Science is not only a discipline of reason, but…

インタビューを研究に用いることの重要性とその進め方

研究の一環として実施する調査は、さまざまな学術的、科学的、専門的なデータ収集において、極めて重要な役割を果たすものです。研究者は、インタビューを通して個人の考えや経験、視点を深く掘り下げる機会が得られることで、複雑な現象を包括的に理解することが出来るようになります。学術研究を進める上で、特定の題目について効果的で洞察力のあるデータ収集方法を考えることは大変重要です。この記事では、質問者(研究者)が対象となる回答者に質問することで特定のテーマに関する一次情報(データ)を収集するための定性的な手法であるインタビューについて、その特徴と進め方についてお伝えします。 最初に、インタビューの3つの主な要素を挙げてみましょう。 インタビューの3つの重要な要素 Flexibility 柔軟性:研究者は、参加者の回答に基づいて質問を調整しながら調査を進めることで、新たな分野を探求することができる Elaborative 精巧さ:参加者はインタビューの間に自分の回答や複雑な考えを明確に伝えることができるので、誤解が生じる可能性が低くなる。また、研究者は参加者の回答のニュアンスや欠落している要素を容易に確認することができる Contextual Understanding 文脈の理解:インタビューを行うことで、参加者の経験や視点に影響を与えている文脈的要因を捉えることができる。研究者は、個人の見方を形作る社会的、文化的、環境的要因を探ることができる 一次情報(データ)収集におけるインタビューの重要性 直接情報を入手するという役割においてインタビューはとても重要な手段です。インタビューを行うことで研究者は参加者と直接対話する機会を得られるので、偏見のない一次情報(データ)を収集することができます。 1.主観的経験 インタビューは、を深く掘り下げるのに役立ちます。研究者が参加者と直接会話をすることで、参加者の経験、視点、意見のニュアンスや複雑さを掘り下げることができます。インタビューを行うことで、他の方法では難しい、研究対象の包括的な理解が可能になります。また、インタビューは、参加者自身によって語られるものなので、主観的な経験を捉えることができるという特長も備えています。参加者から自分の考え、感情、信念を直接聞くことで、調査結果に深みを増すことができるのです。 2.個人的な洞察…

統計における母集団とサンプルの違い

調査研究における母集団(population)と標本またはサンプル(sample)は、あらゆる科学的探究の基礎となるものです。データに隠された謎を解き明かすには、研究対象における母集団とサンプルを理解することが非常に重要です。母集団とサンプルの間の関係性を理解することによって、研究結果の妥当性、信頼性、一般化の可能性が確保されるのです。この記事では、研究における母集団とサンプルそれぞれの意味と違いを明らかにした上で、サンプリングの手順についても概説したいと思います。調査統計における母集団とサンプルについて理解が深まり、研究者が情報に基づいて結論を出すのにこの記事がお役に立てれば幸いです。 母集団(Population)とは 研究調査の対象となる集団全体は、母集団と呼ばれます。研究者が結論を導きだそうとして統計的な調査を行う際の対象全体であり、特定の特徴、数値、属性等のある個人、対象物、または事象の全体または集合体を指します。この母集団から抜き出された対象の一部(部分集団)が、サンプル(標本)です。研究対象となる母集団は、研究目的と調査中の特定のパラメータまたは属性に基づいて定義されます。例えば、新薬の効果に関する研究の母集団には、その薬の恩恵を受ける可能性のある、または薬の影響を受ける可能性のあるすべての個人が含まれます。 母集団からのデータ収集 集団全体を包括的に理解する必要がある場合、集団からデータを収集しなければなりません。以下に、データ収集を行う事例を挙げます。 1.少人数または調査しやすい集団からのデータ収集 調査母集団が少人数の場合、または調査しやすい(対象へのアクセスが可能な)場合には、母集団全体からデータを収集することが可能です。特定の組織、小規模なコミュニティ、または大きさの管理が可能な母集団のように、明確に定義されたグループ内で実施される研究でよく行われる手法です。 2.国勢調査または全数調査 政府による調査や公的統計など、国勢調査や全国的な調査が必要な場合には、集団内のすべての個人または実体データを収集することを目的とした調査が行われます。状況を正確に把握し、サンプリングエラーを排除するために行われるのが一般的です。 3.特異的または重要な特性を調査するためのデータ収集 希少かつ研究にとって重要な特定の特性や特徴に焦点を当てた研究を行う場合、集団全体からのデータ収集が必要となることがあります。希少な疾患、絶滅危惧種、特定の遺伝マーカーに関連する研究等が挙げられます。 4.法的または規制上必要となるデータ収集 法律や規制の枠組みによっては、全住民からのデータ収集が必要な場合があります。例としては、行政機関が、政策立案や資源配分を行う目的で、所得水準、人口統計学的特性、医療利用状況などに関する包括的なデータを必要とする場合が挙げられます。 5.精度または正確さを把握するためのデータ収集 高精度または正確さが必要な場合、研究者は集団レベルのデータ収集を選択することがあります。集団レベルのデータ収集を行うことによって、サンプリングエラーが生じる可能性を軽減し、より信頼性の高い母集団パラメータの推定値を得ることができます。…

後輩指導は博士課程の学生にとって有益か?!

自分の研究を管理するだけでも大変なのに、学部生の指導を行うように言われたことはありませんか?指導方法なんて分からないのに、研究責任者(PI: Principal Investigator)から、学部生の指導を引き受けるように言われたら、どうしますか。確かに大変な役割ではありますが、博士課程(PhD課程)の間に後輩の指導(教育指導)を経験することは、自分自身の知識を広げ、研究に関する目標を学部生と共有し、学部生の研究の対象分野への好奇心をそそるには絶好の機会とも言えます。 もちろん、後輩を指導することは容易ではありません。特に、指導経験がない場合、研究者にとって難しいものになる可能性は捨てきれないでしょう。ただ、博士課程のどの時点で後輩学生の指導を行うか、どのような教育指導を行うか、何名の学生を受け持つのかなどは大学や学部によっても異なるようですし、博士課程になったからといってすぐに教育指導を任されるのではないようです。教育経験を積むために、自主的に教育の機会を持つ研究者もいます。STEM(科学・技術・高額・数学)分野で研究を行う研究者の場合、指導責任には、実験室での講義、例えば、学部生と修士課程学生のために科学的方法と技術の実地説明(デモンストレーション)を行うこと、管理業務、セミナーの開催、そして評価などが含まれるなど、指導内容もそれぞれです。 PhD課程における教育指導の内容 ここでは、PhD課程における教育指導の一例をあげてみます。 教育指導には、実際の教室での授業、学業に関する助言、学生の相談対応、各学部関連の業務、評価を踏まえた履修内容(カリキュラム)の開発、進行中の研究を探究するための学会参加、学部生・大学院生向けセミナーへの参加とそれらへのフィードバック、応用的な研究や学術活動、などといったことが含まれます。教員指導者は、学術方針を順守し、評価データの収集や割り振られた業務に積極的に関与することも期待されています。 大抵の博士課程の学生は、時間を取られる教育指導に関わるのを嫌がるものです。研究者は自分の研究活動に専念したいので、余計な責任を負うのを避けたいと思っています。しかし、博士課程で教育指導に従事することは、研究者としても有益な経験となり得るのです。 PhD課程での教育指導がどう有益なのかを挙げてみます。 1. プレゼンテーション能力を高めることができる 2. 研究テーマに関する知識を磨くことにつながる 3. 研究者自身の研究に関する知識を伝える機会となる…

新規性が高く斬新な研究テーマを見つけるための文献レビュー

研究テーマの選択 研究課題の特定 効果的な文献調査のコツ ジャーナルデータベースの使い方

博士課程をスムーズに修了させるための研究計画の作成

博士課程に入るのは簡単なことではありませんが、その後、博士号を取得するまでにもさまざまな困難に直面するでしょう。この記事は、博士課程での研究をスムーズに完了させるための研究計画(タイムスケジュール)の作成についてのアドバイスです。 博士号取得までの研究計画の作成はなぜ必要か 博士号を取得するまでの過程には、いくつかの節目があります。論文の提出、発表(プレゼンテーション)、審査、viva voce(口頭試問)といった節目を事前に確認し、それに向けて研究計画を作成しておけば、期限に追われて慌てることを避けられます。研究計画を作成し、それを着実に実行していくことができれば、研究者として成長し、自己管理力を身に付けることにもつながるでしょう。 研究計画の作成前に確認すること しっかりした研究計画を作成する際には、次の項目を確認しておく必要があります。 1. 博士課程において重要な段階(節目) 2. 取り組むべき作業 3. 専門的な要件 4. 関連する障害(リスク) 研究計画を作成するための準備…

PhD口頭試問Vivaに備えた質問12選と答え方

昼夜問わずに取り組んだ博士課程論文を提出して安堵のため息をついたところですか?でもまだ安心できません。論文提出は確かに大きな成果ですが、次は口頭試問(Viva)が待ち受けています。この面接が、博士号を取得できるか否かを決定付けます。指導教員を含めた審査官が提出した論文について質問をしてくるので、論文著者として的確に答えることが求められます。博士課程の口頭試問で聞かれることはさまざまですが、よく聞かれる質問もあります。この記事では、口頭試問で聞かれる可能性の高い12の質問と、その答え方についてのアドバイスを紹介します。 博士課程の口頭試問で聞かれる質問の内容 口頭試問では、審査官一般的には指導教官とそれ以外の2名)からの論文に関する質問に答えます。博士課程の口頭試問で聞かれる質問の内容は、大きく分けると以下の4つです。 1. 一般的な質問 2. 研究の背景と方法 3. 分析と研究結果 4. 議論と結論/予想される影響 博士課程の口頭試問へ向けて、上述の内容に関して聞かれる可能性の高い質問を想定し、回答を準備しておきます。予め質問に備えた練習をしておけば、実際の口頭試問の際にうろたえずに済むでしょう。 博士課程の口頭試問でよく聞かれる質問とその答え方 一般的によく聞かれる質問への回答を準備しておくことは簡単だと思うかもしれませんが、論文の内容に反対する質問に備えておくことも同様に大切です。緊張のあまり話題からそれてしまう可能性も十分にあります。そうなると、予想していなかった質問をされることにつながってしまうかもしれません。 論文を完璧に説明することが期待されているわけではありません。審査官は、研究に関する理解、方法、分析・結果、結論および予想される影響などを知りたがっているのです。…

研究者プロフィールの書き方(パート2)

研究者として自分のプロフィールを書くことも学術活動のひとつです。論文が学術雑誌(ジャーナル)に受理(アクセプト)された場合や、カンファレンスで研究結果を発表するような場合にプロフィールの提出が求められます。ところが、どこから何を書けばいいのか悩むことも―ここでは『研究者プロフィールの書き方(パート1)』に続き、プロフィールの書き方に踏み込んでみます。 プロフィールの構成 プロフィールは、短く、数行あるいは短いパラグラフに収めるという制約があります。自分自身の基本的な情報に絞りこむことが大切です。プロフィールの主な目的の1つは、自分の功績をしっかり伝えることです。簡潔にまとめたプロフィールで、自分の背景を大まかに伝えます。あまり細かく書く必要はありません。また、プロフィールは、「三人称」で書きます。つまり、「私(I)」を主語にするのではなく、他人からの目線で書くのです。適切なプロフィールはどのような情報から書き始めるべきでしょうか。 自分に関する基本情報には以下の事項を含めます。 氏名:文章中に自分のフルネームを書くことは少ないとしても、同じ名前の人と区別できるようにプロフィールにはフルネームを記載します。 身分:学術機関における身分(地位)は、あなたの背景や関心を読者に伝える大事な情報です。大学院生であれば、プロフィールを提示することで研究発表を依頼されたことや、論文などが発表されていること自体を印象付けることができるでしょう。 所属大学・研究機関:所属する大学、組織・機関に言及しておくことは大切です。 こうした情報を実際のプロフィールに書く際は、ここに示したような箇条書きではなく、散文体で書きます。例をあげてみましょう。 「ジョセフ・タイベリアス・シュモーは、ミネソタ大学の博士号取得課程に所属する学生です。」 この序文に続いて、主な研究に関する情報を続けます。 「シュモーは、中央アフリカのコンゴ盆地で、ボノボ(Pan paniscus)の社会構造に関する研究を行いました。」 この後に、対象動物をどのくらいの期間研究していたかなど、より詳しい情報を追加するとよいでしょう。自分の仮説を提示し、他の仮説とどう異なっているのかを説明することもできますし、研究における重要な意味などについて記載することも可能です。 プロフィールは、約35~30語(ワード)で書くのが一般的ですが、100~400語になるものもあります。その場合、記載される内容はより詳細になり、書き方も変わってきます。例えば、長いプロフィールには、以下のような情報を含めることができます。 •…

博士論文・修士論文を出版するには

博士論文・修士論文の執筆は大変な作業です。現在大学院で苦労している方や最近卒業された方は、修士や博士課程を無事終了するのにどれだけの時間と労力を要するか、よくご存知のことでしょう。大学院では、失敗や成功を積み重ねつつ何年も研究に費やしているはずです。多くの場合、大学院での研究は新たな洞察につながるので、こうした研究成果を学位論文(修士論文や博士論文)としてまとめるのです。 博士論文・修士論文を執筆する際、何年にもおよぶ研究の成果を反映させるために、さまざまなことを考える必要があります。学位取得の要件として論文を査読付き学術雑誌(ジャーナル)で発表することを義務付けている大学もあれば、論文の公表を求めない大学もあります。学位取得の要件に関わらず、博士号や修士号の取得者が学術的キャリアを形成する上で、査読付きジャーナルに論文を掲載することは避けて通れません。 博士論文・修士論文を出版する場合のチェック点 学位論文とひとことで言っても、在籍する大学院の過程によって求められる論文は異なりますし、地域によって言葉の使い方も異なっています。ヨーロッパでは、博士論文をThesisあるいはDoctoral Thesisと記し、独自の研究の成果をまとめることが求められる一方、アメリカではThesisは修士課程における研究の成果を示す比較的短い論文のこととすることが多いようです。 それを示す単語が何であれ、広範な研究は最終的に論文にまとめる必要があり、学位論文として書いた文章を学術ジャーナルに投稿して掲載させることも可能です。ただし、学術ジャーナル掲載を目指すのであれば、自分の研究についてあらかじめ以下のような点をチェックしておく必要があります。 厳密性:理路整然とした学術的な論文になっているか? 重要性:なぜ自分の研究内容が読み手にとっても重要か? 独自性:新規で独自性のある内容か? 需要性:利用価値、あるいは商業的な価値のある研究か? 学位論文の公開方法 以前は、大学による学位論文の公開方法といえば、卒業論文の要約を製本して公開するハードコピーによる公開のみでした。現在では、一部の修士論文や博士論文は、多くの場合クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを付けてオンライン公開されています。そのため、未発表(未公開)のオリジナルデータのみとする学術ジャーナルの発行要件には反することとなってしまいますが、一般的には、未発表の研究を記した学位論文を所属大学が公開することが学術ジャーナル採択の妨げになることはありません。むしろジャーナルは、大学が公開した学位論文は十分に新規性のあるデータであるとみなしています。ただし、大学のリポジトリで公開された論文であっても、学術ジャーナルでの掲載にあたっては査読が行われます。査読を通過して掲載されるためには、まず学内の学位論文審査のフィードバックに耳を傾けることが重要です。学内の審査委員会の批評は、多くの場合、ジャーナルの査読者の指摘と重なるので、論文に必要な修正を投稿前に行っておくことができるでしょう。 学位論文を出版する際の注意点 ここでは、大学院生が学位論文を出版する際に注意しておくべきことを挙げておきます。 まず一般論ですが、適切な引用、参考文献や謝辞の正しい記述、研究倫理の遵守は不可欠です。また、学位論文が公開される可能性を踏まえ、データの出所についての透明性を確保しておくことも重要です。学位論文を投稿する際には、該当論文または論文の一部が、印刷版のみ、あるいはオンラインリポジトリのいずれかで公開されているのかを必ず投稿先の学術ジャーナルに知らせることも必要です。…

修士論文(Thesis)と博士論文(Dissertation)の意義と違い

  大学院の学位を取得するには、通常、それぞれの課程で論文を執筆する必要があります。ところが、「論文」を示す語には幾つかの類義語があり、修士論文(thesis)と博士論文(dissertation)の意味と使い分けにも、混乱が見られることがあります。ここでは、この2つの言葉の意味の違いを整理してみます。 ThesisとDissertationの意味は、英国においてすら時代によって変わってきました。シェイクスピアの時代、修士号取得を目指す者はthesisを書く必要がありました。この場合、thesisとは特定の意見を主張した原著論文です。これに対し、博士号取得を目指す者にはdissertationの提出と発表が求められました。審査会に対してthesis(論文)を読み上げると、2人の委員が読み上げた内容の一つ一つに対して異議を唱えていくのを静かに待ちます。この審査の焦点は、その学生の考えと、考えを明確に整理して伝える能力です。学生が研究者としての道に進むことを望む場合、dissertationは避けては通れません。この時代のdissertationは、どちらかと言えば文献レビューのようなものでした。学生は特定の分野について幅広く本を読み、発見したことをまとめ、さまざまな機関やその意見について考察します。学生が対象分野の文献に精通していることを示すことが目的だったのです。 では現在、thesisとdissertationはそれぞれどのような意味で使われているのでしょうか。 修士論文(Thesis)と博士論文(Dissertation)とは 学位習得には高度な知識を要する学術論文を仕上げる必要があり、一般的には、大学院の修士号習得を目指す学生の書く修士論文をThesis、博士号習得を目指す学生が執筆する博士論文をDissertationと使い分けていますが、博士論文はDoctoral thesisと呼ばれることもあるようです。 修士論文(thesis)とは、研究成果に関する批評的な学術文書です。一般的には、修士課程を卒業予定の学生が提出します。修士論文の目的は、所属する課程の一環として研究してきた対象分野における専門知識や見解を示すことにあります。 博士論文(dissertation)とは、比較的長めの学術文書で、博士課程で行ってきた研究成果についてまとめたものです。博士論文を提出、発表した後、審査会での審査を経て博士号を取得することができます。この論文は、候補者が取り組んできた独創的な研究、あるいは、新規または既存の研究テーマを拡大させた研究に関する全ての情報を含めたものになります。 修士論文(Thesis)と博士論文(Dissertation)の違い 修士論文と博士論文の主な違いは作成時期です。先ほども指摘したように、修士論文は修士課程の最後に提出されるものであるのに対し、博士論文は博士号取得を目指す学生が執筆、提出するものです。 修士論文は、研究者が対象の研究過程で学んだ研究テーマについて熟知していることを証明するために、該当分野の研究をまとめたものです。博士論文は、その学生が専攻してる研究分野における既存の文献に新しい理論や情報を加える機会を与えるもので、博士論文用に行う研究は数年以上かけて完成させるのが一般的です。 修士論文は学んだ内容や既存の情報を提示することが目的であるのに対し、博士論文は、独自の概念を発展させ、理論的かつ実践的な結果に基づいてその概念を示すことを目的とするものです。 修士論文の長さは100ページ程度ですが、博士論文には研究の背景や情報も含めるので多いと400~500ページ程度の長さになることもあります。博士論文には、研究提案、助成金提案、文献レビュー、研究テーマのコンセプトに関する考え、そして、その研究に関するあらゆる詳細な情報が含まれていなければなりません。 修士論文(Thesis)と博士論文(Dissertation)の類似点…

How to Conduct an Impactful Original Research Study

Importance of original research Writing tips for an impactful paper Article discoverability and visibility Measuring…

大学院への志望動機書で押さえるべき10のポイント

国内外どこの大学院を目指すとしても、志望動機書・パーソナルステートメント(Personal Statement)を書くことは簡単ではありません。該当分野に対する興味と、その大学院に入りたい、プログラム/コースを受講したいという熱意、自分の長所と経歴をポジティブに書けばよいとはいえ、押さえておくべきポイントはあります。今回は、志望動機書を書くときに押さえておくべき10のポイントを紹介します。 志望動機書とは 志望動機書は、あなたが何故その大学院あるいはプログラム/コースに応募するのかという理由と共に、あなた自身のことを示し、該当する研究分野でどのように貢献できるかを伝えるための文書です。 一般的すぎる話、あるいは個人的なことであっても該当のプログラム/コースや学術研究からかけ離れた話を書いてしまうと、応募者がどのような人物で何をしたいのか、該当分野で貢献できるかを見極めるのが難しくなってしまいます。応募者は、何を研究したいのか、自身の興味や経験が対象の分野やプログラムに一致しており、研究の発展に貢献できることを明確かつポジティブに書き記すことが必要です。志望動機書を書き始めるにあたって、次のような質問への答えを考えてみてください。 応募する理由は? 応募対象は自分の興味や経験に一致(適合)しているか? 該当の研究分野にどのように貢献するつもりか? 重要なのは、導入部分で読者の興味を引き、伝えたいことを的確に記すことです。志望動機書は、自分の知識や経験と応募するプログラム/コースとの関係に焦点を絞ります。もちろん、文法、誤字脱字/スペル、句読点の使い方などには十分な注意を払っておく必要がありますので、自分自身で書き上げた文章を何度もチェックするだけでなく、同僚や指導教官らに確認を依頼する時間も十分にとっておきましょう。文章量にも配慮し、必要なポイントを簡潔にまとめ、過度に長い文章になることは避けます。英語で書く場合には、約700ワード、1-2ページ程度でまとめるようにしてみてください。志望動機書の作成には時間がかかりますので、余裕を持って作業に着手することをお勧めします。 志望動機書を書くときに押さえておくべき10ポイント 1. 自分自身について まずは、応募者である自分自身がどのような人物で、どのような経験を持ち、どのような研究活動に従事してきたかを伝えるところから始めます。 2. 応募理由…

ポスドク の生き残り術、カギは「自主性」

ポスドク (博士研究員)とは、博士号(ドクター)を持ち任期制で学術研究に従事する人たちです。ポスドクはアドバイザーや主任研究員(Principal investigator)と呼ばれる指導教官の指導・監督の下で研究を進めますが、その多くは大学や研究機関などで正規の研究職に就けず、非正規で研究活動を続けている研究者です。数年間の研究プロジェクトに採用されることもありますが、任期付きであることには変わらず、将来の保証はされません。このような苦境の中、研究者として生き残るには、ポスドクの期間に何を意識しておくべきなのでしょうか。 ■ ポスドクの時期に自主性を高めておく 勉学に励んだ結果、豊富な知識を持ちながら深刻な雇用問題に直面することが見えているポスドクになることに疑問を持つ人もいるでしょう。ポスドクになることが将来に役立つのかについての議論すらありますが、一旦この道に進むと決めたなら、自分の将来にとって重要な技量を磨くことや、その機会を最大限活かすことに集中すべきでしょう。自分の研究の間口を広げたり、必要とされる技能を修得したりすることも大切です。ポスドクの時期は論文執筆とその発表に時間を集中的に割くべきですし、併せて研究者間の人脈を広げることも大事です。このように、ポスドクの期間中に 自主的 に研究する力を鍛えておくことが大変重要です。 ■ 自主性の大切さ 研究者が独創的な自分の研究目標を設定し、主体的に取り組むためにも「自主性」は不可欠な要素です。ポスドクの期間中に自主性を身につけるためには、次の二つが重要です。第一に、指導教官の指導に依拠するばかりではなく、自分で研究を考え、進行させる力をつけること。研究プロジェクトを運用する能力は研究者として職を探す際に求められます。第二に、研究者としての自分の名前を拡散し、評価を得ておくことです。ポスドクの間に研究活動の成果を論文に記し、発表する力があること、研究者として必要なスキルと判断力をもち、研究に従事する準備が十分にあることを示せれば、将来につながる可能性を高めることができるでしょう。 ■ 自主性を高めるためにすべきこと 研究者としての自主性を高めるために、ポスドク期間中に次の点に取り組んでおくことをお勧めします。 1. 研究助成金に応募する(資金の獲得) ポスドクが応募できる研究費としては、主に公的機関や民間が提供する助成金が挙げられます。ポスドクの期間に少なくともひとつはこうした助成金に応募してみるべきでしょう。資金を獲得できれば経済的な助けとなるのに加えて、主体的に研究を進められる研究者であることの証となります。 2.…

博士号取得に必須のプロジェクトマネジメント・スキル

博士号を取得するためには、数年間の講座履修、研究活動、論文の執筆・発表、学会への出席など、限られた時間に多くのことをこなさなければなりません。すべてが計画通りに遂行できるわけではないので、時間の遣り繰りが難しいのが現実です。複数のタスクを混乱することなく計画的に進めるためには、プロジェクトマネジメント(PM)・スキルが必要なのです。 博士課程学生にはプロジェクトマネジメント(PM)スキルが必要 PMとは、プロジェクト全体を俯瞰的に眺め、全体の意思決定および進行管理を行うことです。さまざまなタスクに追われ、「五里霧中」に陥ることがあると評される博士課程学生には、PMスキルが必要です。規模の大小に関らず、プロジェクトの進行において計画的に仕事を進めることができず、収拾がつかない状態に陥った場合には、その状況から脱却するスキルが必要なのです。自身もジョージア工科大学でバイオエンジニアリング分野の博士号取得を目指しているAngel Santiago-Lopezは、博士課程の教育にPMの指導を含める必要があると感じ、他の学生にも役立ちそうなPMスキルを構築しました。そこには、プロジェクトの題材の組み立て、目標の設定、スケジュールの作成や管理などを含めた6つのアドバイスが記されています。ここでは、その中から特に重要な4つに絞って紹介します。 PMスキルの重要なポイント4 1.プロジェクトを定義する プロジェクトの方向性を定めるため、達成の目標と、作業タスクを定義することがまず何より大切です。プロジェクトの目標は、「21世紀における生命倫理学の研究」などのように漠然としたものではいけません。特定の分野で進められている重要な課題の解決に貢献する新しい発見をするなど、具体的に定める必要があります。 作業タスクの定義に関しては、プロジェクトの目標達成に至るために必要と考えられる作業および課題を、すべて洗い出すことが必要です。経験したことが無いテーマのプロジェクトでは、想定されるタスクを拾い出して定義することは難しいでしょう。近似のプロジェクトの事例などを参考にして、そこに手を加えることで自分のプロジェクトに該当するタスク・リストを作成すると良いでしょう。大枠を先に設定し、そこから小さなタスクにブレークダウン(細分化)していく、トップダウン的なアプローチがお勧めです。 2.スケジュールを管理する スケジュール管理はプロジェクトの成否の分かれ目です。定められた締め切り(中間報告なども含めて)までにプロジェクトを計画通りに進行させることは、プロジェクトの組み立てに際して大変重要です。スケジュールを立てるには、色々な方法がありますが、基本的な手順は次の通りです。 まず、最終締め切りを確認します。博士論文で言えば、執筆が完了し、見直しと修正も終えて、教授に論文を提出する期日です。プロジェクトの内容、特性に合わせて最終目的と期日を定めます。 次に、プロジェクトの構成要素、つまり細分化したタスクそれぞれの期限を設定していきます。例えば、論文を書くことがプロジェクトとすれば、各章の前後関係を検討しつつ、それぞれの章を完成させることに期限を設定します。 最後に進捗目標を設けます。研究の進め方について、日次や週次のスケジュールをたて、タスクをそのスケジュールに即して順次完了させながら全体の完成に向けて進めます。 スケジュールには遅れが付き物です。絶対に遅れてはならない部分と、遅れたとしても調整できる部分を認識しておく必要があるでしょう。優先度を把握し、スケジュールの多少の遅延に対しても有効な手段を取れるようにしてあると慌てずにすみます。 有難いことに、スケジュール管理に役立つツールが沢山あります。例えば、複数のタスクをどの順番で進めていくかをフローチャートにするツールや、個々のタスクの完了に向けた進捗度合いを示す「ガントチャート(Gantt…