ジャーナルの基本

ICMJE Recommendationsアップデート2025年版ー倫理的研究出版は新たな局面に

研究インテグリティ(研究における健全性・公正性)とは、研究者が守るべき倫理・規範の基本的な概念です。医学・科学の研究実施、報告、出版にとって国際的な倫理基準に従うことは、研究結果の信頼性を確保するために極めて重要です。 医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE: International Committee of Medical Journal Editors)は、1978年に「生物医学雑誌への統一投稿規定(Uniform Requirements for Manuscripts Submitted to Biomedical Journals)」を公表して以来、生物医学分野で重要な役割を果たしてきました。ICMJEのICMJE…

学術出版の動向-電子化を出版社の目線で考える

※この記事は「学術雑誌の電子化において検討すべきこと」というタイトルで2015年1月29日に公開した記事ですが、リライトにあたり最新の情報を追記、修正して2021年7月6日に再度公開しました。 近年、学術出版社は大きな変化への対応を迫られています。1990年代から学術雑誌(ジャーナル)の電子化が加速度的に進んだだけでなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、様々な学術イベントもオンラインへの移行を余儀なくされてきました。さらに、投稿論文の増加や、出版までのワークフローの効率化、ジャーナルの電子化(オープンサイエンス)の推進など数々の変化に継続的な対処が求められています。今回は、学術ジャーナルの電子化の動向を取り上げてみます。 ジャーナルの電子化がもたらす変化 学術出版社は、ジャーナルを電子化することによって読者層を広げ、知識の共有を促進することができるようになります。さらに、査読・編集過程に要する時間を短縮して出版までのワークフローを効率化することができるだけでなく、動画挿入やハイパーリンクによる誘導など、かつて主流であった紙媒体への印刷形式ではできなかった情報提供も可能になります。印刷・製本、配送といった物理的コストが削減できることも出版社にとってはひとつのメリットです。COVID-19パンデミックは学術ジャーナル出版プロセスの迅速化、電子化を後押ししました。引き続き、学術情報のさらなるオープン化、迅速化、入手しやすさの改善が求められることでしょう。 ワークフローの効率化 従来の学術雑誌は、投稿論文の数が揃わなければ印刷・出版できませんでしたが、電子化によって印刷ページ数の制限がなくなり、出版までの時間を短期化することができるようになりました。一方で、投稿論文の数が増加する中、論文発表の更なるスピードアップを図るため、投稿論文の査読方法や出版課程の管理方法を変えていく必要に迫られています。 学術出版社は、論文の投稿、査読、編集管理といった一連のワークフローをシステム化することで、著者が投稿論文をアップロードしてからのプロセスを早め、公開までの時間を短縮させています。パンデミックが変化を後押しし、学術出版のさまざまな段階に影響を及ぼした一例を挙げると、急増したCOVID関連の論文投稿の査読を急ぐべく、複数のオープンアクセス(OA)出版社がオープンアクセス学術出版社協会(OASPA)の承認のもと、査読迅速化のためのイニシアチブを立ち上げたことが挙げられます。ボランティア査読者に対して、迅速な査読に対応可能な査読者リストに登録し、COVID-19研究に有用なプレプリントを可能な限り迅速に識別することや、迅速な査読を完了することへの同意を求めたところ、多くの研究者が登録しました。出版社に対しては、著者に論文のプレプリントサーバーへの投稿を促すことなどが盛り込まれています。 ジャーナル電子化の拡大 2018年10月に国際STM出版社協会(STM)がSTM(科学・技術・医学)出版界における傾向と出版およびその関連情報に関する情報をまとめた『STMレポート第5版』には、2018年に約300万本の論文が査読付き英文ジャーナル33,100誌で出版され、毎年3.5%の成長率で増えていると記しています。さらに、OAジャーナルの出版も増えており、「今や、事実上すべてのSTMジャーナルがオンラインで入手可能となっており、その結果、ジャーナルの大半の利用は電子的に行われている」と記載しています。実際、オープンアクセス学術誌要覧(DOAJ)に収録されているジャーナルの数は16,463誌にのぼっており(2021年6月現)、今後も上昇する傾向にあると見られています。 査読前であってもCOVID関連の新しい見解をいち早く公開することで治療に役立てようとの動きにより、正式な出版前に論文を投稿するプレプリントサーバーの使用も急拡大しました。さらに最近は、査読前論文の共有プラットフォームとしてのプレプリントサーバーの機能を広げ、Green OA論文をアーカイブする、つまり査読前のプレプリントと査読後の論文の両方を掲載するオーバーレイ公開モデルも登場しています。オーバーレイ学術誌(オーバーレイジャーナル)は、プレプリント論文のアーカイブに重ねて査読の仕組みを持つ学術ジャーナルの出版スタイルで、ジャーナルのウェブサイトに論文を掲載するのではなく、プレプリントサーバー等リポジトリに蓄積された論文へのリンク情報のみを示すものです。このようにOA化はさらなる広がりを見せています。 ファイル形式の多様化 ジャーナルの電子化が進むとともに膨大な数の論文が公開される中、動画や音声、インフォグラフィックなど多様なメディアの活用も広がっています。HTML/ビデオアブストラクト(動画)や音声ファイル、論文の内容を分かりやすく表示するためのインフォグラフィック(画像)を付けることは、投稿された論文の差別化や、論文の内容をより広範な読者に届きやすく、また理解しやすいものにするために役立ちます。出版社は、これらの多種多様なファイルを投稿論文の一部として提出する方法について、投稿規程などに書き記しておく必要があります。 アクセスしやすさの改善 ジャーナルの電子化は、論文へのアクセスのしやすさを大きく改善します。読者は、キーワードやタイトル、著者名、要旨などをオンライン検索することで、効率的に読みたい内容の論文を探すことができます。J-STAGEのような複数のジャーナルや会議録等の刊行物を横断的に検索できるような機能を持ったサービスも有用です。また、論文の根拠となるデータをリポジトリに収録し公開する動きも進んでおり、研究内容の信頼性を高め、再利用を可能とすることにつながっています。…

投稿規定、論文の様式

各学術ジャーナルには、それぞれ独自の 投稿規定 があります。大抵の場合、それらの規定はジャーナルのウェブページに「Instructions for Authors」、「Information for Authors」、「Instructions for Contributors」などのような表題で記載されています。論文を投稿する前には必ず一度確認してください。 通常は投稿規定の中に論文の書式についての指示があります。書式は分野によって大きく変わり、同じ専門分野の中でもジャーナル間に様式の多少の違いはあります。しかしそれでも、それぞれの分野の標準的な様式に従う場合が多いです。 以下のウェブサイトには主要な様式やスタイルのリストが記載され、役に立つウェブサイトへのリンクもさまざまな種類のものがあります。中にはそれぞれの様式のマニュアルへのリンクもあり、場合によっては無料でダウンロードできる、あるいはウェブ上でご覧になれるものもあります。 Know Which Style To…

論文の出版にかかる費用はいくら?

ジャーナルの出版には、膨大な時間と多大な経費がかかります。投稿されてきた論文が規程に沿ったものかを調べる事務的な作業から、査読者を探したり、複数の査読者の論評をまとめて著者へ連絡を取ったり、最終的にジャーナルへの掲載が決まれば、細かなフォーマットや誤字脱字を確認したり・・・。大学によっては、ジャーナルの編集にかかわることも職務の一環と見なし、編集長を任された教授に対して学内業務の削減などの援助を行っているところもあるようです。また、大学院生や学部の事務員が無償で手助けをしているケースも多く見られます。 それでも、印刷物を発行するジャーナルでは、印刷代だけでかなりの費用がかかります。そのため、多くのジャーナルが会員制を取ったり、会員以外の人への年間購読を斡旋したり、特定号のバラ売りしたりするなど、その経費を賄おうと必死です。このようなジャーナルの利点は、投稿する研究者へ掲載費を請求することが少ないということでしょう。しかしその反面、せっかく掲載されてもジャーナルの定期購読者(学会誌であれば学会員)以外には読まれる機会が少ないという弱点があります。 そのうえで昨今ではジャーナルの購読料が高騰しています。『Library Journal』の調査では、どの分野でもジャーナルの購読料は2013年から2014年にかけて6〜7%値上げされています。また日本の大学の図書館では、2004年から2012年にかけて電子ジャーナルの購入費が1000万円弱から3000万円近くへと激増していることが文部科学省の調査でわかりました。 そのため、たとえば名古屋大学を含む複数の大学が、大手出版社が出しているジャーナルをまとめて読める「パッケージ契約」を解約し、研究者個々人が必要とするジャーナルだけを購入するように方向転換しています。2012年には、著名な研究者たちが学術出版最大手のエルゼビア社へのボイコット−−投稿しない、査読しない、編集協力しない−−を呼びかけたことが話題になりました。 一方、読者を定期購読会員に限定することを基本とする伝統的なジャーナルとは別に、「オープンアクセス・ジャーナル(open-access journals)」といって、インターネット上で誰でも閲覧ができるジャーナルも激増しています。このようなジャーナルには、掲載されれば多くの人に読んでもらえるという魅力があります。しかしその反面、掲載時に、出版費(publication fee)またはAPC (article processing charge)と呼ばれる手数料を投稿者へ課すこともありますので要注意です。これらの費用の額は雑誌によってかなり違いますが、たとえばSpringer(シュプリンガー)社では3000ドル、『分子システム生物学(Molecular Systems Biology)』では3500ドル、BioMedCentralが出版するジャーナルでは1600ドルから1800ドル程度という数値が出ています。 また、『大気化学・物理学雑誌(Journal of…