研究の効率化

コロナ禍でも学術研究を続けるために

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で、世界の多くの国ではロックダウン(都市封鎖)や外出禁止となりました。国によって多少の差がありますが、多くの大学や研究機関が閉鎖され、研究者は予定していた調査や実験を継続できず、多くの学会も開催できなくなりました。感染拡大が収まって移動制限が緩和されたとしても社会的距離またはソーシャルディスタンス(Social distance)を取るように求められる中、どのように学術研究を進めればよいのでしょうか? ソーシャルディスタンスを保ちながら研究データ収集する ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(London School of Economics and Political Science, LSE)のAdam Jowettは、社会的距離戦略下でも研究者がデータを集めるための方法は幾つかあるとした上で、データ収集が不可だから研究計画を再検討すると言い出す前に、別の調査方法が倫理的に可能かを考えるように示唆しています。 多くの研究者は、データの収集中断や、研究計画の再検討を余儀なくされています。特に、対面でのインタビューやフォーカスグループへの調査、フィールドワーク(現地調査)などによってデータを収集することが一般的な定性的研究では、進め方の変更が必要なものも出ていることでしょう。オンライン経由でデータを集めたり、既存のテキストデータを収集したりする方法としては、社会学者であるVirgina Braun、Victoria Clarke、Deborah…

研究と出版に eラーニング を役立てよう

博士課程に入ると、たくさんの新しい課題に直面します。博士課程のコースは難しい上に、研究や論文執筆も進めなければなりません。学術論文の執筆と出版には、書く技術、学術的な文章を書く能力、首尾よく論文を発表するノウハウが必要ですが、博士課程以前にはこの技能を磨く機会があまりありませんでした。研究の指導にあたる教授や教官から学ぶこともできますが、さらに深く学ぶために、自分で独自の取組をすることも考えてみてはいかがでしょうか。eラーニングを活用することも一つの方法です。 eラーニングとは eラーニングとは、インターネットを利用する学習形態ですが、今では、さまざまな教材やコンテンツが揃っています。通常は、LMS(Leaning Management System)という学習管理システムを使い、テキスト、画像やビデオなどの教材を配信します。LMSは受講者に学習しやすい環境を提供することを主目的としたシステムであり、ウェビナー(webinar)とも呼ばれるウェブセミナーの開催や、指導者と学習者の相互コミュニケーションの提供も可能にします。 eラーニングは、1990年代のパソコンとインターネットの普及に従って発展してきました。この頃に学校がインターネットを利用した通信教育を始め、当時は「遠隔教育」とも呼ばれ、広範な地域の幅広い層に学習機会を提供したのです。eラーニングという言葉が広まったのは2000年代になってからですが、教材やプログラムをもネット上で管理できるようになると、誰もがいつでもどこでも学習することができるようになりました。そして、さらなる技術の発展により、双方向学習やメール、チャットなどを使った双方向のコミュニケーションも可能となりました。今では、ライブ授業の配信など多様な学習機会がインターネット上で提供されています。 eラーニングの長所・短所 一番の長所は、時間の自由度が大きいことです。誰もが何時でも都合の良い時に学ぶことができるのです。日々、仕事に忙殺されている人にとっては、スキマ時間などに学習できることは、とてもありがたいことでしょう。また、eラーニングは何回でもアクセスできるので、重要な点を何度も履修しなおすことができます。時間が指定された授業だと、出られないことや、その分の振替を調整することなどがストレスになったりしますが、eラーニングであればそんなことはありません。好きな時間に簡単に、必要なコースを受講することができるため、学習時間を従来の通学型の授業に比べて25-60%に短縮できるとの説もあります。 一方、eラーニングには短所もあります。eラーニングをより効果的に活用するためにはこれらの短所も把握しておく必要があります。一つは、理論の学習と実際的な技術の習得は異なるため、eラーニングが実技を伴う内容の学習には適さない場合があることです。eラーニングで学んだ知識や技術を、実際に使おうとした場合、ある程度の困難が伴うことが予想されます。もう一つは、eラーニングは一人で受講するため、指導者や他の学習者と顔を合わせて学ぶ従来型学習のような社会的・人的ネットワークを構築することができません。これらは、知識それ自体より大事な場合もあるとはいえ、eラーニングでは難しいのが現実です。また、単独で学習する受講者が学習意欲(モチベーション)を維持するのが難しいという点も挙げられます。幸い、SNSやビデオ付きチャットなどのコミュニケーションツールが普及しているので、こうした交流手段をうまく活用することにより、eラーニングの弱点を補うことを意識すると良いでしょう。 論文発表の手順もeラーニングで学習 博士課程の大学院生にとって論文の発表が大事なことは改めて言うまでもありませんが、発表までの実際的な手順についてわからないこともあるでしょう。そのようなときには、論文発表までの手順を学べるeラーニングのコースが役立ちます。 例えば、研究者のためのeラーニングプログラムであるEnago Learn(Choosing the Right…

SNSは被引用数増加に効果があるか?

世界のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のユーザー数と普及率はとどまるところを知らず、2019年の世界全体のSNSの利用者数は34億8,000万人を突破、前年比9%増となっています。日本のSNS利用者数も、2018年末に7,523万人、2019年末に7,764万人、2020年に7,937万人と見込まれており、着実に増加しています。もはやコミニケーションツールとして欠かせなくなっているSNSですが、自撮写真や、観光やグルメの写真のアップ、友人同士のおしゃべりの道具として利用する以外にも、情報を効果的に共有する有力な道具としての利用法もあります。 学術界でもSNSが情報発信、情報共用して研究成果を広める手段として多用されるようになってきています。一方で、それが本当に役立つのかという疑問の声もあります。SNSによる研究成果の周知・拡散をめぐる調査などを紹介します。 SNSの種類 SNS には、いろいろな機能があるので、適切に活用すれば効果を上げることができます。そのためにはそれぞれの特徴を理解して、自分の目的に適したSNSを利用することをお勧めします。 Facebook(フェイスブック):自分の研究成果を発表したり、他のSNSや学術ジャーナルのリンクをつけたりすることができます。 Twitter(ツイッター):短い文章を写真や動画などと一緒に投稿できる代表的SNSです。自分の研究成果や学会発表、ブログなどにリンク付けが容易で情報発信の窓口になります。リツイート機能による拡散力が魅力です。 LinkedIn(リンクトイン):ビジネス特化型のSNSです。転職活動や採用、ビジネス上のネットワーク作りのために活用されることも多く、特定のグループ向けだけでなく、まったく異なる分野の人たち向けて広く情報発信することができます。 ResearchGate(リサーチゲート):研究者のためのSNSです。研究者間のつながりを促進し、研究のアイデアや成果を共有することを目的としています。論文のアップロード/ダウンロードができるので、論文についてのディスカッションも可能です。他の研究者をフォローして、最新の研究成果を見ることもでき、研究成果を議論する新しい場として活用されています。 Mendeley(メンデレー):文献管理ツールとして利用可能な研究者のためのSNS。グループを作成して文献を共有したり、論文を公開したりできます。自分の関心がある分野のグループに参加したり、気になる研究者をフォローしたりすることで、人的ネットワークを広げることもできます。 上にあげたSNS以外のコミュニケーションツールとしてBlog(ブログ)も挙げられます。SNSがフロー型のメディアであるのに対し、ブログはストック型のメディアと言えますが、最近のブログは読者が返信することやディスカッションすることを可能にするSNS機能を搭載しているものが増えているので、SNSの範疇に入るとされることもあるようです。フェイスブックの「シェア」やツイッターの「リツイート」のような拡散性や速報性はありませんが、長文や論文の投稿が可能で、投稿した記事がウェブ上に残るというメリットがあるので、使い分けをするとよいでしょう。 SNSの効果に関する調査 SNS利用のメリットに関する調査の結果は、他の人と繋がり、情報交換が容易になるという点では一致しています。それでも、研究成果の普及に本当に役立つのかについては議論されています。 英国の研究者が行った調査から主な分析結果を3つ挙げておきます。 研究者は自分の論文のアップロード先として、所属する研究機関や大学のウェブサイトより学術分野のSNS(Academia.edu、ResearchGate、Mendeley)を選択する傾向がある…

研究室で効率化をアップするコツ

研究活動は忙しいものです。日々新しいことに取り組みつつ研究を進め、期限通りに成果をまとめ、研究資金提供者への報告も行わなければなりません。特に研究を助成金に頼っている場合、研究成果をきちんと提出しなければ次の助成金獲得にも影響するため、計画的に研究プロジェクトを進めることは必須です。そのためには、効率的に研究をすることが求められるので、スケジュール(時間)やリソースをうまく管理できるように努めるべきでしょう。今回は、納期を守り、ワーク・ライフ・バランスを保つためにも有用な時間およびリソースの管理、実験時間の短縮につながるコツをご紹介します。 有能な研究責任者(PI)の効率化術 研究責任者(PI)は、研究活動と同時並行で研究室の管理業務や研究室メンバーの管理指導をバランスよく進めることが求められます。負担は大きいかもしれませんが、次のようなコツに留意しておくと助けになるでしょう。 計画を立てる:スケジュールを立て、研究室メンバーと共有する。資料などを読む、ものを書くための時間もきちんと配分することが大切です。詳細かつ合理的にスケジュールを立てることが、一日の時間を効率的に使うことにつながります。 テンプレート(ひな型)を用意する:実験経過や結果の報告など研究室で作成する資料のテンプレートを用意しておくと、PIを含めて研究に関わるすべての人の作業の効率化が図れます。 情報共有の仕組みを標準化:ファイリングシステムを整備し、その分類法や命名法を標準化しておくことで、情報を共有し、誰もが素早く必要な情報にアクセスできるようになります。 会議の集約:会議は貴重な時間を奪うとともに、集中を途切れさせる要因にもなります。会議を週の決まった日にまとめると、他の日は本来の仕事に集中することができます。 計画の見直し:週の半ばに計画の確認・見直しを行い、必要に応じて計画を調整すると、時間のロスを抑制できます。 読書時間の確保:あらかじめ計画しておかないと資料や研究動向の情報などをタイムリーに読めなくなってしまうので、日次または週次で読書時間を確保するように決めておきます。 研究企画会議:研究に関するアイデアや方向性などを議論する企画会議は長い時間がかかるものです。こうした会議は月次開催とし、研究室メンバーにはしっかりした準備を求めておきます。 対応時間の確保:学生や若手研究員から指導を求められることが多々あるでしょう。それらに対応するための時間枠を設けておきます。学生や研究室のスタッフが簡単な質問をする時間を設けることで、他の手間(やらなければと予定していたこと)をやらずに済むかもしれません。 余裕をもつ:スケジュールには多少の余裕を持たせておき、計画した仕事が予定以上に時間を要する場合や、やりそこなった作業のフォローに充てられるようにしておきます。 自分に合わせて調整する:時間管理の仕組みを、自分や一緒に働く人たちの事情にあわせて微調整していき、自分なりにやりやすい形に整えます。 研究メンバー向けのコツ PI以外の研究室のメンバーの主たる業務は研究に従事することですので、以下のような点に注意することが研究時間を節約し、効率性と正確性を高めることにつながります。…

剽窃盗用チェックツールはどこまで信頼できるか

学術研究における誠実性(Academic integrity)は重要です。研究者は、科学研究の発展を促進する独自性のある発想や研究成果を示すことで学術界に貢献することが求められていますが、同時にその研究が信頼に足るものであることを示すため、不正を疑われる行為は避けなければなりません。 研究不正にはいろいろありますが、対策の一環としてできることのひとつに、学術論文の剽窃・盗用などを事前に検知することが挙げられ、盗用・剽窃検出ツールを導入する学術雑誌(ジャーナル)が増えています。 盗用・剽窃チェック(plagiarism detection)ツールの過剰依存は問題 盗用・剽窃チェックツールとは、投稿論文の中に剽窃または盗用が疑われる内容が含まれているかどうかを確認するものです。とはいってもツールの利用は一長一短です。盗用・剽窃チェックツールに頼りすぎた査読により投稿論文が却下(リジェクト)された経験を持っている研究者もいることでしょう。ベルリン技術経済大学(HTW Berlin)のDebora Weber-Wulff博士は、学術ジャーナルの編集者は、自ら注意を払うことなく盗用・剽窃ツールの報告に依存しすぎると問題視しています。別の意見(セカンドオピニオン)を参照することが少ないとの指摘もあります。 Weber-Wulff博士は、盗用・剽窃チェックの報告書の解釈は時として難しく、不正確であることすらあると述べています。明確に文脈を理解すること抜きに論文の「斬新さ」あるいは「独自性」を評価するのは難しいものです。しかも、チェックツール(ソフトウェア)は、翻訳箇所や複数から取得した情報の剽窃を正しく検知できません。もうひとつ、チェックツールが単純な言葉の重複を剽窃と判断する場合があることも覚えておくべきでしょう。これはチェックツールが別々の論文原稿に書かれている3~5の文字列を検索していることで起こりえますが、逆に本来見つけ出すべき盗用・剽窃箇所を見落とし、正当な判定が出ないこともあり得えるのです。 人の目によるチェックの重要性 盗用・剽窃ツールを使っても、発想段階での盗用を検出したり、内容を特定することなしに既存の発見かどうかを判定したり、または許可なく転用された図表やデータを指摘することは不可能です。しかし、このような不正であっても、論文を注意深く読み、論文全体の整合性を確認する人(編集者)であれば見つけ出すことは可能です。 フランス国立科学研究センター(CNRS)の行動科学者Jean-François Bonnefon氏は、盗用・剽窃ツールに論文をリジェクトされてしまいました。彼が投稿した論文がリジェクトになった理由は、研究内容ではなく、方法や参考文献、著者略歴に対する指摘によるもので、これはソフトウェアによる重大な評価ミスであり、編集者が論文を見ればすぐに間違いであると分かるはずのものでした。にもかかわらず、人の目が介在しなかったために、彼の論文はリジェクトされてしまい、これは明らかに盗用・剽窃チェックツールの限界を示す事例だと述べています。人(編集者)を介在させないということは、アルゴリズムに依存するツールに判断を委ねることになってしまうのです。同様の事例は、他にも報告されています。 よく使われている盗用・剽窃チェックツール 現在、学術ジャーナルでよく利用されている盗用・剽窃チェックには4種類あります。それぞれ独自の特性を有していますが、限界があることは頭に留めておくべきです。…

剽窃盗用チェックツールはどこまで信頼できるか

学術研究における誠実性(Academic integrity)は重要です。研究者は、科学研究の発展を促進する独自性のある発想や研究成果を示すことで学術界に貢献することが求められていますが、同時にその研究が信頼に足るものであることを示すため、不正を疑われる行為は避けなければなりません。 研究不正にはいろいろありますが、対策の一環としてできることのひとつに、学術論文の剽窃・盗用などを事前に検知することが挙げられ、盗用・剽窃検出ツールを導入する学術雑誌(ジャーナル)が増えています。 盗用・剽窃チェック(plagiarism detection)ツールの過剰依存は問題 盗用・剽窃チェックツールとは、投稿論文の中に剽窃または盗用が疑われる内容が含まれているかどうかを確認するものです。とはいってもツールの利用は一長一短です。盗用・剽窃チェックツールに頼りすぎた査読により投稿論文が却下(リジェクト)された経験を持っている研究者もいることでしょう。ベルリン技術経済大学(HTW Berlin)のDebora Weber-Wulff博士は、学術ジャーナルの編集者は、自ら注意を払うことなく盗用・剽窃ツールの報告に依存しすぎると問題視しています。別の意見(セカンドオピニオン)を参照することが少ないとの指摘もあります。 Weber-Wulff博士は、盗用・剽窃チェックの報告書の解釈は時として難しく、不正確であることすらあると述べています。明確に文脈を理解すること抜きに論文の「斬新さ」あるいは「独自性」を評価するのは難しいものです。しかも、チェックツール(ソフトウェア)は、翻訳箇所や複数から取得した情報の剽窃を正しく検知できません。もうひとつ、チェックツールが単純な言葉の重複を剽窃と判断する場合があることも覚えておくべきでしょう。これはチェックツールが別々の論文原稿に書かれている3~5の文字列を検索していることで起こりえますが、逆に本来見つけ出すべき盗用・剽窃箇所を見落とし、正当な判定が出ないこともあり得えるのです。 人の目によるチェックの重要性 盗用・剽窃ツールを使っても、発想段階での盗用を検出したり、内容を特定することなしに既存の発見かどうかを判定したり、または許可なく転用された図表やデータを指摘することは不可能です。しかし、このような不正であっても、論文を注意深く読み、論文全体の整合性を確認する人(編集者)であれば見つけ出すことは可能です。 フランス国立科学研究センター(CNRS)の行動科学者Jean-François Bonnefon氏は、盗用・剽窃ツールに論文をリジェクトされてしまいました。彼が投稿した論文がリジェクトになった理由は、研究内容ではなく、方法や参考文献、著者略歴に対する指摘によるもので、これはソフトウェアによる重大な評価ミスであり、編集者が論文を見ればすぐに間違いであると分かるはずのものでした。にもかかわらず、人の目が介在しなかったために、彼の論文はリジェクトされてしまい、これは明らかに盗用・剽窃チェックツールの限界を示す事例だと述べています。人(編集者)を介在させないということは、アルゴリズムに依存するツールに判断を委ねることになってしまうのです。同様の事例は、他にも報告されています。 よく使われている盗用・剽窃チェックツール 現在、学術ジャーナルでよく利用されている盗用・剽窃チェックには4種類あります。それぞれ独自の特性を有していますが、限界があることは頭に留めておくべきです。…

GRIMとSPRITE:論文のエラーを探すツール

あなたが優秀な若手研究員で、ある研究に日夜取り組んでいるとします。 作業の合間にちょっと一息と、自分と同じ研究分野の最新動向を検索し始めると、自分の研究によく似た論文に関する記事が目に留まりますが、その論文は研究不正を理由に取り下げられたとのこと。そのような記事を見てしまうと、自分の研究は大丈夫だろうか?同様に論文が却下される事態をどうすれば避けられるのか?などと不安になってしまうことでしょう。 研究不正と疑われることを防ぐ対応策のひとつとして、自分のデータはもちろん、引用する出版済み論文のデータの正確性についても確認しておくことが不可欠です。科学研究データの信頼性が揺らぐことで生じる「再現性の危機(replication crisis)」は、学術コミュニティにおいて大きな問題です。今回は、研究不正を防ぐのにも役立ちそうな研究論文のエラーを探し出すための2つの方法をご紹介します。 GRIM(グリム)とSPRITE(スプライト) 再現性の危機への認識が高まる中、2016年にポーランドのPoznań University of Medical Sciences のポスドク(当時)だったJames HeathersとオランダのUniversity Medical Center Groningen…

研究の品質管理の重要性

品質管理により、科学研究の良し悪しに違いが生じます。では、研究における品質管理とは何でしょうか?答えは簡単です。研究室における「規準」を監視・維持することです。ここでは研究における品質管理がいかに重要かを見直してみましょう。 品質管理に関わる基準 品質管理とは、研究室内のあらゆる問題を見つけ出し、これによる影響を弱めて許容誤差範囲内に収めるよう、修正や調整、あるいは改善を行うことです。また、研究方法に一貫性があるようにしたり、実験結果の正確性を確保したりすることも含まれます。学術研究の品質には、正確性、信頼性、安全性、有効性など、さまざまな意味が含まれます。品質管理(Quality Control)と似ているものに品質保証(Quality Assurance)がありますが、この2つは品質マネージメント(Quality Management)の一環でありながら、若干意図が異なります。品質管理が、「どのように改善するのか」といった問題への対応として必要な変更を提案するための監視を行うプロセスなのに対し、品質保証は、適切な基準にのっとって研究が行われたか、品質管理における要求事項と結果を確かめるプロセスです。ただし、いずれも研究の「質」の確保に重要な役割を担うものです。 品質管理にあたって目安となる基準のひとつに、Good Laboratory Practice(GLP)があります。日本語では「優良試験所基準(規範)」や「優良研究所基準」などと呼ばれている、医薬品や医療機器、化学物質などの承認申請や登録申請のために行われる非臨床安全性試験実施に関する基準です。GLPは製薬会社の不正に対する査察を経て、米国医薬食品局(FDA)が定めた基準であり、該当する被臨床安全性試験データの信頼性の確保を目的として1979年から米国で適用されました。1981年に経済協力開発機構(OECD)がGLP基準を制定したことで国際基準として認識され、1982年には日本でもGLP基準が文書化、翌年から適用されています。さらに1997年には薬事法に基づいたGLP省令が定められ、その後も適宜改正されています。GLP省令には、「運営管理者は、試験施設の運営管理、計画書等や標準操作手順書(SOP)の作成・記録・保存を行う」といった基本的な事項から、生データの管理まで幅広く記載されています。他にもGood Manufacturing Practice(GMP)と称される医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準などもあり、研究室の品質管理においてこれらの法的な基準(法令・規制要求基準)を満たすことも大変重要です。 品質管理のベスト・プラクティス 基準について把握できたら、次は実際の品質管理です。品質管理のベスト・プラクティス(模範的な活動)として参照になるのがLaboratory Quality Management(LQM)です。LQMは、研究室の活動の一貫性を阻害する要因を管理・制御する仕組みを組織内に実現するのに役立ちます。ほとんどのLQMは、国際標準化機構によって策定された試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項(General…

定性的研究におけるバイアスの避け方

研究者が自分にとって望ましい結果を得ようとして、研究におけるバイアス(偏り)が生じてしまうことがあります。多くの場合、研究者は自分の考えや作業にバイアスが入り込んでいることを自覚していません。自覚の有無にかかわらず、研究におけるバイアスの存在は研究の公平性に大きな影響を与え、研究成果の価値を損なう危険性があります。 今回は研究者同士の会話から定性的研究におけるバイアスの問題を考えます。 定性的研究におけるバイアスの問題 「バイアスは、定量的研究よりも定性的研究でより重大な問題だと言われます。」 「どうしてですか?」 「定性的研究のほうが、研究者の経験と判断にかかっている要素が大きいからです。それに、収集するデータには主観が影響するし、調査対象の人や状況に依存する面も大きいのです。このため、定量的研究よりもバイアスを避けるのがはるかに難しくなります。」 「バイアスを避ける策はありますか?」 「まず、あらゆる研究にバイアスは存在すると認識することからはじめるのが良いでしょう。そして、どのようなタイプのバイアスが自分の調査に入り込みそうか予測して、それを極力避けるようにすることです。」 バイアスのタイプ 「避けるべきバイアスにはどのようなタイプがあるのですか?」 「ひとつは研究デザインにおけるバイアスですが、研究デザインを立案する時点からバイアスに注意しなければならないことに研究者は気づかないものです。さらに、研究対象を選ぶ時点で生じる選択バイアスと、調査対象に対して生じるバイアスとに大別できます。前者は対象者の選択が母集団を正しく代表していないときに生じる偏りであり、標本数や調査対象者の範囲などが要因になりえます。母集団から標本をどれだけ抽出するのか、抽出方法をどうするかにより、標本が母集団の傾向を正しく反映しないものになる場合があります。調査対象から特定の年齢層や人種・民族を除外する、あるいはデータが入手しやすいとの理由のみで調査対象を選出する――このように意図的な標本の抽出を行えば、結果に偏りが生じる原因となります。例えば、データを取りやすいからと大学生だけを調査対象としてデータを集めたのでは、その集団は多くの共通の特性を有しているため、結果として偏った傾向を示してしまうでしょう。」 「なるほど。その他にはどんなバイアスがありますか?」 「他にもたくさんあります。研究手法においてもバイアスは生じます。アンケート調査で回答時間を短くしてしまうと、回答者はあわてて本心とずれた回答をしかねず、バイアスがかかることになってしまいます。また、測定方法におけるバイアスもあります。使用する計測機器が狂っていたり、使用法を誤ったりすると、データの収集や測定プロセスにエラーが起こり、結果に系統的な誤差が生じかねません。」 「注意しなければならないバイアスがたくさんあるようですね。」 「今すぐ思いつくだけでも、あと三つあります。ひとつはインタビュアー(面談者)によるバイアスです。インタビュアーが、回答者(被験者)の回答内容に影響を与えることもあります。例えば、インタビュアーが無意識のうちに、ボディーランゲージや声のトーンなどで回答を誘導してしまったり、被験者に与える情報に差が生じてしまったりするケースで、回避するのはとても困難です。逆に、調査対象者に要因のあるバイアス(被験者バイアス)もあります。例えばアンケートの回答者は、設問に対して事実ではなくても自分が正しいと思う回答をする傾向があり、結果に偏りが生じることがあります。三つ目は、レポーティング(報告)におけるバイアスです。これは研究者自身の手の及ぶ範囲を超えて生じてしまうバイアスであり、前向きな研究結果や興味をそそる内容は、否定的な結果や面白みの少ない結果に比べて頻繁に報告されやすいというものです。そして、報告回数・頻度が高くなれば、より広く知られることになり、この結果が重要なものと見えてしまうという事態を招くことにもなるのです。」…

調査研究におけるサンプリングの重要性

研究を進めるためには具体的な計画が不可欠です。研究の対象、測定・評価方法、評価期間など決めなければならないことは多々あります。研究計画は慎重に検討しておく必要があります。同様に重要なのは、研究における調査対象の抽出( サンプリング )です。大方の調査では、限られた調査対象から得られる回答(データ)をもとに全体を推定します。調査の対象となる特性を持つ全体を母集団、母集団の性質を忠実に反映するように母集団から抽出される部分を標本(サンプル)と呼びます。サンプル数が多いほど、母集団の性質をより確実に反映する確率が高くなりますが、調査結果の信頼性を高めるにはサンプルの数とともにランダム性も大事な要素であると覚えておきましょう。以下に、サンプリングについてまとめてみます。 サンプリングの方法-確率抽出法と非確率抽出法 ひとつの例として以下のような調査を考えてみます。 炭坑での労働が健康におよぼす悪影響を調べたいとします。炭坑労働者全員を調べることは実質的に不可能なため、調査対象を絞ってデータ収集することが必要となります。この調査では、ある地域の炭坑労働者を調査対象としてサンプルに設定します。 このように母集団(炭鉱労働者)からサンプル(調査対象)を選ぶ方法としては、確率抽出法と非確率抽出法の2つに大きく分けられます。 1. 確率標本抽出法 母集団から標本を適当に選んだのでは、その調査結果の評価が難しくなります。また、一定の偏りが生じるような抽出法は避けるべきです。そこで、母集団を構成している全て(成員)が一定の確率で(必ずしも同じ確率でなくてもよい)調査対象となるように選ぶ抽出法が確立標本抽出法です。これにはいくつかの手法がありますが、最も広く利用されるのは母集団のどの構成要素にも等しい抽出確率を付与する単純無差別抽出法です。他に、層別抽出法(層化抽出法)、クラスター抽出法(集落抽出法)、系統抽出法などがあります。上述の地域を限定して炭鉱者のサンプルを選出した例は、クラスター抽出法です。 2. 非確率抽出法 確率標本抽出法とは異なり、確率的でない基準に基づき調査対象を選ぶ方法です。サンプルに選ばれる確率が不均等なので、標本誤差(サンプルを無作為抽出して調査した結果にともなう誤差)を統計的に推定することはできません。研究者が、調査研究の目的等に応じて選択的にサンプルを選びたい場合にこの方法が採用されます。非確率抽出法には、機縁法・縁故法、応募法、インターセプト法、割り当て法、有意抽出法などがあります。 質的調査、量的調査とサンプリング サンプリングをした対象者からデータが得られたら、次は分析です。それには、言葉による説明などを行う質的調査と、情報を数量化して捉える量的調査の2つがあり、双方の特性を理解した上で、どちらが自分の研究に適しているか総合的に判断する必要があります。…

情報過多社会を生きるためのコツ

インターネットやSNS(Twitter、Facebookなどのソーシャルネットワーキングサービス)の普及に伴い、私たちは知りたい情報を簡単に手にいれ、興味ある話題について最新の動向を常に把握することができるようになりました。一方で、洪水のように流れ込む大量の情報を前に、多くの人が振り回され、集中力を削がれているのも事実です。自分の処理能力を超える量の情報に直面する、いわゆる 情報過多 の状態に置かれているのです。スマートフォンを持っている人なら誰でも身に覚えがあると思いますが、ひとたび検索をし始めるとキリがなく、仕事の生産性が上がるどころか下がってしまうこともあります。このような情報過多の状況にどう向き合うかは、研究者の皆様にとっても喫緊の課題ではないでしょうか。情報の洪水から身を守りつつ、大切な情報を見逃さずに拾い出すにはどうしたらよいのでしょうか。 情報過多がもたらす弊害 すでに研究者が一生かかっても処理しきれない量の膨大な情報が溢れています。毎年200万件を超える研究論文が発表されていますし、2万8000誌以上の学術誌が毎号、新しく重要な発見を公表しています。このような状況では、自分の研究に関連する最新動向を把握しようにも、何から手をつければよいのか見当もつきません。SNSに及んでは、もはや決して追いつけないと思うほどの、お知らせやメール、最新情報が続々と送信されてきます。 このような状況において、多くの研究者は「論文を執筆するにあたって、いったい、自分はどこまで調べればよいのだろう」と途方に暮れてしまいます。しかも、大量の情報に囲まれ続けているうちに、最新情報に触れ続けていないと何か見落としているのではないか、置いていかれるのではないか、成功を逃すのではないかといった恐怖(fear)を感じるようになるとして、FOMA(fear of missing out)という言葉も生まれました。この現象の原因はSNSに限らず、常に最新の情報を追い続けていないと不安になるというものです。研究者であれば、何か大切な記事や研究を見落としているのではないか、という心配に取り付かれてしまいがちです。これが、ストレスになり、作業効率を低下させ、肝心な研究がおろそかになるという悪循環を招きかねません。情報が氾濫する現代で不要な不安感を持たずに健全な精神状態を保つには、自分にとって何が大切なのかを見極める力が必要です。 溢れる情報の中から本当に必要な情報を見つけ出す FOMAのような現代病とも呼べるような不安を抱える人は世界的に数多く存在しているので、むやみに悲観する必要はありません。むしろ、多くの人の共通の悩みであるがゆえに、情報過多の状況に対処する、もしくはそういった状況に陥らないよう工夫するコツもたくさんあります。ここでいくつか紹介します。 思い切って無視する 振り返れば、毎日目にする大量の情報は、ほとんどに大した意味はなく、自分に関係のない類のものではないでしょうか。新着情報を思い切って無視することにすれば、何か見落としているのではないかという不安からも解放されます。 情報管理ツールを利用する フィルターの活用は非常に有効です。ScienceOpen…

革新的な研究に特許調査は欠くべからず

研究者は誰でも、自分の研究を重要で、革新的で、独自性が高いものにしたいと望んでいます。既に他の研究者が取り組んでいる内容と重複する研究を行うことは、貴重な時間や研究費の無駄使いです。研究成果の特許出願を念頭においている場合は特に、既存の研究や特許申請状況の事前調査を欠かすべきではありません。 特許調査を行わなかった失敗例 特許調査を行なわなかったために失敗した実例証言を見てみます。 私は、一流の研究者で構成されたチームで、最先端技術の研究を進めていました。このチームで独創的な発明をしたと思ったのです。ところが検索したところ、別の人がすでに特許を取得していた内容であることが判明しました。研究につぎ込んだ何年もの時間と研究資金が無駄になったのです。 私たちは独自性の高い発明を見つけたいと思ったのですが、その発明を決定付ける部分はすでに特許化されていました。技術に対する特許使用料を支払うか、研究をゼロから再スタートさせるかの選択を迫られました。 博士論文の研究で、特定の化合物を作り上げようと何ヶ月も費やしていました。しかし、ある大企業がすでにこの化合物の生成に成功していたことを知りました。その大企業は、無償で少量の化合物を提供してくれました!もっと早く知っていれば、大変な時間と研究資金を無駄にしなくて済んだのに。 特許調査も文献調査の一環として実施すべし 特許は発明を保護するための権利です。発明者が特許権を取得すると、自身の特許発明の実施を一定期間独占できる権利であり、他人(第三者)は無断でその特許発明を実施することはできなくなります。貴重な時間と研究費に影響するのにもかかわらず、学術研究者が特許権の調査を怠るのは、なぜでしょうか? 理由に挙げられるのは、多くの研究者が学術文献の調査のみを行っていることです。特許出願される発明が、論文として学術雑誌(ジャーナル)に投稿されるとは限りません。研究成果として発表されないケースも多いのです。学術研究者の多く、とくに特定の分野の研究に長く従事している研究者は、その分野の情報に精通していると思ってしまい、学術文献だけを調査しがちです。これと対照的に、実際の事業に関わる研究者は、時間と費用の制約から学術ジャーナルに投稿することは稀ですが、自らの発明を保護するために特許出願に注力し、そのための準備として事前調査も怠りません。この差が、特許調査への取り組みに表れていると言えます。 学術研究者は、文献調査の一貫として特許調査を行うことを心がけるべきなのです。 特許調査における問題 最近までは、特許検索はほとんどの人にとってハードルが高いものでした。欧州特許庁(EPO)や米国特許庁(USPTO)、日本の特許庁などは、無償で利用できる特許データベースを公開しています。日本では特許庁所轄の独立行政法人が運営する「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で特許公報を無料で検索・照会することが可能です。しかし、データベースによっては検索条件が限られていたり、使いこなすことが難しかったりすること、特許の多くが複雑で難解な法律用語で書かれていること、さらに一部の特許は画像や遺伝子シーケンスのようなテキスト以外の記述法で記されていることなどが研究者の利用拡大を阻む要因ともされています。とはいえ、近年は産学官が連携する研究や、その結果として学術界(大学)で得られた知的財産(研究成果)を産業界(企業)に提供して活用させる技術移転が盛んになっています。一例ですが「近大マグロ」で有名になったマグロ養殖技術。近畿大学が世界で初めてクロマグロの完全養殖化に成功し、日本の養殖業界にも貢献しているもので、もちろん特許および商標登録されています。このような研究から活用までを見通して考えれば、研究に先立って特許調査をしておくことは大切です。そのためには、特許の記述法や構成を理解しておく必要があります。学術研究者も、文献調査だけでなく、特許調査にも意識を広げていくことが求められています。 特許調査の新しい方法 特許庁の提供するサービス以外にも、簡単に特許調査ができる新しいサービスが出てきています。例えばGoogle Patentは、一部の国の特許情報には制限があるものの、世界知的所有権機関(WIPO)をはじめとする欧州、米国、日本、中国、カナダ、韓国などでの出願も収録されている特許文献の検索サービスです。複雑な検索条件も使えて、検索データをフィルタリングすることもできます。他にも、クラリベイト・アナリティクスが提供するDerwent…

研究プロジェクトの要、進捗報告

研究に限らず、何事においても進捗管理・報告を行うことは作業を進める上で不可欠です。単独で研究を進めていたとしても、研究業務は、所属する研究組織全体の中のひとつの歯車であることを忘れてはいけません。上位の管理者にとって、研究資金提供者への報告を行うためにも、組織内で並行して進められている数々の研究プロジェクトの進捗を把握することが必要なのです。では、研究者としてどのような進捗報告が求められているのか、どうすればよい進捗報告が書けるかを考えてみましょう。 目標設定の5ポイント「SMART」 まず、作業を進めるためには目標を設定しておく必要があります。その際にどのような目標を立てるのかの助けとなるのが「SMART」です。SMARTとは、目標設定時に押さえておくべき5つのポイントの頭文字、S:Specific(明確な)、M:Measurable(計測可能な)、A:Attainable(達成可能な)、R:Realistic(現実的な)あるいはRelevant(関連性のある)、T:Time(期限付きの)をとった目標設定の指標です。SMARTの要素を踏まえた目標を設定することによって、行動しやすくなり、さらにPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回しやすくすることにつながります。その結果、目標に向かってPDCAのどの段階にいるかが分かりやすくなり、段階を踏まえた進捗報告が作成できるようになるのです。 進捗報告を作成する頻度 次は、進捗報告です。進捗報告を行う頻度は、業務の内容や状況に応じて上位の管理者が設定する指示に従うことになります。報告の際は、進捗状況を確認するだけでなく、自主的により細かいチェックを行うこともお勧めします。定期的な状況確認のタイミングと内容としては次のような例が挙げられます。 日次: 毎日、研究室内を歩き回って、研究チームのメンバーと軽くおしゃべりして、お互いの進捗を把握しつつ情報交換する。毎日、数分のミーティングをするのも一案です。自分自身については、その日の「やるべきこと」を確認します。 週次: 研究チームとは、週に一度、一緒にコーヒーを飲んだり抄読会を開いたりして交流し、その機会に進捗を口頭で報告しあうことも有用です。進捗報告だけだと業務報告のような堅苦しいものになりがちですが、勉強会のような形にすることで、メンバーが自主的な立場で対等に参加する雰囲気となり、進捗報告や問題点の報告をめぐって前向きで自由闊達な意見交換につながりやすくなります。問題を抱えているメンバーがいれば、話し合いをする時間を別途設けることもできます。 月次: 各人が進捗報告を書きます。個々のメンバーと個別で面談をし、状況の確認を行います。 進捗報告に記すべき内容と目的 研究の進捗報告に盛り込むべき内容は、その時点までに得られた結果、進行中の実験、今後の計画および予想される問題などで、研究計画の全体をカバーするものであるべきです。そして、目標を達成し、適切かつ十分な情報に基づく決断および修正を行うかの判断を行う際の根拠とするためには、研究計画を定期的に見直す必要があります。 進捗報告の目的のひとつは、研究資金の提供者に対して、状況を伝えることです。研究に関わる人が求めている情報には、以下のようなものがあります。 研究がどのように進められているか。その進捗はどうか。…

アンケート調査を行うときの要点

ほとんどの調査研究では、データの分析が必要です。アンケート調査は、必要な情報を収集するために有効な方法です。例えば、薬物治療の効果を調べるための臨床研究や、人々がアレルギーにどのように対処しているかを知るための統計分析などに利用されます。こうしたアンケート調査によって新しい事象が見つかり、新規の研究に繋がり、ひいては新たな解決策が開発されることになるかもしれません。 アンケート調査を行うときに留意すべきこと 適切な科学的調査のためのアンケートを作成するには、次の点に留意することが必要です。 1. 調査のテーマと収集すべきデータの項目を明確にすること 2. 明瞭で、一貫性を備えた調査様式を準備すること 3. 回答者に対する説明、依頼は明瞭かつ簡潔に行うこと 4. 質問は簡明な文書で記すこと 5. 質問および説明文に書き込む用語の定義は明確に示すこと こうした点を心がけることで、調査を円滑かつ回答におけるミスを少なく進めることができるでしょう。 アンケート調査の強みと弱み…

目指せ!効率的なタイムマネジメント

1日24時間。誰もが限られた時間をいかに効率的に使うかに頭を悩ませていることでしょう。かのベストセラー『7つの習慣』(1996年、スティーブン・R・コヴィー、キングベアー出版)でも「緊急度」と「重要度」を指標としたタイムマネジメントの重要性が提唱されています。そして、タイムマネジメントが重要なのは研究者も同じ。雇用契約や研究助成金の支給期間に限りがある場合には一層、時間は貴重です。今回は、限られた時間をいかに有効に使うか、効率的なタイムマネジメントについて考えてみます。 ■ タイムマネジメントは何故必要か 研究者は、実験、レポート作成、論文執筆、出版、助成金申請といった研究関連業務に加え、学生や後進への教育指導、さらに職員/教員としての事務作業といった異なるタスクをこなすことが求められます。諸業務をこなしながら、自分自身も研究者として成長し、成果を残さなければならない――このような状況で業務を遂行し、よい研究成果を出すためには、効率的なタイムマネジメントが不可欠です。タイムマネジメントがうまくできれば、生産性を向上させ、業務上の時間の無駄を最小限に留め、さらにはストレスの軽減にもつながり、結果としてより大きな研究の成功につながることが期待できます。 ■ 効率的タイムマネジメントの5つのポイント 緊急度と重要度。効率よく研究の結果を出すには、作業の優先付けが重要です。そして、成果が得られる(であろう)作業に時間と労力をつぎ込むことも必要です。では、そのためのタイムマネジメントで注意すべきポイントはどこでしょう。 ① 脳の働きに合わせたワークスケジュール 人によって最も生産性が高くなる時間は異なります。最近は「朝活」をする人も増えていますが、脳科学的に見ても朝は最も脳が効率よく働く「ゴールデンタイム」そうです。1日の時間帯によって脳の活性も違うので、脳科学を意識しつつ1日のワークスケジュールを考えるのもよいでしょう。集中できるサイクルに合わせた“to-do list”(すべきことのリスト)を作成しておくのも一案です。もうひとつ注意すべきは、集中力です。人間の集中力の持続時間には限りがありますので、適宜休憩を入れることで集中力を維持した方が効率はよいでしょう。 ② 中長期プランニング 研究を行う上で中長期のプランニングも大切です。実験を行う場合、実験計画を事前にしっかり立てて準備しておくことは、失敗を防ぎ、作業ロスを減らし、安全を確保する意味でも重要です。また、実験の結果をいつまでにどんな形で成果としてまとめ、発表するかまでプランニングしておくべきでしょう。学会参加申込みや学術ジャーナルへの投稿には、決まったスケジュールがあるものです。大枠を把握した上で、作業全体をプランニング・管理するようにします。 ③ スキマ時間を有効活用 作業の合間に違うことをすれば気分転換になるということもありますが、時間のムダ使いは避けたいところです。SNSなどの情報ツールは便利な反面、仕事が中断されがちです。一日のうちコミュニケーションに対処する時間をあらかじめ割り当ててしまうなどの工夫が必要でしょう。一度作業の流れが止められてしまうと、集中力を取り戻すのに30分程度が必要になるとも言われていますので、侮れません。実験の待ち時間や移動中などのスキマ時間をメールチェックなどに利用するのも一案です。ところで、朝一でメールをチェックしてから仕事を開始――まさにやりがちなことですが、先述の脳科学の話によれば、1日のうちで脳が一番冴えている「ゴールデンタイム」をメールチェックに使うのはもったいないそうです。この時間こそ、創造性を発揮する作業に適しているそうなので、自分の行動を見直してみてください。…