ジャーナルからリジェクトされたら

投稿原稿がリジェクトされる一般的な理由

研究者は、自らの研究成果を少しでもインパクトの高い学術雑誌(ジャーナル)に投稿しようと日々研鑽を重ねています。しかし、論文出版には困難が伴い、せっかく投稿した論文が却下(リジェクト)されることも少なくありません。多くの研究者がキャリアの中で一度はリジェクトを経験し、失敗から学んだ経験を次の論文投稿に生かしていることでしょう。今回は、一般的にリジェクトにされる12の理由と注意すべき点について考えてみます。 1. 内容とタイトルのミスマッチ タイトルは論文内容にあったものにします。タイトルで論文の内容を適切に示せていないと読者の興味を引けないだけでなく、論文の検索にも影響します。また、ジャーナルの投稿規程に反したタイトルがついている場合はリジェクトの対象となります。 2. 要約が要約になっていない(アブストラクトの不備) 要約(アブストラクト)はそれだけ読んでも論文の内容を把握できるように書かれているべきであり、論文の内容を正確に反映させるものです。読者の誤解を招く恐れのある記述であってはなりません。 3. 序論が本文とあっていない(イントロダクションの不備) 論文の頭である序論(イントロダクション)が、論文全体の内容がわかるように書かれていないと、本文を読み進む気力を削ぐことになってしまいます。イントロダクションには、研究における論点、仮定、研究の目的が示されていなければなりません。 4. 不適切な方法(メソッド)の記載 適切な引用説明もなく以前書いた他の論文から方法をコピーするのは自己盗用に該当します。実際の実験で利用した方法を正確に記載しましょう。また、データの収集方法や、解析方法が不適切と判断された場合もリジェクトの対象となります。そして、研究が再現できるかどうかを確認しておくことが大切です。 5. 記載もれ…

研究論文が却下される10の理由 (4)

論文が却下される10大理由を考えてきましたが、今回はその最終回。英語を母国語としない私たちにとって、最も大きな落とし穴について考えてみたいと思います。 9. 言いたいことが飛び飛びになっていて読みづらい 著者の言いたいことが飛び飛びに書かれていて、結果として読みにくい文章になってしまうことは、英語が母国語でない私たちにとっては最も厄介な問題です。日本語と英語では「論理のつなげ方」が違いますので、日本語では筋が通った明確な文章も、英語に直訳すると読みづらく感じられます。これに、略語の多用や、日本の学術界の常識と海外の学術界の常識とのくい違いなどが加わると、説明が必要なことが省略されてしまったり、逆に常識的なことがくどくどと説明されてしまったり、ということが生じます。 査読者から「unclear(不明確)」や「redundant(重複が多い)」というコメントが戻って来たら、英語の論文を書き慣れている人に校正してもらいましょう。 10. 盗用と誤用があった 他の論文の結果や表現を引用する場合は、引用先を明記する必要があります。論文を書いたことのない人にとっては、とても簡単に聞こえるルールですが、実際に論文を書き始めると、このルールには意外にもトリックがあるということがわかります。 たとえば会員限定で発行されているジャーナルに投稿された論文の結果など、引用元の論文全体を自分では確認できないことも多々あるのですが、他の論文でそれが引用されている箇所のみを読んで、全体を読まないまま、「読んだこと」にしてしまうことも技術的には不可能ではありません。しかし、その理解は不十分なままでしょう。 また、いまは多くの論文が電子化されているので、コピー&ペーストによる盗用も簡単にできてしまいます。しかし、引用の盗用や誤用は研究者に取って命取りとなります。掲載前に見つかることは稀ですが、研究者のなかには、不採用の手紙といっしょに査読者から「私はこのようなことは言っていません」と返事が来たという人もいます。掲載後に他の読者から指摘された場合も含め、このようなことがあると、今後、あなたの名前がブラックリストに載る可能性もあります。 他の論文に引用された研究を自分が引用したい場合には必ずオリジナルを確認し、引用するときには細心の注意をもって当たりましょう。どんなに重要な研究でも、確認のできない論文に関しては引用しない、または、脚注にそのことを注記することをお勧めします。

お高い掲載却下率に打ち勝つためには?(2)

お高い却下(リジェクト)率に打ち勝つための裏技の第2回です。前回は、投稿数を増やすことを目標に話をしましたが、今回は査読者の心を揺さぶる心理攻撃のお話です。「科学の世界にあるまじき……」などと固いことはいわずに、この意外に効果的な方法を有効活用してください。 1. 知り合いの輪を広げる やはり知っている人の論文を査読するときには、通常より真剣になるものです。学会に足しげく通って、いろいろな人に自分の研究について知ってもらいましょう。 「ああ、これは去年の学会で隣に座った人がやっているといっていた研究だ」。そう思ってもらうだけで、「適当に読んで適当に掲載が却下される」といったことはなくなるでしょうし、仮に却下されても、より意義のある批評をもらえるでしょう。 2. 感謝の気持ちを忘れずに 知り合いの輪を広げるといっても、悪い印象を与えては意味がありません。ちょっとした食事の席の話でも、あなたの研究に対してよいアドバイスをしてくれた人の名前はきちんと控えておき、論文を書くときには“acknowledgements”として感謝の意を表しましょう。このさい、ジャーナルの編集者や査読者、助成金を出してくれた団体への感謝も忘れないように気をつけてください。 また、“acknowledgements”には、あなたの研究結果や主張に賛同してくれた人だけでなく、有意義な批判をしてくれた人の名前も忘れないようにしてください。どちらの場合も、名前を出されたくないという人もいるかもしれませんので、論文を投稿する前に、メールなどで了解を得ることをお勧めします。 3. 偏見は現実にあるもの 日本の場合、日本人だということに対する偏見はあまりないかと思いますが、学位を取得した大学院の名前や師事した教授の評判などにもとづく多種多様な偏見は、査読ジャーナルという世界でも現実の問題としてあります。もし自分が偏見の対象となっていると感じたら、偏見を持っていないジャーナルを探すことをお勧めします。 また、偏見の対象となっていない人との共同研究を経て、自分の研究者としての評価を確立するのも効果的でしょう。同じような偏見に耐えながらも多くの論文を出版している研究者がいたら、その人に相談するのもよい方法です。「偏見など絶対にない」などと理想に捕われることなく、現実にありえる問題として、果敢に(そして器用に)立ち向かうことが大切です。

お高い掲載却下率に打ち勝つためには? (1)

「論文をジャーナルに掲載してもらうには、どうしたらよいですか?」と聞かれれば、その答えはおおむね、以下の3つとなるでしょう。 ①よい研究をする ②英作文が上達するように努力する ③論文の書き方をマスターする しかし、これらは誰もがしていること。ほかの人より抜き出るためには何をしたらよいのでしょうか? 高い却下(リジェクト)率に打ち勝つために、これから2回に分けて裏技をご紹介します。 1. 上等な鉄砲でも打たなければ当たらない とりあえず、「いつも査読中の論文がある」状態を保ちましょう。 現職を維持するために特定数以上の論文を出版する必要がある方は、とくに気をつけてください。無我夢中で頑張るのではなく、数字を出してジックリと計画を立てるべきでしょう。まず自分の論文の却下率を計算してください。投稿数が少ない場合は、学会内の平均却下率をインターネットで調べるか、各ジャーナルの掲載率から割り出せばよいでしょう。あとは年間何本の論文を出版しなくてはいけないかを考え、投稿数を逆算します。たとえば、年間2つ以上の出版が求められる職に就いていて、自分の却下率が50パーセントの場合、毎年、4つ以上の論文を投稿しなければいけないということになります。このように、論文の却下を「運が悪かった」と考えず、現実問題として対応しようとすると、いかに投稿数が重要かがわかると思います。 2. 共同研究をする 投稿数を増やすために欠かせないのが共同研究です。とくに、自分より出版経験の長い研究者との共同研究は、ジャーナルに掲載される可能性が高くなるだけでなく、今後のためにもよい勉強になるはずです。 また、論文を書く段階になって、誰の名前を最初にするかという問題が持ち上がると思いますが、共同研究者とは今後も長いお付き合いになることを念頭において、相手の気持ちを考えた大人の対応を心がけてください。 ただし研究を始める前に、仕事の分担を明確にすることをお忘れなく。それを怠ると、問題が生じたとき、トラブルのもとになることがあります。2014年の「STAP細胞事件」では、問題発覚後、共著者たちが互いに責任を押し付け合う姿が見られましたが、そういう事態は避けたいものです。 3.…

研究論文が却下される10の理由(3)

本ブログでは、論文が却下される10の理由を考えていますが、本日はその第3回です。今回はよく見落としがちな点を2つあげてみました。 7. 研究結果と研究者の利害関係は? 研究の規模や影響力が大きくなればなるほど、いろいろな所から助成金が集まってきます。研究者として、主観や私的利益を廃し、限りなく論理的に研究をデザインし、結果を分析するのは当たり前のことです。しかし、たまたまその結果が、助成金を出してくれた会社に好意的な結果となった場合、ジャーナルの編集者や査読者の猜疑心をあおることになります。こうした問題は「助成金を出してくれた団体の会長が、 ある製薬会社の重役も兼任していた」など、助成金にはあまり関係のないところで人脈がつながっている場合でも同じです。 このような場合、論文内で「研究内容とその結果の分析を明確な説明・発表する」こと以外に、「研究の公平性を訴える」ことも重要なポイントとなります。その点を踏まえて、もう一度自分の論文を読み直してみてください。また、第三者に論文を校正してもらう機会がある場合は、事情を説明してから読んでもらうことをおすすめします。 研究者として、自負を持って論理的な研究を心がけている人ほど、このようなことをバカバカしいと思いがちです。しかし、不必要な疑いを回避するために利害関係を明示しないことは、逆に研究者として自殺行為となりかねます。利害関係はつねに明確に記しておく必要があります。 8. 投稿先のジャーナルの指針と編集委員の趣向 研究者は、最新の論文はいつも敏感にチェックしますが、それを掲載しているジャーナルそのものの目的や経営方針には無頓着になりがちです。しかし、いざ自分の論文を投稿するさいには、このことが重要になってきます。 論文を投稿するさいに「ジャーナルの指針を確認し、それが自分の論文に沿ったものかどうかを確認すること」というのは、よくあるアドバイスの1つです。それでも論文が却下された場合は? 実は、忘れられがちなことの1つに、編集委員たちの存在があります。つまり編集委員が代われば、その編集委員の好みが多少は投稿論文の選択に影響することも否めない、ということです。 査読者からのコメントが届いたら、まずジャーナルの指針とともに編集委員たちの略歴にも目を通しましょう。そうしてからコメントを読むと、査読者の指摘がより明確に理解できるかもしれません。

研究論文が却下される10の理由(2)

本ブログでは、論文が却下される10の理由を4回に分けて考えています。今回はその第2回。もう少しテクニカルな側面を考えてみたいと思います。 4. 統計があればいいというわけではない 専門分野によって差があるとはいえ、昨今、統計的な調査結果を使わない論文は少なくなってきました。統計的な調査結果がない論文は主観的だと思われる傾向があるからでしょう。しかし、統計的有意差がみられたからといって、論文の信用性が上がるわけではありません。逆に、本当はよい研究でも、不用意な統計の使い方によって信用性を失う場合もあり、それだけの理由で査読者から低い評価を受けることがあります。 統計的な調査結果を使用する場合は、使用の有無だけでなく、たとえば臨床系の研究であれば、被験者数や被験者のグループ分けに適した統計方法などを再検討してみてください。 5. 新しい研究論文が引用されていない 引用されている研究論文がすべて1900年代のものではありませんか? 有名な研究論文は古くなっても引用する価値がありますし、逆に引用しないことで信頼を失う可能性もあります。しかし、引用している研究論文がすべて10年も前のものでは、どんなによい研究でも、「この10年の間に何か重要な発見はなかったのか?」と編集者の不信感を煽ってしまうことになります。 直接関連した内容の論文が出版されていない場合、学会でのパネル発表や博士論文など、出版に至っていない研究でもかまいません。「私はいつもこの研究に関して最先端の情報を集めています」ということをアピールしましょう。 6. 仮説がない 研究者のなかには「仮説を立てること自体が、主観的に研究対象を見ていることになるのでは?」という意見もあります。しかし現実的には、編集者や査読者は数多くの論文を読まなくてはならないので、一目見ただけで「この人はどうしてこの研究を行ったのか?」がわからなければ、「わかりにくい論文」と考えて、後回し(または却下)することになります。 論文が却下される要因の1つとして、「どうしてこの研究を行ったのか?」と「その仮説を検証するために、この研究デザインがどうして最適なアプローチなのか?」が簡潔にまとめられていないことが考えられます。この2点を短い文で表現し直してみてください。それぞれを2〜3行でまとめることが望ましいです。

よくある「却下(リジェクト)」のシナリオ

論文がジャーナルに掲載されるまで、通常、平均2回は却下されるといわれます。今回は、ジャーナル編集部でよく聞かれる愚痴をあげ、その対応策を考えてみました。投稿する前の自分の論文を編集者の目で見ることができ、それに応じて原稿を作成することができれば、それだけ掲載のチャンスが高くなるのではないでしょうか? 1. 編集者の怒り 「メールの件名欄に研究者の名前を書く」とか、「1ページ目に研究者の名前と論文のタイトルを書き、論文自体には研究者の名前を書かない」とか、投稿規程はそんなに難しいものじゃないのに……。自分がちょっと楽をしたいからって、簡単な規程にも従わないで論文を送りつけてきて! 毎日何十も投稿論文がある中で、この論文にだけ時間をかけるなんて、ほかの研究者に対しても不公平。編集委員に見てもらう必要もないわ」 【対策】投稿規程上の小さなミスで論文が却下されることはまずありません。しかしあまりのミスの多さに、編集者に「あなたの個人秘書扱いしないで!」と思われたら、その場で却下(リジェクト)されることもあります。投稿規程は最初から最後まで読んで、できる限り従うように努力しましょう。 2. 編集者の困惑 「この論文の論旨は、3年前に頻繁に討論された題材と同じ。使われている略語や専門用語も、ヨーロッパ系のジャーナルで使われているもので、私たちが使っているものとは少し違う。本当にこのジャーナルのことを知っていて掲載してきたのだろうか?」 【対策】論文を読む前から編集者を不安がらせないように、気をつけましょう。以前そのジャーナルで取り上げられた題材と似ている場合は、「この論文と以前の論文の違いは読んでくれればわかる」とは考えず、必ずカバーレターで説明しましょう。また投稿前に、そのジャーナルの過去半年の発行物を読んで、読者がどのような興味を持っているか調べましょう。 3. 編集者の悲鳴 「この論文、いったい誰に査読してもらったらいいんだろう……」 【対策】編集者といっても、その分野のすべての領域に詳しいわけではありません。とても特殊な研究の論文のために、査読者を選ぶのは大変な作業となります。このような場合、査読者は、キーワードや参照文献をもとに選ばれることが多いようです。キーワードには、自分の論文の特徴がすぐにわかるような語を選びましょう。また、参照文献には、自分の論文ばかりではなく、自分の研究の意義を正当に評価できる研究者の論文を取り込むように努力しましょう。 4. 査読者の嘆き…

研究論文が却下される10の理由(1)

研究のデザインから投稿まで、寝る暇も惜しんで書き上げた論文。それが「残念ですが…」という型通りの手紙といっしょに却下されてしまうと、本当にガッカリしますね。でも、名誉挽回のチャンスはそのときにこそあります。研究自体に欠陥があったのか、それとも発表の仕方に問題があったのか? それがわかれば、次の投稿では採択される可能性を高めることができます。 本コーナーでは、これから4回に分けて論文が却下される10の理由を紹介します。論文の出版をあきらめる前に、もう一度見直してみてください。 1. ジャーナルの投稿規程を確認しましたか? 論文を投稿するさい、郵便を使う場合でもメールを使う場合でも、ほとんどのジャーナルには独自の(長い)投稿規程があります。「研究者の名前は論文から削除し、他の紙に書いて添付してください」とか「メールのタイトル欄に研究者の名前を書いてください」など、論文の質にはまったく関係のないルールも少なくありません。しかしながら、これらのルールを守らないと、論文審査以前にリジェクトされることが多々あります。 2. 誤字や脱字はありませんか? 毎日何十もの論文が送られてくる世界的なトップジャーナルの編集長によれば、投稿時の注意点として、「アブストラクト(要約)に一字でも誤字脱字があったら、 査読者 にまわさないで却下する」とのことです。 誤字脱字は本文だけの問題ではありません。他のジャーナル編集者は「アブストラクトを読む前に表組やグラフを見て、少しでもおかしかったら査読者へまわさない」といいます。 誤字脱字や数字の写し間違いがないか、再度確認しましょう。 3. タイトルに魅力がないのでは? 「読んでみたい!」と思わせるのもタイトルならば、「つまらなそう…」と思わせるのもタイトルです。…