今ではすっかり生活に溶け込んだ「人工知能」(Artificial Intelligence: AI)という言葉。この用語が初めて登場したのは、1956年。人工知能の基礎を築き「現代人工知能の父」とも呼ばれるジョン・マッカーシー博士が、ダートマス会議と呼ばれる、自身の主催した研究者のワークショップで初めて使用しました。人間の「知能」を機械に持たせる、つまり人間の脳が行っている知的な諸機能を機械に行わせることを目的に、ダートマス会議以降、研究が進められてきました。そして2016年12月、AppleがAI関連、具体的にはコンピューター生成画像を使い画像認識トレーニングを向上させる技術について記した論文を発表したことにより、AIの発展は転換期を迎えることになりました。それまで秘密主義を貫いていたAppleが同社による研究成果を学術機関で発表・共有したことで、IT業界へのAIの取り込みおよび情報のオープン化が加速したのです。AIが日々急速に進化している半面、本当に有益なのか、害となるか、どこまで信頼すべきなのか懸念も生じています。 ■ 拡大するAIの利用 AIと聞くとSF映画を想像する方もいると思いますが、AIの利用は、IT業界をはじめ産業界で拡大しており、ビッグデータと言われる大量のデータの処理や自然言語処理(人が日常的に使っている言語をコンピューターに処理させる)を活用して顧客向けの広報や顧客サポートを行うようになっています。 AIの基本は、ニューラルネットワークと呼ばれる、人間の脳神経細胞をモデルとした情報処理システムですが、近年のITの発展により、このニューラルネットワークによる学習(機械学習)機能が飛躍的に向上しました。自分で学習し知能を蓄えることができるようになったことで、AI搭載の将棋・囲碁ソフトが人間のプロを打ち負かすといったニュースも聞こえてくるようになりました。 AIには、科学者たちが、AIはイノベーションや新たな発見、科学の発展に貢献すると考えるに足る特徴があります。例えば、人間の脳にとっては複雑すぎる処理を行えたり、高速で情報を処理したり、間違いを減らしたり、データから傾向や真意を検出したりできるのです。AIは、生活をよりシンプルに、簡便に、高度にできる可能性を秘めているのです。 ■ 学術出版におけるAIの影響 AIの登場は、学術出版界にも影響を与えています。2014年、英語に限っても約250万本の学術論文が28の学術誌に掲載されましたが、これだけ多くの論文を掲載するのにAIが一役買っていることは言うまでもありません。一例として、AIを用いることによって不正データや盗用・剽窃を検出することが可能になるため、出版社は、投稿された論文が出版に値するかどうかの判断に役立てることができます。 また、AIは膨大な学術論文の内容を瞬時に処理することもできます。例えば、がん治療の標的とされている特定のp53タンパク質に関する論文だけでも、7万本以上が発表されており、研究者がどんなに努力しても、すべての論文に目を通すのは困難です。ところが、AIを使えば、自分が必要としている記述が含まれる公開論文を代わりに見つけてきてくれるのです。自分で研究活動を行えるとも言われるAI「Iris」は、研究者の代わりに論文を「読み」、論じている内容を判断し、結果を研究者に提示できるという特徴を持っています。他にも、AIが搭載された「Semantic Scholar」という研究者向けの検索エンジンは、論文を読み、キーワードなどを元にした分析を行い、影響力の大きな論文を検出・評価するなどの機能を備えています。このような機能も含め、AIの発展は学術界にも以下に挙げるような大きな利便性をもたらしているのです。 AIが学術界にもたらすであろうメリット ・研究のトレンドや重要な分野の明確化。論文のタイトルではなく、内容に基づいて抽出するので、研究者は各分野の傾向を特定できる。 ・新しい査読者の選定。AIは、編集者が思いもつかない潜在能力を持った査読者をオンラインから探し出し、名簿を提供できる。 ・盗用・剽窃の防止。AIは自然言語処理を用いて、書き換えられた文や段落を特定し、盗用・剽窃を探し出すことができる。…
2018-02-16