論文

論文の考察はどうやって書く?

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、論文の要でもある「考察(ディスカッション)」には何をどう書けばいいのかという話です。 以前、友人であり効率化の師でもあるジェイソン・ダウンズ(Jason Downs)の勧めで、リチャード・コッチ(Richard Koch)の『The 80/20 Principle: The Secret to Achieving More with…

PhDの研究を学術書として出版するには Part3

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。PhDの研究を学術書として執筆し出版する方法について述べた「PhDの研究を学術書として出版するには」のPart3です。この記事に先立つPart1では出版する媒体と出版社との連絡、アイデアの売り込みについて。Part2では契約の交渉方法についてお伝えしてきました。Part3では、編集・校正プロセスからマーケティングまでのステップを紹介します。 このシリーズは、PhD、あるいは研究者としてのキャリアの早い段階で自分の研究を学術書にするプロセスをお伝えするために書いたものですが、すべての学術分野が書籍の出版に関心を示すわけではなく、学会発表やジャーナルへの論文掲載、もしくは展示発表などが重視される分野もあることにも留意しておきましょう。 まだお読みでない場合は、こちらからPart1とPart2をどうぞ。 Part1では、書籍にしないという選択肢も含めて、機会を見極めて出版社に連絡しアイデアを売り込むことについてお話し、Part2では、出版社に興味を持ってもらい、契約にこぎつける方法について紹介しました。 Part3では、実際的な課題に焦点を当て、書籍の執筆と編集・校正のプロセスで起こり得ることについてお伝えしたいと思います。 ステップ6:売り込みが奏功して無事に書籍化が決定!今こそ"Be careful what you wish for because…

PhDの研究を学術書として出版するには Part2

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。 この記事はPhDの研究を学術書として執筆して出版するには方法について述べた「PhDの研究を学術書として出版するには」の続編です。前回の記事で紹介した3つのステップに続く、ステップ4と5を紹介します。 「PhDの研究を学術書として出版するには」という記事では、媒体の検討、出版社との連絡、アイデアの売り込みについて説明しました。このPart2では、契約の交渉方法についてお話し、次のPart3では、執筆と編集のプロセスについて説明します。 ステップ4:学術界の嫌われ者になるべからず 以前の投稿記事に書いたように自分で自分を売り込まない限り、学術出版社からすぐに返事が返ってくる可能性は低いと思ってください。メールのやり取りに数週間、あるいは数ヶ月かかってしまうこともあるでしょう。私の経験から言うと学術出版を支えている人たちは、研究者と同じく時間に追われています。彼らは複数のプロジェクトに関わり、複数の役割を担っており、専業でない人が多いのです。ですから、そうした相手の日々の業務状況に配慮したコミュニケーション戦略を立てる必要があります。焦らず、あなたからの最初のメールに対する返事が来るまで1ヶ月程度は待ってみましょう。 どのような内容をどのような形で出版するかを決めるのは出版社なのに、この当たり前とも思えることが、意外と忘れられがちです。優れた出版社は、優れたブロガー同様、自分たちの読者層を熟知しています。出版社は特定の市場を対象としており、そこに連なる書店やオンライン流通業者へのアプローチや販売に力を入れ、販売実績を参考に販売戦略を決めていきます。ですから、過去に類似した本を出した出版社だからといって、自分の本を出してくれるとは限りません。この出版社なら興味を持ってくれるはずだと思っても、売り込みがうまくいかないこともあるのです。 私の経験を共有すると、学生向けのライティング指南書『Postgraduate study in Australia: surviving and…

Uneven Uの手法で論争的かつ読み進めやすい文章を書こう

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回はアカデミックライティング含め様々な執筆に役立つ「Uneven U」と呼ばれる文章の構成方法についての解説です。読者を引き込み更なる探究を促すような、論争的かつ読み進めやすい文章を書けるようになるこの方法。さて、Uneven U―形の整っていないU型とは何を意味しているのでしょうか。 よく出版社から評価(レビュー)用の学術書が送られてくるので、喜んで全部に目を通しますが、私は書評を書きませんし、書くことを皆さんに心からお勧めすることはできません。私は、書評を書くことで同僚の著者の気持ちをくじけさせたくないのです。送られてきた書籍は、私の本棚の一番下に、罪悪感の塊となって積まれています。 最近、部屋の片付けをしていたら、2014年にコロンビア大学出版から送られてきたエリック・ハヨ(Eric Hayot)著『The element of academic style(仮題:アカデミック・スタイルの要素)』が出てきました。最近、キャサリンとショーンと私の3人は、2018年に私たちが出版した『How to fix…

プロの論文校正者が解説。校正の内容やその必要性

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回の題材は英文校正についてです。ミューバーン准教授が、オーストラリアのキャンベラでプロの論文校正・校閲者として活躍をするキャリン・ホスキングが校正者の立場から「校正」を語ってくれたものを紹介してくれました。英文校正とは何か、そしてどんなときに英文校正を使うべきなのでしょうか。 キャリン・ホスキングは、キャンベラを拠点に活動する校正・校閲者です。学位論文の校正を専門とし、特に英語圏以外の学生や研究者と多くの仕事をしています。彼女のLinkedInのプロフィールはこちらで、chezkaz@gmail.com 宛てにメッセージを送ることも可能です。この記事は、校正者の基本的な仕事について、そして、論文作成時の校正者の役割についてキャリンに話してもらったものです。 *****ここからキャリン・ホスキングが主語の解説です***** 私は校正・校閲の仕事をしていますが、このところ書籍や掲示物で目にする言葉の誤用や誤字の多さにいささか圧倒されています。そして、もっと気軽に校正者を使ってくれたら良いのにと思っています。私たち校正者のほとんどは穏やかでフレンドリーな人たちで、人々の円滑なコミュニケーションを手伝いたいと願っているのです。かつて校正者のことを高度な技術をもって布地の損傷を修復する熟練工と同じように「見えない修復者(invisible menders)」と表現した人がいました。校正者の全員が必ずしも、表に出ない存在でいることに満足しているわけではないでしょうが、この言葉は私たちの役割を的確に表現していると思います。 何がそんなに気になるのか-気になりだすと止まらない 1冊の本を最初から最後まで読んで、1つも間違いを見つけなかったことは久しくありません。表記のゆれ(例えば、単語や登場人物の名前の記述などにおける表記のばらつき、ハイフンの有無など)に気づくこともあれば、誤字やスペルミス、時制(過去形、現在形、未来形)の混在、条件節の矛盾などを発見してしまうこともあります。 物語(ストーリー)や語り口(ナラティブ)に矛盾がある場合もあります。例えば、私のパートナーが最近買った本は、ある大規模な鉄道路線の建設についてのものなのですが、その路線について「建設途中」という文章と「開業済み」という文章が入り乱れていました。本に複数の版があって、前の版から引き継いだ内容を誰もチェックしていないようなのです。また別のある本の中では、著者が全文において特定の文字列を一括変換したようで全くの意味を成さない箇所がありました。執筆から出版までの間に誰もその本を通読しなかったことは明らかです。 私は学術論文の校正を専門としていますが、担当するのは、ほとんどが(すべてではありませんが)、英語圏以外の人の文章です。プロの校正者が論文を編集する際にしてよいことと、してはいけないことに関しては一定のルールがあります。オーストラリアおよびニュージーランドの校正者は「Institute of Professional…

博士論文作成に役立つ大学のライティングセンターを利用しよう

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回の題材は多くの大学内に設置されているライティングセンターについて。ネバダ大学ラスベガス校(UNLV)のライティングセンターでコンサルタントとして勤務するデイブ・ビーズリー博士の見解をインガー准教授が紹介してくれています。大学のライティングセンターは博士論文を仕上げるのにどう役立つのでしょうか。 研究活動を支援することは、開業医(General Practitioner, GP)の仕事に似ています。医師が早期に問題を見つけ出せれば対処は簡単ですが、患者に処置を施すまでの時間が長くなるほど助けにくくなってしまうのと同様、問題が長いこと放置されていれば私たちにできるサポートが少なくなってしまうのです。 ライティングの問題点について早期に対処することの大切さについて述べる今回の記事は、デイブ・ビーズリー(Dr. G. David “Dave” Beasley)によるものです。デイブは2017年にネバダ大学ラスベガス校 (UNLV) で、18世紀の英国文学に関する研究で博士号を取得しました。ゴシック小説、啓蒙主義、および非宗教的コミュニティにおける共通点に注目した研究を行い、ゴシック小説が探偵小説の誕生に及ぼした影響にも関心を持っています。現在は同校のライティングセンターでプロフェッショナル・ライティングコンサルタント(Professional Writing…

研究者のための用途別メモアプリ、データベース活用法

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。論文執筆、文献レビュー、プレゼンなど用途に応じて、研究者は多くの情報を整理・活用しなければなりません。今回は、数々のメモアプリ、データベース、専用ソフトを試してきたインガー准教授が、用途別にメモの方法やメモツールの活用法を語ります。 この20年、私は、完璧な学術的メモの取り方を探ってきました。 紙のノートこそが自分のアイデアが死んでいく場だと気づいた2005年、私は紙を捨てました。当時はノートに取ったメモが役立つと思っていましたが、後からそれを見つけるのは困難だったのです。何百ページもの殴り書きをあてどなくめくるのはもどかしく、もし該当のメモを見つけたしても出典資料がなければ意味をなしません。プリントアウトした資料にメモを書きこむことで、この問題は解決しましたが、別の問題が生じました。ファイリングです。メモの内容は、著者、タイトルのどちらかで覚えている場合もあり、トピックやアイデアだけで覚えている場合もあります。だからと言って、一度に4つのカテゴリの下に1枚の用紙をファイリングすることはできないのです。 正直、この15年間、紙に固執する人たちのことが不思議でした。デジタルのノートにはさまざまな利点があります。検索機能はファイリングに代わるもので、紙から画面にメモを書き写す 「取引コスト」 を実質的になくします。素晴らしいことだらけに聞こえますが、世の中にはデータベースソフトが山のようにありながら、その中に絶対的なスタンダードはありません。その理由は、どれもメモを取るということについての問題を根本的に解決していないからです。 ずっとデジタルでメモを取ってきましたが、告白しなければなりません。デジタルのノートの方が良いとと周囲に言っている間じゅうずっと、私は、どこかこれではダメなんじゃないかと思っていました。執筆しながら、呆然としている自分に気づくこともしばしばでした。必要な情報を集めていたはずなのに、集めた注釈や書き抜きはあまり役に立っていなかったのです。 これは、ツール自体の問題ではありません。使えそうなデジタルツールをほぼ試し尽くした後だから言えることです。 プリントアウトした資料に書き込むのと同じ使い勝手を求めて、EndnoteやZotero、Mendeley、Papers2といった文献管理ソフトでメモを取ってみましたが、紙のノートに書くよりも、そうしたソフトでメモを取った方がまとめづらいように感じられました。バラバラのメモを集めることで、自分の思考もバラバラになってしまうのです。 その後、デジタルデータベースも試してみました。関係性や結びつきを見出しやすいのがデータベースです。検索を実行すれば関連項目が一覧表示され、アイデアがひらめきます。これまで私は、Evernote、DevonThink、OneNote、Readwise、Pocket、Notionなど数多くのデータベースを使ってきました。そのいくつかを周囲に薦めていたこともあるのですが、努力して使うだけの価値があるとは思えなくなってきたのが実際のところです。 Devon Thinkの機械学習を活用した検索など、優れた機能を持つデータベースもありますが、メモのデータベースを適切に管理するには大変な労力が必要です。またデジタルデータベースでは、その一番の強みが、最大の問題ともなります。それは、フリクションがなさすぎる、ということです。データの保存や移動が難なくできるため、膨大なデータを無秩序に蓄積できてしまうのです。…

論文は専門用語の使い方で信頼を得る

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、ミューバーン准教授がジャーナリストの書く文章と論文の違いは読者の知識量と解説し、論文著者として信頼を得るために論文中でどう専門用語を使うべきか語ります。 ほとんどの人は、博士課程に入る時点で文章能力を身に付けていますが、論文の執筆には特殊なスキルが必要です。論文を執筆するには持っている文章スキルを 「論文スタイル」 に修正しなければなりません。これまで私が見てきた中で論文スタイルに最も手を焼いているのは皮肉なことにジャーナリストたちでした。 既にジャーナリストとして活躍してきたとあれば、博士号取得までの試練の中でも執筆についてはことさら既に乗り越えているものだと期待するでしょう。しかしジャーナリストたちが、論文の執筆が難しいと感じる明らかな理由があるのです。ジャーナリストは一般読者向けの文章を書くことに慣れており、その主な役割は、その話題についてよく知らない人々に状況や考えを伝え、説明することです。対照的に、論文とは専門家が他の専門家に情報を提供し、自分の見解について納得してもらうために書かれるものです。 高い専門性を誇る読み手は簡単には納得しないため、博士課程の学生の原稿に、私はよく次のようなコメントを書きます。 「本来は複数形でも、慣例上、単数表記。英語はバカなのです」とコメント欄に記入しています。 私は指導教官としては、文法の 「ルール」 についてはかなり寛容です。文法のルールなど人が作ったものなのですから。むしろ私は、文法的に正しいことより「社会的に正しい」文章を学生が書くお手伝いをします。「社会的に正しい」文章 とは、想定される読者の期待に沿う文章という意味合いです。 学術界の研究者同士のコミュニケーションのためのライティングは、マスターするのが最も難しい作文技術の1つです。専門家である読者は、自分の研究トピックに関連する研究方法に関する知識や、一般的な背景などを理解しているという前提で書かなくてはなりません。ただし、研究者であっても自分のトピックについては自分ほど詳しくないという認識も重要です。自分が採用した研究手法を知っていたけれど使ったことはないという読者もいるでしょうし、30年来ほぼ毎日、その研究手法を使っているという読者がいるかもしれません。また、その分野の研究の歴史について非常に詳しいかもしれませんし、何の知識も持っていないかもしれません。…

不安は強い力を生み出す可能性を秘めている(前編)

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。2020年を振り返るとコロナの影響で不安を感じたことが多々ありました。2021年は不安な時だからこそ、具体的に博士課程で起こり得る問題を予想して実践的に準備しようというインガー准教授のメッセージを前後半でお届けします。(元記事は2021年1月6日に投稿されたものなので、新年の挨拶から始まっています。) あけましておめでとうございます。 2020年、無能な政治家や、がめつい企業の運転するバスに乗り合わせたばかりに、崖っぷちにさらされた無力な乗客のような感覚になることがよくありました。気候変動に関しては常々「崖っぷち感」を感じていましたが、パンデミックはその感覚を悪化させたのです。私は2020年を通じてとてつもない不安を抱えていたので、仕事を含むすべての作業に悪影響を及ぼしていました。 2021年に状況が改善されるとしても、こうした不安の原因となっている問題の多くが霧消することはないでしょう。今年、どんな準備するのが良いのか考えてはみるものの、たくさんの抱負を掲げたところで役に立つとは限りません。 (こうした不安について、自分も当てはまると思う人は、これからお伝えする注意事項を読んで参考にしてみてください。) 無力感や、それがもたらす不安は嫌なものです。抗不安薬(精神安定剤)もある程度は効きますが、気持ちを落ち着かせるためだけに多くの時間とエネルギーを費やさなければなりません。私の場合、雇用と結婚生活を維持するためには冷静さを保たなければならないので、さまざまな戦略を用いています。優しい夫が買ってくれたデッキチェアに座ってセラピストにすすめられたマインドフルネスを実践することもそのひとつ。この夏、特に今年の前半にコロナがオーストラリアを襲った後は、このデッキチェアは私にとって欠かせない物となりました。   View this post on Instagram…

論文の考察をクリエイティブに書くには?(前編)

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。インガー准教授が論文の考察(Discussion)の部分をクリエイティブに書くためのコツを紹介します。こちらの記事は、前編、後編の2回に分けてお届けします。前半は作家がクリエイティブになるための環境作りをどうしていたかと、インガー准教授が建築業界にいた当時どのように創作性を磨いたかの考察です。 さて、去年私は、How do I write the discussion section? という記事を投稿しました。 この記事を書いたのは、論文執筆に関する検索から「研究室の荒波にもまれて」のサイトを訪れる人の75%が、論文の「考察(Discussion)」の部分について知りたがっていることを示すトラフィック分析があったからです。創造性が必要な「考察」は論文の中でも特にやっかいです。去年の記事では「考察」で何をどのような順序で行うか書きましたが、創造性については触れませんでした。 創造性・クリエイティビティに関する研究はたくさんあり書籍も山ほど出ています。でも、創造性をもたらす万能薬などは今のところ発明されていません。 難しい問題ですね。 では、創造的な研究者になるにはどうすれば良いのでしょう。秘訣は、創造性を何かの出来事やインスピレーションと捉えるのではなく、プロセスとして捉えることなのだと思います。どんな研究者でも、訓練により、必要に応じて創造的になることができると私は考えています。…

不安は強い力を生み出す可能性を秘めている(後編)

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。2020年を振り返るとコロナの影響で不安を感じたことが多々ありました。前編は不安を学者らしく捉えようとする姿勢についてでした。後半は博士課程で起こり得る問題の想定と対処についてです。 前編はこちら 想像力・創造力こそ、人類が多くの危機を生き延びるのを助けてきました。創造性は、「想像できる未知の出来事」に備える大まかな計画を立てる上で役立つのです。博士課程の間に起こりうる問題には次のようなものが考えられるでしょう。 問題のある指導教官 予期せぬ健康上の問題 大学による学校あるいは学部の閉鎖 人間関係の問題 実験の失敗 現地調査の実行不可 リソースの入手・利用不可 「想像できる既知の出来事」、つまり日々の問題は些細なことに見えますが、しっかりと解決に取り組むべきです。問題には、自分が進むべき道に関することもあれば、家族に関することもあるでしょうし、仕事に関することはほぼ全てに影響を及ぼすことでしょう。ここでは、文化的、技術的なありがちな問題の数々、「逆風」を取り上げたいと思います。 役割の曖昧さ:どこまでが自分の責任か明確に分からないことにより博士課程の研究が困難になることがあります。博士課程では、学生自身が独立して研究することを求める一方で、指導教官は研究の質と進捗を監督する責任を有しており、そのために避けて通れない対立が生じることがあります。役割の曖昧さは、同じ研究に従事する博士課程の学生と有給の研究助手の間の基本的な立場の違いにおいても生じます。学生が研究者になることを目指している場合、誰が博士課程における研究の質と進捗の最終的な決定者なのか?良好な関係にある指導教官と学生でも、この問題では苦労するかもしれないし、既に苦労しているかもしれません。役割の曖昧さは、それだけで1つの記事が書けるほどの複雑な問題ですが、ここでは、それによるストレスが、精神衛生上、好ましくない結果をもたらす可能性があるとだけ述べておきましょう。…

学術書や論文のインデックス作成方法

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、インガー准教授が学術書を執筆中にインデックス(索引・見出し)をどうつけるか考えたときのお話です。ここで紹介された本は、インガー准教授が他2名と共著で作成し、2018年12月に出版されています。 読者の皆様。私は今(2018年4月時点)、Shaun Lehmann(ANUの学生向けにさまざまな授業を行ってきた)とKatherine Firth(メルボルン大学で学生向けブログThesis Boot CampのResearch Degree Insidersをとして記事を執筆している)と3人でOpen University Pressより刊行予定の書籍『Writing Trouble(How to…