翻訳

CATツールを使用して翻訳効率をUP!

CATツールとは、Computer Assisted Translation(コンピュータ翻訳支援)ツールのことで、その名が示すように、翻訳のプロセスを容易にしてくれるコンピュータプログラムです。翻訳者のアウトプットの質と量を高めてくれるだけでなく、複数の翻訳者が作業を分担する時や解析を行う際に役立ちます。翻訳者が大量の翻訳を行ったり、限られた期間内に多くのプロジェクトに携わったりする場合には、まさに必要なツールと言えるでしょう。 ■ CATツールの効果 CATツールは、使用頻度の高い語句やフレーズを保存・蓄積することができます(翻訳メモリ機能)。翻訳対象の文書からよく使われる用語や語句の組み合わせを拾い出し、それに適合する訳語を瞬時に表示するため、翻訳の処理を速めることができるのです。CATツールの種類によっては、校正やスペルチェックの機能も装備しているものもあり、翻訳効率を大幅に改善することができるのです。以下に具体的な効果をまとめます。 翻訳スピードが速くなる CATツールを利用することで、翻訳処理のスピードが格段にアップします。一度翻訳された用語や文章をデータとして蓄積していくので、分量の多いプロジェクトで特に威力を発揮します。翻訳者がゼロから翻訳を行うより作業時間は大幅に短縮され、短納期での納品を実現することができます。 訳漏れを回避 CATツールには見落としがありません。人力翻訳では訳抜け・訳漏れが発生する恐れがありますが、ツールは機械的に処理していくので、原文テキストを見落とす心配がないのです。また、CATツールによっては、訳漏れを検出するQA(品質管理)チェック機能が付いているものもありますので、ツールの機能を活用して、より完成度の高い翻訳原稿を作成することができます。 用語の一貫性を保つ 頻出する語句やフレーズに同じ訳語を自動で用いるため、翻訳の一貫性を保つことができます。法律や製薬など、用語の正確さが特に求められる業界にとっては、大変有用な機能です。 共同作業の効率化 翻訳を複数の翻訳者が同時並行的に行う場合、ツール内で翻訳メモリを共有できることで、全員が確実に同じ語彙セットのもとで翻訳に当たることができます。これによって、最終的に統一感と一貫性のある訳文に仕上がります。また、ツールによっては、共通のインターフェイスを利用し、翻訳者あるいはプロジェクト管理者と作業内容について連絡を取り合ったりすることができる機能を有しているものもあります。さらに、管理者(発注者)側にとっては、ツール上で共同作業を行うことで、文書にアクセスする翻訳者などを制限・管理することが可能になり、翻訳資産の保護、一元管理ができるというメリットもあります。 レビュー 翻訳した文書の見直し(レビュー)を行うのも、CATツールを使えば簡単です。原文と翻訳文を画面上に並べて表示できるので、比較が容易になり、印刷する手間も省けます。こうした効率化の積み重ねが、長期的な視点での生産性の向上に貢献することとなるのです。…

翻訳スキルを向上させる5つのヒント

言語は常に進化しています。毎年発表される流行語を見てもわかる通り、新たな言葉が表れては消え、また表れます。言葉は時々に応じて、状況により適合した言葉へと変化してもいきます。翻訳も、常に変化していく言語に対応していくことを求められる繊細な仕事です。翻訳者もまた、プロとして生き残るには、言葉とともに「成長」していかなければならないのです。 今回は、フリーランスや企業専属の翻訳者が実際に行っている、翻訳スキルを向上させるための5つのヒントを紹介しましょう。 1 対象となる外国語を読む 最新の情報や表現を取り入れ、文脈や意味を確実に伝える訳文を作成するために最も重要なことは、対象となる言語の文章をできる限り多く読むことです。辞書は拠り所であり、頼れる友人である、くらいの気構えが大切でしょう。可能な限り眺めて、語彙を増やすことが重要です。 ただし、辞書だけでは最新の知見を取り入れることはできません。新聞や雑誌、書籍などを読んで、対象言語や翻訳対象の分野における流行や出来事、文化や専門用語を一語でも多く吸収しましょう。既存の翻訳記事を原文と読み比べて、巧みな表現を習得するという翻訳者も数多く存在します。 2 ネイティブスピーカーと話す 対象となる言語のネイティブスピーカーと、できる限り多くの会話の機会を持ちましょう。実際に口にし、耳にすることで、言語への理解度はぐんと深まります。口語表現やスラング、言語独自の言い回しやタブーとされる表現、各単語に含まれる細かなニュアンスまでつかむには、その言語の「専門家」とも言えるネイティブと対話する以上によい方法はないでしょう。 3 専門分野を持つ 翻訳の仕事を長く続ける上で重要なのが、得意な分野を持つことです。医学系の翻訳に長けている、自動車関連の文書なら誰よりも詳しい、といった具合に(それを証明する学位や認定資格があればなおよし)。特定の専門分野を持っておけば、企業における複雑な文書や、専門家による論文といった内容でも対処することができ、仕事の幅がぐんと広がります。機械翻訳の進化が著しい今日においては、単純な内容の翻訳であればコスト削減のためにニューラル機械翻訳を利用した翻訳で補う、という選択が主流になってくるでしょう。機械が上手く翻訳できない専門知識を必要とする翻訳こそ、翻訳者に今後求められることと言えるかもしれません。 4 逆方向の翻訳にも挑戦する 例えば英語を日本語にする翻訳(英文和訳)に慣れている方は、日本語を英語にする翻訳(和文英訳)にも挑戦してみるとよいでしょう。二言語間の文法や構造、さらには各場面で好まれる単語や表現などを、より深く知ることができます。最近は、機械翻訳などで翻訳された文章の言語検証や、訳文の等価性の確認を目的とした逆翻訳(バックトランスレーション)の需要が増えています。日英・英日の双方向の翻訳ができるようになれば、仕事の数を増やすこともできるのです。 5 CATツールを使いこなす 翻訳の質を担保するのはもちろん人間ですが、訳の抜け・漏れやスペルミスなど、ヒューマンエラーも残念ながらつきものです。そうした細かなミスを防ぐ上で役に立つのが、CATツール(Computer Assisted Translation…

その痛み、外国語で伝えられますか

海外に滞在中、急な体調不良で冷や汗を流した経験を持つ人は多いことと思います。病気や怪我はいつでも経験したくないものですが、それが見知らぬ土地で起こったとしたら……。「痛み」を母国語以外で説明するのは、まさに苦痛以外の何者でもありません。医師に的確に「痛み」を伝えるには、どうしたらよいのでしょう。 ■ 痛みを伝えるのって難しい 事故による怪我などで、開いた傷口や折れた骨など原因と痛みの状況が見えているような場合はわかりやすいですが、問題は、腹痛や頭痛など目に見えず、本人にしかわからない痛みの状況を説明する時です。痛みは、体温や血圧などのように測定することも、血液のように分析することもできない上、個人によって体感が異なるため、度合いを判断するのが困難です。医師は患者の痛みに関する正確な情報が必要なのに、患者は痛みを客観的に示すことができないのです。 どこが、どう痛いのか――。母語でもなかなか的確に伝えるのが難しい痛みを、他言語でと考えるだけで、痛みが増しそうです。伝える側が苦労する一方、情報の受け手である医師は、どのように患者の痛みを判断するのでしょうか。 ■ 医師の理解を阻む言葉の壁 言葉が通じない相手の痛みを理解するため、医師によっては、痛みの性質や程度を示した語のリストを使ってコミュニケーションを測ろうとします。「鋭い」(Sharp)、「鈍い」(dull)、「焼けつくような」(Burning)、「刺すような」(Stubbing)、「どきどきする」(Throbbing)などなど……。患者にとって最初の難関は、初診で痛みの性質や程度をうまく言葉で説明することです。このリストがあれば、患者は該当の痛みを指差すだけでよく、大いに役立つことでしょう。しかし、それでも書かれた言葉の意味がわからなければ、リストを使っても理解しきれない可能性があります。また、 痛みの頻度も重要です。ずっと続く痛みなのか、波のように時間をおいて強弱がある痛みなのか、あるいは特定の姿勢や動きに伴う痛みなのか。一つひとつを確認していく必要があります。 リハビリテーション医学を専門とする理学療法士のジェフリー・シェイムズ博士がこれに対して、一つの方法を示しています。イスラエルに4つある主要な健康維持機構の1つ、 Maccabi Health Servicesのリハビリテーション部門を統括する博士は、慢性症状の長期管理に携わっており、患者の痛みの診断と対応は欠かせません。シェイムズ博士は、身体を描いた図に痛みの個所を示してもらったり、痛みの程度を1から10までのゲージで示してもらったり、ストレスレベル、体の動きの不具合、QOL(生活の質)など、さまざまな視点から痛みに焦点を当てて答えてもらう質問表を準備するなどの工夫が、患者の痛みを把握するのに役に立つとしています。 ■ 痛みにもいろいろありまして―― 確かに痛みの表現のリストや程度のゲージは、言葉によるコミュニケーションの助けとなります。しかし、例えば日本語では「胃がシクシク痛む」「頭がズキズキする」など、痛みのニュアンスを伝えるためにさまざまな擬音語を駆使します。痛みにもいろいろあるのです。患者は的確な診断と治療を受けるため、できるだけ正確に痛みの種類や性質、度合い、範囲、頻度などを、痛みのニュアンスも含めて伝えることが大切です。 チャートやゲージだけでは伝えきれない「痛み」は、やはり言葉によって伝える必要があります。例をあげれば、英語で痛みを表す単語にはPainの他にAcheがあります。Painが治療の必要のない軽度の痛みから我慢できない重度の痛みまでをカバーする単語であるのに対して、Acheは頭痛(Headache)、腹痛(Stomachache)など、より主観的かつ慢性的で、緊急性の低い「痛み」を示しています。医療現場では、急性(鋭い)=Pain、慢性(鈍い)=Acheという区別で、患者に対応していると言えます。 ■ 医療通訳者・翻訳者が必要…

難民の命を救う言語のエキスパート

紛争や民族・宗教対立などから自分や家族の命を守るために母国を脱出、あるいは追われて国境を越える難民が、後を絶ちません。シリア国民やロヒンギャ族を筆頭に、その数はここ数年で急激に増加し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によると、2016年には過去最多の6560万人に上りました。 このようにたくさんの人が国境を越えると、移動先で、ある問題が起こります。受け入れ側との事務手続きはもちろん、医療処置や職業訓練を施す上で、言葉が障害となる可能性があるのです。難民のコミュニケーションをサポートする言語のエキスパートが、これまで以上に必要とされています。 ■ 難民の言語は多種多様 なぜ言語のエキスパートが必要か。それは、難民が多様な言語話者から構成されている集団だからです。UNHCRの統計によれば、全難民の55%がシリア、アフガニスタン、南スーダンの3カ国で占められていますが、サハラ以南のアフリカの国々からの難民も増加しています。言語は多種多様であり、中には母国語以外を理解できない人も多いのです。シリアからのアラビア語話者は教育水準が高く、ある程度は英語も理解できますが、ペルシア語やダリー語(アフガン・ペルシア語)の話者には、英語がわからない人が多数います。 人道支援を行う組織だけで多様な言語に対応することは難しく、そのため非営利団体「国境なき翻訳者団(Translators Without Borders: TWS)」が創設されました。国境なき医師団(MSF)の姉妹組織であるTWSは、世界各地の難民キャンプなどで援助組織や人道支援団体と難民との間をつなぐ多言語翻訳を無償で行い、ハイチやフィリピンでの自然災害時にも、英語から現地語への翻訳を行うなど、幅広い活動を展開しています。TWSが要請を受けている言語には、クルド語、ウルドゥー語(パキスタンの国語)、パシュトー語(アフガニスタンの公用語)、ティグリニア語(エチオピアの公用語の1つ)、フランス語などがあり、所属するボランティア翻訳者が、さまざまな言語を母国語とする難民のコミュニケーションを助けています。 ■ 人道支援における言語サポートの4つの特異性 TWSの広報マネージャーのラリ・フォスター氏によると、難民の言語サポートには4つの特異性があるとしています。 1) 難民が多様な言語集団からなること 2) 受け入れ側にも言語上のサポートが必要なこと 3)…

翻訳・通訳は文化理解が命!

翻訳 通訳というと元の言語と変換する言語を理解していればできるもの、と思われるかもしれません。言語自体の理解は言うまでもなく不可欠ですが、言語というものは各国の文化によって生み出され、作られていくものです。背景となっている文化を理解しないことには、言葉を置き換える時、意味を取り違えてしまったり、逆の意味に訳してしまったりすることもあります。これは時に、歴史に残る誤訳になってしまうことすらあるのです…。 ■ 語り継がれる有名誤訳 言語への理解不足が後世に多大な影響を与えてしまったという意味で、有名な誤訳の話があります。400年頃、神学者でもあった聖職者のヒエロニムスが、旧約聖書をヘブライ語からラテン語に翻訳した時のことです。シナイ山から下山したモーゼの頭に「光輪があった」とすべきところを「角があった」と訳してしまったのです。ヘブライ語に母音を表す文字がないために誤読してしまったと言われており、文法上の間違いによる誤訳です。この誤訳がその後も長く信じ続けられてきた結果、今でもたくさんのキリスト教会のモーゼ像には、角があるものが見かけられます。 比較的最近では、1977年にアメリカのカーター大統領がポーランドを訪問した時の話があります。訪問にはロシア人の通訳者が同行したのですが、この通訳者はポーランド語にはあまり精通していませんでした。結果として、大統領がポーランドの国民に向けたメッセージの中で「私がアメリカを出発したとき(when I left the United States)」と言ったのを「私がアメリカを棄てたとき(when I abandoned the United States)」に、「あなたがたの未来の展望(your…

いつ、どうやって始める?企業のローカライズ戦略

多くの企業が自社の発展とビジネスの成功を目指して、しのぎを削ってきました。世界中でグローバル化が急速に進んだ結果、ビジネスを成功させるためには海外に出て行くことが必要となり、製造業からサービス業まであらゆる企業が「どうやって、言葉や文化の違う国でビジネスを展開するか?」という問題に直面することとなりました。その際、必要なのがローカライズ(localize)/ローカリゼーション(localization)。サービスの国際化・地域化・多言語化です。では、このローカライズで成功した企業は、どの段階で決断し、何が成功につながったのでしょうか。 ■ ローカライズの需要は増えるか 日本では人口減少が深刻化しており、今後もこの流れはさらに加速することが予想されます。それに伴い消費者数の減少が見込まれる中、どのように自社の事業を展開させ、売上を維持または伸ばすことが可能なのか……。活路を見出すべくビジネスターゲットを海外へ求めるのは、ごく自然なことだと言えるでしょう。 経済活動のグローバル化が進む中、ローカライズの必要性は増しています。しかし、ローカライズに対する考え方には温度差があり、重視していない企業もあります。母国語の範囲である国内市場で顧客基盤を固めることこそ重要で国外は二の次と考える企業、国外市場を狙いつつも英語版ウェブサイトを用意しておけばよいと短絡的に考えている企業……理由はさまざまでしょう。社内で行うにしても外注するとしても、ローカライズには費用がかかります。企業にとって、資本をどう配分するかは致命的に重要ですが、困難な判断を伴います。資金の投入に慎重な計画を要する中、コストがかかる反面、実益が見えにくいローカライズを優先度の高いものと考えている企業は、まだ少ないのです。未知の国の市場に膨大な労力を注ぐより、母国での顧客基盤の構築に注力することが適策だと思うのは一理あります。 投資するからには成功したい。グローバル化を目指す企業がローカライズで効果を得るには、着手するタイミングと顧客を見据えた対応が鍵となります。 ■ 最適なタイミング――先手必勝 73%の人は母国語で書かれている物を好んで購入し、インターネットユーザーの10人中9人は、 ウェブサイトを母国語で閲覧します。商品もしくはサービスを、ターゲットとする顧客/ユーザーの言語で表示することは、売り上げにも直結する論理的な成長戦略です。英語圏以外でビジネスを拡大しようと思えば、英語版ウェブサイトだけでは不十分です。ローカライズを行わないことは、国際市場での成功を逃しているとも言えるのです。 とはいえ、多言語化に初期投資するのをためらうのも理解できます。では、ローカライズに初期投資する最適なタイミングは、いつなのでしょうか。決断は困難ですが、ローカライズを行うのはビジネスの初期段階であればあるほどよいとされています。大切なのは始めること、正しく歩を進めることです。不必要に思えても、製品のスタイルガイドやマニュアル、用語集を事業展開に着手した時点から整えておけば後々、時間とお金の節約となり、後に続く展開がぐっと楽になります。 スタイルガイドや用語集は、国外支社や代理店、翻訳会社が多言語化の作業を行う際に威力を発揮します。共通の指針があることで遅延や行き詰まりを避けられるほか、翻訳者も整えられた用語集があれば、作業しやすくなります。グローバル展開とは、決して当初から全コンテンツを50言語以上で配信することではありません。ローカライズは、小さな一歩から始められるのです。 ■ 先手のローカライズで成功したCanva社 ローカライズには早いうちに着手したほうがよいと言えども、多くの企業は、これから開拓する市場で堅実な収益を見込めるのか様子を伺い、ローカライズに二の足を踏んでいるのが実情です。ではここで、事業の立ち上げ時期にローカライズに取り組み成功した、オーストラリアのCanva社の例を紹介しましょう。 画像の加工やデザインを、初心者でもIllusutratorやPhotoshop並みの高機能で行えるツールを提供しているオーストラリアのCanva社は、2012年にシドニーで創設され、2013年からサービスの提供を開始しました。今では世界3か所にオフィスを構え、12か国で事業を展開しています。このCanva社が、スペイン語版のローカライズを決断した時のことです。Canvaが製品リリースの早い段階でスペイン語版のリリースを決断すると、35万人のユーザーが、すぐに英語版から乗り換えました。「読めなければ買わない」と決め込んでいたスペイン語ユーザーが、一気に動いたのです。Canvaの強みは、豊富な無料・有料のデザインテンプレートを提供し、初心者からプロにまで多種多様なデザイン作業の支援などを行うことです。この強みを最大限に活かすためには、読みやすい情報の提供とともに、幅広い顧客層からのフィードバック獲得が重要です。スペイン語版のリリースにより収益を上げただけでなく、「読めなければ買わなかった」顧客を手に入れ、さらなる事業の発展につなげたのです。 米国のリサーチ会社であるCommon Sense…

企業と翻訳者が知っておくべき多言語サイト成功の秘訣-1

知りたいことやわからないことをインターネットですぐに探せる時代、ウェブサイトの影響力は絶大です。ウェブサイトに掲載している情報の多言語化(ローカライゼーション)に加え、携帯端末用のサイト構築やSNSの利用も一般化し、SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン最適化)対策をはじめ、企業にとっては本業のビジネスに付随する作業が増える一方です。翻訳会社や翻訳者がローカライズやウェブコンテンツの翻訳依頼を受ける機会も増えていますが、一人でも多くの閲覧者(ユーザー)に見てもらえる工夫は、できているでしょうか。検索エンジンとSEO対策において重要視される要因を知っておくことは、多言語化翻訳に関わる際に役立つはずです。 ■ 一人でも多くのユーザーをサイトに呼び込むには サイトを一人でも多くの人に見てもらうために、魅力的なコンテンツを配信するのはもちろんですが、ネット上のユーザーから検索されやすくしなければなりません。そのための手段としてSEO対策があげられます。多くの企業はコンテンツを作成する際、GoogleやYahooなどの検索エンジンで自社の情報が上位に表示されるよう、対策を施しています。 ここで一度、検索エンジンの裏側を見てみます。 ユーザーが何かを検索するときに求めているのは、的確な回答あるいは情報です。検索エンジンは、ユーザーの要望に応じて、検索インデックスに登録されている膨大な数のウェブページの中から、有益で関連性の高い検索結果を瞬時に表示してくれますが、この時に表示される検索結果の順位は検索アルゴリズムによって制御されています。表示されるコンテンツは、クローラー(Crawler)と呼ばれるプログラムがウェブ上のあらゆるコンテンツ(文章だけでなく画像やPDFまで含む)から情報を収集し、データベース化したものの中から抽出されています。しかし、クローラーは公開してすぐのページをはじめ、すべてのコンテンツを即時に網羅しきれるわけではないので、クローラーに早く「見つけてもらう」工夫が必要となります。そこで、検索エンジンがどのような仕組みで動いているのかを理解した上で最適な策を講じること、つまり、検索エンジンでコンテンツを上位に表示させるための対策(SEO対策)が求められるのです。 ■ 進化する検索アルゴリズム ユーザーにとって便利かつ有益な検索結果を表示できるようにするため、検索アルゴリズムには日々改良が重ねられると共に、検索順位を決定するための要因として、たくさんの検索アルゴリズムを組み合わせて使用するなどの技術的な工夫が施されています。ここでは、言語と関係する部分に絞ってGoogleが2013年9月に導入した新しいアルゴリズム「ハミングバード」を見てみます。この最新の検索アルゴリズムは、類義語・同義語・あるいは文脈的に意味が合致するページも適切に評価し、検索結果に返すことが可能だとされています。1つ1つの言葉を見て検索結果に反映していた以前のアルゴリズムとは異なり、言葉そのものを含まなくても意味・文脈の関連が高いものを評価し、検索順位の判定に反映するようになりました。サイト運営者にとっては繊細なキーワード戦略が要求される反面、ユーザーにとっては、検索意図をより反映した検索結果が出るようになったのです。 例えば、「日本で人気の韓流スターは誰?」という検索ワードAと「この国で流行している韓国アイドルは誰?」というBを入力したとします。ハミングバードは、過去に類似した語句が検索された際の結果に至るまでの過程や、重ねられた過去の試行錯誤を、膨大な蓄積データから分析します。そしてAとBの検索ワードが類似する答えを求めていること、つまり具体的な韓国人俳優の名前を求めているという「意図」を有した「質問文」であることを読み解くのです。この2つの質問におけるキーワードが、Aでは「日本、韓流スター」、Bでは「この国、韓国アイドル」と一致しなくても、過去データを活用し、これらの語句の重複する部分と異なる部分を解析した上で、効率的に処理していきます。検索アルゴリズムは日々、進化しており、文脈的に合致するページまで適切に抽出し、検索結果として表示してくれるようになっています。 Googleの検索エンジンには、「パンダ」「ペンギン」「ハミングバード」と動物の名前がついていますが、「ハミングバード」はハチドリで、正確で早いことが名前の由来だそうです。ユーザーが求める情報を的確かつ瞬時に提供できるよう、アルゴリズムのアップデートが頻繁に行われているのと同時に、新しい技術の導入が進み、これからも検索アルゴリズムは進化し続けることでしょう。 この後は、SEO対策において翻訳者が知っておくべきことに続きます。

翻訳サービスが抱えるセキュリティリスクとは

あらゆる情報がインターネット上でやり取りされる現代、不正アクセスやウイルスによる個人情報・顧客情報の漏洩や、コンテンツの不正改ざんなどを含めたサイバー攻撃は後を絶ちません。大手通信教育会社、政府関連機関、金融機関などからの個人情報流出事件が報道されたほか、最近では、安全と言われていた Wi-Fi でも暗号鍵が読み取られる脆弱性が見つかり、問題となりました。 インターネットを利用する以上、セキュリティの問題は切り離せませんが、企業も個人も関係なく危険にさらされているのが現実です。翻訳サービスと翻訳者もインターネットを介してお客様の依頼を受け、作業を進行させる以上、セキュリティリスクとは無縁でいられません。 ■ 翻訳会社には重要情報がたくさん 翻訳をはじめとする言語関連サービスを提供する企業にとって、お客様の情報、つまり顧客情報はもちろん大切なものですが、翻訳業界ならではの重要情報の取り扱いについても、十分注意する必要があります。それは、翻訳対象のファイルに書かれているあらゆる情報です。最新の研究、開発中の医薬品、新製品の説明書、会社のプレスリリース、法律文書など、秘匿性の高い情報が外部に漏れることは許されません。お客様の新製品の情報が外部に漏れて競合他社の手に渡ってしまうようなことが起きたら、事業展開に影響が出ます。開発中の新薬の情報が漏れて特許申請されてしまえば、長年の研究が水泡に帰してしまいます。 顧客の業種は多種多様で依頼内容も多岐にわたりますが、どんな情報であれ重要な情報であることに変わりはありません。顧客からの信頼のもとで重要な情報を預かり、作業していることを常に意識しておく必要があります。 ■ そこら中に転がるリスク インターネットの普及は世界中の言語を世界中で翻訳することを可能にしましたが、反面、セキュリティリスクが増大したのは事実です。多くの 翻訳会社 は社内でプロジェクトの管理や編集などを行いますが、一方で相当な人数の外部事業者(フリーランスなどの登録翻訳者)を抱えています。登録翻訳者は国内外問わず点在しており、依頼言語や内容に応じて選ばれますが、その際、顧客ファイルにアクセスする必要が生じます。が、そのアクセス方法や利用ソフトは多種多様です。複数名の翻訳者がいろいろな国からさまざまなネットワークを経由してサーバーまたはファイルにアクセスすることだけでも、インターネットセキュリティのリスクを負っていることになります。 さらに、ファイルを共有するためにログインIDやパスワードを共有したり、セキュリティレベルを確認することなく大容量ファイル預かりサービスを使ってファイルを転送したり、ファイルサイズが小さいからとメール添付でファイルの送受信を行ったり、テキスト文を検索エンジンにテキストコピーして検索にかけたりと、どれも普通にやってしまいそうなことですが、これらも大きなリスクです。実際、ネット上の翻訳サービスに入力した文章がそのまま公開されてしまうという問題が、数年前に発生しました。これは、翻訳結果がサーバーに保存されていたことで、意図しない情報漏洩につながってしまったというケースでした。サービスを提供する側からの情報提供が不足していたため、顧客がサービスを発注する際に「サーバーへの文書保存に同意しない」という選択肢があったことを知らなかったのです。 ■ 翻訳サービスがなすべきセキュリティ対策とは? このような問題を防ぐためにも、翻訳サービスを提供する 翻訳会社…

翻訳だけが仕事じゃない――ランゲージサービス会社に求められるもの

グローバル化した現代社会。そこで成功を収めるためには、情報の多言語展開、つまり「情報のグローバル化」も欠かせません。個人事業者から多国籍企業まで、多種多様な形態のビジネスが展開される中、製品あるいはサービスに関する情報を即時に、かつ正確に広げていかなければ生き残れない時代です。多くの企業が、急速に進むグローバル化に応じて、世界中の顧客に情報を伝達する必要に迫られています。翻訳または通訳業務を提供するランゲージサービスプロバイダーも例外ではありません。 ■ ランゲージサービスは翻訳に留まらない ランゲージサービスを提供する企業に求められるのは、もはや言葉の置き換え(=翻訳)に留まりません。顧客の情報を言語的・文化的に適切に伝えると共に、「付加価値」を生み出すことで顧客の時間とコスト削減に貢献しなければなりません。単純な逐語訳を大きく上回る質、つまりはインターネット上での検索のされ方を考慮し、SNSで話題になる可能性にも配慮しながら、適切に言葉を選択するとともに、文章の構築にも気を配ることが求められているのです。 言葉(テキスト)だけではありません。色彩、イメージ、シンボルなどを文化や状況に応じて適切に用い、それぞれの国のターゲット層に与える印象を、ふさわしいものにする必要があります。プロバイダーは、顧客がターゲットとする市場の言語・文化・習慣・特性までをも熟知する専門家としてサービスを提供し、顧客の競争力獲得を支えるのです。 ■ 翻訳を誤ると…… ランゲージサービスの役割が大きくなる反面、言葉の適切な使用を誤って、顧客の事業に傷をつけてしまう可能性もあります。実際、ビジネス関連の文書においても、翻訳の失敗例が数多く見受けられます。これは大きな問題を引き起こしかねません。ビジネスにおける誤訳は経済的損失だけでなく、企業イメージを損なう恐れすらあるためです。 顕著な失敗例の1つに、ドイツの大手自動車メーカーのアウディ社が2009年5月に打ち出した広告があります。ハイスペック高級車「RS6アバント」の新車プレスリリースにおいて、広告会社がドイツ語の原文にあった車名を「ホワイトパワー(White Power)」と直訳したことに端を発し、大きな騒動に陥りました*1。“White Power”とは白人至上主義を示し、この思想と人種的憎悪のスローガンとして用いられるに留まらず、ネオ・ナチ運動をも意味するものであり、アウディ社のイメージを大きく損なうものとなってしまいました。 国際問題に発展しかねなかった誤訳も存在します。比較的最近の話では、2016年の9月にTPP(環太平洋経済連携協定)関連法案の文書内に、誤訳が多数あったことが報道されました。外務省によれば、誤訳や表記ミスはTPP協定に3か所、付属文書などに15か所の計18か所もあったとのこと。中には「国有企業」が「国内企業」と訳されるなど、まったく意味が異なってしまうものもありました。この内容を国会で長時間かけて審議していたことを考えると、非常に危ない橋を渡っていたことがわかります。 ■ ランゲージプロバイダーを利用するメリット では、誤訳や不適切な翻訳を防ぐためにはどうしたらよいでしょうか。失敗例から学ぶのはもちろんですが、多言語化を行うにあたり、言語ソリューションサービスを提供するランゲージプロバイダーと関係を構築するのも一案です。ランゲージプロバイダーを利用するメリットを以下に記します。…

スタバの成功の裏にあるもの――日本でビジネスを成功させるために

あまり自覚されることはありませんが、日本人は世界でも稀に見る「ハイスペック嗜好民族」です。企業が国外市場でビジネスを成功させるには、製品やマーケティングスタイルをその国の市場に適合させる必要がありますが、日本市場に進出しようとする外国企業は、細やかな「気配り」を想像以上に要求されることに気づくのではないでしょうか。「こうしてほしい」とはっきり要求されず、時に「口に出さない要求への理解」を求められることも.....。外国企業が日本で成功するためのハードルは、低くないのです。 ■ 日本人の要求は「高い」 ブランド名だけで無条件に売れる製品がありますが、そのブランドが日本市場で認知され普及するに至るまでには、相応の努力が隠されています。モノも情報も氾濫する現在、きちんとした価値観を持つブランドでなければ、日本人の購買意欲をそそらない傾向があります。外国勢が日本市場に参入する際、自社の従来のビジネスモデルやブランドを活用すれば日本でも十分成功できると思い込むことがあるようですが、これは失敗のもとかもしれません。重箱の隅をつつくような細部へのこだわりと完璧さを求める日本人の嗜好、価値観を知ることが重要です。 そんな日本人の細部への要求は、身近なものにも見て取れます。ごく一部を紹介します。 ・説明書は絶対 日本人は製品を購入する際、詳細を丁寧に記述した説明書をほしがり、実際にそれをきちんと読む傾向があります。当然、内容には「完璧」な説明とわかりやすさを求めます。「そんなに読まない」という人も、ちゃんと保管している場合が多いのでは? ・パンフレット大好き 説明書同様に、会社や事業内容を説明した紙のパンフレットが大好きです。ビジネスにおける基礎的な信頼を獲得するための鍵として、詳細にわたるパンフレット類は欠かせません。しかも、ビジュアル(美)を重視します。展示会などで、出展企業のパンフレットを集めて重そうに持っている方、少なくないですよね。 ■ 日本市場で成功したスターバックス このようにハードルの高い市場ですが、多くの外資系企業が日本市場に参入してきています。アメリカのシアトルで生まれたスターバックスコーヒーは、成功を収めた代表例と言えます。1996年に日本1号店をオープンしてから21年を経て、47都道府県すべてに1,260店舗を展開(2015年の鳥取県への出店で全国制覇、店舗数は2017年6月時点)しています。今や世界的なコーヒーチェーンですが、日本においては日本ならではの文化を取り込み、顧客の心をしっかりつかんでいます。 例えば“SAKURA”シリーズ。これは春の日本の伝統である雛祭りのイメージや、時には桜の花そのものをあしらう和菓子にインスパイアされた商品です。スターバックスのプレスリリースによれば「日本人の美しい感性をリスペクトした商品がラインアップ!」「さくらに対する日本文化を尊重する」と書かれていますが、これがカップの中のコーヒーにさえ「美」や「文化」を求める日本人の心をくすぐってならないようです。しかも「日本限定」ビバレッジという、日本人が大好きなツボまで抑えたマーケティング戦略で大成功しているのです。 決して安くはないスターバックスが、従来の喫茶店やコーヒーショップを押しのけて日本でここまで成功・拡大できたのには、文化的価値観への配慮も含めた企業戦略があるのです。 ■ 広告活動にも配慮 日本市場向けのマーケティング戦略を工夫している企業は、他にも数多く存在しています。例えば、日本でも大人気のアップル社。彼らは、アメリカ流の広告活動は日本市場にふさわしくないと、実際にアプローチの仕方を変更しています。Macのプロモーションに着目してみましょう。米国ではMacと他社のPCをきわどく挑発的に比較したり、アメリカ人が好きなジョーク満載のもの(参考例:’Get a…

グローバル化はローカル化!?

「完璧な翻訳などありえない」――。 翻訳を試みたことのある人にとっては周知の事実ですが、ある言語で示される内容を他の言語ですべて正確に表現するのは至難の業です。経済、文化、産業、人とあらゆる物事がグローバル化した世界において、情報の共有および拡散のための「翻訳」という言葉の置き換えが不可欠となりました。現代における「翻訳」の意味や役割について検証します。 ■ 現代の「翻訳」に求められること よく「国際化社会」「グローバル化」と称されますが、そもそも「国際化」を何と訳すでしょう?インターナショナリゼーションまたはグローバリゼーションとなることが多いと思いますが、この2つですら、すでに若干のニュアンスの違いが出てきます。インターナショナリゼーション(internationalization)と言えば国家(inter-national)の枠を越えて広がるイメージですが、グローバリゼーション(globalization)では地球規模(global)で広がるイメージになるのではないでしょうか。例えば、人や物の拡散は「インターナショナリゼーション」で、気候変動の影響は「グローバリゼーション」という微妙な使い分けを我々は何気なくやっていますが、カタカナにしただけでも差が生じるような言葉のニュアンスを正確に説明するのは困難です。 これを他の言語で表すとなれば、単語のイメージや使用される状況によっては、受信側は、発信側のねらいと異なる印象を受け取りかねません。自国語では「普通」なことが、他の言語では「普通」ではないかもしれないのです。 このように翻訳には、認知の仕方の違いという落とし穴が隠れています。「国際化」と広い視野の話をしている反面、言葉を届けるためには地域ごとの言語、言い回し、文化的背景など非常に細かい人間的な側面にも配慮する必要があるのです。それが、グローバリゼーション(国際化)を手助けする翻訳作業を「ローカライゼーション(地域化)」と呼ぶゆえんです。 では、グローバル化が加速している現代において、ローカライゼーション=翻訳にはどのような配慮が求められているのでしょうか。 ■ 翻訳は言葉の置き換えに留まらない 「翻訳」とは一般的に言えば、言葉から他の言葉への直接的な置き換えです。ただこれだけであれば、コンピューター処理のスピードが格段に進化し、AIも採用されている最近の翻訳ソフトで大部分は対応できてしまいます。 英語やフランス語のように言語自体が比較的シンプルな言語間の翻訳では、それほど問題なく処理できるようになってきているようです。しかし、ロシア語やドイツ語のように複雑な文法の言語ではまだ苦戦していますし、日本語の尊敬語や謙譲語のように状況で変化する言葉への対応には、課題が残っています。ソフトウェアのローカライズのように言語変換プログラムを組むことで機械的に対応できるものもありますが、人に伝える情報については、どれだけ単語データの集積があっても言葉の語形変化(活用)や使い分けなどを理解していないと、意味不明な翻訳となってしまうのです。 そして伝えなければならない情報には、言葉以外の要素も多々含まれています。翻訳を行うにあたって注意すべき要素をあげると、以下のようなものがあります。 • 言語特性 • 日付と時間の書式(年月日の書き方にはかなりの差が見られます) • 数字(特に小数点表記、世界には小数点の区切りが「,(コンマ)」になる国も) • 時差(タイムゾーンの違いに加えてサマータイムによる時差も生じます)…