書き方

論文の考察はどうやって書く?

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、論文の要でもある「考察(ディスカッション)」には何をどう書けばいいのかという話です。 以前、友人であり効率化の師でもあるジェイソン・ダウンズ(Jason Downs)の勧めで、リチャード・コッチ(Richard Koch)の『The 80/20 Principle: The Secret to Achieving More with…

Uneven Uの手法で論争的かつ読み進めやすい文章を書こう

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回はアカデミックライティング含め様々な執筆に役立つ「Uneven U」と呼ばれる文章の構成方法についての解説です。読者を引き込み更なる探究を促すような、論争的かつ読み進めやすい文章を書けるようになるこの方法。さて、Uneven U―形の整っていないU型とは何を意味しているのでしょうか。 よく出版社から評価(レビュー)用の学術書が送られてくるので、喜んで全部に目を通しますが、私は書評を書きませんし、書くことを皆さんに心からお勧めすることはできません。私は、書評を書くことで同僚の著者の気持ちをくじけさせたくないのです。送られてきた書籍は、私の本棚の一番下に、罪悪感の塊となって積まれています。 最近、部屋の片付けをしていたら、2014年にコロンビア大学出版から送られてきたエリック・ハヨ(Eric Hayot)著『The element of academic style(仮題:アカデミック・スタイルの要素)』が出てきました。最近、キャサリンとショーンと私の3人は、2018年に私たちが出版した『How to fix…

研究者がベストセラー作家になるには

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回はミューバーン准教授の知人、研究者であり、同時にベストセラー・ノンフィクション作家でもあるリン・ケリー博士が、どうやって博士課程の研究を元に「売れる本」を書いたのか、の紹介です。 私は、執筆や出版を生業とする人々に囲まれていますが、リン・ケリー博士は、私の知人の中でもとりわけ多くの本を執筆・出版している人です。私と彼女は公私ともに長い付き合いがあり、彼女が博士号取得前からノンフィクションを書いていたのを知っているので驚くべきではないのかもしれませんが、私の知る限り、博士課程の研究から学術書(『Knowledge and Power in Prehistoric Societies』)とベストセラーのノンフィクション(『 』)の両方を書いた唯一の人物です。 学術書は読む気にはなれなかったので『The Memory Code』を読んでみたところ、本当に引き込まれてしまいました。説明は難しいのですが、ストーンヘンジのような場所とオーストラリアのアボリジニに古くから伝わる記憶法を結びつけ、口承文化において知識がどのようにして物に記録されるかを示しています。恥ずかしながら、過去200年間にオーストラリアのアボリジニの知識や文化が計り知れないほど失われたことを私が本当に理解するには、誰かに自分たち(白人)の歴史と結びつけて示してもらう必要があったのです。リンがそれをやってくれました。自分たちの方法を惜しみなくリンに教えてくれたアボリジニの長老たちには頭が上がりませんし、逆境の中、人々が伝統を守り続けていることは本当に感謝すべきことです。 深い敬意を示さずにはいられません。 彼女の著書『The…

論文は専門用語の使い方で信頼を得る

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、ミューバーン准教授がジャーナリストの書く文章と論文の違いは読者の知識量と解説し、論文著者として信頼を得るために論文中でどう専門用語を使うべきか語ります。 ほとんどの人は、博士課程に入る時点で文章能力を身に付けていますが、論文の執筆には特殊なスキルが必要です。論文を執筆するには持っている文章スキルを 「論文スタイル」 に修正しなければなりません。これまで私が見てきた中で論文スタイルに最も手を焼いているのは皮肉なことにジャーナリストたちでした。 既にジャーナリストとして活躍してきたとあれば、博士号取得までの試練の中でも執筆についてはことさら既に乗り越えているものだと期待するでしょう。しかしジャーナリストたちが、論文の執筆が難しいと感じる明らかな理由があるのです。ジャーナリストは一般読者向けの文章を書くことに慣れており、その主な役割は、その話題についてよく知らない人々に状況や考えを伝え、説明することです。対照的に、論文とは専門家が他の専門家に情報を提供し、自分の見解について納得してもらうために書かれるものです。 高い専門性を誇る読み手は簡単には納得しないため、博士課程の学生の原稿に、私はよく次のようなコメントを書きます。 「本来は複数形でも、慣例上、単数表記。英語はバカなのです」とコメント欄に記入しています。 私は指導教官としては、文法の 「ルール」 についてはかなり寛容です。文法のルールなど人が作ったものなのですから。むしろ私は、文法的に正しいことより「社会的に正しい」文章を学生が書くお手伝いをします。「社会的に正しい」文章 とは、想定される読者の期待に沿う文章という意味合いです。 学術界の研究者同士のコミュニケーションのためのライティングは、マスターするのが最も難しい作文技術の1つです。専門家である読者は、自分の研究トピックに関連する研究方法に関する知識や、一般的な背景などを理解しているという前提で書かなくてはなりません。ただし、研究者であっても自分のトピックについては自分ほど詳しくないという認識も重要です。自分が採用した研究手法を知っていたけれど使ったことはないという読者もいるでしょうし、30年来ほぼ毎日、その研究手法を使っているという読者がいるかもしれません。また、その分野の研究の歴史について非常に詳しいかもしれませんし、何の知識も持っていないかもしれません。…