対処法

PhDが無意味に感じられる理由と対処法

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回はPhD課程(博士課程)の学生が襲われる無力感、そしてそれに対処する具体的な方法について解説します。 内容についての注意事項からお伝えします。この連載では、明るく、役立つことがらについて書くよう心がけていますが、この記事では不安やうつ状態など、精神衛生に関わる話に触れています。 抵抗のある方は閲覧をお控えください。サイトを離れる前に、子猫のGIFをどうぞ。 マット・マイトの‘The Illustrated Guide to the PhD’によると、PhDとは知識の顔に突き出た「おでき」だということです。 ぜひ、ページをご覧いただきたいのですが、マイトは、人類の知の総和を大きな円で、個々の知識を小さな円で図示します。そして、個人のPhD研究を、大きな円の縁の部分から突き出す小さな膨らみとして表示しています。 PhDという「おでき」です。 マット・マイトはいい奴で、彼の図にも説得力があります。彼が言いたいのは研究が積み重なることにより、人類の知識の総和が徐々に大きくなっていくということです。個々のPhDが革新的である必要はありません。個人の貢献が微々たるものでも、多くのPhD取得者の「おでき」が集まることで、大きな意味を持つというのです。…

博士課程終盤に「ダメ人間」の症状が出てしまったら

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。人は得てして何らかの理由で追い詰められると、簡単なことがうまくできない「ダメ人間」状態に陥いってしまうことがあります。自らも経験者であるミューバーン准教授が原因を考察し、そんな状態と上手く付き合っていく方法を話してくれました。はたして、その対処法とは? PhDの研究を行う間、研究は上手くこなしているのに、それ以外のことがほとんど何もできなくなってしまうことが起こることを、私は「Loopy la-las」と名付けました。 私自身に「Loopy la-las」が起こり始めた日のことは忘れられません。とにかく、簡単なことができなくなってしまい、自分が「ダメ人間」になったと感じたのです。 2008年のある日、フーコーの本に没頭していたところに、大学のリサーチ・アドミニストレーターから電話がかかってきました。私が提出した学会出席の助成金申請書に不備があり、名前の記入ミスがあったことを知らせてくれたのです(ありがとう、ジェーン!)。メールをチェックして、彼女が申請書を処理できるよう返信すればいい――だけですよね? 私はログインして申請フォームをダウンロードしました。そして、何をしようとしていたのか理解しようと、フォームを凝視しました。 私は、苗字と名前の両方を記入させるフォームの形式について考えはじめました。イギリスが自国の名前の付け方を植民地にも浸透させるため、植民地主義の下でランダムに姓(名字)を与えていたプロセスに思いを巡らせ、さらに家父長制と、母や自分の名前に比べて父や夫の名前がどのように提示されているかを考えました。そこから、そもそも「名前」とは何なのかについて考え始めてしまったのです。 ダメダメ、何やってるの!私は頭を振って自分の名前を書き込みました。それからさらに3分間、自分の名前のスペルが正しく書けているのか疑って自分の名前を凝視してから、不安なままフォームを保存してジェーンに返信しました。 すると今度はジェーンがわざわざ電話をかけてきて、私が添付ファイルを付けずに返信メールを送っていたと教えてくれました。彼女は大笑いをして「まったくあなたらしいわ、インガー。みんなにフォームに記入してもらう作業で私の1日の半分はつぶれるのだけれど、頭が良いはずの博士課程の学生は、どうしてこんな簡単なことができないのかしら?」と言うのです。 ジェーンの言葉は、私の心にずっと響いていました。なぜなら、私はその後半年以上、この「簡単なことができない」状態に陥ったからです。単純なことを行うのに苦労する一方で、信じられないほど複雑で抽象的な概念について考え、それについて書くことは1日中続けていても全く苦にならないのに。物事によってそれを処理する頭の回転が異なる状況は奇妙で、自分が「ダメ人間」になってしまったのではないかと思いました。しかし、博士課程の学生と接してきて、これが珍しい状態でないことが分かりました。そして、このような状態になるのは論文執筆プロセスの副産物なのではないかと思うに至りました。まさに『フラバー うっかり博士の大発明(原題:…