ローカライゼーション

企業と翻訳者が知っておくべき多言語サイト成功の秘訣-1

知りたいことやわからないことをインターネットですぐに探せる時代、ウェブサイトの影響力は絶大です。ウェブサイトに掲載している情報の多言語化(ローカライゼーション)に加え、携帯端末用のサイト構築やSNSの利用も一般化し、SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン最適化)対策をはじめ、企業にとっては本業のビジネスに付随する作業が増える一方です。翻訳会社や翻訳者がローカライズやウェブコンテンツの翻訳依頼を受ける機会も増えていますが、一人でも多くの閲覧者(ユーザー)に見てもらえる工夫は、できているでしょうか。検索エンジンとSEO対策において重要視される要因を知っておくことは、多言語化翻訳に関わる際に役立つはずです。 ■ 一人でも多くのユーザーをサイトに呼び込むには サイトを一人でも多くの人に見てもらうために、魅力的なコンテンツを配信するのはもちろんですが、ネット上のユーザーから検索されやすくしなければなりません。そのための手段としてSEO対策があげられます。多くの企業はコンテンツを作成する際、GoogleやYahooなどの検索エンジンで自社の情報が上位に表示されるよう、対策を施しています。 ここで一度、検索エンジンの裏側を見てみます。 ユーザーが何かを検索するときに求めているのは、的確な回答あるいは情報です。検索エンジンは、ユーザーの要望に応じて、検索インデックスに登録されている膨大な数のウェブページの中から、有益で関連性の高い検索結果を瞬時に表示してくれますが、この時に表示される検索結果の順位は検索アルゴリズムによって制御されています。表示されるコンテンツは、クローラー(Crawler)と呼ばれるプログラムがウェブ上のあらゆるコンテンツ(文章だけでなく画像やPDFまで含む)から情報を収集し、データベース化したものの中から抽出されています。しかし、クローラーは公開してすぐのページをはじめ、すべてのコンテンツを即時に網羅しきれるわけではないので、クローラーに早く「見つけてもらう」工夫が必要となります。そこで、検索エンジンがどのような仕組みで動いているのかを理解した上で最適な策を講じること、つまり、検索エンジンでコンテンツを上位に表示させるための対策(SEO対策)が求められるのです。 ■ 進化する検索アルゴリズム ユーザーにとって便利かつ有益な検索結果を表示できるようにするため、検索アルゴリズムには日々改良が重ねられると共に、検索順位を決定するための要因として、たくさんの検索アルゴリズムを組み合わせて使用するなどの技術的な工夫が施されています。ここでは、言語と関係する部分に絞ってGoogleが2013年9月に導入した新しいアルゴリズム「ハミングバード」を見てみます。この最新の検索アルゴリズムは、類義語・同義語・あるいは文脈的に意味が合致するページも適切に評価し、検索結果に返すことが可能だとされています。1つ1つの言葉を見て検索結果に反映していた以前のアルゴリズムとは異なり、言葉そのものを含まなくても意味・文脈の関連が高いものを評価し、検索順位の判定に反映するようになりました。サイト運営者にとっては繊細なキーワード戦略が要求される反面、ユーザーにとっては、検索意図をより反映した検索結果が出るようになったのです。 例えば、「日本で人気の韓流スターは誰?」という検索ワードAと「この国で流行している韓国アイドルは誰?」というBを入力したとします。ハミングバードは、過去に類似した語句が検索された際の結果に至るまでの過程や、重ねられた過去の試行錯誤を、膨大な蓄積データから分析します。そしてAとBの検索ワードが類似する答えを求めていること、つまり具体的な韓国人俳優の名前を求めているという「意図」を有した「質問文」であることを読み解くのです。この2つの質問におけるキーワードが、Aでは「日本、韓流スター」、Bでは「この国、韓国アイドル」と一致しなくても、過去データを活用し、これらの語句の重複する部分と異なる部分を解析した上で、効率的に処理していきます。検索アルゴリズムは日々、進化しており、文脈的に合致するページまで適切に抽出し、検索結果として表示してくれるようになっています。 Googleの検索エンジンには、「パンダ」「ペンギン」「ハミングバード」と動物の名前がついていますが、「ハミングバード」はハチドリで、正確で早いことが名前の由来だそうです。ユーザーが求める情報を的確かつ瞬時に提供できるよう、アルゴリズムのアップデートが頻繁に行われているのと同時に、新しい技術の導入が進み、これからも検索アルゴリズムは進化し続けることでしょう。 この後は、SEO対策において翻訳者が知っておくべきことに続きます。

スタバの成功の裏にあるもの――日本でビジネスを成功させるために

あまり自覚されることはありませんが、日本人は世界でも稀に見る「ハイスペック嗜好民族」です。企業が国外市場でビジネスを成功させるには、製品やマーケティングスタイルをその国の市場に適合させる必要がありますが、日本市場に進出しようとする外国企業は、細やかな「気配り」を想像以上に要求されることに気づくのではないでしょうか。「こうしてほしい」とはっきり要求されず、時に「口に出さない要求への理解」を求められることも.....。外国企業が日本で成功するためのハードルは、低くないのです。 ■ 日本人の要求は「高い」 ブランド名だけで無条件に売れる製品がありますが、そのブランドが日本市場で認知され普及するに至るまでには、相応の努力が隠されています。モノも情報も氾濫する現在、きちんとした価値観を持つブランドでなければ、日本人の購買意欲をそそらない傾向があります。外国勢が日本市場に参入する際、自社の従来のビジネスモデルやブランドを活用すれば日本でも十分成功できると思い込むことがあるようですが、これは失敗のもとかもしれません。重箱の隅をつつくような細部へのこだわりと完璧さを求める日本人の嗜好、価値観を知ることが重要です。 そんな日本人の細部への要求は、身近なものにも見て取れます。ごく一部を紹介します。 ・説明書は絶対 日本人は製品を購入する際、詳細を丁寧に記述した説明書をほしがり、実際にそれをきちんと読む傾向があります。当然、内容には「完璧」な説明とわかりやすさを求めます。「そんなに読まない」という人も、ちゃんと保管している場合が多いのでは? ・パンフレット大好き 説明書同様に、会社や事業内容を説明した紙のパンフレットが大好きです。ビジネスにおける基礎的な信頼を獲得するための鍵として、詳細にわたるパンフレット類は欠かせません。しかも、ビジュアル(美)を重視します。展示会などで、出展企業のパンフレットを集めて重そうに持っている方、少なくないですよね。 ■ 日本市場で成功したスターバックス このようにハードルの高い市場ですが、多くの外資系企業が日本市場に参入してきています。アメリカのシアトルで生まれたスターバックスコーヒーは、成功を収めた代表例と言えます。1996年に日本1号店をオープンしてから21年を経て、47都道府県すべてに1,260店舗を展開(2015年の鳥取県への出店で全国制覇、店舗数は2017年6月時点)しています。今や世界的なコーヒーチェーンですが、日本においては日本ならではの文化を取り込み、顧客の心をしっかりつかんでいます。 例えば“SAKURA”シリーズ。これは春の日本の伝統である雛祭りのイメージや、時には桜の花そのものをあしらう和菓子にインスパイアされた商品です。スターバックスのプレスリリースによれば「日本人の美しい感性をリスペクトした商品がラインアップ!」「さくらに対する日本文化を尊重する」と書かれていますが、これがカップの中のコーヒーにさえ「美」や「文化」を求める日本人の心をくすぐってならないようです。しかも「日本限定」ビバレッジという、日本人が大好きなツボまで抑えたマーケティング戦略で大成功しているのです。 決して安くはないスターバックスが、従来の喫茶店やコーヒーショップを押しのけて日本でここまで成功・拡大できたのには、文化的価値観への配慮も含めた企業戦略があるのです。 ■ 広告活動にも配慮 日本市場向けのマーケティング戦略を工夫している企業は、他にも数多く存在しています。例えば、日本でも大人気のアップル社。彼らは、アメリカ流の広告活動は日本市場にふさわしくないと、実際にアプローチの仕方を変更しています。Macのプロモーションに着目してみましょう。米国ではMacと他社のPCをきわどく挑発的に比較したり、アメリカ人が好きなジョーク満載のもの(参考例:’Get a…

グローバル化はローカル化!?

「完璧な翻訳などありえない」――。 翻訳を試みたことのある人にとっては周知の事実ですが、ある言語で示される内容を他の言語ですべて正確に表現するのは至難の業です。経済、文化、産業、人とあらゆる物事がグローバル化した世界において、情報の共有および拡散のための「翻訳」という言葉の置き換えが不可欠となりました。現代における「翻訳」の意味や役割について検証します。 ■ 現代の「翻訳」に求められること よく「国際化社会」「グローバル化」と称されますが、そもそも「国際化」を何と訳すでしょう?インターナショナリゼーションまたはグローバリゼーションとなることが多いと思いますが、この2つですら、すでに若干のニュアンスの違いが出てきます。インターナショナリゼーション(internationalization)と言えば国家(inter-national)の枠を越えて広がるイメージですが、グローバリゼーション(globalization)では地球規模(global)で広がるイメージになるのではないでしょうか。例えば、人や物の拡散は「インターナショナリゼーション」で、気候変動の影響は「グローバリゼーション」という微妙な使い分けを我々は何気なくやっていますが、カタカナにしただけでも差が生じるような言葉のニュアンスを正確に説明するのは困難です。 これを他の言語で表すとなれば、単語のイメージや使用される状況によっては、受信側は、発信側のねらいと異なる印象を受け取りかねません。自国語では「普通」なことが、他の言語では「普通」ではないかもしれないのです。 このように翻訳には、認知の仕方の違いという落とし穴が隠れています。「国際化」と広い視野の話をしている反面、言葉を届けるためには地域ごとの言語、言い回し、文化的背景など非常に細かい人間的な側面にも配慮する必要があるのです。それが、グローバリゼーション(国際化)を手助けする翻訳作業を「ローカライゼーション(地域化)」と呼ぶゆえんです。 では、グローバル化が加速している現代において、ローカライゼーション=翻訳にはどのような配慮が求められているのでしょうか。 ■ 翻訳は言葉の置き換えに留まらない 「翻訳」とは一般的に言えば、言葉から他の言葉への直接的な置き換えです。ただこれだけであれば、コンピューター処理のスピードが格段に進化し、AIも採用されている最近の翻訳ソフトで大部分は対応できてしまいます。 英語やフランス語のように言語自体が比較的シンプルな言語間の翻訳では、それほど問題なく処理できるようになってきているようです。しかし、ロシア語やドイツ語のように複雑な文法の言語ではまだ苦戦していますし、日本語の尊敬語や謙譲語のように状況で変化する言葉への対応には、課題が残っています。ソフトウェアのローカライズのように言語変換プログラムを組むことで機械的に対応できるものもありますが、人に伝える情報については、どれだけ単語データの集積があっても言葉の語形変化(活用)や使い分けなどを理解していないと、意味不明な翻訳となってしまうのです。 そして伝えなければならない情報には、言葉以外の要素も多々含まれています。翻訳を行うにあたって注意すべき要素をあげると、以下のようなものがあります。 • 言語特性 • 日付と時間の書式(年月日の書き方にはかなりの差が見られます) • 数字(特に小数点表記、世界には小数点の区切りが「,(コンマ)」になる国も) • 時差(タイムゾーンの違いに加えてサマータイムによる時差も生じます)…